この章では、Solaris オペレーティング環境のインストールやアップグレードを行う前に決定すべき項目について説明します。この章の内容は次のとおりです。
次の作業マップは、Solaris オペレーティング環境のインストールやアップグレードに必要な作業の概要を示したものです。インストールしようとする環境にとって最も効率的なインストールを行うためにどの項目を決定する必要があるかを、この作業マップから判断してください。
表 2-1 作業マップ: Solaris ソフトウェアのインストールまたはアップグレード
作業 |
内容 |
詳細 |
---|---|---|
初期インストールかアップグレードかを選択する |
初期インストールを行うのか、アップグレードを行うのかを決めます。 | |
システム要件を検討する |
インストールまたはアップグレードの最小要件をシステムが満たしているかどうかを判断します。 | |
インストール方法を選択する |
Solaris オペレーティング環境では、インストールやアップグレードをいくつかの方法で行うことができます。インストール環境に最も適した方法を選択してください。 | |
ディスク容量の計画をたてて割り当てる |
インストールする Solaris オペレーティング環境のコンポーネントに必要なディスク容量をシステムに割り当てます。 | |
インストール媒体を選択する |
Solaris ソフトウェアのインストールは、ローカル媒体から行うこともネットワークから行うこともできます。インストール環境に最も適したインストール媒体を選択してください。 | |
システム情報を収集する |
チェックリストやワークシートを使って、インストールやアップグレードに必要なすべての情報を収集します。 | |
(省略可能) システム構成情報を事前設定する |
インストールやアップグレードの際に情報を入力する手間を省くために、システム構成情報を事前に設定しておくことができます。 | |
(省略可能) Solaris ソフトウェアをネットワークからインストールする準備を行う |
Solaris ソフトウェアをネットワークからインストールする場合は、インストールサーバーを作成し、必要に応じてブートサーバーを作成し、ネットワーク上でインストールできるようにシステムを設定します。 | |
(アップグレードのみ) アップグレード前に必要な作業を行う |
システムのバックアップを取り、アップグレード時にディスク容量の再配置が行われるかどうかを判断し、Solaris Update リリースによって上書きされる可能性があるパッチを検索します。 | |
インストールまたはアップグレードを行う |
選択した Solaris インストール方法を使って Solaris ソフトウェアのインストールまたはアップグレードを行います。 |
インストールの詳細な手順を説明している章 |
まず、初期インストールを行うのかアップグレードを行うのかを選択する必要があります。アップグレードを選択する場合は、Solaris オペレーティング環境がすでにシステム上で動作している必要があります。
初期インストールでは、システムのディスクが Solaris オペレーティング環境の新しいバージョンで上書きされます。システム上で Solaris オペレーティング環境がまだ動作していない場合は、初期インストールを行う必要があります。
システム上で Solaris オペレーティング環境がすでに動作している場合でも、初期インストールを行うことができます。ローカルに行なった変更を維持したい場合は、インストールを行う前にローカル変更のバックアップを取り、インストールが終わった後でローカル変更を復元する必要があります。
初期インストールは、Solaris のどのインストール方法を使っても実行できます。Solaris のインストール方法については、第 3 章「Solaris インストール方法の選択」を参照してください。
アップグレードでは、システムのディスクにある既存のファイルと Solaris オペレーティング環境の新しいバージョンがマージされます。アップグレードでは、既存の Solaris オペレーティング環境に対して行なった変更はできるだけ保存されます。
アップグレードできるシステムは、Solaris 2.5.1、Solaris 2.6、または Solaris 7 ソフトウェアが動作しているものです。Solaris 8 が動作しているシステムは、Solaris 8 Update リリースにアップグレードできます。システムで動作している Solaris のバージョンを知るには、次のコマンドを入力します。
$ uname -a |
Solaris オペレーティング環境のアップグレードでは、次のインストール方法を使用できます。
ディスクレスクライアントをアップグレードする場合は、smosservice patch コマンドを使用する必要があります。詳細は、『Solaris 8 のシステム管理 (追補)』 または smosservice(1M) のマニュアルページを参照してください。
プラットフォーム |
現在の Solaris オペレーティング環境 |
Solaris のアップグレード方法 |
---|---|---|
SPARC |
Solaris 2.5.1, Solaris 2.6, Solaris 7, Solaris 8 |
SolarisTM Web Start (Solaris 8 INSTALLATION CD) Solaris 8 対話式インストールプログラム カスタム JumpStartTM |
Intel |
Solaris 2.5.1, Solaris 2.6, Solaris 7 |
Solaris 8 対話式インストールプログラム カスタム JumpStart |
Solaris 8 |
Solaris Web Start (Solaris 8 INSTALLATION CD) Solaris 8 対話式インストールプログラム カスタム JumpStart |
システムのソフトウェアグループを、アップグレード時に別のソフトウェアグループに変更することはできません。たとえば、システムに エンドユーザーシステムサポートソフトウェアグループがインストールされている場合には、開発者システムサポートソフトウェアグループにアップグレードするオプションはありません。ただし、アップグレード中に、インストール済みのソフトウェアグループに属していないソフトウェアをシステムに追加することはできます。
すでに Solaris 8 オペレーティング環境を実行していて、システムに個別のパッチがインストールされている場合、Solaris 8 Update リリースへのアップグレードを行うと、パッチは次のようになります。
Solaris 8 Update リリースの一部として組み込まれているパッチは自動的に再適用されます。これらのパッチをバックアウトすることはできません。
システムに既にインストールされているパッチのうち、Solaris 8 Update リリースに組み込まれていないパッチは削除されます。
パッチアナライザを使用すれば、Solaris 8 Update リリースにアップグレードしたときに、これらのパッチのうちどれが削除されるかを知ることができます。パッチアナライザの詳しい使い方については、「Solaris 8 Update リリースへのアップグレード」を参照してください。
Solaris オペレーティング環境のインストールやアップグレードに必要な要件をシステムが満たしているかどうかを確認してください。
Solaris オペレーティング環境のインストールやアップグレードを行うには、64M バイト以上のメモリーが必要です。
Solaris Web Start を使ってアップグレードを行うためには、ディスク上に未使用のスライスが必要です。望ましいスライスは swap スライスですが、/etc/vfstab にリストされているアップグレード対象のルートスライスのどれにも属していないスライスであれば、どのスライスでもかまいません。このスライスの推奨サイズは 512 M バイトです。
Solaris Web Start を使って Solaris 2.5.1、Solaris 2.6、Solaris 7 を Solaris 8 にアップグレードすることはできません。この場合には、Solaris 8 対話式インストールプログラムを使用する必要があります。Solaris Web Start では、以前の Solaris リリースでは作成されなかった 10 M バイトの IA ブートパーティションが別に必要です。
Solaris Web Start を使用して、Solaris 8 リリースを Solaris 8 Update リリースにアップグレードできます。
Solaris Web Start を使ってインストールやアップグレードを行うためには、システムディスクに 2 つの fdisk パーティションが必要です。
Solaris fdisk パーティション
通常の Solaris fdisk パーティションです。システム上に Solaris fdisk パーティションがない場合は、その作成を求めるプロンプトが Solaris Web Start から出されます。
既存の fdisk パーティションのサイズを変更すると、そのパーティションにあるすべてのデータが自動的に削除されます。Solaris fdisk パーティションを作成する場合は、データのバックアップを取ってください。
x86BOOT fdisk パーティション
IA システムを観にルートから起動するための、10M バイトの fdisk パーティションです。ミニルートは、Solaris fdisk パーティションに新たに作成されるスワップスライスに置かれます。
x86BOOT fdisk パーティションを手動で作成しないでください。
Solaris Web Start は、Solaris fdisk パーティションを分割し、10M バイトの x86BOOT fdisk パーティションを作成します。このように x86BOOT fdisk パーティションの作成をインストールプログラムに任せることによって、既存の fdisk パーティションを変更してしまう危険が防止されます。
デフォルトブートディスクの BIOS および SCSI ドライバが、LBA (Logical Block Addressing) をサポートしている必要があります。LBA により、1024 シリンダの制限を超えるマシンのブートや、複数の Solaris スライスにまたがるマシンのブートが可能になります。
LBA がサポートされているかどうかを調べるには、次のコマンドを使用します。
# prtconf -pv | grep -i lba |
デフォルトブートディスクの BIOS および SCSI ドライバが LBA をサポートしている場合は、次のメッセージが出力されます。
lba-access-ok: |
デフォルトブートディスクの SCSI ドライバが LBA をサポートしていない場合は、次のメッセージが出力されます。
no-bef-lba-access |
デフォルトブートディスクの BIOS および SCSI ドライバが LBA をサポートしていない場合は、Solaris 8 SOFTWARE 1 of 2 CD の対話式インストールプログラムを使って Solaris 8 オペレーティング環境のインストールやアップグレードを行う必要があります。
Solaris ソフトウェアは CD で配布されるため、システムに CD-ROM ドライブがあれば、CD を使用してインストールやアップグレードを行うことができます。
システムにローカルの CD-ROM ドライブがない場合や、複数のシステムにインストールする必要があるために各システムへインストールするたびにローカル CD-ROM ドライブに CD を挿入したくない場合は、リモートの Solaris 8 ソフトウェアイメージからインストールできるように、これらのシステムを設定できます。
ネットワークからインストールする場合は、どの Solaris インストール方法でも使用できます。ただし、フラッシュインストール機能やカスタム JumpStart インストールを使ってネットワークからインストールを行うと、大規模の企業におけるインストールプロセスの一元化と自動化が可能になります。
ネットワークから Solaris ソフトウェアをインストールする場合は、初期設定が必要です。ネットワークからインストールする場合の準備については、第 8 章「ネットワーク上で Solaris ソフトウェアをインストールする準備」を参照してください。