Solaris DHCP の管理

DHCP を使用するためのネットワークの準備

DHCP の使用に先立ってネットワークを設定する際には、まず情報を収集し、サーバーをどのように構成するかを決める必要があります。それには、次のことを行う必要があります。

ネットワークトポロジのマッピング

ネットワークの物理的な構造またはレイアウトを示すマップをまだ作成していない場合は、それを作成します。このマップには、ルーターやクライアントの場所と、ネットワークサービスを提供するサーバーの場所を明示してください。ネットワークトポロジを示すこのマップは、どのサーバーから DHCP サービスを提供し、どのような構成情報をクライアントに提供するかを決める上で必要です。

ネットワークの計画についての詳細は、 『Solaris システム管理 (第 3 巻)』 の「TCP/IP ネットワークの計画」を参照してください。

DHCP 構成プロセスは、サーバーのシステムファイルとネットワークファイルから、いくつかのネットワーク情報を検索することができます。システムファイルとネットマスクテーブルの更新では、これらのファイルについて説明しています。クライアントに他のサービス情報を提供したい場合もあり、その場合にはサーバーのデータベースを検索する必要があります。ネットワークトポロジを点検する際には、クライアントが認識する必要があるサーバーの IP アドレスを控えておいてください。次に、ネットワーク上にあるにもかかわらず、DHCP 構成プロセスが検出できないネットワークサービスの例を示します。

避けるべきネットワークトポロジ

DHCP は、複数の IP ネットワークが、複数のネットワークハードウェアインタフェースや複数の論理インタフェースを介して同じネットワークハードウェア媒体を共有するネットワーク環境では正しく動作しません。同じ物理 LAN で複数の IP ネットワークが動作していると、DHCP クライアントの要求はすべてのネットワークハードウェアインタフェースに送信されます。そのため、クライアントは、すべての IP ネットワークに同時に接続されているものとみなされます。

DHCP は、適切な IP アドレスをクライアントに割り当てられるように、クライアントのネットワークアドレスを特定できる必要があります。同じハードウェア媒体に複数のネットワークが存在していると、サーバーはクライアントのネットワークを特定できないため、IP アドレスを割り当てることができません。

DHCP はどのネットワーク上でも使用することができますが、複数のネットワーク上では使用できません。この条件がユーザーのニーズと合わない場合は、ネットワークを再構成する必要があります。再構成の方法としては、次のものが考えられます。

DHCP サーバーの数を決める

DHCP クライアントをサポートするために必要なサーバーの数は、データストアに何を使用するかによって異なります。次の表は、1 つの DHCP サーバーで DHCP/BOOTP クライアントをいくつまでサポートできるかをデータストア別に示したものです。

表 2–1 予想される最大クライアント数

データストア 

最大クライアント数 

テキストファイル 

10,000 

NIS+ 

40,000 

バイナリファイル 

100,000 

この最大数は一般的な指針であり、絶対的な数ではありません。DHCP サーバーのクライアントの能力は、クライアントが 1 秒間にいくつのトランザクションを処理する必要があるかに大きく依存します。一方、サーバーがサポートできるクライアントの数は、クライアントのリース期間と使用パターンで大きく変わります。たとえば、リースが 12 時間に設定され、ほとんどのユーザーが夜にシステムを停止し、朝の同じ時間にシステムを開始するとします。この場合、多数のクライアントが同時にリースを要求するので、サーバーは、毎朝ピークトランザクションを処理できなければなりません。したがってこのような環境では、DHCP サーバーは、リース期間がこれより長い環境や、ケーブルモデムのように常時接続されているデバイスで構成される環境に比べて、少ないクライアントしかサポートできません。

各データストアについては、データストアの選択 を参照してください。

システムファイルとネットマスクテーブルの更新

構成処理の間、DHCP マネージャまたは dhcpconfig ユーティリティは、サーバー上のさまざまなシステムファイルを走査し、サーバーの構成に使用できる情報を収集します。

DHCP マネージャや dhcpconfig を使ってサーバーの構成を行う前に、システムファイルの内容が最新の状態になっていることを確認してください。サーバーの構成を行なった後にエラーに気が付いた場合は、DHCP マネージャまたは dhtadm を使って、サーバー上のマクロを修正する必要があります。

表 2–2 は、DCHP サーバーの構成中に収集されるいくつかの情報と、情報の提供元を示します。サーバーで DHCP を構成する前に、これらの情報が適切に設定されていることを確認してください。サーバーの構成後にシステムファイルを変更する場合は、この変更を反映するためにサービスを再構成する必要があります。

表 2–2 DHCP の構成で使用される情報

情報 

提供元 

説明

時間帯 

システムの日時、時間帯の設定値 

日時と時間帯は Solaris のインストール時に初期設定される。日時を変更するには date コマンドを使用し、時間帯を変更するには、 /etc/TIMEZONE ファイルの TZ 変数を編集する。

DNS パラメータ 

/etc/resolv.conf

DHCP サーバーは、/etc/resolv.conf ファイルから DNSドメイン名や DNS サーバーアドレスなどの DNS パラメータを検索する。resolv.conf については、『Solaris ネーミングの設定と構成』の「DNS クライアントの設定」を参照。

NIS または NIS+ パラメータ 

システムのドメイン名、nsswitch.conf、NIS、 NIS+

DHCP サーバーは、domainname コマンドを使ってサーバーのドメイン名を取得し、nsswitch.conf ファイルを使ってドメインベースの情報をどこから検索するかを決める。サーバーが NIS または NIS+ クライアントの場合、DHCP サーバーは NIS または NIS+ サービスを参照し、NIS/NIS+ サーバーの IP アドレスを取得する

デフォルトルーター 

システムのルーティングテーブル、管理者による入力 

DHCP サーバーはネットワークルーティングテーブルを検索し、ローカルネットワークに接続されているクライアントのデフォルトルーターを見つける。同じネットワーク上にないクライアントについては、管理者にこの情報を入力するように要求する。 

サブネットマスク 

ネットワークインタフェース、netmasks テーブル

DHCP サーバーは、自身のネットワークインタフェースを参照して、ローカルクライアント用のネットマスクとブロードキャストアドレスを特定する。この要求がリレーエージェントからすでに転送されてきている場合には、リレーエージェントのネットワークにある netmasks テーブル内のサブネットマスクを参照する

ブロードキャストアドレス 

ネットワークインタフェース、netmasks テーブル

ローカルネットワークの場合には、DHCP サーバーは、ネットワークインタフェースからブロードキャストアドレスを取得する。リモートネットワークでは、サーバーは BOOTP リレーエージェントの IP アドレスとリモートネットワークのネットマスクを使用して、そのネットワーク用のブロードキャストアドレスを計算する