リンカーとライブラリ

大域オフセットテーブル (プロセッサ固有)

一般に位置に依存しないコードには絶対仮想アドレスは存在できません。大域オフセットテーブルには内部で使用するデータの絶対アドレスが存在しており、したがって、位置からの独立性とプログラムのテキストの共有性を低下させることなくアドレスが使用可能になります。プログラムは、位置に依存しないアドレス指定を使用して大域オフセットテーブルを参照し、絶対値を抜き出すことで位置に依存しない参照を、絶対位置に向け直します。

最初は、大域オフセットテーブルには再配置エントリで要求される情報が存在します (詳細は、「再配置」を参照)。システムが読み込み可能オブジェクトファイルのメモリーセグメントを作成した後、実行時リンカーが再配置エントリを処理します。これらの再配置エントリのいくつかは、R_SPARC_GLOB_DAT 型 (SPARC の場合) または R_386_GLOB_DAT 型 (IA の場合) であり、大域オフセットテーブルを参照します。

実行時リンカーは、関連付けられているシンボル値を判定し、絶対アドレスを計算し、適切なメモリーテーブルエントリにを正しい値を設定します。リンカーがオブジェクトファイルを作成するとき、絶対アドレスは認識されていませんが、実行時リンカーはすべてのメモリーセグメントのアドレスを認識しており、したがって、これらのメモリーセグメントに存在するシンボルの絶対アドレスを計算できます。

プログラムがシンボルの絶対アドレスへの直接アクセスを必要とする場合、このシンボルには大域オフセットテーブルエントリが存在します。実行可能ファイルと共有オブジェクトには別個の大域オフセットテーブルが存在するので、シンボルのアドレスはいくつかのテーブルに現れることがあります。実行時リンカーは、プロセスイメージのコードに制御を与える前に大域オフセットテーブルのすべての再配置を処理します。したがって、実行時に絶対アドレスが使用可能になります。

テーブルのエントリ 0 は、_DYNAMIC シンボルで参照される動的構造体のアドレスを保持するために予約されています。したがって、実行時リンカーなどのプログラムは、再配置エントリを処理していなくても自身の動的構造体を見つけることができます。このことは、実行時リンカーにとって特に重要です。なぜなら、実行時リンカーは他のプログラムに頼ることなく自身を初期化してメモリーイメージを再配置しなければならないからです。

システムは、異なるのプログラムの同じ共有オブジェクトに対して、異なるメモリーセグメントアドレスを与えることがあります。さらに、システムはプログラムを実行するごとに異なるライブラリアドレスを与えることさえあります。しかし、プロセスイメージがいったん作成されると、メモリーセグメントのアドレスは変更されません。プロセスが存在する限り、そのプロセスのメモリーセグメントは固定仮想されたアドレスに存在します。

大域オフセットテーブルの形式と解釈は、プロセッサに固有です。SPARC プロセッサと IA プロセッサの場合、_GLOBAL_OFFSET_TABLE_ シンボルは、テーブルをアクセスするために使用できます。64 ビットコードの場合、シンボルタイプは Elf64_Addr の配列です。


extern Elf32_Addr _GLOBAL_OFFSET_TABLE_[];

シンボル _GLOBAL_OFFSET_TABLE_ は、.got セクションの中央に存在でき、その場合は、負の添字と負でない添字の両方がアドレスの配列になることができます。