旧リリースの Solaris がインストールされているシステムを、Solaris 8 10/01 にアップグレードする場合の注意事項とバグについて説明します。
IA (Intel Architechure) ベースのシステムを Solaris 8 10/01 オペレーティング環境にアップグレードする場合は、インストールを開始する前に、「DiskSuite でデータが失われる可能性がある (バグ ID: 4121281)」 の説明を必ずお読みください。
アップグレードオプションによって Solaris 8 10/01 をインストールする場合、Solaris 2.5.1 以降のシステムからのアップグレードをサポートします。それより前のリリースからのアップグレードは保証されません。
x86BOOT パーティションに関する制限事項のために、Solaris 8 10/01 INSTALLATION (Multilingual) CD の Solaris Web Start 3.0 を使用して、Solaris 8 より前の IA システムを Solaris 8 10/01 へアップグレードすることはできません。Solaris 8 より前の IA システムでは、Solaris 8 10/01 SOFTWARE 1 of 2 CD の対話式インストールまたは JumpStart インストールを使用して、Solaris 8 10/01 へのアップグレードを行なってください。
Solaris 8 オペレーティング環境には、Solaris 7 の Priority Paging 機能を包含する、ファイルシステムキャッシュ用の新しいアーキテクチャが導入されています。Solaris 8 オペレーティング環境では、システム変数 priority_paging を設定しないでください。Solaris 8 オペレーティング環境にアップグレードする時に、システム変数 priority_paging を /etc/system から削除してください。
新しいキャッシュアーキテクチャでは、ファイルシステムの動作で発生する仮想メモリーシステムへの負荷の大部分が削減されます。これによって、メモリーページング統計のダイナミクスが変わり、システムメモリーの監視機能がより簡素化されます。ただし、従来とは大幅に異なる統計値が出される場合もあることを、メモリー動作を解析する時またはパフォーマンス監視のしきい値を設定する時には留意する必要があります。主な相違点は次のとおりです。
ページ要求の量が多くなります。負荷が大きいファイルシステム動作中には、通常の処理とみなす必要があります。
空きメモリーの量が多くなります。これは、ファイルシステムキャッシュの大規模コンポーネントも空きメモリー量として計算されるようになったためです。
システム全体で利用可能なメモリーが不足しない限り、走査率はほぼゼロになります。通常のファイルシステム入出力中に空きリストを置き換えることを目的として走査を行うことはなくなりました。
Solaris 8 より前のリリースの IA システムの任意のディスク上に x86BOOT fdisk パーティションが存在する場合、対話式インストールまたはカスタム JumpStart インストールによる Solaris 8 へのアップグレード時にファイルシステムの再配置が発生すると、バックアップファイルの復元に失敗することがあります。
回避方法 : format(1M) コマンドで x86BOOT fdisk パーティションを削除してから、アップグレードを行なってください。
「ロケール選択機構の変更」で説明したように、Solaris 8 から、インストールするロケールを選択する機構が変更されました。このため、対話式インストールを使用して Solaris 8 より前のシステムを Solaris 8 10/01 へアップグレードすると、既存システムのインストール時に明示的にインストールしなかったロケールが「地域の選択」画面で自動的に選択されます。これは、既存システムのインストール時に明示的に指定していないロケールのソフトウェアが、暗黙のうちにインストールされていたためです。
既存システムのインストール時にインストールするロケールとして明示的に指定しなかったロケールが含まれている地域を、「地域の選択」画面で選択解除することができます。余分なロケールをそのまま選択解除せずにアップグレードを行なっても問題はありません。アップグレードしたシステムには、アップグレード前と同じレベルのロケール環境がサポートされます。ただし、既存のシステムに明示的にインストールしたロケールは、「地域の選択」画面で削除することはできません。
Solaris 2.5.1 に同梱されていた「日本語 Solaris 2.5.1 PC 漢字コード開発キット」がインストールされているシステムをアップグレードする場合、それをサポートするパッケージ (SUNWjpr、SUNWjpu、SUNWjpxw、SUNWjpdt) は自動的に削除されます。ja_JP.PCK ロケール環境をインストールするには、「言語の選択」画面で「Japanese PC Kanji (ja_JP.PCK)」を追加選択してください。
Solaris 2.6 から、cs00 は「コアシステムサポート」ソフトウェアグループには含まれなくなりました。「コアシステムサポート」でインストールされた Solaris 2.5.1 システムをアップグレードすると、システム上から cs00 をサポートするシステムファイルが削除されます。
「コアシステムサポート」で cs00 を利用する場合は、「エンドユーザーシステムサポート」以上のソフトウェアグループを選択するか、インストール後に pkgadd コマンドにより次のパッケージをインストールしてください。
SUNWjc0r : Japanese Kana-Kanji Conversion Server cs00 Root Files
SUNWjc0u : Japanese Kana-Kanji Conversion Server cs00 User Files
なお、かな漢字入力機能を持たない漢字表示可能な端末や端末エミュレータ上で日本語を入力するためのフロントエンドプロセッサ mle を利用する際にも、cs00 が必要になります。
/export ディレクトリの空き容量がゼロに近い状態で、システムを Solaris 8 10/01 オペレーティング環境にアップグレードしようとすると、/export ディレクトリ容量の必要条件の計算に誤りが発生するため、アップグレードに失敗します。この問題は、ディスクレスクライアントがインストールされているか、/export ディレクトリに他社製のソフトウェアがインストールされている場合によく発生します。次のエラーメッセージが表示されます。
WARNING: Insufficient space for the upgrade. |
回避方法 : アップグレードの前に、次のいずれかを実行してください。
アップグレードが完了するまで、一時的に /export ディレクトリの名前を変更する
アップグレードが完了するまで、/etc/vfstab ファイル内の /export の行を一時的にコメントアウトする
/export が別のファイルシステムである場合は、アップグレードを実行する前に /export のマウントを解除する
現在のシステムが、AdminSuiteTM 2.3 のホストマネージャを使用してインストールしたディスクレスクライアントをサポートしている場合は、Solaris 8 10/01 オペレーティングシステムをインストールする前に、すべてのディスクレスクライアントを削除する必要があります。具体的な手順については、『Solaris 8 のシステム管理 (追補)』 の「ディスクレスクライアント環境をセットアップするには」の節を参照してください。
ディスクレスクライアントを削除せずに Solaris 8 10/01 をインストールしようとすると、次のようなエラーメッセージが出力されます。
The Solaris Version (Solaris 7) on slice <xxxxxxxx> cannot be upgraded. There is an unknown problem with the software configuration installed on this disk. スライス <xxxxxxxx> 上の Solaris のバージョン (Solaris 7) が アップグレードできません。ディスク上にインストールされたソフトウェア構成に 未知の問題があります。 |
Solaris 8 (Solaris WBEM Services 2.0)、Solaris 8 6/00 (WBEM Services 2.1)、 Solaris 8 10/00 (WBEM Services 2.2)、Solaris 8 1/01 オペレーティング環境 (Solaris WBEM Services 2.3) のいずれかのオペレーティング環境から Solaris 8 10/01 オペレーティング環境 (Solaris WBEM Services 2.4) にアップグレードする場合は、Managed Object Format (MOF) 形式の重要なデータは、Solaris WBEM Services 2.4 で使用されている新しい Reliable Log レポジトリ形式に変換してください。この変換を行わないと、データが失われてしまいます。
回避方法 : アップグレードの前に JavaSpacesTM ソフトウェアを保存して、アップグレードの後に wbemconfig convert コマンドを実行して WBEM データを変換してください。
Solaris 8 10/01 オペレーティング環境にアップグレードする前に、次の手順に従って JavaSpaces ソフトウェアを保存してください。
スーパーユーザーになります。
JavaSpaces を保存します。
# cp /usr/sadm/lib/wbem/outrigger.jar /usr/sadm/lib/wbem/outrigger.jar.tmp |
マシンにインストールされている JDKTM ソフトウェアのバージョンを確認して記録します。例:
# /usr/bin/java -version java version "1.2.1" Solaris VM (build Solaris_JDK_1.2.1_04c, native threads, sunwjit) |
WBEM データの変換時に使用する JDK ソフトウェアのバージョンは、元の JavaSpaces データストアが生成されたときに実行されていたバージョンと同じでなければなりません。
Solaris 8 10/01 へのアップグレード後は、WBEM データを変換する必要があります。具体的な手順については、http://docs.sun.com に掲載されている「Solaris 8 7/01 Update Collection - Japanese」中の、『Solaris 8 のインストール (追補)』の「WBEM のデータ消失防止のための WBEM レポジトリのアップグレード」をを参照してください。
DiskSuiteTM metadb 複製には、DiskSuite 構成データの一部にドライバ名が含まれています。Solaris オペレーティング環境 2.5.1 または 2.6 を実行する IA ベースのシステムでは、SCSI ドライバ名は cmdk です。cmdk ドライバは、Solaris 8 オペレーティング環境では sd ドライバに置換されています。
回避方法 : Solaris 8 オペレーティング環境へのアップグレード中にデータを損失しないようにするには、DiskSuite が動作している IA システムのアップグレードを開始する前に、メタデバイス構成をテキストファイルに保存し、metadb 複製を削除してください。IA システムのアップグレード後に、DiskSuite のコマンド行インタフェースを使用してメタデバイス構成を復元してください。
『Solstice DiskSuite 4.2 ご使用にあたって』には、metadb 構成の保存、metadb 複製の削除、IA システムの Solaris 8 オペレーティング環境へのアップグレード、DiskSuite のバージョン 4.2 へのアップグレード、メタデバイス構成の復元について、それぞれの手順が記載されています。Solairs 8 オペレーティング環境には、これらの手順を自動化する Bourne シェルスクリプトが含まれています。
この問題は、Solaris 2.5.1 と Solaris 2.5.1 アンバンドル CDE オペレーティング環境を実行しているシステムのうち、アンバンドル CDE の場所を /usr/dt 以外のディレクトリにインストールしたシステムに影響します。これらのシステムでは、インストール先の CDE を指すシンボリックリンクが /usr/dt に作成されています。
Solaris 8 オペレーティング環境にアップグレードすると、CDE が /usr/dt に再インストールされ、アップグレード前にインストールしていた CDE へのシンボリックリンクは削除されます。アップグレード前にインストールしていた CDE 自体は、削除されないで残ります。
アップグレードで、ファイルシステムの再配置に関連する処理が行われる場合、アップグレードに失敗します。ファイルシステム再配置で、新しい CDE に必要な /usr/dt の容量が考慮されないためです。このアップグレードの失敗は、アップグレードの完了時までわかりません。アップグレードに失敗すると、容量が足りないことを示すメッセージがアップグレードログ中に出力されます。
回避方法 : インストールしたアンバンドル CDE をアンインストールしてから、Solaris 8 オペレーティング環境へのアップグレードを開始してください。 アンインストールは、Solaris 2.5.1 CDE の CD から install-cde スクリプトを使用して行うことができます。CDE を削除するためには、必ず -uninstall フラグを付けてこのスクリプトを実行する必要があります。
Solaris 7 オペレーティング環境を実行しているシステムに、Solaris Easy Access Server (SEAS) 3.0 CD-ROM から WBEM 1.0 をインストールしている場合は、Solaris 8 オペレーティング環境にアップグレードする前に WBEM 1.0 のパッケージを削除してください。WBEM 1.0 がインストールされたままアップグレードすると、Solaris WBEM Services 2.0 が起動しません。また、CIM Object Manager の起動にも失敗します。この場合、次のエラーメッセージが表示されます。
File not found: /opt/sadm/lib/wbem/cimom.jar |
回避方法 : Solaris 8 オペレーティング環境にアップグレードする前に、WBEM 1.0 パッケージを手作業で削除してください。削除には、pkgrm コマンドを使用してください。
pkginfo コマンドを次のように実行して、WBEM 1.0 パッケージがインストールされているかどうかを確認します。
% pkginfo | grep WBEM |
スーパーユーザーになります。
コマンドを次のように実行して、WBEM 1.0 のパッケージをすべて削除します。
# pkgrm SUNWwbapi # pkgrm SUNWwbcor # pkgrm SUNWwbdev # pkgrm SUNWwbdoc # pkgrm SUNWwbm |
各ロケールのメッセージおよびヘルプに関するパッケージが入っているときは、それらのパッケージも削除します。以下は日本語版の例です。
# pkgrm SUNWjewbi # pkgrm SUNWjewbs # pkgrm SUNWjwbd |
SUNWeeudt パッケージのインストールが部分的に失敗したことを示す次のようなメッセージが、アップグレードログに出力されます。
Doing pkgadd of SUNWeeudt to /. ERROR: attribute verification of </a/usr/dt/appconfig/types/ru_RU.KOI8-R/datatypes.dt> failed pathname does not exist ... Installation of <SUNWeeudt> partially failed. pkgadd return code = 2 |
回避方法 : アップグレード完了後に、次の手順を実行してください。
次のように入力して、SUNWeeudt パッケージを削除します。
# pkgrm SUNWeeudt |
Solaris 8 10/01 SOFTWARE 1 of 2 CD またはインストールサーバーを使用して、 SUNWeeudt パッケージをインストールします。
例:Solairs 8 10/01 SOFTWARE 1 of 2 CD を使用した場合
# cd /cdrom/sol_8_u6_ia/s2/Solaris_8/Product # pkgadd -d . SUNWeeudt |
Solaris 8 へのアップグレードを行うと、アップグレード時に設定したデフォルトロケールがシステムのデフォルトロケールに正しく設定されない場合があります。
CD を使用した対話式アップグレードの場合、Solaris 8 SOFTWARE 1 of 2 CD の インストールの終了後、自動ブートしたシステムが英語環境で起動し、SOFTWARE 2 of 2 CD および LANGUAGES CD のインストール画面が英語で表示されることがあります。
回避方法 : アップグレード終了後、システムのデフォルトロケールを /etc/default/init ファイルの LANG 環境変数に設定してください。
Solaris 2.6 5/98 のシステムをファイルシステムを再配置せずに Solaris 8 にアップグレードした場合、システムのリブート時に次のようなメッセージが表示されます。
WARNING: mod_load: cannot load module 'pdwa' can't load module: No such file or directory |
回避方法 : アップグレード終了後、システムをリブートする前またはリブートした後に以下のようにファイルを削除し、もう一度システムをブートしてください。エラーメッセージが表示されなくなります。
システムをリブートする前:
# rm /a/etc/rcS.d/S31pdwa |
システムをリブートした後:
# rm /etc/rcS.d/S31pdwa |
Solaris 8 (または 6/00、10/00、1/01、4/01) DOCUMENTATION CD (英語 + ヨーロッパ言語版) または Solaris 8 (または 6/00、10/00、1/01、4/01) DOCUMENTATION CD (アジア言語版) がインストールされている Solaris 8 (または 6/00、10/00、1/01、4/01) のシステムを Solaris Web Start 3.0 を使用して Solaris 8 10/01 にアップグレードする際に、DOCUMENTATION CD を Solaris 8 10/01 DOCUMENTATION CD にアップグレードすると、AnswerBook2 Collection に同じコレクションが複数表示されます。
回避方法 1: 以下のように ab2admin コマンドを使用して、複数表示されているコレクションを削除してから、もう一度コレクションを追加してください。
例:
# /usr/lib/ab2/bin/ab2admin -o add_admin -u admin # /usr/lib/ab2/bin/ab2admin -o del_coll -t "Solaris 8 Release Documents Collection" # /usr/lib/ab2/bin/ab2admin -o del_coll -t "Solaris 8 Release Documents Collection - ¥ Japanese" # /usr/lib/ab2/bin/ab2admin -o del_coll -t "Solaris 8 6/00 Release Documents Collection" # /usr/lib/ab2/bin/ab2admin -o del_coll -t "Solaris 8 6/00 Release Documents Collection - ¥ Japanese" # /usr/lib/ab2/bin/ab2admin -o del_coll -t "Solaris 8 Installation Collection - Japanese" # /usr/lib/ab2/bin/ab2admin -o del_coll -t "Solaris 8 Installation Collection - Japanese" # /usr/lib/ab2/bin/ab2admin -o del_coll -t "Solaris 8 Software Developer Collection - ¥ Japanese" # /usr/lib/ab2/bin/ab2admin -o del_coll -t "Solaris 8 Software Developer Collection - ¥ Japanese" # /usr/lib/ab2/bin/ab2admin -o del_coll -t "Solaris 8 System Administrator Collection - ¥ Japanese" # /usr/lib/ab2/bin/ab2admin -o del_coll -t "Solaris 8 System Administrator Collection - ¥ Japanese" # /usr/lib/ab2/bin/ab2admin -o restart # /usr/lib/ab2/bin/ab2admin -o scan |
回避方法 2: AnswerBook2 の「オプション」メニューから「個人用ライブラリの変更」を選択し、複数表示されているコレクションのうちアップグレード前にインストールされていたコレクションを選択解除して、そのコレクションを非表示にしてください。
Solaris 8 へのアップグレードにおいて、Solaris 8 LANGUAGES CD の日本語ロケールのパッケージをインストールすると、ログファイル Solaris_8_Japanese_Localization_install.B* 中に次のような警告メッセージが出力される場合があります。
WARNING: /usr/dt/appconfig/appmanager/ja/Desktop_Controls <no longer a symbolic link>
回避方法 : 警告が出力されているファイルは正しくインストールされており問題はありませんので、警告メッセージは無視してください。