Solaris 2.x への移行

第 11 章 プリンタ、端末、モデムの管理

この章では、印刷の管理方法と、Solaris 2.6 環境における印刷コマンドの相違点について説明します。また、Admintool またはサービスアクセス機能 (SAF) によるシリアルポートの管理 (これは端末とモデムの接続を可能にする) についても説明します。

印刷

この節では、Solaris 2.6 をインストールした後でプリンタを設定し、管理する方法について説明します。また、この章では、SunOS 4.x 環境と Solaris 2.6 環境でのプリンタコマンドの相違点についても説明します。

印刷の変更点の要約

SunOS 5.6 LP 印刷サービスは、lpd デーモンと lprlpqlprmlpc の各コマンドで提供された SunOS 4.x 印刷機能に代わるものです。Admintool によって、グラフィカルユーザインタフェースを通してプリンタを設定し管理することができます。また、LP 印刷サービスのコマンド行インタフェースを使用して、SunOS 5.6 プリンタを管理できます。Admintool の情報と LP 印刷サービスのコマンド行インタフェースの詳細については、Solaris のシステム管理を参照してください。

SunOS 4.x ソフトウェアの /etc/printcap ファイルにより提供されたサービスは、Solaris 2.6 環境では terminfo データベースと /etc/lp ディレクトリ内のファイルによって処理されます。

印刷コマンドと互換パッケージ

システムが SunOS/BSD ソース互換パッケージを実行している場合、多くの SunOS 4.x 印刷コマンドを使用することができます。互換モードは SunOS 4.x コマンド名を、Solaris 2.6 LP 印刷サービスへのインタフェースとして使用し、実際に SunOS 4.x システムが行うようにそれらを実行するわけではありません。ユーザが SunOS 4.x コマンドを入力して印刷を設定するか、Solaris 2.6 システムからファイルを出力すると、SunOS 5.6 LP 印刷サービススケジューラによって処理されるメッセージファイルが作成されます。

Solaris 2.6 での印刷には、SunOS 4.x システムでは使用できない機能が追加されています。これらの機能は、書式、印字ホイール、インタフェースプログラムの制御、ネットワーク印刷サービスの設定などを可能にします。

プリンタコマンドの使用

前の節で説明したとおり、SunOS/BSD ソース互換パッケージがあれば、SunOS 4.x 印刷コマンドを継続して使用することができます。表 11-1 は、基本的なユーザ印刷コマンドの比較を示します。

表 11-1 ユーザ印刷コマンドの比較

SunOS 4.x 

SunOS 5.6 

機能 

lpr filename

 

lp filename

デフォルトプリンタにファイルを印刷する 

lpr -P printer filename

lp -d printer file

特定のプリンタにファイルを印刷する 

lpq

lpstat -o printer

デフォルトプリンタでの印刷を待っているファイルの一覧を見る 

/etc/printcap を確認

lpstat -d

どれがデフォルトプリンタかを判別する 

/etc/printcap確認

 

lpstat -a

どのプリンタを使用できるか判別する 

lprm jobnumber

 

cancel jobid

 

デフォルトプリンタでの印刷ジョブを取り消す 

SunOS 5.6 プリンタ管理コマンドの使用

この節では、SunOS 4.x と Solaris 2.6 との間でのプリンタの設定と管理の相違について説明します。実際のシステムサービスはすべて、Solaris 2.6 環境でしか利用できません。これに対応する SunOS 4.x サービスは、互換モードでも使用できません。

代わりに、System V プリンタ管理コマンド、lpadmin(1M)lpsystem(1M) を使用しなければなりません。terminfo データベースと /etc/lp ディレクトリ内の構成ファイルを使用してください。詳細はSolaris のシステム管理を参照してください。

表 11-2 は印刷設定のためのコマンドの比較を示します。

表 11-2 プリンタ管理、設定、ファイルの比較

SunOS 4.x 

SunOS 5.6 

機能 

lpc

lpadmin

ラインプリンタ機能を制御する 

/etc/printcap

terminfo データベースと /etc/lp/printers/printername/*

プリンタ機能を定義するファイル 

/var/spool

 

/var/spool/lp

印刷システムがスプールとロックファイルを格納するディレクトリ 

なし 

lpmove

プリンタ間で印刷待ち行列を転送する 

lpc down

reject

プリンタへの待ち行列の実行を停止する 

troff による印刷

SunOS 4.x では、troff ファイルをデフォルトプリンタに送信するために次のコマンドが必要です。

% troff filename

Solaris 2.6 環境では、パイプ (|) を使用して lp コマンドにファイルを出力する必要があります。表 11-3 は SunOS 5.6 の troff コマンドを示します。

表 11-3 SunOS 5.6 の troff コマンド

SunOS 5.6 コマンド 

機能 

troff file | /usr/lib/lp/postscript/dpost|lp

troff ジョブをサポートするデフォルトプリンタに送信する

troff file| /usr/lib/lp/postscript/dpost|lp -d printer

特定のプリンタに送信する 

troff file | lp-Ttroff

troff ジョブをサポートする任意のプリンタに送信する

シリアルポート管理

この節では、Admintool またはサービスアクセス機能 (SAF) を使用して端末やモデムの接続ができるシリアルポートの管理について説明します。

Solaris のシステム管理 では、シリアルデバイスについての Solaris 2.6 の設定とインストール手順について詳しく説明しています。

端末とモデムの管理

Admintool を使うと、端末とモデム用のシリアルポートソフトウェアを簡単に設定し、変更することができます。

Admintool は次の機能を備えています。

このツールは、サービスアクセス機能の pmadm コマンドの機能を提供するものです。

サービスアクセス機能 (SAF)

SAF を使用すると、すべてのサービスへのアクセスを、ネットワーク上にあるか、ローカルシステムだけに接続されたものかにかかわりなく、同じ方法で管理できます。SAF はサービスアクセス制御 (SAC) コマンドを使用してサービスを設定し、管理します。次のようなシステムサービスに同じ方法でアクセスします。

以前の SunOS バージョンでは、デバイスを制御する方式は、アクセスを与えるデバイスとそのデバイスの位置の両方に依存していました。ユーザアクセスの管理には多くのデバイスファイルを編集する必要がありました。

SAF はデバイスに依存するシステム管理をなくし、次の機能を含む一連のサービスを管理する共通のインタフェースを提供します。

SAF の共通インタフェースは、主に 2 つのコマンド、 sacadmpmadm を使用します。sacadm コマンドは ポートモニタ デーモンを制御します。pmadm コマンドは、ポートモニタに関連付けられたサービスを制御します。

ポートモニタの制御

SAF の共通インタフェースは、ポートモニタと呼ばれる制御サービスを支援します。「ポートモニタ」は、ログインする要求や、プリンタまたはファイルにアクセスする要求を絶えず監視するプログラムです。

ポートモニタは、要求を検出すると、オペレーティングシステムとサービスを要求するデバイスとの間で通信を設定するために必要なパラメータをすべて設定します。その後で、ポートモニタは必要なサービスを提供する他のプロセス (例: login プログラム) に制御を渡します。

Solaris 2.6 動作環境に組み込まれているポートモニタは、ttymonlisten の 2 種類です。listen ポートモニタはネットワークサービスへのアクセスを制御し、リモート印刷およびファイルシステム要求を処理します。ttymon ポートモニタは、モデムと英数字端末が必要とするログインサービスへのアクセスを提供します。

SAF 機能と関連プログラム

SAF の共通インタフェースは、主に 2 つのコマンド、sacadmpmadm で構成されます。sacadm コマンドはポートモニタを制御します。pmadm コマンドは、ポートモニタに関連付けられているサービスを制御します。

sacadm コマンドは、ポートモニタの追加と削除を行えるようにします。また、sacadm コマンドを使ってポートモニタの状態をリスト表示し、ポートモニタをカスタマイズするための構成スクリプトを管理することもできます。

pmadm コマンドを使用すると、サービスを追加または削除したり、サービスを使用可能または使用不可の状態に設定できます。たとえば、1 つの pmadm コマンドですべてのリモートログインを使用不可にできます。また、サービスごとの構成スクリプトをインストールまたは置換したり、サービスに関する情報を表示することもできます。

sacadm コマンドと pmadm コマンドを使用するだけで、システム管理者はリソースへのアクセスを完全に制御できます。ただし、この 2 つのコマンドは、統合管理環境を可能にするプログラムとプロセスの SAF 一式へのインタフェースにすぎません。機能と関連プログラムは、次のとおりです。

サービスアクセス制御 sac は、SAF 群の中で最も重要なプログラムです。マシンが最初に起動されるときに、init プログラムによって起動されます。さらに、sac がその管理ファイルに登録されているすべてのポートモニタを起動します。

SAF についての一般的な情報、sacadm コマンドと pmadm コマンドの使用上の相違点についての詳細は、Solaris のシステム管理を参照してください。