Solaris オペレーティング環境は、信頼性の高い安定したネットワーク環境を提供します。今回のリリースでは、ネットワーク管理とシステム管理のための新しい機能を用意して、Solaris オペレーティング環境の管理ツールを拡張しています。
今回のリリースでサポートされる NTP は、時刻の正確さと分散処理環境におけるネットワークの時刻の同期を実現します。従来、Solaris のユーザーは一般に公開されていた NTP を使用していました。このリリースの NTP ではさらに時刻の精度が高くなっています。
SunSoft は、拡張可能な新しいエージェントテクノロジであるマスター/サブエージェントテクノロジに基づく Solstice Enterprise Agents (SEA) を提供します。SEA は、マスターエージェントとサブエージェントから構成されます。マスターエージェントは SNMP や DMI の要求を受け取ると、それぞれのサブエージェントから必要な値を取得して応答します。サブエージェントは、特定のコンポーネントやアプリケーションに対応した MIB または MIF などの情報ベースを管理します。また、SNMP ベースの従来のエージェントを SEA に統合して使用することもできます。
SEA は、SNMP または DMI のカスタムサブエージェントを開発するコンポーネント開発者、システムおよびネットワークの管理者を対象にしています。カスタムサブエージェントを作成すると、異なるコンポーネント、サブシステム、およびアプリケーションを 1 つの装置に組み込んで SNMP 管理コンソールから管理することができます。
動的ホスト構成プロトコル (DHCP) を使うと、各ホストは管理者が DHCP サーバー上にあらかじめ設定した IP アドレスや他のシステム構成パラメタを取得できるようになります。また、この IP アドレスが使われなくなったり一定の時間が経過したりすると、 ホストから IP アドレスを返還させることができます。これまで管理者が行なってきた個々の IP アドレスの割り当て作業や変更作業は、DHCP を導入することで軽減されます。Solaris は、DHCP サーバーと DHCP クライアントの両方をサポートします。
詳細については、『TCP/IP とデータ通信』を参照してください。
クライアントの障害回避機能によって、クライアントは必要に応じて別のサーバーからファイルシステムをマウントできるので、可用性の高い読み取り専用ファイルシステムを提供できます。障害回避機能はクライアントにとっては透過的に動作するので、複製が用意されている限りどれかのサーバーに障害が発生した場合でも作業が中断されずに済みます。
NFS クライアントの障害回避機能の詳細については、『NFS の管理』を参照してください。
以前の Solaris オペレーティング環境では、ネットワーク上のそれぞれのネットワーク番号に対して 1 つのサブネットマスクしか使えませんでした。サブネットマスクによって、IP ネットワーク番号のどのビットがサブネットを表し、どのビットがホストを表すかが決定されます。可変長サブネットマスク (VLSM) を使うと、大きなネットワークで従来のサブネットマスクより効率的に IP アドレスを使用できるようになります。VLSM では、1 つのネットワーク番号に対して複数のサブネットマスクが使えるので、各サブネットのホスト数に合わせてビットマスクを調節できるようになります。IP パケットの経路を指定するときに、Solaris は自動的にその IP アドレスに対応する最も長いサブネットマスクを適用します。
たとえば、以前のリリースで管理者は 192.168.1.0 というネットワークを 8 個のサブネットに分割するときに 255.255.255.224 というサブネットマスクを使用しました。VLSM を使うと、このネットワークは次のように分割することができます。
サブネットマスク 255.255.255.192 による 2 個のサブネット
サブネットマスク 255.255.255.224 による 4 個のサブネット
また、VLSM を使うとネットワーク番号をまとめて新しいネットワークを構成することができるので、ネットワークルーターが管理するルーティングテーブルのサイズを大幅に節約することができます。以上の 2 つの技術によって、RFC1519 で定義される Classless Inter-Domain Routing (CIDR) の実装が可能になります。
実際にネットワークで VLSM を実装するには、OSPF、BGP-4、RIPv2 などの CIDR に対応した経路制御プロトコルを使用する必要があります。
詳細については、『TCP/IP とデータ通信』を参照してください。
Solaris オペレーティング環境は、4.4 BSD によって実装された、事実上の標準である経路制御ソケットインタフェースに準拠しています。このインタフェースによって、経路制御プロトコルの実装部分とカーネルとの間でサブネットマスク情報を共有することができます。また、CIDR 対応の経路制御プロトコルを実装する場合にも、このインタフェースを使用することができます。
Solaris にこれらのプロトコルを実装する経路制御デーモンは付属しませんが、TCP/IP の管理者は Merit GateD Consortium (http://www.gated.org/) で、Gated についての情報を参照することをお勧めします。Gated は、ここで紹介した経路制御プロトコルやその他の経路制御プロトコルを実装したり経路制御ソケットインタフェースを使用したりするプログラムです。
プロセッサセットを使うと、複数のプロセッサをグループにして 1 つまたは複数のアプリケーション専用に割り当てることができます。システム管理者は /usr/sbin/psrset コマンドを使って、プロセスの生成、管理、およびプロセッサセットへの割り当てを制御できます。
psrset(1M) のマニュアルページを参照してください。
autofs は、必要に応じて自動的にファイルシステムをマウントし、必要がなくなるとマウントを解除するファイルシステムです。この自動マウントデーモンは、完全にマルチスレッド化されました。これにより、複数のマウント要求を同時に処理し、以前より信頼性のあるサービスを提供できます。
autofs サービスで、間接的な autofs のマップを表示できるようになりました。autofs マウントポイントの下にあるすべてのマウント可能なエントリは、実際にマウントすることなく表示できます。デフォルトでは、/home と /net の autofs マウントポイントは表示できませんが、他のすべての間接的なマウントポイントは表示できます。マウントポイントの表示/非表示は、ホストレベルでは automount コマンドで、ネームスペースレベルでは autofs マップで管理することができます。
このほかにも、階層的になっている、要求に応じて行われるファイルシステムのマウントが、以前より効率的に行えるようになっています。前回のリリースまでは、ファイルシステムが階層的になっていると、1 つのファイルシステムだけを参照してもファイルシステム全体が自動マウントされてしまいました。今回のリリースでは、目的のファイルシステムを参照すると、そのファイルシステムだけが動的にマウントされて、階層構造の残りのファイルシステムはマウントされません。
詳細については、『NFS の管理』を参照してください。
NIS+ の backup コマンドおよび restore コマンドを使うと、NIS+ ネームスペースを高速で効率的にバックアップしたり復元したりできます。
詳細については、『Solaris ネーミングの管理』を参照してください。
NIS+ 管理者は、ネームサービスを必要とするクライアントに対して NIS+ サーバーの検索順序を指定することができます。また、クライアントごとに優先サーバーを指定することでサーバーの使用率を分散させることができます。優先サーバーから目的の情報を取り出せなかった場合に備えて、他のサーバーを検索する順序をクライアントごとに設定できます。この機能は、特に広域ネットワーク (WAN) にまたがって NIS+ ドメインが存在する場合に便利です。NIS+ 管理者は、クライアントがまず WAN リンクの自分側にあるサーバーからネームサービスを取得するように指定して、WAN リンク上の通信トラフィックを抑えることができます。また、優先サーバーが利用できないときにクライアントのとるべき動作も指定できます。
詳細については、『Solaris ネーミングの管理』を参照してください。
Solaris オペレーティング環境自体、NIS サーバーをサポートします。以前のリリースでは、NIS+ サーバーによるエミュレーションモードまたは別製品の NSkit で NIS サーバーをサポートしていました。NIS サーバーを本体に含むことで、SunOS 4.x から Solaris 2.6 に移行しやすくなっています。
CFS ブートによって AutoClient システムは、ローカルの CacheFS ディスクキャッシュを利用し、少ないネットワークトラフィックでより高速にブートできるようになります。最初のシステムブート時にキャッシュに保存し、次回からは直接キャッシュからブートします。
詳細については、『Solaris のシステム管理』を参照してください。
以前のリリースでは、パッチのインストールや削除に使うツールと該当するマニュアルは各パッチの一部として出荷されていました。今回のリリースからこれらのツールは Solaris ソフトウェアに含まれるので、次の利点があります。
ユーザーのシステムスペースを有効に使用できる。ツールは、パッチごとにではなく システムに 1 度だけ提供される
以前より簡単に複数のパッチを扱うことができる
Solaris 2.x システムのパッチを追加したり削除したりできる patchadd コマンドと patchrm コマンドが用意されました。これらのコマンドを使って、Solaris 1.x システムのパッチを管理することはできません。
システム、クライアント、サービス、または ネットワークのインストール用イメージコピーに 1 つまたは複数のパッチを追加できます。
パッチをローカルのシステムに追加するには、次のように入力します。
# patchadd /var/spool/patch/104946-02 |
クライアントにパッチを追加するには、サーバー上のクライアントのルートディレクトリを指定します。ただし、パッチに root と usr の両方のパッケージが含まれる場合は、patchadd コマンドを 2 回実行する必要があります。root パッケージには -R オプションを、usr パッケージには -S オプションを付けて実行し、パッチを適用します。したがってサービス領域にしなければなりません。サービス領域とはどのリリースの Solaris でも、クライアントにとって通常は読み取り専用でサーバー上にマウントされている usr ファイルシステムを指します。
通常、クライアントにパッチを追加するには次のようにサーバー上のクライアントのルートディレクトリを指定します。
server# patchadd -R /export/root/client1 /var/spool/patch/104946-02 |
server# patchadd -S Solaris_2.3 /var/spool/patch/104946-02 |
詳細については、patchadd(1M) のマニュアルページと『Solaris のシステム管理』を参照してください。
Isalist は、SPARC システムのユーティリティセットです。Isalist によって、ユーザーは自分のマシンがサポートする命令セットを知ることができるほか、自分のマシンに最も適した命令セットが何であるかを判断できます。このユーティリティセットに含まれるコマンドは、次のとおりです。
isalist コマンド。サポートされる命令セットを一覧で表示する
optisa コマンド。この一覧から最も適した命令セットを表示する
実用的なユーザーインタフェース。sysinfo システムコールに相当する
現在、さまざまなバリエーションの SPARC プロセッサが存在します。これらのバリエーションのいくつかは、他の命令セットから区別して扱われます。あるバリエーション用にコンパイルされたアプリケーションバイナリは、異なるバリエーションで実行できないか、あるいは実行できても性能の低下を伴うことがあります。Isalist ユーティリティが提供する標準のインタフェースを使うと、ユーザーは適切なアプリケーションバイナリを選択して最高の性能を引き出すことができます。たとえば、システム管理者はラッパースクリプトを記述し、isalist と optisa の出力を利用してアプリケーションに適したバイナリを選択できます。