この章では、Solaris 2.6 オペレーティング環境の新機能について、日本語機能を含めて詳細に紹介します。第 2 章「新規機能一覧」に、今回のリリースで追加された新機能とその簡単な説明があります。
Solaris 2.6 オペレーティング環境には、マルチスレッド化、対称型多重処理、統合された TCP/IP ベースのネットワーク機能、ネットワークの集中管理用ツールなど先進のテクノロジーが搭載されています。今回の Solaris のリリースでは注目の新機能を数多く追加して、従来の強力で安定したオペレーティング環境をさらに進化させています。
次に、今回のリリースで追加された機能の一部を紹介します。
Solaris Web Start
Java Virtual Machine
HotJava ブラウザ
WebNFS を始めとする Web テクノロジー
大規模ファイルのサポート
ネットワーク、Web サーバー、およびデータベースの性能の向上
AnswerBook2 オンライン文書システム
X/Open UNIX 95 標準への準拠
NTP、SNMP、DMI、DHCP、VLSM などによるネットワーク管理とシステム管理のサポート
電源管理システム
西暦 2000 年問題への対応
使用可能言語の拡張
Java 言語のインタプリタである Java Virtual Machine を搭載した Solaris オペレーティング環境は Solaris ソフトウェアと共に、Java の基本環境を提供します。また、操作の簡単なインターネットブラウザである HotJava がパッケージに含まれます。HotJava ブラウザを使って World Wide Web を閲覧できるほか、AnswerBook2 オンライン文書の参照や各種のインストール作業も行うことができます。
Java Virtual Machine 1.1 は、Solaris オペレーティング環境での Java プラットフォームを提供します。JavaSoftTM の 1.1 Java Developer Kit と互換であり、Java コンパイラ (javac)、Java インタプリタ (java)、Java クラスファイルの逆アセンブラ (javap)、および C ヘッダとスタブファイルのジェネレータ (javah) を含みます。また、ジャストインタイム (JIT) コンパイラを搭載することによって性能の向上を実現しています。
Java Virtual Machine は、Solaris 自体のスレッドを使って Java スレッドをマルチプロセッサに対応させています。また、Solaris 自体のスレッドを使うことにより、Java アプリケーションのスケーラビリティを高めます。
付属のアプレットビューアによって、World Wide Web ブラウザとは別の場所でアプレットを実行できます。
もう 1 つの強化点として、Java アプリケーションの管理に役に立つ javald(1) を用意しました。javald は、Java プログラムを実行するためのラッパーを生成します。ラッパーは、Java プログラム実行時に参照される JAVA_HOME
、CLASSPATH
、および LD_LIBRARY_PATH
の各環境変数が正しく設定されていることを保証します。
詳細については、『Network Interfaces Programmer's Guide』を参照してください。
HotJava ブラウザは、操作が簡単でカスタマイズ可能なユーザーインタフェースを持つブラウザです。HotJava ブラウザを使って、インターネットを自由に閲覧することができます。HotJava ブラウザは、次の機能を提供します。
Java アプレットのサポート
アプレットは、画像と同じように Web ページに含めることのできる小さなプログラムです。
ネットワークセキュリティ
HotJava ブラウザは、アプレットの実行に必要な、セキュリティが保護された環境を用意します。署名付きアプレットをサポートするので、セキュリティレベルを自在に調節することができます。
HTML の全機能をサポート
HTML は、Web ページ作成用言語です。HotJava ブラウザは、最新の HTML 標準である HTML 3.2 をサポートします。
HTML の検証
エラーが含まれる HTML ページを表示すると、「HTMLエラー」ボタンがアクティブになります。このボタンをクリックすると、エラーの一覧が表示されます。この検証機能は、自分で HTML ページを記述しているときや HTML ページの表示に問題があるときなどに利用すると便利です。
マルチスレッドアプリケーションのサポート
HotJava ブラウザは、言語レベルでマルチスレッドをサポートする Java で書かれているので、複数のアクションを同時に実行することができます。たとえば、複数の画像を同時にブラウザに取り込んだり、複数の HotJava ウィンドウを同時に開いて HotJava ページを表示したりできます。
外部のビューアアプリケーションの起動
World Wide Web 上には、さまざまなファイル形式が存在します。HotJava ブラウザが Web ページとして表示できないファイルに遭遇すると、ファイル形式に対応した外部ビューアアプリケーションを起動してそのファイルを表示します。また、ファイルの内容やアプリケーションビューアを指定するためのグラフィカルユーザーインタフェース (GUI) も用意されています。
自由にカスタマイズできるユーザーインタフェース
HotJava ブラウザをカスタマイズして、自分が作業しやすい環境を構成することができます。カスタマイズ作業のほとんどは、プログラミングなしで簡単に行えます。
コンテンツハンドラとプロトコルハンドラの拡張をサポート
HotJava ブラウザは、新しいデータ型やプロトコルが登場した場合でも随時対応できます。その場合、Java プログラマは新しいコンテンツハンドラとプロトコルハンドラを定義して使うことができます。
Solaris オペレーティング環境は、イントラネットとインターネットのリーダーとして、強力で信頼性の高い Web プラットフォームを提供します。Solaris は、Web をベースとした耐久性に富むネットワークインフラストラクチャの構築手段として、業界第 1 位のオペレーティング環境です。多くの企業が組織の内外で Web を利用し始める中、Solaris の WebNFS のような強力な機能によって、Web ファイルへすばやくアクセスできるようにすることが急務となっています。
WebNFS ソフトウェアは、NFS プロトコルを使って Web 経由でファイルシステムにアクセスできるようにします。NFS は非常に信頼性の高いプロトコルです。負荷の大きいときに従来より高いスループットを実現します。また、匿名の ftp サイトを公開する際にもオーバーヘッドなしで、ファイルへのアクセスを提供することができます。
詳細については、『NFS の管理』を参照してください。
Solaris 2.6 では、データベースと Web に重点を置いて性能を改善しました。NFS サーバーとタイムシェアリングシステムの性能は、Solaris 2.5.1 からの高いレベルを維持しています。
データベースエンジンは主に仮想記憶 (VM) と入出力スループットの 2 つの点で処理能力が強化されています。
VM では、データベースエンジンが使用する共用メモリー領域で従来より大きなページサイズを使うことによりオーバーヘッドの減少に成功しています。このメモリー領域でデフォルトのシステムページサイズを使う代わりに、4M バイトという大きなページサイズを使用します。これによって、プロセスが使用するページのために各プロセスに添付される記述を管理するときに必要となるシステム内部の作業量が減少します。従来の記述共有メカニズムとこのページサイズを組み合わせることで、多くの業界標準のテストで約 12 % の性能向上が確認されています。
低レベルルーチンを変更して、大きなページリストを入出力処理するときに発生するオーバーヘッドを最小限に抑えた結果、I/O スループットが飛躍的に向上しました。この変更により、システムが使用する仮想アドレスをデバイスドライバが必要とする物理アドレスに変換して I/O 要求を処理するときに発生するオーバーヘッドも減少しました。これらの改良の結果、物理デバイスに対する入出力の負荷を大幅に軽減しています。
最近の Informix TPC-C ベンチマークテストの結果、次に示すスループットの向上が確認されています。
$134/tpmC で 15,461 tpmC を記録
ユーザー数は、13,000
使用システムは、14 個の 250 Mhz CPU と 5G バイトのメモリーを搭載した SMCC E4000
上記のベンチマークは、これまで記録されたもので最高の Informix TPC-C です。また、ミッドレンジクラスのシステムでは、最高のコスト性能を示しています。
TPC-C は、Transaction Performance Processing Council (TPC) の後援で行われるベンチマークテストです。このベンチマークでは、倉庫配送システムのシミュレーションを行います。9 個のテーブルに格納されたデータに対して、あらかじめ決められた方法で 5 つのトランザクションを実行します。評価単位は tpmC です。tpmC は、TPC-C ベンチマークでの 1 分間当たりのトランザクション数 (transactions per minute) という意味です。
ユーザーの多くが、メモリー上にバッファリングすることなく、直接ディスクにデータを書き込みたいと考えています。Solaris 2.6 では、ディスクへの直接入出力によってこれを実現しました。バルク入出力操作では、サイズの大きなバッファーを使って物理メモリーより大きなファイルを転送します。バルク入出力操作の例として、人工衛星から大量のデータをファイルにダウンロードする場合があります。
直接入出力されるデータはプロセスのアドレス空間に読み書きされるので、オペレーティングシステムのページキャッシング機構にオーバーヘッドがかかりません。
詳細については、directio(3C) のマニュアルページを参照してください。
低レベルの入出力サポート用ルーチンが改良されました。この変更により、ファイルシステム (raw デバイス) を中継しないでディスクデバイスと入出力を行うときのスループットが大幅に向上しました (raw デバイスはデータベースファイルへのアクセスによく使用されます)。SPARCstorage Array 用のドライバは、スループット向上のために書き直されました。
これまでネットワークのスループットは、長期間接続が保持されることを前提に改善されてきました。この結果、Solaris は NFS サーバーで業界随一の性能を誇ってきました。一方、Web サーバーの場合は、短い接続時間と少ない消費帯域幅という、まったく異なるパラダイムに基づいています。Solaris 2.6 からは、この面で大きく性能が向上しました。この性能アップグレードの内容と同じものが、Solaris Internet Server Supplement (SISS) パッケージとして Solaris 2.5.1 用にリリースされています。
ソケットインタフェース層、TCP/IP プロトコル、STREAMS フレームワークなどの点で、Web サーバーの性能が改善されました。ソケットインタフェース層はファイルシステム (sockfs) として再設計された結果、ソケットライブラリや STREAMS ソケットモジュールでソケットコードを重複して作成する必要がなくなりました。これによって、Web で一般的な短時間の接続でも性能が大幅に向上しました。TCP/IP では、多数の接続をさらに効率よく処理できるようになったほか、接続およびソケットの開閉をマルチスレッド化することによって一層の性能向上が図られています。また、STREAMS フレームワークの構造が再構築されて、TCP/IP ソケットの開閉効率も向上しています。
Standard Performance Evaluation Corporation (SPEC) は、Web サーバーの性能を比較するための標準ベンチマークである SPECweb96 をリリースしました。このベンチマークでは、HTTP GET 要求の処理効率を測定して比較結果を提供します。SPEC は、小規模の個人的な Web サーバーからインターネット上で最も人気のあるサーバーに至るまでのサーバーログを分析して、作業負荷の基準値を算出しています。SPEC SFS ベンチマークの枠組みに基づいて構築されている SPECweb96 では、単体または複数のクライアントシステムから HTTP プロトコル要求を発生させて試験することができます。Solaris 2.6 に関する最新の SPECweb96 情報や SPECweb96 ベンチマークの詳細については、http://www.specbench.org を参照してください。
カーネルソケットの実装によって、SunOSTM 4.x ソケットおよび BSD ソケットとの互換性が高まり、ソケットの性能が向上しています。
TCP の拡張されたウィンドウは、RFC1323 に説明されている機能を提供します。TCP の拡張されたウィンドウでは、ATM などの帯域幅の広いネットワークや衛星リンクなどの遅延の大きいネットワークで、未処理のままにしておけるデータ量を 65,535 から 1G バイトまで拡大することにより性能が向上しています。
Zero Copy TCP/ハードウェアチェックサム機能を使って、特定の条件下で TCP のスループットを増大させることができます。これを実現するために、データのコピーを回避すると共に、ネットワークインタフェースにハードウェアチェックサムロジックがある場合、そのロジックを利用します。現時点で、ハードウェアチェックサムロジックを組み込んでいるネットワークインタフェースカードは、SunATM 622 だけです。
詳細については、『Transport Interfaces Programming Guide』を参照してください。
Solaris オペレーティング環境は非常に大きく、さまざまなものが複合されていますが、ユーザーの必要性に応じて柔軟に構成できるような構造になっています。今回のリリースでは、Solaris 環境のインストールや管理を簡単にする次のような機能が用意されています。
Solaris Web Start。Web ブラウザをベースにしたインストール用ツール
インストールカード。手順に従ってインストールを進めるための手引き
x86 マシン用デバイスの構成を補助する Configuration Assistant (デバイス構成用補助)
操作の簡単な新しいデスクトップ (CDE)
ここでは、Solaris 2.6 ソフトウェアで新たに用意されたインストール関連の機能について説明します。
Solaris ソフトウェアは、Web ブラウザを使ってインストールできる業界初のオペレーティングシステムです。ブラウザベースの Solaris Web Start を使うと、対話形式で Solaris ソフトウェアおよび同梱のアプリケーションソフトウェアを選択してインストールできます。また、Solaris Web Start のグラフィカルユーザーインタフェース (GUI) によって、ファイルシステムも簡単に構成できます。
このユーティリティに組み込まれているオンライン情報から、このユーティリティ自身、インストール可能なソフトウェア、サポートされるハードウェアプラットフォームなどについて知ることができます。ただし、このユーティリティを利用するかしないかは任意です。いつでもユーティリティを終了して、従来の方法でインストールすることができます。
詳細については、「Solaris Web Start の使い方」の章を参照してください。
マニュアルの構成が変更されて、Solaris ソフトウェアのインストール方法に関する情報が探しやすくなりました。デスクトップ製品には、ローカルの CD-ROM から Solaris ソフトウェアをインストールするための小さなサイズの手引き書が付いています。サーバー製品には、サーバーやクライアントの設定に関する詳細な説明やカスタム JumpStartTM によるインストール作業の自動化に関するマニュアルが付いています。
Configuration Assistant (デバイス構成用補助) は、Intel 版 Solaris ソフトウェアの新しいブートシステムの一部です。マシンのハードウェアデバイスの種類を認識し、各デバイスが使用する資源を記録し、ブートデバイスの選択を可能にします。Configuration Assistant (デバイス構成用補助) を含むブートソフトウェアは、Solaris オペレーティング環境と一緒にシステムのハードディスクにインストールされます。システムのハードウェア構成情報を含むファイルもハードディスクにインストールされます。システムがブートするたびに、この構成情報がカーネルに渡されます。ハードウェア構成が変更された場合は、Configuration Assistant (デバイス構成用補助) をもう一度実行する必要があります。
Configuration Assistant (デバイス構成用補助) を使ってデバイス構成に関する問題を解決する方法については、「デバイスの構成」および「インストール時の問題解決」の章を参照してください。
Solaris 2.6 から、Solaris CD のレイアウトが変更されました。スライス 0 は、以前よりわかりやすいディレクトリ構成になっています。最上位ディレクトリには、制御ファイルと Solaris_2.6 ディレクトリだけがあります。この制御ファイルは、以前のバージョンの Solaris CD に含まれる制御ファイルと同じで、.cdtoc、.slicemapfile、および .install_config です。
詳細については、『Solaris のインストール (上級編)』を参照してください。
Solaris 2.6 には、現在のファイルシステムにアップグレードするための十分なディスク容量がない場合、自動配置機能によってディスク容量を割り当て直すオプションが用意されています。この新機能は、対話式の Solaris インストールプログラムとカスタム JumpStart のプロファイルキーワードから利用できます。
詳細については、『Solaris のインストール (上級編)』を参照してください。
Solaris の以前のリリースでは、システム管理者は初期インストールオプションを使うプロファイルだけをテストできました。Solaris 2.6 では、pfinstall コマンドによってアップグレードオプションを使うプロファイルをテストできます。これによって、システム管理者はプロファイルが期待どおりに動作するか否かを判断してから、実際にアップグレードすることができます。この方法は、新機能のディスク容量の再割り当て機能と共に使用すると非常に便利です。
アップグレードプロファイルをテストするには、ディスク構成に対してアップグレードするシステム上で pfinstall -D コマンドを実行する必要があります。ディスク構成ファイルを使って、アップグレードプロファイルをテストすることはできません。
詳細については、『Solaris のインストール (上級編)』を参照してください。
Solaris 2.6 では、インストール中にシステムのブートデバイスを変更できるようになりました。システムのブートデバイスとは、ルートファイルシステムがインストールされているディスクスライスのことで、インストールされるシステムはこのディスクスライスからブートします。
また、SPARC 版の新しいインストールプログラムでは、ブートデバイスの変更後にシステムの EEPROM を更新できるので、このデバイスから自動的にシステムをブートできるようになりました。以前のリリースでは、インストールの途中でシステムのブートデバイスを変更すると、次に自動的に新しいデバイスからブートするときは手動で EEPROM を変更する必要がありました。
この新機能は、対話式の Solaris インストールプログラムとカスタム JumpStart の boot_device プロファイルキーワードから利用できます。
詳細については、『Solaris のインストール (上級編)』を参照してください。
以前のリリースでは、Solaris インストールプログラムの最初の部分で、ネームサービスデータベースから周辺装置、ホスト名、IP アドレス、ネームサービスなどのシステム構成情報を取得しました。また、インストールプログラムにとって不明な情報があると、プロンプトが表示されて必要な情報の入力を求められました。このようなプロンプトを避けるには、ネームサービスでシステム構成情報を事前構成する必要がありました。
Solaris 2.6 では、sysidcfg ファイルを使って一組のキーワードからシステム構成情報を事前構成する方法が追加されました。必要に応じて 1 つまたは複数のキーワードを設定することにより、さまざまなレベルのシステム構成情報を事前構成できます。
sysidcfg ファイルは、リモートシステム上、ローカルシステムの UFS、または PCFS のフロッピーディスク上に置くことができます。リモートシステム上に sysidcfg ファイルを置く場合は、add_install_client コマンドの -p オプションを使って sysidcfg ファイルの場所を指定し、インストールされるシステムが sysidcfg ファイルを認識できるようにする必要があります。
システムのデフォルトロケール選択のプロンプトを表示しないようにするには、ロケール情報を事前構成します。
詳細については、『Solaris のインストール (上級編)』を参照してください。
kdmconfig プログラムは、x86 システムでのマウス、グラフィックスアダプタ、およびモニターの構成に使われます。OWconfig ファイルがすでに存在する場合、kdmconfig は Owconfig ファイルから利用できる情報を取得します。さらに、この新バージョンの kdmconfig は、devconf プログラムが devinfo ツリーに残した情報も取得して、この情報から自動的にデバイスを判断します。検査によって返される、メーカーやモデルなどの特定のデバイスに関する属性値は、その値が「不明 (Unknown)」でない限り OWconfig ファイルの属性値より優先的に使用されます。
不明デバイスがなく、「構成確認 (Confirm Configuration)」画面のすべての属性値が判明すると、デフォルトの選択は「Save and Exit Configuration」になります。さらに情報が必要な場合は、最初の不明なデバイスがデフォルトの選択として表示されます。この場合、別の構成用デバイスを選択してこのデフォルトの選択を上書きするか、あるいは「Save and Exit Configuration」を選択して終了することができます。後者のように終了すると、kdmconfig は不明なデバイスを確認し、値がないことがわかると X Window System で問題が起こる可能性のあることを警告します。警告を確認したら、構成作業を続行するか、あるいはいったんプログラムを終了して後でデバイスを構成することができます。
デバイスの構成画面の表示順で変更された点は、次のとおりです。
シリアルマウスを構成するときに、ポートをどれか 1 つ選択できます。(/dev/tty00 から /dev/tty03 までのそれぞれに対して COM1 から COM4 までの各ポート)
グラフィックスカードやモニターを構成する場合、グラフィックスカードの選択肢が表示され、続いてモニターの選択肢が表示されます。また、カードやモニターの種類に応じて解像度などの選択肢も表示されます。
キャラクタユーザーインタフェースやナビゲーションに使われるファンクションキーに関しては、旧バージョンと同様です。
kdmconfig プログラムの詳細については、kdmconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。
インストール時に C ロケール (7 ビット文字) に加え、8 ビット文字をサポートする英語ロケールも選択できるようになりました。選択されたロケールは、システムのデフォルトロケールになります。
以前のリリースでは、英語ロケールを選択した場合、デフォルトで C ロケールが設定されていました。
ロケール名 |
言語/地域 |
コードセット |
---|---|---|
C |
米国英語 |
7 ビット |
en_AU |
オーストラリア英語 |
8 ビット |
en_CA |
カナダ英語 |
8 ビット |
en_UK |
英国英語 |
8 ビット |
en_US |
米国英語 |
8 ビット |
詳細なロケールのインストールについては、『Solaris 2.6 ご使用にあたって (SPARC 版)』、または『Solaris 2.6 ご使用にあたって (Intel 版)』を参照してください。
AnswerBook2 文書システムでは、Web ブラウザベースのインタフェースを使って従来の AnswerBook 文書やマニュアルページを含む Solaris に関するさまざまな情報を表示したり印刷したりできます。AnswerBook2 ソフトウェアが備える検索エンジンによって、マニュアルライブラリから目的の情報を簡単に取り出すことができます。AnswerBook2 文書コレクションは、ローカルのシステムまたは文書サーバーのどちらにでもインストールできます。また、 AnswerBook2 の文書ライブラリをカスタマイズすることもできます。
AnswerBook2 文書システムの詳細については、「オンライン文書へのアクセス」の章を参照してください。
Solaris 2.6 は、デフォルトのデスクトップとして共通デスクトップ環境 (以降 CDE とします) を備えています。また、OpenWindows デスクトップも継続してサポートします。
Solaris 共通デスクトップ環境 (以降 Solaris CDE とします) は、操作の簡単なユーザーインタフェースを備える Motif ベースの先進的なデスクトップです。CDE は、異なる UNIX 環境で共通の見た目と使い心地を提供します。米国 SunSoft, Inc. (以降「SunSoft」とします)、Hewlett-Packard Company、IBM Corporation、および Novell, Inc. の技術的貢献によって確立された、X Window System と Motif に基づく、クロスプラットフォームでのユーザーインタフェースおよびアプリケーションインタフェースの新しい標準仕様です。
CDE の標準仕様に準拠しながら、Solaris CDE では Solaris のユーザーと開発者のためにさらに性能を向上したり短所を修正したりして、品質の高い製品を提供しています。既存の OpenWindows ユーティリティは、アプリケーションマネージャの特別なフォルダに統合されています。Solaris CDE が提供する新機能には、スペルチェックのほか、グラフィックや PostScript ファイルの表示、回転、拡大縮小、変換を行う画像ビューアが含まれます。
Solaris CDE では、OpenWindows アプリケーションと CDE アプリケーションの間でドラッグ&ドロップ操作を行うことにより OpenWindows アプリケーションを修正することなくそのまま実行できます。すべての OpenWindows と OPEN LOOK のアプリケーションは、扱いづらい互換ライブラリ、再コンパイル、修正に頼ることなく実行することができます。OpenWindows 環境に慣れているユーザーは、これまでどおりの背景、カラーパレット、ポップアップ表示されるワークスペースメニューなどが使用できます。
CDE のユーザー環境には、次の機能が含まれます。
デスクトップにログインするためのログインマネージャ。ログインマネージャは、ワークステーションがブートされると自動的に利用できます。「リモートログイン」メニューの項目から「オプション」メニューを選択して設定すると、ネットワーク上の任意のシステムで自分のデスクトップを実行できるようになります。
統合された Motif 環境。このフロントパネルからデスクトップアプリケーションを起動します。フォントサイズ、カラー、背景などを選択してデスクトップをカスタマイズできます。
ワークスペースメニュー。デスクトップワークスペースを管理するための項目を含むポップアップメニューです。
オンラインヘルプ情報システム。さまざまなデスクトップアプリケーションに関する情報を提供します。
CDE 1.2 開発環境は、CDE でソフトウェアを開発するユーザーを対象とし、別のパッケージに含まれています。このパッケージには、次のアプリケーションやツールが含まれています。
CDE アプリケーションの開発に必要なユーティリティアプリケーション、マニュアルページ、ライブラリ、およびヘッダーファイル
OPEN LOOK アプリケーションや Microsoft Windows アプリケーションの CDE への移植を容易にするウィジェット。このほかに、端末、テキストエディタ、およびファイル選択ボックスの各ウィジェット
アプリケーションビルダー。CDE アプリケーションプログラミングインタフェース (API) を使ってグラフィカルユーザーインタフェースを作成するためのツール
スクリプト言語のデスクトップ KornShell (dtksh)
Motif、ToolTalkTM メッセージング、およびその他の CDE サービスで利用できるソースコードで提供されるデモプログラム
ファイルマネージャとメールプログラムでの Web およびインターネットとの連携機能
テキストエディタとメールプログラムに統合されたスペルチェッカ
メールプログラムでの基本的な IMAP4 のサポート
CD-ROM やフロッピーディスクなどの取りはずし可能なメディアのサポート
アクセス制御リスト (ACL) のサポート
マルチメディアの画像とオーディオのサポート
画面の自動ロック
カレンダでのフェデレーテッド・ネーミング・サービス (FNS) のサポート。(ただし、NIS+ のみ)
電源管理システムソフトウェアによって、デスクトップシステムを使用していないときに消費電力を節約することができます。デフォルトでは、すべての UltraSPARC デスクトップシステムは、最後に使用してから 30 分経過すると自動的に電源が切れます。電源管理システムソフトウェアは、後でシステムを電源が切れる前の状態に自動的に復元します。ユーザーは、必要に応じて電源管理システムの設定を変更したり解除したりできます。
詳細については、『電源管理システム ユーザーマニュアル』を参照してください。
OpenWindows 3.6 デスクトップとライブラリは、バグが修正されて更新され、西暦 2000 年問題に対応しています。OpenWindows 3.6 には次の機能があります。
OPEN LOOK ウィンドウマネージャ (olwm)。これは X サーバーのクライアントで、次の作業を管理します。
ウィンドウの配置
ワークスペースのプログラムメニュー
ウィンドウとアイコンのオープンとクローズ
アプリケーションの起動と終了
詳細については、olwm(1) のマニュアルページを参照してください。
国際化。ワークスペースと DeskSetTM アプリケーション用の使用する言語、時刻形式、および数値形式を選択できます。
各国語対応版の Solaris 2.6 では、ヨーロッパまたはアジアのロケールをサポートするパッケージをインストールできます。
X サーバー。ウィンドウアプリケーションが動作する OpenWindows 環境のプラットフォームです。
X サーバーは、OpenWindows 環境の基盤となるプログラムで、Display PostScript (DPS) 画像システムの拡張機能を備える X11R6 サンプルサーバーです。X サーバーには、いくつかの X 拡張機能、フォントサーバー、および DPS フォント拡張機能も含まれます。
Sun Motif のデフォルトのキー割り当て
実行可能ファイル xmbind。これを使用すると、olwm を再起動しないでキー割り当てを変更できます
詳細については、Xsun(1)、Xserver(1)、および X11(7) のマニュアルページを参照してください。
英語版を含む、Solaris のすべての各国語対応済みバージョンには、表 3-2 に示す新しいロケールのサポートが含まれます。
表 3-2 Solaris 2.6 に含まれる新しいユーザーロケール
国 |
ロケール名 |
ISO コードセット |
---|---|---|
オーストリア |
de_AT (部分的にドイツ語のロケール) |
8859-1 |
エストニア |
et |
8859-1 |
チェコ |
cz |
8859-2 |
ハンガリー |
hu |
8859-2 |
ポーランド |
pl |
8859-2 |
ラトビア |
lv |
8859-4 |
リトアニア |
lt |
8859-4 |
ロシア |
ru |
8859-5 |
ギリシャ |
el |
8859-7 |
トルコ |
tr |
8859-9 |
これらのロケールは、クラスタ全体の一部である SUNWploc1、SUNWplow1、SUNWpldte の各パッケージでサポートされています。
ギリシャとロシアの 2 つのロケールは、非ラテンスクリプトを基にしているので別売の SMCC キーボードを使ってテキストを入力する必要があります。
Unicode 2.0 と ISO 10646 に準拠する 2 つのロケールが追加されました。これらのロケールはマルチスクリプトの入力と出力を可能とし、Solaris 環境でこの機能を使用できる最初のロケールです。また、CDE 環境だけをサポートし、Motif と CDE ライブラリが含まれます。
「フォント管理」を使うと、X Window System で簡単にフォントをインストールしたり利用したりできます。「フォント管理」は、複数バイト言語の TrueType、Type0、Type1、および CID の各フォントをサポートし、フォントの比較プレビュー機能を備えています。「フォント管理」は、CDE デスクトップに完全に統合されています。
TrueType フォントは、X と DPS でサポートされます。「フォント管理」を使うと、Solaris 環境に Sun 以外のフォントを簡単にインストールし、統合することができます。
詳細については、X/Open の Web サイト http://www.xopen.org を参照してください。
Solaris 2.6 ソフトウェアでは、拡張 UNIX コード (EUC) に依存するアーキテクチャが改善されました。日本の ShiftJIS (PCK)、中国の Big5、韓国の Johap などのアジアの PC エンコーディング標準用にコードセットとロケールが追加されました。これらのロケールは、CDE 環境だけをサポートし、Motif と CDE ライブラリが含まれます。
ユーザー登録を行うことにより、Sun が提供する製品情報やサポートなどを受けることができます。
多くのユーザーが、大切な基幹業務アプリケーションの土台として Solaris オペレーティング環境に依存しています。Sun は、Solaris オペレーティング環境で新しい標準を導入することにより、これからも一貫して安定したオペレーティング環境を提供します。標準に対する継続的なサポートは、次の新機能に示されます。
Solaris 2.6 オペレーティング環境は、西暦 2000 年問題に対応済みです。Solaris 2.6 は明確に定義された日付を使用し、X/Open の該当するガイドラインに従っています。西暦 2000 年問題への対応に関する情報は、http://www.sun.com/y2000 を参照してください。
Solaris の以前のリリースでも、多くの点で Spec 1170 に準拠していましたが、Solaris 2.6 では、Spec 1170 のすべての基準を満たしています。
Spec 1170 に準拠するために、Solaris 2.6 で変更された点は次のとおりです。
システムインタフェースとヘッダー
システムヘッダーは、Spec 1170 に準拠するために更新されました。
X/Open の curses
新しいライブラリが追加されて、この仕様によって定義されるインタフェースをサポートします。国際化された curses 機能、パッド、terminfo データベースへのアクセス、およびカラー操作に対する重要なサポートが追加されました。
ネットワークサービス
新しい X/Open 標準ソケットおよび IP アドレス解決インタフェースが利用できます。
X/Open Transport Interface (XTI) は、SVR4 の Transport Layer Interface (TLI) がサポートするインタフェースのセットを進化させて、標準化したものです。今後も TLI を利用できますが、新たに開発する場合は XTI を使用してください。
詳細については、『Transport Interfaces Programming Guide』を参照してください。
フェデレーテッド・ネーミング・サービス (FNS) が、X/Open XFN CAE の定義に準拠しました。
POSIX 1003.1b のサポートが完了しました。Solaris 2.3 のリリース以来、Solaris ソフトウェアは POSIX 1003.1b のすべてのインタフェースを提供してきました。これらのインタフェースの一部も、「Not Supported」を返さずに実際にサービスを提供するようになりました。今回のリリースで、POSIX 1003.1b に対するサポートが完了します (ただし、-PRIORITIZED IO オプションを除く)。
この機能は、移植性の高い、標準準拠のコードを書くことに関心のある開発者を対象としています。また、高性能のメッセージ転送またはセマフォコードに関心のある開発者も対象としています。後者の場合、POSIX 以外では System V のメッセージやセマフォを使用することが考えられます。また、POSIX が持つ、ある程度限られた機能でも許容できるという開発者を対象としています。
Solaris 2.6 のリリース時点でサポートされている POSIX 1003.1b の機能は、次のとおりです。
非同期 I/O (優先度順 I/O を除く)
ファイルのマップ
メモリーロック
メモリー保護
メッセージ転送
優先度順スケジューリング
実行時シグナル
セマフォ
ファイルの同期
共用メモリーオブジェクト
同期 I/O
タイマー
これらの機能の多くは、以前リリースされたいくつかの Solaris オペレーティング環境で、標準には準拠していませんが、サポートされていました。
ISO 10646 規格は、UCS-2 および UTF-8 (標準 UNIX の実装) を含め、Unicode 2.0 を定義しています。この規格に指定されているすべての実装は Unicode 2.0 に準拠しています。
Solaris オペレーティング環境は、Solaris 実行環境で使用するソフトウェアアプリケーションの開発に必要なマニュアル、開発用ソフトウェアライブラリ、生産性向上ツール、サンプルコード、およびテスト用ツールを提供します。この節では、大規模ファイル (2G バイトを超えるもの)、マルチスレッドアプリケーション、および X サーバーとライブラリを扱うための新機能について説明します。
2G バイト以上の大規模ファイルをサポートします。UFS、NFS、および CacheFS の各ファイルシステムで大規模ファイルに対応するセマンティクスをサポートします。アプリケーションから作成したりアクセスしたりできるファイルの最大サイズは、次のとおりです。
UFS によってマウントされたファイルシステムでは、1 テラバイト
NFS および CacheFS によってマウントされたファイルシステムでは、NFS サーバーの限界まで
既存の入出力インタフェースが変更されて、大規模ファイルを扱うときのエラーを検出できるようになりました。新しいデータ型 (通常、接尾辞として 64 または 64_t が付く) と新しいインタフェース (通常、接尾辞として 64 が付く) が、大規模ファイル用に追加されています。
Solaris 2.x ソフトウェア上で実行する既存アプリケーションの場合、次の点について調べる必要があります。
アプリケーションが大規模ファイルに対応できるためには (「Solaris 2.6 で大規模ファイルを扱っても安全 (large-file safe)」)、アプリケーションのソースコードを調べて、既存のインタフェースが適切であること、そして正しいエラー処理特性を備えていることを確認する必要があります。
アプリケーションが大規模ファイルを取り扱えるようにするには (「大規模ファイルを使用できる (large-file aware)」)、アプリケーションのソースコードを調べて修正しなくてはなりません。次は、修正すべき箇所の例です。
%ld から %ll などの出力およびメモリー内部の書式文字列
サイズ情報またはオフセット情報の一時記憶領域に使用する変数は、正しいサイズに設定して切り捨てられるのを防ぐ必要がある
関数のパラメタと戻り値を調べて、必要に応じて修正する
詳細については、『NFS の管理』と『Solaris のシステム管理』を参照してください。
Solaris オペレーティング環境のリンカーに関連する拡張機能として、バージョン管理とスコープ管理が追加されました。動的オブジェクトの開発者は、これらの機能を使って動的オブジェクトのバイナリインタフェースについて一連のバージョン更新をオブジェクト内部で定義し、グローバルシンボルをローカルスコープに落とすことができます。この機能によって、異なるソフトウェアリリースにまたがってインタフェースの進化を管理できるほか、前バージョンのグローバルシンボルの継承、バージョン依存関係の記録、および内部の実装変更の記述を行うことができます。
バージョン管理とスコープ管理によって、開発者はプログラム開発のための安定したインタフェースを提供できるほか、標準に準拠し、バグ修正などの実装変更をオブジェクトのパブリックインタフェースから保護することができます。このほかにも、オブジェクトサイズを縮小し、実行時再配置に必要なコストを節約してアプリケーションの実行時性能を向上できるなどの利点が得られます。
Solaris 2.6 オペレーティング環境では、システムライブラリでこの技術を利用し、バージョン管理とスコープ管理の両方を適用しています。
詳細については、『Linker and Libraries Guide』を参照してください。
スケジューラの起動機能によって、マルチスレッドアプリケーションのための新しいカーネルスケジューリングがサポートされます。この機能は、カーネルと libthread ライブラリ (または、libpthread) の間の専用インタフェースとして実装されるので、libthread (libpthread) インタフェースを変更しません。また、これによりスレッドライブラリは状況判断型の相互排他ロック (mutex ロック) を実装できるようになります。状況判断型の相互排他ロックの場合、現在ロックを保持しているスレッドがプロセッサ上で実行中であれば、ロックスピンを獲得しようとするスレッドをロックしますが、実行中でなければブロックします。
詳細については、libsched(3X) のマニュアルページを参照してください。
先取りの制御機能によって、アプリケーションはカーネルにスケジューリングのヒントを与えることができます。これによって、短期間の先取りを防ぐことができるので、データベースサーバーなどの特定のクラスのアプリケーションで性能が向上します。
従来の /proc ファイルシステムがディレクトリ階層構造に再構築されて、状態情報や制御用の関数を格納するサブディレクトリを含むようになりました。また、ウォッチポイント機能を提供して、プロセスのアドレス空間にあるデータにアクセスしたりデータを変更したりすることを監視できるようにしています。この新しい /proc ファイル構造は、従来の /proc インタフェースとバイナリレベルで完全に互換です。
新しい /proc ウォッチポイント機能が使えるように、adb(1) コマンドが変更されました。adb コマンドは、新たにデータのブレイクポイントを提供します。データのブレイクポイントを挿入すると、対象となるプロセスは指定の変数にアクセスしたところで停止します。
詳細については、adb(1) のマニュアルページを参照してください。
FNS が、X/Open XFN CAE の定義に準拠しました。また、FNS の機能を拡張して、Lightweight Directory Access Protocol (LDAP) のサポートを追加したほか、ファイルと NIS バックエンドに対するサポートも強化しています。
詳細については、『Federated Naming Service Programming Guide』、『Solaris ネーミングの管理』、『Solaris ネーミングの設定と構成』を参照してください。
非同期 I/O をサポートするテープ用インタフェースによって、高性能テープデバイスの性能が向上しました。また、この機能では要求をキューに入れられるので、入出力スループットが大幅に向上しています。
SDK ソフトウェアが Solaris 環境に組み込まれて、別売製品ではなくなりました。一般ユーザー用 Solaris 実行環境で使用するアプリケーションやグラフィックスハンドラの作成に必要なすべての情報が Solaris ソフトウェアに用意されています。
Solaris VISUALTM ソフトウェアには、グラフィックスおよびマルチメディアのソフトウェア開発に必要な複数の基本ライブラリが含まれています。基本ライブラリは、 Solaris ソフトウェアでは最も低レベルの、デバイスから独立した層に属します。このような低レベルインタフェースは、広範囲のさまざまな共通機能をサポートするように設計されています。たとえば、基本ライブラリをベースにしてより高いレベルのライブラリを構築したり、アプリケーションで基本ライブラリをそのまま使用したりできます。基本ライブラリを使って、2 次元および 3 次元のグラフィックス、画像、またはデジタルビデオを取り込んだアプリケーションを開発できます。基本ライブラリは、XGL グラフィックスライブラリと XIL 画像ライブラリから構成されます。XGL グラフィックスライブラリは、Solaris PEX ソフトウェアの基本ライブラリとして機能します。
PEX 3.0.2 実行環境は、PEX クライアント側実行時ライブラリ (PEXlib) と PEX サーバー共用オブジェクトファイル拡張機能 (Solaris PEX サーバー) から構成されます。Xlib がコア X プロトコルの API であるように、PEXlib は PEX プロトコルの API です。PEXlib は異なるハードウェアプラットフォーム間でのアプリケーションの移植性を提供するほか、ローカルとリモートのディスプレイで 3 次元グラフィックスの描画を可能にします。PEX クライアントから PEX 要求を受け取ると、OpenWindows Version 3.6 の X11 サーバーは PEX 共用オブジェクト拡張機能を自動的に読み込みます。
PEXlib の Solaris 2.6 への実装は、マサチューセッツ工科大が提供している『PEXlib - Specification and C Language Binding: Version 5.1』に基づいています。また、PEX サーバー拡張機能は、『PEX Protocol Specification, Version 5.1』に基づいています。
PEX 3.0.2 実行環境は、Solaris 2.6 に含まれています。次の場合に、PEX 3.0.2 実行環境をインストールしてください。
PEXlib をベースにしたグラフィックスのクライアントアプリケーションを実行する
PEX プロトコルを使ってリモートディスプレイに描画するクライアントアプリケーションが任意の 3 次元グラフィックスを表示する
PEX をインストールするには、Solaris 2.6 ソフトウェアのインストール時にソフトウェアグループ全体を選択します。
PEX についての詳細は、次のマニュアルを参照してください。
また、書店で次の本を求めることができます。
『PEXlib Programming Manual』、O'Reilly and Associates, Inc.
『PEXlib Reference Manual』、O'Reilly and Associates, Inc.
XGL ライブラリは、2 次元画像および 3 次元画像の即時モード API です。この API は、異なるハードウェアプラットフォーム間のアプリケーションの移植性と、グラフィックスアクセラレータを利用してグラフィックスアプリケーション性能の最適化を行います。このほか、XGL Version 3.3 ライブラリを使って、アプリケーションは透過性のサポートレベルを判断できます。XGL Version 3.3 ライブラリには、エッジオフセットのユーザー制御を可能にする新しい属性が含まれます。
XGL 3.3 実行環境 (RTE) は、Solaris 2.6 に含まれています。グラフィックスアプリケーションを使用するサイトでは XGL RTE をインストールする必要があります。あるアプリケーションが XGL RTE を必要とするかどうかは必ずしも明確ではありません。したがって、CDE または OpenWindows のアプリケーションソフトウェアをインストールする場合は、そのアプリケーションが XGL ライブラリを参照することを考えて XGL RTE もインストールしておく必要があります。
XGL の詳細については、『XGL Programmer's Guide』または『XGL Reference Manual』を参照してください。
画像処理用 API である XIL ライブラリは、画像アプリケーションやビデオアプリケーションに基本関数を提供します。API 開発者はこのライブラリを利用して書いたコードを基本ライブラリ (低レベルのソフトウェアインタフェース) として提供できるようになります。
XIL 1.3 実行環境 (RTE) は、Solaris 2.6 に含まれています。画像アプリケーションを使用するサイトではインストールする必要があります。あるアプリケーションが XIL RTE を必要とするかどうかは必ずしも明確ではありません。したがって、CDE または OpenWindows のアプリケーションソフトウェアをインストールする場合は、そのアプリケーションが XIL ライブラリを参照することを考えて XGL RTE もインストールしておく必要があります。
XIL 1.3 ライブラリ API は、すべての点で下位互換です。既存アプリケーションは、修正または再コンパイルしないで実行することができます。
XIL 1.3 ライブラリ API は、マルチスレッド対応です。開発者は、XIL 関数にロックをかけないでマルチスレッドアプリケーションを書くことができます。API の複数のスレッドは、同じ画像からデータを要求しない限り確実に実行されます。ライブラリ自体もマルチスレッド対応なので、アプリケーションの書き直しをしなくてもマルチプロセッサシステムの利点を活用できます。
XIL 1.3 ライブラリでは、特に大きな画像をタイルと呼ばれるメモリーバッファー領域に格納します。特定のタイルに含まれる画像の一部が必要な場合は、そのタイルをメモリーに読み込むだけで済むので性能が向上します。
XIL 1.3 ライブラリには、従来の連続した記憶領域だけでなく、XIL 画像のためのタイル記憶領域やストリップ記憶領域をサポートする新しい記憶領域オブジェクトが含まれています。この記憶領域オブジェクトは、走査線、ピクセル幅、データポインタなどの画像属性を格納するコンテナとして機能します。画像をエクスポートするか、あるいは直接修正するときまで、画像に記憶領域は割り当てられません。その分、メモリー消費を節約できます。
XIL 1.3 ライブラリでは、新たに 32 ビット単精度の IEEE 浮動小数点データ型をサポートします。このデータ型を使って、高度に洗練された科学分野の画像アプリケーションを開発することができます。
XIL 1.3 ライブラリでは、一時画像をサポートします。この一時画像は、続けて作成する画像の中間的なステップとして使用されます。また、この画像を読み込んだり書き込んだりできるのは一回限りです。一時画像に使われる記憶領域は必要がなくなれば XIL が解放できるので、大きな画像を扱う場合は特に有利です。
XIL 1.3 ライブラリでは、新しく XIL_GENERAL 記憶領域形式をサポートします。この形式では、複数の帯域を持つそれぞれの帯域を別々のメモリーバッファーとして指定できるので、画像を柔軟に取り扱えます。さらに、帯域ごとに走査線とピクセル幅を持たせることができます。
XIL 1.3 ライブラリでは、XIL_BIT 画像だけでなくすべてのデータ型で XIL_BAND_SEQUENTIAL 記憶領域形式をサポートするようになりました。
XIL 1.3 ライブラリでは、Kodak Color Management System (KCMS) をサポートします。これによって、ディスプレイ上の画像と実際に格納される画像との間で非常に高いカラー対応を実現します。
Kodak Color Management System (KCMS) は、入力デバイスから出力デバイスまでの一貫したカラー表現を保証するカラー管理用ソフトウェア製品です。KCMS は、SunSoft が開発にかかわり、Eastman Kodak からライセンス供与されている技術です。
KCMS は、マルチスレッドプログラムをサポートし、マルチスレッドでの安全な動作を保証します (MT-安全)。KCMS アプリケーションでマルチスレッド機能を使う場合、KCMS ライブラリコールにロックをかける必要はありません。
詳細については、『KCMS Application Developer's Guide』を参照してください。
X11R6 Base Window System には、X コンソーシアムから提供された最新の修正やパッチが含まれます。
詳細については、X/Open の Web サイト http://www.xopen.org を参照してください。
X11 Double Buffer Extension (DBE) は、X Window System の枠組みの中でダブルバッファリングを使用する標準の方法です。ダブルバッファリングでは、「フロント」と「バック」の 2 種類のバッファーを使用して画像を保持します。フロントバッファーはユーザーにとって可視ですが、バックバッファーは可視ではありません。DBE の仕様に関する詳細な情報は、次の ftp://ftp.x.org/pub/DOCS/DBE/ サイトにあります。インターネットブラウザを使ってダウンロードできます。
詳細については、X/Open の Web サイト http://www.xopen.org を参照してください。
Solaris オペレーティング環境では、新たに 2G バイトを超えるファイルをサポートします。このため、開発者が非同期 I/O によって大規模ファイルを処理できるように、新しいインタフェースを提供します。
2G バイト以上の大規模ファイルをサポートします。UFS、NFS、および CacheFS の各ファイルシステムで大規模ファイルに対応するセマンティクスをサポートします。アプリケーションから作成したりアクセスしたりできるファイルの最大サイズは、次のとおりです。
UFS によってマウントされたファイルシステムでは、1 テラバイト
NFS および CacheFS によってマウントされたファイルシステムでは、NFS サーバーの限界まで
既存の入出力インタフェースが変更されて、大規模ファイルを扱うときのエラーを検出できるようになりました。新しいデータ型 (通常、接尾辞として 64 または 64_t が付く) と新しいインタフェース (通常、接尾辞として 64 が付く) が、大規模ファイル用に追加されています。
UFS ファイルシステムで大規模ファイルのサポートを無効にするための、新しい mount オプションを用意しています。このオプションを使うと、システム管理者は大規模ファイルを安全に扱うことのできない古いアプリケーションでも継続して使用することができます。
デフォルトの mount オプションは largefiles です。largefiles オプションを指定してマウントされたファイルシステムでは、2G バイト以上のサイズのファイルを作成できます。
ただし、このオプションを指定してマウントされたファイルシステムには、2G バイト以上のサイズのファイルがなくてもかまいません。
largefiles オプションを指定してマウントされたファイルシステムに 2G バイト以上のサイズのファイルが作成されると、fsck コマンドを実行して大規模ファイルが存在しないことを確認するまでは nolargefiles オプションを指定してそのファイルシステムをマウントすることはできません。
Solaris 2.x 上で既存のアプリケーションを実行する場合、次の点について確認する必要があります。
アプリケーションが大規模ファイルに対応できるためには (「Solaris 2.6 で大規模ファイルを扱っても安全 (large-file safe)」)、アプリケーションのソースコードを調べて、既存のインタフェースが適切であること、そして正しいエラー処理特性を備えていることを確認する必要があります。
アプリケーションが大規模ファイルを取り扱えるようにするには (「大規模ファイルを使用できる (large-file aware)」)、アプリケーションのソースコードを調べて修正しなくてはなりません。次は、修正すべき箇所の例です。
%ld から %lld などの出力およびメモリ内部の書式文字列
サイズ情報またはオフセット情報の一時記憶領域に使用する変数は、正しいサイズに設定して切り捨てられるのを防ぐ必要がある
関数のパラメタと戻り値を調べて、必要に応じて修正する
詳細については、『NFS の管理』と『Solaris のシステム管理』を参照してください。
Solaris オペレーティング環境では、非同期 I/O によって大規模ファイルを処理できるように、開発者に新しいインタフェースを提供します。次のインタフェースが、64 ビット AIO に対応します。
aio_read64
aio_write64
lio_listio64
aio_suspend64
aio_error64
aio_return64
次のインタフェースは存在しますが、サポートされません。
aio_fsync64
aio_cancel64
これらのインタフェースは、KAIO と共に使用できます。KAIO は、raw ファイルの入出力に最適化されたパスです。raw ファイルに対して、KAIO と共にこれらのインタフェースを使用すると性能が大幅に向上します。
Solaris オペレーティング環境では POSIX に先行して、次の AIO インタフェースをサポートします。これらのインタフェースは、大規模ファイルに対応できるように変更されています。
aioread64
aiowrite64
Solaris オペレーティング環境は、ファイルへのアクセス、システムデータベースの保護、およびシステム資源の利用に関するユーザーの動作を制御するための洗練されたセキュリティシステムを備えています。Solaris のセキュリティは、ネットワーク全体を対象に 1 つのシステムだけでなく複数の異なるシステムを制御します。また、Solaris セキュリティシステムは異なるセキュリティモデルを格納できるように設計されているので、ユーザーは現行のシステムや将来のシステムに合わせて最適なモデルを選択できます。今回のリリースでは、アクセス制御、暗号化処理、および認証の各分野で Solaris セキュリティシステムに新しい機能が追加されています。
Kerberos 認証は、DES 暗号化技術を使ってネットワークのセキュリティを強化します。NFS と RPC の各ネットワークサービスのカーネルへの実装が変更されて、Generalized Security Services API (GSS-API) に基づく新しい RPC 認証方式をサポートするようになりました。このサポートには、NFS 環境のセキュリティ強化機能を追加するためのフックが含まれます。
share コマンドと mount コマンドが変更されて、Kerberos に NFS のサポートを提供します。また、share コマンドは、クライアントによって異なる認証方式を適用できるようになりました。
詳細については、『NFS の管理』を参照してください。
ユーザーレベルの RPC を実装することによって、新しい認証方式をサポートします。これは GSS-API に基づく認証方式で、RPC ベースのサービスにセキュリティ強化機能、機密性、および完全性を追加するためのフックを提供します。
PAM フレームワークによって、login、ftp、telnet などのコマンドを変更しなくても新しい認証技術がプラグイン式に導入できるようになります。また、PAM を使って UNIX ログインを DCE や Kerberos などのセキュリティ機構に統合することができます。
アカウント、セッション、およびパスワードを管理するための機構も、このフレームワークを使ってプラグインできます。
PAM の利点は次のとおりです。
自由度の高い構成方針
一般ユーザーに親しみやすい操作性
ユーザー認証サービスにパラメタを渡すことが可能
詳細については、『Solaris のシステム管理』を参照してください。
Solaris オペレーティング環境は、ドメインネームシステム (DNS) として Berkeley Internet Name Daemon (BIND) Version 4.9.4 パッチレベル 1 をサポートします。BIND は、最も普及している DNS の実装方式です。ホスト IP アドレスやメール情報などの参照情報を格納し、インターネットの名前解決サービスを提供する BIND は、インターネットでの接続に非常に重要な役割を果たします。BIND には、必ず複数のプログラムとリゾルバ (名前解決) ライブラリが含まれています。メインのプログラムは、DNS 情報を提供する named デーモンです。telnet などのアプリケーションは、リゾルバライブラリを経由して named デーモンと通信します。
BIND 4.9.4-P1 は、インターネットでの新しいセキュリティ機能を提供します。以前の BIND では DNS の改ざんを防げなかったので、侵入者は DNS が間違った名前データを提供するように仕組むことができました。したがって、この名前を使うサービスは、権限のないユーザーにアクセスを許可してしまう可能性がありました。なかには、名前データをチェックしないサービスもあります。Version 4.9.4 ではセキュリティ上の弱点が数多く解消されています。
詳細については、『Solaris ネーミングの管理』を参照してください。
Solaris オペレーティング環境は、信頼性の高い安定したネットワーク環境を提供します。今回のリリースでは、ネットワーク管理とシステム管理のための新しい機能を用意して、Solaris オペレーティング環境の管理ツールを拡張しています。
今回のリリースでサポートされる NTP は、時刻の正確さと分散処理環境におけるネットワークの時刻の同期を実現します。従来、Solaris のユーザーは一般に公開されていた NTP を使用していました。このリリースの NTP ではさらに時刻の精度が高くなっています。
SunSoft は、拡張可能な新しいエージェントテクノロジであるマスター/サブエージェントテクノロジに基づく Solstice Enterprise Agents (SEA) を提供します。SEA は、マスターエージェントとサブエージェントから構成されます。マスターエージェントは SNMP や DMI の要求を受け取ると、それぞれのサブエージェントから必要な値を取得して応答します。サブエージェントは、特定のコンポーネントやアプリケーションに対応した MIB または MIF などの情報ベースを管理します。また、SNMP ベースの従来のエージェントを SEA に統合して使用することもできます。
SEA は、SNMP または DMI のカスタムサブエージェントを開発するコンポーネント開発者、システムおよびネットワークの管理者を対象にしています。カスタムサブエージェントを作成すると、異なるコンポーネント、サブシステム、およびアプリケーションを 1 つの装置に組み込んで SNMP 管理コンソールから管理することができます。
動的ホスト構成プロトコル (DHCP) を使うと、各ホストは管理者が DHCP サーバー上にあらかじめ設定した IP アドレスや他のシステム構成パラメタを取得できるようになります。また、この IP アドレスが使われなくなったり一定の時間が経過したりすると、 ホストから IP アドレスを返還させることができます。これまで管理者が行なってきた個々の IP アドレスの割り当て作業や変更作業は、DHCP を導入することで軽減されます。Solaris は、DHCP サーバーと DHCP クライアントの両方をサポートします。
詳細については、『TCP/IP とデータ通信』を参照してください。
クライアントの障害回避機能によって、クライアントは必要に応じて別のサーバーからファイルシステムをマウントできるので、可用性の高い読み取り専用ファイルシステムを提供できます。障害回避機能はクライアントにとっては透過的に動作するので、複製が用意されている限りどれかのサーバーに障害が発生した場合でも作業が中断されずに済みます。
NFS クライアントの障害回避機能の詳細については、『NFS の管理』を参照してください。
以前の Solaris オペレーティング環境では、ネットワーク上のそれぞれのネットワーク番号に対して 1 つのサブネットマスクしか使えませんでした。サブネットマスクによって、IP ネットワーク番号のどのビットがサブネットを表し、どのビットがホストを表すかが決定されます。可変長サブネットマスク (VLSM) を使うと、大きなネットワークで従来のサブネットマスクより効率的に IP アドレスを使用できるようになります。VLSM では、1 つのネットワーク番号に対して複数のサブネットマスクが使えるので、各サブネットのホスト数に合わせてビットマスクを調節できるようになります。IP パケットの経路を指定するときに、Solaris は自動的にその IP アドレスに対応する最も長いサブネットマスクを適用します。
たとえば、以前のリリースで管理者は 192.168.1.0 というネットワークを 8 個のサブネットに分割するときに 255.255.255.224 というサブネットマスクを使用しました。VLSM を使うと、このネットワークは次のように分割することができます。
サブネットマスク 255.255.255.192 による 2 個のサブネット
サブネットマスク 255.255.255.224 による 4 個のサブネット
また、VLSM を使うとネットワーク番号をまとめて新しいネットワークを構成することができるので、ネットワークルーターが管理するルーティングテーブルのサイズを大幅に節約することができます。以上の 2 つの技術によって、RFC1519 で定義される Classless Inter-Domain Routing (CIDR) の実装が可能になります。
実際にネットワークで VLSM を実装するには、OSPF、BGP-4、RIPv2 などの CIDR に対応した経路制御プロトコルを使用する必要があります。
詳細については、『TCP/IP とデータ通信』を参照してください。
Solaris オペレーティング環境は、4.4 BSD によって実装された、事実上の標準である経路制御ソケットインタフェースに準拠しています。このインタフェースによって、経路制御プロトコルの実装部分とカーネルとの間でサブネットマスク情報を共有することができます。また、CIDR 対応の経路制御プロトコルを実装する場合にも、このインタフェースを使用することができます。
Solaris にこれらのプロトコルを実装する経路制御デーモンは付属しませんが、TCP/IP の管理者は Merit GateD Consortium (http://www.gated.org/) で、Gated についての情報を参照することをお勧めします。Gated は、ここで紹介した経路制御プロトコルやその他の経路制御プロトコルを実装したり経路制御ソケットインタフェースを使用したりするプログラムです。
プロセッサセットを使うと、複数のプロセッサをグループにして 1 つまたは複数のアプリケーション専用に割り当てることができます。システム管理者は /usr/sbin/psrset コマンドを使って、プロセスの生成、管理、およびプロセッサセットへの割り当てを制御できます。
psrset(1M) のマニュアルページを参照してください。
autofs は、必要に応じて自動的にファイルシステムをマウントし、必要がなくなるとマウントを解除するファイルシステムです。この自動マウントデーモンは、完全にマルチスレッド化されました。これにより、複数のマウント要求を同時に処理し、以前より信頼性のあるサービスを提供できます。
autofs サービスで、間接的な autofs のマップを表示できるようになりました。autofs マウントポイントの下にあるすべてのマウント可能なエントリは、実際にマウントすることなく表示できます。デフォルトでは、/home と /net の autofs マウントポイントは表示できませんが、他のすべての間接的なマウントポイントは表示できます。マウントポイントの表示/非表示は、ホストレベルでは automount コマンドで、ネームスペースレベルでは autofs マップで管理することができます。
このほかにも、階層的になっている、要求に応じて行われるファイルシステムのマウントが、以前より効率的に行えるようになっています。前回のリリースまでは、ファイルシステムが階層的になっていると、1 つのファイルシステムだけを参照してもファイルシステム全体が自動マウントされてしまいました。今回のリリースでは、目的のファイルシステムを参照すると、そのファイルシステムだけが動的にマウントされて、階層構造の残りのファイルシステムはマウントされません。
詳細については、『NFS の管理』を参照してください。
NIS+ の backup コマンドおよび restore コマンドを使うと、NIS+ ネームスペースを高速で効率的にバックアップしたり復元したりできます。
詳細については、『Solaris ネーミングの管理』を参照してください。
NIS+ 管理者は、ネームサービスを必要とするクライアントに対して NIS+ サーバーの検索順序を指定することができます。また、クライアントごとに優先サーバーを指定することでサーバーの使用率を分散させることができます。優先サーバーから目的の情報を取り出せなかった場合に備えて、他のサーバーを検索する順序をクライアントごとに設定できます。この機能は、特に広域ネットワーク (WAN) にまたがって NIS+ ドメインが存在する場合に便利です。NIS+ 管理者は、クライアントがまず WAN リンクの自分側にあるサーバーからネームサービスを取得するように指定して、WAN リンク上の通信トラフィックを抑えることができます。また、優先サーバーが利用できないときにクライアントのとるべき動作も指定できます。
詳細については、『Solaris ネーミングの管理』を参照してください。
Solaris オペレーティング環境自体、NIS サーバーをサポートします。以前のリリースでは、NIS+ サーバーによるエミュレーションモードまたは別製品の NSkit で NIS サーバーをサポートしていました。NIS サーバーを本体に含むことで、SunOS 4.x から Solaris 2.6 に移行しやすくなっています。
CFS ブートによって AutoClient システムは、ローカルの CacheFS ディスクキャッシュを利用し、少ないネットワークトラフィックでより高速にブートできるようになります。最初のシステムブート時にキャッシュに保存し、次回からは直接キャッシュからブートします。
詳細については、『Solaris のシステム管理』を参照してください。
以前のリリースでは、パッチのインストールや削除に使うツールと該当するマニュアルは各パッチの一部として出荷されていました。今回のリリースからこれらのツールは Solaris ソフトウェアに含まれるので、次の利点があります。
ユーザーのシステムスペースを有効に使用できる。ツールは、パッチごとにではなく システムに 1 度だけ提供される
以前より簡単に複数のパッチを扱うことができる
Solaris 2.x システムのパッチを追加したり削除したりできる patchadd コマンドと patchrm コマンドが用意されました。これらのコマンドを使って、Solaris 1.x システムのパッチを管理することはできません。
システム、クライアント、サービス、または ネットワークのインストール用イメージコピーに 1 つまたは複数のパッチを追加できます。
パッチをローカルのシステムに追加するには、次のように入力します。
# patchadd /var/spool/patch/104946-02 |
クライアントにパッチを追加するには、サーバー上のクライアントのルートディレクトリを指定します。ただし、パッチに root と usr の両方のパッケージが含まれる場合は、patchadd コマンドを 2 回実行する必要があります。root パッケージには -R オプションを、usr パッケージには -S オプションを付けて実行し、パッチを適用します。したがってサービス領域にしなければなりません。サービス領域とはどのリリースの Solaris でも、クライアントにとって通常は読み取り専用でサーバー上にマウントされている usr ファイルシステムを指します。
通常、クライアントにパッチを追加するには次のようにサーバー上のクライアントのルートディレクトリを指定します。
server# patchadd -R /export/root/client1 /var/spool/patch/104946-02 |
server# patchadd -S Solaris_2.3 /var/spool/patch/104946-02 |
詳細については、patchadd(1M) のマニュアルページと『Solaris のシステム管理』を参照してください。
Isalist は、SPARC システムのユーティリティセットです。Isalist によって、ユーザーは自分のマシンがサポートする命令セットを知ることができるほか、自分のマシンに最も適した命令セットが何であるかを判断できます。このユーティリティセットに含まれるコマンドは、次のとおりです。
isalist コマンド。サポートされる命令セットを一覧で表示する
optisa コマンド。この一覧から最も適した命令セットを表示する
実用的なユーザーインタフェース。sysinfo システムコールに相当する
現在、さまざまなバリエーションの SPARC プロセッサが存在します。これらのバリエーションのいくつかは、他の命令セットから区別して扱われます。あるバリエーション用にコンパイルされたアプリケーションバイナリは、異なるバリエーションで実行できないか、あるいは実行できても性能の低下を伴うことがあります。Isalist ユーティリティが提供する標準のインタフェースを使うと、ユーザーは適切なアプリケーションバイナリを選択して最高の性能を引き出すことができます。たとえば、システム管理者はラッパースクリプトを記述し、isalist と optisa の出力を利用してアプリケーションに適したバイナリを選択できます。
Solaris 2.6 の印刷ソフトウェアは、以前のリリースの LP 印刷ソフトウェアより一歩進んだ印刷環境を提供します。システム管理者は、NIS または NIS+ のどちらかのネームサービスを使って印刷クライアントの設定や管理を簡単に行うことができます。これによって、ネットワーク上のシステムとプリンタに対して中央で集中的に印刷管理ができるようになります。
Solaris 2.6 印刷ソフトウェアが提供する機能は、次のとおりです。
再設計された印刷パッケージ
印刷プロトコルアダプタ
SunSoft 印刷クライアント
ネットワークプリンタのサポート
Solaris 2.6 印刷パッケージを再設計し、印刷ソフトウェアのモジュール化を押し進めた結果、インストールの自由度が高まり、印刷クライアントのサイズを従来より小さくできるようになりました。
再設計された機能は、次のとおりです。
カスタムインストールを使って、必要なクライアント用ソフトウェアだけをインストールし、クライアントのサイズを従来より小さくできる
デフォルトでは、クライアントとサーバーの全パッケージが、すべてのマシンにインストールされます。インストールをカスタマイズすることによって、印刷クライアントのマシンにはクライアント用ソフトウェアだけを選択してインストールできます。
SUNWpsf 印刷パッケージに入っている PostScript フィルタソフトウェア
新しい印刷パッケージは、次のとおりです。
- SunSoft Print - クライアント (root)
- SunSoft Print - クライアント (usr)
- SunSoft Print - LP サーバー (root)
- SunSoft Print - LP サーバー (usr)
- PostScript フィルタ (usr)
- SunSoft Print - ソース互換性 (usr)
削除された印刷パッケージは、次のとおりです。
- LP Print Service (root)
- LP Print Service - クライアント (usr)
- LP Print Service - サーバー (usr)
SUNWscpu に含まれていた印刷コマンドは、SUNWsclplp (SunSoft Print - ソース互換性) に移動しました。
Solaris 2.6 の印刷プロトコルアダプタは、サービスアクセス機能 (SAF)、ネットワーク待機サービス、および受け入れ側 LP スプーラ上の lpNet に代わる機能です。従来の印刷プロトコルアダプタより、モジュール性を高めて最新の設計に変更されています。
この印刷プロトコルアダプタによって、次の機能が提供されます。
BSD 印刷プロトコルの実装が完了。Solaris の拡張機能も付加されている
複数のスプール処理システムが同一ホスト上で動作し、BSD 印刷プロトコルにアクセス可能
Apple、Novell などの印刷プロトコルをサポートするために、Sun 以外のアプリケーション開発ベンダーによる拡張が可能
BSD プロトコルに印刷クライアントが構成されていれば、新しい印刷プロトコルアダプタで以前のリリースの Solaris 2.x と相互運用できます。以前のリリースの Solaris 2.x 印刷クライアントを BSD プロトコルに再構成するには、Solstice AdminTools ユーティリティ、印刷マネージャ、または lpsystem コマンドを使用します。
SunSoft 印刷クライアントソフトウェアは、以前、Solaris Migration CD と Solstice AdminSuite 2.x の一部として別にリリースされていました。Solaris 2.6 には、この製品が含まれています。
SunSoft 印刷クライアントソフトウェアの特徴は、次のとおりです。
全体で 183 K バイトと従来よりかなり小さいサイズになっている
RFC-1179 の記述に従って、BSD プロトコルとの相互運用が可能。これには、SunOS 4.x、Solaris 2.x、HP-UX を始めとするオペレーティング環境が含まれる
SunSoft 印刷クライアントソフトウェアは、NIS マップ、NIS+、または 1 つのファイルを使って、Solaris 2.6 でクライアントを中央で集中的に管理できます。
クライアントシステム上にあった /etc/lp ディレクトリ構造は、次のどれかの場所に構成情報データベースとして格納される
クライアントデータベース以外のプリンタ (server:printer)
ユーザーファイル ($HOME/.printers)
システムファイル (/etc/printers.conf)
NIS マップ (printers.conf.byname)
NIS+ FNS コンテキスト
クライアントソフトウェアは従来より簡素化され、クライアントのオーバーヘッドが削減されて、印刷状態に関する要求にすばやく正確に応答できる
printers.conf ファイルは、標準の NIS マップまたは NIS+ テーブルと同様に管理される
printers.conf ファイルの作成には、lpset(1M) コマンドを使用します。
印刷クライアントソフトウェアパッケージは、SUNWpcr と SUNWpcu です。
Solaris 2.6 印刷ソフトウェアは、ネットワークに接続されたプリンタに対して基本レベルのサポートを提供します。これには、次の機能が含まれます。
新しいインタフェーススクリプトの /usr/lib/lp/model/netstandard。このスクリプトは、特にネットワークプリンタのサポート用に設計されており、ネットワーク印刷に必要なスプーラと印刷データベース情報を集めて印刷出力モジュールに渡す
新しい印刷出力モジュールの netpr。このモジュールは、netstandard インタフェーススクリプトによって呼び出されると、ネットワークを介してプリンタに接続し、適切なプロトコル命令を作成して、プリンタにデータを送信することによりジョブを印刷する
現在、netpr バイナリは、BSD 印刷プロトコルと TCP パススルーの 2 種類のプロトコルをサポートします。
詳細については、『Solaris のシステム管理』および『Solstice AdminSuite 2.3 管理者ガイド』を参照してください。
Solaris オペレーティング環境は、新しいハードウェアのサポートに必要なソフトウェアを提供し続けます。
PC カードの標準では、68 ピンのインタフェースによってクレジットカードサイズの周辺機器とコンピュータの PC カードソケットを接続するように定義しています。また、この規格では、PC カードを挿入すると動的にコンピュータがカードを構成し、制御できるようにするソフトウェアアーキテクチャについても定義しています。
Solaris 2.6 では、PC カード標準を UNIX に実装すると共に、多数の市販 PC カード用ドライバを提供しています。Solaris カードサービスは、PC カードのドライバインタフェースをバインドするのに ANSI C 言語を使うので、特定のプラットフォームやホストアーキテクチャに依存しないドライバを記述することができます。
詳細については、Sun の外部 Web ページの Device Driver Kit Web サイトにある『Writing PCMCIA Device Drivers』を参照してください。
新しい filesync 機能は、ポータブルコンピュータとサーバーとの間でデータが自動的に転送されることを保証します。filesync は、通常、可搬的なシステムで使用しますが、継続してネットワークに接続されているシステムをバックアップしたりそのファイルを複製したりする場合にも役に立ちます。この機能の目的は、複数のシステムに存在する複製ファイルの同期をとることです。多くの場合、サーバーとポータブルコンピュータの間でファイルの同期をとります。
filesync コマンドを使うと、複数のシステム間で多数のファイルやディレクトリの同期を保持することができます。filesync は呼び出されると必ず、両方のシステム上にあるすべてのファイルを検証し、どのファイルが変更されたかを判断し、新規のファイルや削除されたファイル、または修正された部分などの変更情報をほかのシステムに伝えます。filesync は、システム間でどちらの方向に変更が行われた場合にも対処し、ファイル間で変更に競合が発生した場合にも対処します。
Solaris 2.6 では、従来の日本語 EUC に加えて PCK (シフト JIS あるいは MS 漢字コード) で日本語を扱う環境を新たに提供します。PCK は、Microsoft が Windows3.1 で規定したマイクロソフト標準キャラクタセットと同等の文字集合およびエンコーディングを提供するものです。また、PCK は、従来の Solaris リリースで MS 漢字コード (または シフト JIS) と呼ばれていたものに、ユーザー定義文字やベンダー定義文字を加えたもので、JIS X 0201、JIS X 0208 の 1-84 区 (13 区除く) までに関しては従来のものと互換性があります。
従来、Solaris は EUC (拡張 UNIX コード) をベースとした国際化機能をもとに日本語機能を提供してきましたが、Solaris 2.5.1 で、新たに CSI と呼ばれる EUC エンコーディングに依存しない機構を導入しました。これにより、Solaris 2.5.1 の「PC 漢字コード開発キット」(以降、PCK-DK とします) をインストールすることで、従来の EUC に加えて PCK でも各ライブラリの国際化機能を用いて、PCK をサポートするアプリケーションが開発できるようになりました。 Solaris 2.6 では、サポートするコマンド、ライブラリ、デスクトップなどをさらに追加することにより、日本語 EUC とほぼ同様な作業環境を提供します。これにより Solaris CDE の起動時から ja_JP.PCK ロケールで使用することが可能になりました。
ja_JP.PCK ロケールを使用する利点は、たとえばパソコンなどとの混在環境で使用する場合にあります。従来はパソコンなどにデータを渡す場合、漢字コードが異なるので漢字コードの変換作業が必要でした。しかし、ja_JP.PCK ロケールでは Solaris 上で PCK が直接扱えるため、この作業が不要になります。ja_JP.PCK ロケールを選択することにより、パソコンでネットワークを組んだ環境に新たに Solaris を導入することなどが、スムーズにできるようになります。
ただし、ja_JP.PCK ロケールのサポートは、既存の ja ロケール環境から ja_JP.PCK ロケール環境への移行を積極的におすすめする主旨のものではありません。ja_JP.PCK ロケールの環境にはいくつかの制限事項があります。さらに、Sun が提供する別パッケージ製品および多くのサードパーティのアプリケーションでは、ja_JP.PCK ロケールはサポートされていませんので、ユーザーのシステム環境で上記の ja_JP.PCK ロケールを使用する利点が特にない場合は、ja ロケールを使用することをおすすめします。 詳細については、『JFP ユーザーズガイド』を参照してください。
Solaris 2.6 から、『TOG (The Open Group) 日本ベンダ協議会推奨日本語 EUC・シフト JIS コード変換仕様』に基づく新しいコード変換規則が導入されました。
この変換規則に従うものは次の通りです。
iconv(1) コマンド
iconv(3) インタフェース
jconvs(7M)、jconvrs(7M) STREAMS モジュール
Solaris 2.6 では、LP 印刷サービスを使用して、日本語 PostScriptプリンタで日本語テキストを印刷することができます。従来、jtops を用いてクライアント側で PostScript に変換することにより、日本語テキストの印刷ができましたが、Solaris 2.6 から、サーバー側で変換する機能が加わりました。
Solaris 2.6 では日本語 PostScript プリンタをサポートするために次のファイルを提供します。
/usr/lib/lp/postscript/jpostprint
日本語テキストを日本語 PostScript に変換するフィルタ
/usr/lib/lp/postscript/jpostprint.conf
上記フィルタの構築ファイル
/etc/lp/fd/jpostprint.fd
上記フィルタの記述子ファイル
Solaris 2.6 では、LP 印刷サービスを使用して、日本語 PostScriptプリンタ、ドットマトリックス漢字プリンタ (EPSON VP-5085、 NEC PC-PR201)、日本語ページプリンタ (Canon LASERSHOT) で JIS X 0212、ユーザー定義文字を含む日本語テキストを印刷できるようになりました。JIS X 0212、ユーザー定義文字を印刷するためには、そのフォントを正しくインストールする必要があります。
ユーザー定義文字用のフォントには sdtudctool が出力する Type1 フォント、JIS X 0212 のフォントには SUNWjcs3f に含まれる Type1 フォントだけが使用できます。
JIS X 0212 のフォントには SUNWjxcft に含まれる 24 ドットの PCF フォントだけが使用できます。
ja_JP.PCK ロケールにおいて tty 端末制御を補佐する STREAMS モジュール (jconvrs) が導入されました。従来の STREAMS モジュールと協調して回線制御機能を提供するほか、シリアル回線でバイナリ転送などを行う際は自動的にコード変換機能を ON/OFF します。 またメモリー使用効率が約 50% 向上しています。これに同期して、従来のモジュール (jconv7/jconv8/jconvs) も変更されています。
JIS X 0208 を扱うものでは、更新番号を表すエスケープシーケンスに対応しました。 UTF-8 と日本語 EUC または PC 漢字コードとの変換をサポートしました。IBM 漢字コードとの変換では JIS X 0208 の 1983 年度版に対応しました。
jistoeuc(1) など、ISO-2022-JP 準拠のエンコーディングを入力するユーティリティは、"ESC 2/4 2/8 F" 形式のエスケープシーケンスを正しく扱えるようになりました。
euctoibmj(1) など、IBM 漢字コードとの変換を行うユーティリティは、JIS X 0208 の 1983 年度版に対応しました。
日本語ロケールにあらかじめユーザー定義文字領域を定義するようになりました。このため、ユーザー定義文字登録時に必要だった日本語ロケールの再定義作業が不要になりました。
Solaris 2.6 の CDE では、従来の ja ロケールに加え、PCK を扱える ja_JP.PCK ロケールをサポートしています。
TrueType フォントを X Window System および Display PostScript の両方から使用することができます。
これに伴い、従来のモリサワフォントにかえてリコー HG ゴシック体 B、HG 明朝体 L および、平成明朝体 W3H フォントを提供するようになりました。
NEC 特殊文字、および ja_JP.PCK ロケールで IBM 拡張文字を使えるようになりました。
JIS X 0208 1990 年度版でサポートされた 2 つのグリフを追加しました。
Solaris 2.5 および Solaris 2.5.1 で、参考のために東京大学和田研究室漢字分科会から 提供されていた JIS X 0212 1990 年度版補助漢字用フォントのかわりに、リコーの平成明朝体 W3 フォントを提供するようになりました。
ユーザー定義文字を別フォントとして作成できるようになりました。また、この方法で作成したユーザー定義文字は、ja ロケール、ja_JP.PCK ロケールで共用できます。
詳細については、『Solaris 2.6 オンラインリリース情報』を参照してください。
ユーザー定義文字が既存のフォントファイルと別のフォントファイルでサポートされるようになりました。
このため、Solaris 外字ツール sdtudctool が、Solaris CDE 環境で提供されます。なお、OpenWindows 環境では sdtudctool はサポートされませんが、CDE 環境で作成したユーザー定義文字は OpenWindows 環境上でも利用できます。
すでにユーザー定義文字を利用している場合は、移行作業が必要です。
ユーザー定義文字が登録可能な領域は、「TOG 日本ベンダ協議会推奨 日本語 EUC・シフトJIS コード変換仕様」に基づいた領域で定義され、以前のようなユーザー定義文字領域を定義するための日本語ロケールの再定義は必要ありません。
従来提供してきた F3 フォントに加え、TrueType フォントを扱えるようになりました。デフォルトの設定では、株式会社リコーの提供する HG ゴシック B、HG 明朝 L、また補助漢字には平成明朝体 W3H を利用できるようになっています。
詳細については、『Solaris 2.6 オンラインリリース情報』を参照してください。
新しく提供されているリコーのフォントはそれぞれ Ryumin-Light、GothicBBB-Medium に別名定義されています。これにより Solaris 2.5.1 以前のリリースで Ryumin-Light、GothicBBB-Medium を使用していた X 上のプログラムや DPS のアプリケーション、PostScript プログラムは、変更を加えずに Solaris 2.6 上で動作することができます。
なお、Solaris2.5.1 以前のリリースとの完全な互換性を得るために、F3 フォントを使用することもできます。詳細は、『Solaris 2.6 オンラインリリース情報』を参照してください。
Solaris の日本語入力システムとして、新たに Wnn6 が提供されるようになりました。Wnn6 は、Solaris CD に含まれるため、エンドユーザシステムサポート以上のクラスタで、標準でインストールされます。
ATOK8 が Solaris CD に含まれるようになり、エンドユーザーシステムサポート以上のクラスタでは、標準でインストールされます。
Wnn6、ATOK8、および cs00 が、日本語入力システムとして利用できます。これらすべての日本語入力システムがインストールされている場合は、特に環境ファイルを設定していない限り、Wnn6 がデフォルトになります。日本語入力システムを ATOK8 または cs00 に変更したい場合は、ワークスペースメニューから「ATOK8 に設定」または「cs00(htt) に設定」を選択して、ウィンドウシステムを再起動してください。
ワークスペースメニューには、次の位置に「日本語入力システム切替」という項目があります。
Solaris CDE 環境の場合
「ワークスペース・メニュー」
OpenWindows 環境の場合
「ワークスペース」=>「ユーティリティ」
この中から利用したい日本語入力システムを選択して、ウィンドウシステムを再起動してください。また、直接コマンド行から wnn6setup、atok8setup、または cs00setup を入力して、設定することもできます。
cs00 で、部首入力が可能になりました。$HOME/.mle/ja/cs00 ディレクトリの resources ファイルまたは keybind ファイルを編集して、キーの割り当てを変更している場合は、/etc/mle/ja/cs00 ディレクトリの resources ファイルまたは keybind ファイルをもとに再編集すると、部首入力が利用できます。
Solaris CDE 環境で利用できる cs00 ユーザー辞書ツールが新たにサポートされています。アプリケーション・マネージャーのデスクトップ・アプリケーションというカテゴリに起動アイコンがあります。コマンド行より直接起動する場合は、次のようにして起動することができます。
sun% /usr/dt/bin/sdtudicm & |
日本語 OpenWindows 環境では、udicmtool が今まで通り利用できます。