Solaris のシステム管理

第 47 章 端末とモデム管理の概要

この章では、端末やモデムを管理する場合の概要を説明します。この章の内容は次のとおりです。

Admintool で端末とモデムを設定する手順については、第 48 章「端末とモデムの設定」を参照してください。

SAF で端末とモデムを設定する手順については、第 49 章「サービスアクセス機能による端末とモデムの設定手順」を参照してください。

端末、モデム、ポート、サービス

端末とモデムは、システム資源とネットワーク資源をローカルおよびリモートでアクセスする手段を提供します。端末とモデムの設定はシステム管理者の重要な作業です。この節では、Solaris 2.x 環境でのモデムと端末の管理についての概要を説明します。

端末

システムのビットマップグラフィックスディスプレイは、シリアルポートに接続され、テキストしか表示できない英数字端末とは異なります。グラフィックスディスプレイは、特別な手順に従って管理する必要はありません。

モデム

モデムには次の 3 つの基本構成があります。

家庭用コンピュータに接続されるモデムの中には、「発信専用」サービス向けに設定されていることがあります。その場合、ユーザーは家から他のコンピュータにアクセスできますが、外からは誰もユーザーのコンピュータにアクセスできません。

「着信専用」サービスは発信専用のちょうど逆です。つまり、リモートサイトからはシステムにアクセスできますが、そのシステムから外側には呼び出しができません。

「発着信両用」アクセスは、その名前が示すとおり、着信専用、発信専用の両機能を持っています。

ポート

「ポート」とは、装置がオペレーティングシステムと通信するためのチャネルのことです。具体的には、端末やモデムのケーブルを差し込む「コンセント」と考えると一番わかりやすいでしょう。

ただし、ポートは厳密には物理的なコンセントではなく、その実体はハードウェア (ピンとコネクタ) とソフトウェア (デバイスドライバ) からなっています。多くの場合、1 つの物理的コンセントが複数のポートを備えており、複数の装置を接続できます。

一般的なポートとして、シリアル、パラレル、Small Computer Systems Interface (SCSI)、Ethernet などがあります。

「シリアルポート」は、標準の通信プロトコルを使用し、1 本の信号線で 1 バイト単位の情報を 1 ビットずつ送信します。

RS-232-C または RS-423 規格に準拠して設計されている装置 (大部分のモデム、英数字端末、プロッタ、一部のプリンタ) は、同様に設計されたコンピュータのシリアルポートにはどれにでも、標準ケーブルを使用して接続できます。

1 台のコンピュータに多数のシリアルポート装置を接続する場合は、システムに「アダプタボード」を追加する必要があることがあります。アダプタボードは、ドライバソフトウェアを使用することにより、より多くの装置を接続できるための追加のシリアルポートを提供します。

サービス

モデムや端末を使用すると、シリアルポートのソフトウェアを介してコンピュータ資源にアクセスできます。シリアルポートソフトウェアは、ポートに接続する装置向けに特定の「サービス」を提供するように設定しなければなりません。たとえば、モデムに対してはシリアルポートは発着信両用サービスを提供するように構成できます。

ポートモニター

特定のサービスへのアクセスは、主に「ポートモニター」を通して行います。ポートモニターとは、ログイン要求や、プリンタまたはファイルのアクセス要求を常に監視しているプログラムのことです。

ポートモニターは要求を検出すると、オペレーティングシステムとサービスを要求する装置との間の通信を確立するのに必要なすべてのパラメータを設定します。次に、必要なサービスを提供する他のプロセスに制御を移します。

表 47-1 で、Solaris 2.x 環境に取り入れられている 2 つのタイプのポートモニターを説明します。

表 47-1 ポートモニターのタイプ

ポートモニター 

説明 

listen(1M)

ネットワークサービスへのアクセスを制御し、リモート印刷要求やリモートファイルシステム要求を処理する。通常 listen は、LP 印刷サービスに対する要求を待っている。listen ポートモニターの詳細については、第 49 章「サービスアクセス機能による端末とモデムの設定手順」を参照。listen ポートモニターは、モデムや英数字端末の設定時には使用しない。

ttymon(1M)

モデムや英数字端末が必要とするログインサービスへのアクセスを提供する。Solstice シリアルポートマネージャは、それらの装置からのログイン要求を処理するように、ttymon ポートモニターを自動的に設定する。Solstice シリアルポートマネージャを使用して端末やモデムを設定する方法については、第 48 章「端末とモデムの設定」で説明している。

getty(1M) という従来のポートモニターをよく知っているユーザーもいるでしょう。新しい ttymon はさらに強力になりました。1 つの ttymon で複数の getty に相当する処理を行います。その他の点では、両プログラムの機能は同じです。

端末とモデムを管理するツール

表 47-2 では、端末とモデムの管理に推奨できるツールを取り上げます。また、サービスアクセス機能 (SAF) と SolsticeTM シリアルポートマネージャとで異なる点を説明します。

表 47-2 端末とモデムの管理に推奨できるツール

必要な作業 

推奨ツール 

参照箇所 

管理作業全般 

サービスアクセス機能 (SAF) のコマンド 

「サービスアクセス機能 (SAF)」

クイック設定 

Admintool のグラフィカルユーザーインタフェース (ローカルシステムのみ) 

第 48 章「端末とモデムの設定」

 

Solstice AdminSuite のシリアルポートマネージャのグラフィカルユーザーインタフェース (ローカルシステム、およびネットワーク環境またはネームサービス環境におけるリモートシステム) 

Solstice AdminSuite 2.3 管理者ガイド

表 47-3 Solstice シリアルポートマネージャとサービスアクセス機能の機能比較

手順 

推奨ツール 

説明 

ポートが使用不可であることをユーザーに通知する 

サービスアクセス機能 ttyadm -i

ttyadmin -i はポートが動作していない (使用不可にされている) ことを示す応答メッセージを引数で指定する。ポートが使用不可のときにユーザーがログインしようとすると、端末やモデムにこのメッセージが送られる。この機能は、Solstice シリアルポートマネージャを使用してポートを使用不可にした場合は提供されない。

ホストからログアウトするときにモデムの接続を継続する 

サービスアクセス機能 ttyadm -h

ttyadm -h は、デフォルトや特定の指定値に設定したりリセットしたりする前に、システムがモデムをハングアップしないよう指定する。ttyadm -h を使用しなければ、ホストからログアウトするとき、ホストがモデムをハングアップさせる。

ユーザーが文字を入力した後にシステムにプロンプトを表示させる 

サービスアクセス機能 ttyadm -r

ttyadm -r は、ユーザーが 1 文字入力するか、Return キーを指定回数押すと、ログインプロンプトが表示されるように指定する。-r を指定しなくても、Return キーを 1 回以上押すと、結局プロンプトは表示される。-r オプションを使用することにより、Solaris ホストが誤解してログインを試みることがないように、端末サーバーに歓迎メッセージを発行させないようにできる。-r オプションを使用しなければ、ホストと端末サーバーがループに入ってしまい、互いにプロンプトを発行し合うおそれがある。

Admintool

Admintool は、pmadm コマンドを呼び出すことにより、シリアルポートソフトウェアを設定して端末やモデムを管理します。また、次の機能も提供します。

サービスアクセス機能 (SAF)

SAF は、端末、モデム、その他のネットワーク装置の管理用のツールです。SAF では特に次の設定を行います。

SAF は、tty 装置やローカルエリアネットワーク (LAN) を通して行われるシステム資源やネットワーク資源へのアクセスを制御するオープンシステムソルーションです。SAF はプログラムではなく、バックグランドプロセスと管理用コマンドの階層構造になっています。