オペレーティングシステムのソフトウェアをインストールするときに、同時にネットワークのソフトウェアもインストールされます。そのときに、いくつかの IP 構成パラメータを対応するファイルに格納して、ブート時に読み取れるようにしておく必要があります。
ここで必要な手順は、単にネットワーク構成ファイルを作成または編集するというだけのことです。構成情報がどのようにマシンのカーネルに対して使用可能にされるかは、構成ファイルがローカルに格納されているか (ローカルファイルモード)、それともネットワーク構成サーバから構成ファイルを入手するか (ネットワーククライアントモード) によって異なります。
ネットワーク構成時に指定するパラメータには、次のものがあります。
すべてのマシンの各ネットワークインタフェースの IP アドレス
ネットワーク上の各マシンのホスト名。ホスト名は、ローカルファイルまたはネームサービスデータベースに入力できる
マシンが常駐している NIS、NIS+、または DNS ドメイン名 (該当する場合)
デフォルトのルータアドレス。これを指定するのは、各ネットワークにルータが 1 つしか接続していないような単純なネットワークトポロジの場合か、または、ルータが、RDISC (Router Discovory Protocol) や RIP (Routing Information Protocol) などのルーティングプロトコルを実行しない場合だけである。(これらのプロトコルについての詳細は、第 5 章「ルータの構成」を参照してください)
サブネットマスク (サブネットを持つネットワークの場合に限り必要)
この章には、ローカル構成ファイルの作成と編集に関する詳しい情報を収めてあります。ネームサービスデータベースの処理については、『Solaris ネーミングの管理』を参照してください。
ローカルファイルモードで働くマシン上の TCP/IP を構成するための手順は、次のとおりです
スーパーユーザになり、/etc ディレクトリに移動します。
マシンのホスト名を /etc/nodename ファイルに入力します。
たとえば、ホストの名前が tenere であるとすれば、このファイルに tenere と入力します。
各ネットワークインタフェースについて、/etc/hostname.interface という名前のファイルを作成します
(一次ネットワークインタフェースについては、Solaris インストールプログラムが自動的にこのファイルを作成します)。
詳細は、「/etc/hostname.interface ファイル」を参照してください。
/etc/hostname.interface ファイルに、インタフェース IP アドレスかインタフェース名を入力します。
たとえば、hostname.ie1 という名前のファイルを作成し、ホストのインタフェースの IP アドレスか、ホスト名を入力します。
/etc/inet/hosts ファイルを編集して、以下のものを追加します。
ローカルマシンに増設したネットワークインタフェースに割り当てた IP アドレスと、各インタフェースのホスト名
一次ネットワークインタフェースとループバックアドレスについてのエントリは、すでに Solaris インストールプログラムにより作成されています。
/usr ファイルシステムを NFS マウントする場合は、ファイルサーバの IP アドレス
Solaris インストールプログラムは、ローカルマシン用のデフォルトの /etc/inet/host を作成します。このファイルが存在していない場合は、「hosts データベース」の説明に従って作成してください。
完全指定のドメイン名を、/etc/defaultdomain ファイルに入力します。
たとえば、ホスト tenere がドメイン deserts.worldwide.com に所属しているとします。その場合は、/etc/defaultdomain に deserts.worldwide.com を入力します。詳細は、 「/etc/defaultdomain ファイル」を参照してください。
ルータの名前を、/etc/defaultrouter に入力します。
詳細は、「/etc/defaultrouter ファイル」を参照してください。
デフォルトのルータの名前とその IP アドレスを、 /etc/inet/hosts に入力します。
上記以外にも、使用できるルーティングオプションがいくつかあります。 「ネットワーククライアントモードの場合のホストの構成方法」の中の、ルーティングオプションについての説明を参照してください。これらのオプションは、ローカルファイルモード構成にも適用できます。
ネットワークをサブネット化する場合は、ネットワーク番号とネットマスクを、/etc/inet/netmasks ファイルに入力します。
NIS または NIS+ サーバを設定してある場合は、サーバとクライアントが同じネットワーク上にあれば、サーバ上の該当のデータベースにネットマスク情報を入力できます。
いくつかのホストをネットワーククライアントとして構成することを予定している場合は、ネットワーク上のマシンの少なくとも 1 つは、ネットワーク構成サーバとして構成する必要があります (方法については、 「ネットワーク構成サーバ」を参照してください)。
ネットワーク構成サーバの設定には、次のような操作が必要です。
ネットワーク構成デーモンが動作するようにします。
in.tftpd
in.rarpd
rpc.bootparamd
構成サーバ上のネットワーク構成ファイルを編集し保守します。
「ネットワーク構成サーバの設定方法」では、ネットワーク構成サーバをすでにローカルファイルモード用として設定してあるものとします。
スーパーユーザになり、予定しているネットワーク構成サーバのルートディレクトリに移動します。
ディレクトリ /tftpboot を作成することにより、in.tftpd デーモンが動作するようにします。
# mkdir /tftpboot
これで、マシンは、TFTP、bootparams、RARP のサーバに構成されます。
2. で作成したディレクトリに対するシンボリックリンクを作成します。
# ln -s /tftpboot/. /tftpboot/tftpboot
inetd.conf ファイルにある tftp の行を有効にします。
/etc/inetd.conf のエントリが次のようになっていることを確認してください。
tftp dgram udp wait root /usr/sbin/in.tftpd in.tftpd -s /tftpboot
これによって、/tftpboot に格納されたファイル以外のファイルを inettftpd() で検索できなくなります。
hosts データベースを編集して、ネットワーク上のすべてのクライアントのホスト名と IP アドレスを追加します。
ethers データベースを編集して、ネットワーククライアントモードで実行するネットワーク上のすべてのホストについてエントリを作成します。
bootparams データベースを編集します。
「bootparams データベース」を参照してください。ワイルドカードエントリを作成するか、または、ネットワーククライアントモードで実行するすべてのホストについてエントリを作成します。
サーバをリブートします。
ディスクレスクライアント、インストールサーバ、ブートサーバを設定する方法については、『Solaris のインストール (上級編)』を参照してください。
ネットワーククライアントは、各自の構成情報をネットワーク構成サーバから入手します。したがって、あるホストをネットワーククライアントとして構成するときは、このネットワーク用として、ネットワーク構成サーバが少なくとも 1 つは設定されていることを確認してください。
ネットワーククライアントモードで構成する必要のある各ホストについて、次のことを行います。
スーパーユーザになります。
ディレクトリを調べて、/etc/nodename ファイルがあるかどうかを確認します。それがある場合は、削除してください。
/etc/nodename を削除すると、システムは hostconfig プログラムを使用して、ネットワーク構成サーバから、ホスト名、ドメイン名、ルータアドレスを入手するようになります。「ネットワーク構成手順」を参照してください。
/etc/hostname.interface ファイルが存在していない場合は、それを作成します。
そのファイルが空であることを確かめてください。/etc/hostname.interface ファイルが空であれば、システムは、ネットワーク構成サーバから IP アドレスを入手します。
/etc/inet/hosts ファイルに、ループバックネットワークインタフェースのホスト名と IP アドレス以外のものが入っていないことを確認します。
(「ループバックアドレス」を参照してください)。このファイルには、ローカルマシン (一次ネットワークインタフェース) の IP アドレスとホスト名が入っていてはいけません。
例外: ディスクレスクライアント (NFS マウントされたルートファイルシステムを持つマシン) の場合は、クライアントのルートファイルシステムを提供するサーバの名前と IP アドレスを入力します (通常はこれはネットワーク構成サーバですが、必ずそうだというわけではありません)。
/etc/defaultdomain ファイルがあるかどうかを調べます。ある場合は、それを削除します。
hostconfig プログラムは、自動的にドメイン名を設定します。hostconfig プログラムが設定したドメイン名を上書きしたいときは、/etc/defaultdomain に代わりのドメイン名を入力します。
クライアントの /etc/nsswitch.conf の中の検索順序が、ネットワークのネームサービスの要件を満たしていることを確認します。
ネットワーク上にルータが 1 つしかなく、ネットワーク構成サーバが自動的にそのルータの名前を指定するようにしたい場合は、ネットワーククライアントが /etc/defaultrouter ファイルを持っていないことを確認します。
次の手順に従って、ネットワーク構成サーバが設定したデフォルトのルータの名前を上書きします。
ネットワークに複数のルータがある場合は、ネットワーククライアント上に /etc/defaultrouter を作成し、それを空のままにしておきます。
/etc/defaultrouter を作成し、それを空のままにしておくと、2 つの動的ルーティングプロトコル、つまり、ICMP RDISC (Router Discovory Protocol) か RIP (Routing Information Protocol) のどちらか一方が実行されます。システムは、まず in.rdisc プログラムを実行します。このプログラムは、ルータ検出プロトコルを実行しているルータを捜します。該当するルータが見つかった場合は、in.rdisc はそのまま実行を続け、RDISC プロトコルを実行するルータを追跡し続けます。
RDISC プロトコルに応答しているルータがないと判断した場合は、システムは RIP を使用し、in.routed デーモンを実行してルータを追跡します。
各ネットワーククライアントマシン上のファイルを編集し終わったら、ネットワーク構成サーバで次の作業を行います。
bootparams データベースにそのホストのエントリを追加します。
操作を簡単にするために、bootparams データベースには、各ホストのエントリを個別に入力する代わりに、ワイルドカードを入力することができます。その例については、「bootparams データベース」を参照してください。