レプリケーションアグリーメントを作成し、両方のレプリカを設定したら、レプリケーションを開始する前に、コンシューマのレプリカサフィックスを初期化する必要があります。初期化時は、サプライヤのレプリカサフィックスからコンシューマのレプリカサフィックスにデータが物理的にコピーされます。
さらに、特定のエラーが発生した場合、または設定を変更した場合は、レプリカを初期化し直す必要があります。たとえば、何らかの理由で 1 つのマスターのレプリカサフィックスをバックアップから復元した場合、そのレプリカが更新するすべてのレプリカを初期化し直す必要があります。
初期化し直したときは、コンシューマ側のレプリケートされたサフィックスは削除され、マスター側のサフィックスの内容に置き換えられます。これにより、レプリカの同期が確保され、レプリケーションの更新が再開されます。この節で説明するどの方法で初期化を行なっても、コンシューマレプリカのインデックスは自動的にふたたび作成されるため、クライアントからの読み取り要求にもただちに正しく対応できます。
マルチマスターレプリケーションでは、トポロジのほかのマスターによって更新されたコンシューマであれば、初期化し直す必要がない場合もあります。
既存のレプリケーションアグリーメントを使用して、リモートサーバーからサフィックスを初期化できます。この初期化方法は、他の方法より簡単なため、可能な限りこの方法を使用します。データが大量でインポートに時間がかかりすぎる場合にのみ他の方法を使用してください。
このタスクは DSCC を使用して実行することができます。詳細については、「Directory Service Control Center のインタフェース」および DSCC オンラインヘルプを参照してください。
DSCC を使用したレプリケートされたサフィックスのオンライン初期化は、コンシューマを初期化または再初期化する簡単な方法です。ただし、大量のエントリを初期化する場合、この処理には時間がかかることがあります。この場合は、コマンド行によるコンシューマのオフライン初期化の方が効率的な場合があります。
レプリカを初期化します。
$ dsconf init-repl-dest -h host -p port suffix-DN destination-host:destination-port [destination-host:destination-port] |
destination-host:destination-port はホストおよびターゲットサーバーのポートで、リモートサーバーから初期化します。
(省略可能) 各アグリーメントで、サフィックスが初期化済みとなっていることを確認します。
$ dsconf show-repl-agmt-status -h host -p port suffix-DN destination-host:destination-port |
次の手順では、LDIF ファイルからレプリケートされたサフィックスを初期化するために使用する一般的な手順を説明します。
このタスクは DSCC を使用して実行することができます。詳細については、「Directory Service Control Center のインタフェース」および DSCC オンラインヘルプを参照してください。
DSCC を使用したレプリケートされたサフィックスのオンライン初期化は、コンシューマを初期化または再初期化する簡単な方法です。ただし、大量のエントリを初期化する場合、この処理には時間がかかることがあります。この場合は、コマンド行によるコンシューマのオフライン初期化の方が効率的な場合があります。
レプリケーションアグリーメントを設定していることを確認します。
この操作は、レプリカを初期化する前に実行する必要があります。
マスターのレプリカサフィックスから、元のサフィックスデータのコピーを LDIF ファイルにエクスポートします。
「レプリケートされたサフィックスを LDIF にエクスポートする」を参照してください。
マルチマスターレプリケーション環境では、オリジナルマスターからエクスポートした LDIF ファイルを使用して他のマスターとコンシューマの両方を初期化できます。カスケード型のレプリケーションでは、同じファイルを使用してハブレプリカとそのコンシューマを初期化できます。
どの場合にも、設定が完了しているマスターレプリカからエクスポートした LDIF ファイルから開始する必要があります。これ以外の任意の LDIF ファイルにはレプリケーションメタデータが含まれないため、これを使用してすべてのレプリカを初期化することはできません。
部分レプリカを初期化する場合、ファイルをフィルタして、レプリケートされる属性のみを維持し、そのファイルをすべてのコンシューマサーバーに転送します。
「部分レプリケーションのための LDIF ファイルのフィルタリング」を参照してください。
レプリカを初期化します。
次のいずれかの操作を行います。
オフライン (停止している) サーバーで高速に初期化する場合、dsadm import コマンドを使用します。
$ dsadm import instance-path LDIF_file suffix-DN |
LDIF ファイルからレプリカをオンラインで初期化するには、 dsconf import コマンドを使用します。
$ dsconf import -h host -p port LDIF_file suffix-DN |
dsconf import を使用すると、dsadm import を使用した場合よりも遅くなりますが、インポート操作中にサーバーを停止する必要がありません。
サフィックスの初期化の詳細と例については、「サフィックスの初期化」を参照してください。コマンドの詳細な使い方については、dsadm(1M) および dsconf(1M) を参照してください。
(省略可能) 各アグリーメントで、サフィックスが初期化済みとなっていることを確認します。
$ dsconf show-repl-agmt-status -h host -p port suffix-DN destination-host:destination-port |
このタスクは DSCC を使用して実行することができます。詳細については、「Directory Service Control Center のインタフェース」および DSCC オンラインヘルプを参照してください。
次のいずれかのコマンドを使用して、レプリケートされたサフィックスの内容を LDIF ファイルにエクスポートします。
オフラインエクスポートの場合、次のように入力します。
$ dsadm export instance-path suffix-DN LDIF_file |
オンラインエクスポートの場合、次のように入力します。
$ dsconf export -h host -p port suffix-DN LDIF_file |
次の例では、レプリケートされたサフィックス dc=example,dc=com 全体とレプリケーション情報をファイル example_replica_export.ldif にエクスポートします。
$ dsconf export -h host2 -p 1389 dc=example,dc=com \ /local/ds/ldif/example_export_replica.ldif |
詳細については、「LDIF へのバックアップ」 および dsadm(1M) および dsconf(1M) のマニュアルページを参照してください。
DSCC を使った場合、部分レプリケーションが設定されたレプリカの初期化は透過的に行われます。初期化時に、選択されている属性だけがコンシューマに送られます。
部分レプリケーションを設定した場合、エクスポートされた LDIF ファイルをコンシューマサーバーにコピーする前に、未使用の属性をフィルタで除外します。Directory Server にはこの目的で fildif ツールがあります。このツールは、指定した LDIF ファイルをフィルタリングし、レプリケーションアグリーメントに定義されている属性セットが許可する属性だけを残します。
このツールはサーバーの設定を読み取り、属性セットの定義を決定します。設定ファイルを読み取るには、fildif ツールを root として実行するか、プロセスおよびファイルを所有するユーザー (nsslapd-localuser 属性によって指定) として実行する必要があります。たとえば、次のコマンドは、前の例で dc=example,dc=com サフィックスからエクスポートされたファイルをフィルタリングします。
$ fildif -i /local/ds1/ldif/example_master.ldif \ -o /local/ds1/ldif/filtered.ldif -b "cn=host2.example.com:1389, \ cn=replica,cn=\\"dc=example,dc=com\\",cn=mapping tree,cn=config" -p /local/ds1 |
fildif コマンドの場所については、「コマンドの場所」を参照してください。
-i オプションと -o オプションは、それぞれ入力ファイルと出力ファイルです。-b オプションは、部分レプリケーションが定義されているレプリケーションアグリーメントの DN です。次のコマンドを使用して、この DN を検索できます。
$ ldapsearch -h host -p port -D cn=admin,cn=Administrators,cn=config -w - \ -b "cn=config" "(&(objectclass=nsds5replicationagreement) (nsDS5ReplicaPort=replica-port) \ (nsDS5ReplicaHost=replica-host))" dn |
次に例を示します。
$ ldapsearch -h host2 -p 1389 -D cn=admin,cn=Administrators,cn=config -w - \ -b "cn=config" "(&(objectclass=nsds5replicationagreement) \ (nsDS5ReplicaPort=2090)(nsDS5ReplicaHost=host2))" dn Enter bind password: version: 1 dn: cn=host2:1389,cn=replica,cn=dc\=example\,dc\=com,cn=mapping tree,cn=config |
fildif ツールのすべてのコマンド行構文については、fildif(1) のマニュアルページを参照してください。
fildif ツールを使用して作成した filtered.ldif ファイルを使用して、このレプリケーションアグリーメントの対象となるコンシューマを初期化できます。このファイルをコンシューマサーバーに転送し、「LDIF ファイルからのデータのインポート」で説明するとおりにインポートします。
バイナリコピーにより、サーバーのバイナリバックアップファイルを使用して、別のサーバーに同じディレクトリの内容を復元することで、サーバー全体のクローンを作成できます。バイナリコピーを使用して、マスターまたはハブサーバーのバイナリコピーから任意のサーバーを初期化または再初期化できます。または別のコンシューマサーバーのバイナリコピーからコンシューマを初期化または再初期化できます。
この高度な手順では、Directory Server 上のデータベースファイルとの間で情報をやり取りします。この機能は、経験が豊富な管理者以外は使用しないでください。
この機能にはある種の制限が適用されるため、処理時間の短縮を見込めるのは、たとえば百万件単位のエントリを含むレプリカなど、大容量のデータベースファイルを持つレプリカだけです。
バイナリコピーは、あるマシンから別のマシンにデータベースファイルを移動するため、次の制限が厳密に適用されます。
両方のマシンが同じオペレーティングシステム (サービスパックやパッチも含む) を実行している必要があります。
両方のマシンで同じプロセッサアーキテクチャーを使用している必要があります。たとえば、2 台の UltraSPARC® T1 プロセッサ間でバイナリコピーを実行できますが、UltraSPARC T1 プロセッサと AMD Opteron プロセッサ間では実行できません。
両方のマシンがビッグエンディアンかリトルエンディアンである必要があります。
両方のマシンがメモリーを同じようにマップしている必要があります。たとえば、2 台の 64 ビットシステム上のサーバーインスタンス間でバイナリコピーを実行できますが、32 ビットシステムのサーバーインスタンスと、64 ビットシステムの別のサーバーインスタンス間では実行できません。
両方のマシンに同じバージョンの (バイナリ形式 (32 ビットまたは 64 ビット)、サービスパック、パッチも含まれる) Directory Server がインストールされている必要があります。
両方のサーバーは、同じサフィックスに分岐する同じディレクトリツリーを持つ必要があります。すべてのサフィックスのデータベースファイルを一緒にコピーする必要があります 。サフィックスを個別にコピーすることはできません。
両方のサーバーの各サフィックスには、同じインデックス (VLV (仮想リスト表示) インデックスも含む) が設定されている必要があります。サフィックスのデータベースの名前を同じにする必要があります。
各サーバーに、レプリカとして同じサフィックスが設定されている必要があります。
部分レプリケーションが設定されている場合は、すべてのサーバーが同じように設定されている必要があります。
どちらのサーバーでも、属性の暗号化は使用できません。
属性値の一意性プラグインが有効な場合は、両方のサーバーで同じ設定にします。また、次の手順で、新しいコピーを設定し直す必要があります。
以下の手順では、バイナリコピーを実行する別の方法について説明します。サーバーを停止する必要がないバイナリコピーと使用ディスク容量が最小ですむバイナリコピー。
この節では、サーバーを初期化するためのバイナリコピーの作成方法と、使用ディスク容量が最小になるバイナリコピーの作成方法について説明します。
次の手順を使用して、レプリケートするサーバーを初期化するためのバイナリコピーを実行します。通常のバックアップ機能を使用して、サーバーのデータベースファイルのコピーを作成するためです。通常のバックアップを実行することで、サーバーを停止しなくても、すべてのデータベースファイルを一定の状態に維持できます。
この手順には特定の制限があります。バックアップと復元の処理によって、同じマシンにデータベースファイルのコピーが作成されるため、各マシンでこれらのファイルが占有するディスクスペースの容量が 2 倍になります。また、これらのファイルに対する実際のコピー処理は、ディレクトリに G バイト単位のデータが含まれる場合、時間がかかることがあります。
この手順のいくつかの部分では、DSCC を使用してこのタスクを実行できます。詳細については、「Directory Service Control Center のインタフェース」 および DSCC オンラインヘルプを参照してください。手順のその他の部分については、コマンド行を使用した場合にのみ実効できます。
新しくレプリケートされたサフィックスのターゲットマシンに Directory Server をインストールし、必要に応じてサーバーの新しいインスタンスを作成して、「レプリケーションでのバイナリコピーの使用の制限」に従って、サーバーを設定します。
このレプリケートされたサフィックスに関連するレプリケーショントポロジにすべてのレプリケーションアグリーメントを作成します。
サプライヤからこのレプリカにアグリーメントを含めます。このレプリカが専用コンシューマでない場合は、このレプリカからそのコンシューマにアグリーメントを含めます。「レプリケーションアグリーメントの作成と変更」を参照してください。
初期化するレプリカと同じ種類 (マスター、ハブ、コンシューマのいずれか) の、完全に設定され、初期化されたレプリカを選択し、「バイナリバックアップ」の手順に従って通常のバックアップ処理を行います。
バックアップディレクトリからターゲットマシンのディレクトリにファイルをコピーまたは転送します。この操作には、ftp コマンドなどを使います。
マルチマスターレプリケーションの状況で新しいマスターを初期化した場合、「マルチマスターモデルでのマスターの復元」の手順に従います。
この手順では、データベースファイルのバックアップコピーを作成しないため、ディスクスペースの消費が少なく、処理に要する時間も少なくなります。ただし、データベースファイルを一貫した状態に保つため、クローン作成の対象となるサーバーを停止する必要があります。
マルチマスターレプリケーションにすでに組み込まれているマスターの再初期化に、この手順を使うことはできません。この手順を利用できるのは、コンシューマサーバーの再初期化、または新しいマスターサーバーの初期化だけです。既存のマスターレプリカを再初期化するには、オンライン初期化を使用して、LDIF ファイルをインポートするか、「サーバーを初期化するためのバイナリコピーの作成」の手順に従います。
この手順のいくつかの部分では、DSCC を使用してこのタスクを実行できます。詳細については、「Directory Service Control Center のインタフェース」 および DSCC オンラインヘルプを参照してください。手順のその他の部分については、コマンド行を使用した場合にのみ実効できます。
新しくレプリケートされたサフィックスのターゲットマシンに Directory Server をインストールし、必要に応じてサーバーの新しいインスタンスを作成して、「レプリケーションでのバイナリコピーの使用の制限」に従って、サーバーを設定します。
このレプリカに関連するレプリケーショントポロジにすべてのレプリケーションアグリーメントを作成します。
サプライヤからこのレプリカにアグリーメントを含めます。このレプリカが専用コンシューマでない場合は、このレプリカからそのコンシューマにアグリーメントを含めます。「レプリケーションアグリーメントの作成と変更」を参照してください。
「Directory Server インスタンスの起動、停止、および再起動」で説明するように、初期化または再初期化するターゲットサーバーを停止します。
初期化するレプリカと同じ種類 (マスター、ハブ、コンシューマのいずれか) の、完全に設定され、初期化されたレプリカを選択し、このサーバーも停止します。
マルチマスター設定に組み込まれているマスターレプリカのクローンを作成するときは、それを停止する前に、その他のマスターから最新のすべての変更が完全に反映されていることを確認する必要があります。
トランザクションログ、更新履歴ログ、地域ファイル (__db.xxx ファイル) など、すべてのデータベースファイルをターゲットサーバーから削除します。
ファイルの位置を変更していないかぎり、データベースファイルとトランザクションログは instance-path/db ディレクトリに保存されています。
ftp コマンドなどを使用して、トランザクションログや更新履歴ログを含むすべてのデータベースファイルをソースレプリカマシンからターゲットマシンにコピーするか、転送します。
ファイルの位置を変更していないかぎり、データベースファイルとトランザクションログは instance-path/db ディレクトリに保存されています。
マスターまたはハブレプリカを初期化する場合は、更新履歴ログにあるすべてのファイルもコピーする必要があります。更新履歴ログはデフォルトで instance-path /changelog にあります。
ソースサーバーとターゲットサーバーの両方を再起動します。
カスケード型レプリケーションの場合、常に次の手順に示す順番でレプリカを初期化します。
このタスクは DSCC を使用して実行することができます。詳細については、「Directory Service Control Center のインタフェース」および DSCC オンラインヘルプを参照してください。