1


はじめに

このマニュアルでは、AllStart コントロールモジュールの機能とグラフィカルユーザーインタフェースを説明するほか、Red Hat Linux、SuSE Linux、x86 上で稼働する Solaristrademark オペレーティングシステム、および x86 上で稼働する Sun Javatrademark Desktop System (JDS) での AllStart の使用上の注意について説明します。

この章では AllStart の機能を紹介し、このモジュールを正しく動作させるために満たす必要がある条件、および AllStart コントロールモジュールを使用するにあたって必要な事項を簡単に説明します。


AllStart モジュールについて

AllStart コントロールモジュールはソフトウェアを配備するシステムであり、Suntrademark Control Station を使用して対応 OS を関連するソフトウェアパッケージとともに初期インストールする作業を自動化します。この AllStart モジュールの機能を使用すれば、特定の構成を多数のクライアントにインストールし、自動的にソフトウェアをインストールすることができます。

AllStart は、Sun Control Station 2.2 基本ソフトウェアとともに専用サーバーにインストールされます。この専用サーバーは「コントロールステーション」と呼ばれます。ソフトウェアのインストールについては、『Sun Control Station 2.2 ソフトウェアのインストール』を参照してください。

AllStart コントロールモジュールは、ソフトウェアペイロードの作成、クライアントプロファイルの定義、およびシステムインストールのモニター/確認用の共通ユーザーインタフェースを提供します。

この AllStart モジュールのグラフィカルユーザーインタフェースで実行できる機能は、次のとおりです。

AllStart モジュールには、Red Hat Kickstart、SuSE AutoYaST、Solaris JumpStarttrademark 技術が統合されており、Linux ベースシステムおよび Solaris x86 システムを、簡単に、同じ方法で自動的にインストールしたりカスタマイズしたりできます。

Red Hat Kickstart

Kickstart は Red Hat 機能の 1 つで、下に示すような Red Hat Linux インストール時のほとんどの作業を自動化します。

Kickstart では、通常はキーボードを使って入力するような情報を設定ファイルに含めることにより、インストールプロセスを自動的に実行できます。Kickstart はまた、Red Hat Linux のディストリビューションに含まれていないソフトウェアを追加インストールするために使うこともできます。

Kickstart の詳細は、次の URL から該当する Red Hat のマニュアルを参照してください。http://www.redhat.com/docs/

Sun Java Desktop Systems AutoYaSt

AutoYaST は、1 つまたは複数の Sun Java Desktop System を自動的かつユーザーの介在なしにインストールできるシステムで、インストーラである YaST2 と完全に統合されています。

AutoYaST ツールは、1 つまたは複数のシステム設定が可能です。設定内容は制御ファイルに保管され、自動インストール時に読み込まれます。またインストーラによってさまざまな方法で利用されます。

AutoYaST による設定は XML ベースで行われ、設定内容は YaST2 の設定モジュールと完全な互換性があります。

AutoYaST を使用することで、同じ環境とハードウェアを共有し、類似のタスクを実行する複数のシステムを、並行して簡単にインストールできます。設定ファイル (制御ファイルと呼ぶ) は、既存の設定リソースを使用して作成されます。制御ファイルは、それぞれ特定の環境に従って簡単にカスタマイズできます。

AutoYaST の詳細は、次の URL から該当する SuSE のマニュアルを参照してください。http://www.suse.com/

Solaris JumpStart

JumpStart ソフトウェアはシステムインストールを自動化するもので、Solaris ソフトウェアをシステムに自動的かつユーザーの介在なしにインストールすることができます。インストールは、個々のソフトウェアインストール要件を定義する作成済みプロファイルに基づいて行われます。インストールタスクを含めたシェルスクリプトを組み込むことも可能です。JumpStart は Solaris S9 x86 用の技術です。

インストールを自動化するため、JumpStart はプロファイルから次の情報を使用します。

JumpStart の詳細は、次の URL から該当する Solaris インストールマニュアルを参照してください。
http://www.sun.com/documentation


AllStart の必要条件

AllStart コントロールモジュールを正確に動作させるためには、次の条件をすべて満たす必要があります。

たとえば、通常の Linux OS ディストリビューションは約 2 G バイト程度になります。さらに、それら ISO ファイルはペイロードの作成時にほかのディレクトリにコピーされるため、使用されるディスク容量はその倍を見積もる必要があります。

アップロード中に ISO イメージはマウントされ、RPM ファイルは /scs/share/allstart/distro_id/ ディレクトリにコピーされます。OS ディストリビューションの読み込みが成功すれば、ISO イメージは削除できます。


AllStart モジュールを使用するための手順 - 作業概要

ここでは、AllStart コントロールモジュールからクライアントをインストールし、配備するにあたって必要な事項を簡単に説明します。「AllStart」メニューの各手順と説明について詳しくは、第 2 章を参照してください。

AllStart コントロールモジュールを使用するための手順は、大きく分けると次に示す作業から構成されます。

1. ファイル、ディストリビューション、およびスクリプトを追加します。

2. ファイルとディストリビューションからペイロードを作成します。

3. 設定情報、認証情報、およびスクリプトを含むプロファイルを作成します。

4. ペイロードとプロファイルをインストールするクライアントを選択し、クライアントエントリを有効化します。

5. ネットワークから起動 (「ネットブート」) するクライアントを設定し、そのクライアントを再起動して Sun Control Station からペイロードとプロファイルを受け取るようにします。

6. 管理対象ホストを Sun Control Station に追加します。

ファイルとディストリビューションの追加

リモートロケーション、あるいはコントロールステーション上のローカルディレクトリからファイルの追加やディストリビューションのアップロードが行えます。これらのファイルとディストリビューションは、OS の一部としてクライアントにインストールされるペイロードの定義に使用されます。サポートされているディストリビューションの一覧については、『Sun Control Station 2.2 ソフトウェアのインストール』を参照してください。

ペイロードの作成

「ペイロード」は、OS ディストリビューションと、それとともにバンドルされる個別ファイルから構成されます。

ペイロードに含めたい OS ディストリビューションのコンポーネントを選択できます。個別ファイルは、ディストリビューションのインストール後に、クライアント上にインストールされます。

それらのファイルやディストリビューションは、OS に応じてローカルにあるいは CD-ROM 上に保管できます。Solaris OS ディストリビューション用にペイロードを作成する場合は、CD-ROM ではなく必ず DVD ISO イメージを使用してください。

ディストリビューションをローカルに保管する場合、/scs/data/allstart/iso/ に保存する必要があります。

それぞれのペイロードには、一意の、記述的な名前を設定します。

プロファイルの作成

「プロファイル」とは、ペイロードに従ってクライアントに適用される設定情報を含むものです。セキュリティに関する設定も、プロファイルに設定できます。

プロファイルのパラメータは OS によって異なりますが、次のような項目が含められます。

カスタムスクリプトの追加

カスタムスクリプトをローカルファイルシステムからアップロードして、スクリプトを追加、削除、修正することができます。このカスタムスクリプト機能は、「AllStart」メニューから利用できます。

クライアントの追加

「クライアント」とは、OS とともにインストールおよび配備されるシステムです。クライアントには、ペイロードとプロファイルをインストールします。

クライアント情報のパラメータには、次のような項目があります。

クライアントの有効化または無効化

クライアントエントリを作成した後、「AllStart Clients」テーブル内でそのクライアントを「有効化」し、ネットワーク上の対象のクライアントに見えるようにする必要があります。



注 - 再起動するとビルドを開始できるようクライアントのブートローダーが変更されるため、管理対象ホストは自動的に有効になります。クライアントの PXE およびネットブートに DHCP を使用するには、クライアントを再度有効化する必要があります。クライアントの有効化を参照してください。



クライアントエントリの有効化を行わなければ、そのクライアントエントリが「見え」ないため、ネットブートを行なっても、そのクライアントはペイロードとプロファイルを受け取ることはできません。

クライアントへのペイロードとプロファイルのインストール

クライアントを構成してネットワークから起動します。

この設定を行うことで、クライアントを再起動すると、クライアントが Control Station からペイロードとプロファイルを「pull」動作で引き出せるようになります。また、この動作に対しては、「AllStart Clients」テーブル内でクライアントエントリを有効化する必要があります。



注 - インストールは、Sun Control Station からクライアントへの、アクティブな「push」操作ではありません。クライアントは、Control Station から、ペイロードとプロファイルを「pull」しなければなりません。つまり、「AllStart Clients」テーブル内のクライアントエントリに従って、クライアントはペイロードとプロファイルを受け取ることになります。



Sun Control Station への新規クライアントのインポート

ペイロードとプロファイルをクライアントにインストールすると、フレームワークに追加できるよう AllStart によってシステムが初期化されます。

クライアントを Sun Control Station フレームワークにインポートするには、ホスト追加機能 (「管理」right arrow「ホスト」right arrow「追加」) を使用します。

新規クライアントのインポートの詳細は、『Sun Control Station 2.2 管理者マニュアル』を参照してください。