Logical Domains 1.3 管理ガイド

第 9 章 リソースの管理

この章では、Logical Domains システムでのリソース管理の実行について説明します。

この章の内容は次のとおりです。

CPU Power Management ソフトウェアの使用

CPU Power Management (PM) ソフトウェアを使用するには、まず ILOM 3.0 ファームウェアで電源管理ポリシーを設定する必要があります。この節では、LDoms ソフトウェアで Power Management を使用できるようにするために必要な情報の概要を示します。詳細は、『Sun Integrated Lights Out Manager (ILOM) 3.0 CLI 手順ガイド』の「消費電力の監視」を参照してください。

電源ポリシーは、任意の時点でのシステムの電力使用量を管理する設定です。Logical Domains Manager (Version 1.3) では、ベースとなるプラットフォームに Power Management 機能が実装されていることを前提として、2 つの電源ポリシーがサポートされます。

ILOM 3.0 ファームウェアの CLI を使用して電源ポリシーを設定する手順については、『Sun Integrated Lights Out Manager (ILOM) 3.0 CLI 手順ガイド』の「消費電力の監視」を参照してください。


注 –

電力を最大限節約するには、ldm bind-domain コマンドを実行してドメインを長時間バインドされたままの状態にしないでください。ドメインがバインドされた状態になっていると、ドメインのすべての CPU の電源がオンになります。


CPU で電源管理されているストランドの表示

この節では、電源管理されているストランドおよび仮想 CPU を一覧表示する方法について説明します。

ProcedureCPU で電源管理されているストランドを一覧表示する

  1. 電源管理されているストランドを一覧表示するには、次のいずれかの手順を実行します。

    1. list -l サブコマンドを使用します。

      CPU の UTIL 列にダッシュ (---) が表示されている場合、ストランドが電源管理されていることを意味します。


      # ldm list -l primary
      NAME         STATE   FLAGS  CONS  VCPU MEMORY  UTIL  UPTIME
      primary      active  -n-cv  SP    8    4G      4.3%  7d 19h 43m
       
      SOFTSTATE
      Solaris running
       
      MAC
          00:14:4f:fa:ed:88
       
      HOSTID
          0x84faed88
       
      CONTROL
          failure-policy=ignore
       
      DEPENDENCY
          master=
       
      VCPU
          VID    PID    UTIL STRAND
          0      0      0.0%   100%
          1      1      ---    100%
          2      2      ---    100%
          3      3      ---    100%
          4      4      ---    100%
          5      5      ---    100%
          6      6      ---    100%
          7      7      ---    100%
      ....
    2. list -l サブコマンドに解析可能なオプション (-p) を使用します。

      util= のあとが空白になっている場合、ストランドが電源管理されていることを意味します。


      # ldm list -l -p
       
      VCPU
      |vid=0|pid=0|util=0.7%|strand=100
      |vid=1|pid=1|util=|strand=100
      |vid=2|pid=2|util=|strand=100
      |vid=3|pid=3|util=|strand=100
      |vid=4|pid=4|util=0.7%|strand=100
      |vid=5|pid=5|util=|strand=100
      |vid=6|pid=6|util=|strand=100
      |vid=7|pid=7|util=|strand=100

Procedure電源管理されている CPU を一覧表示する

  1. 電源管理されている CPU を一覧表示するには、次のいずれかの手順を実行します。

    1. list-devices -a cpu サブコマンドを使用します。

      Power Management (PM) 列に yes が表示されている場合は CPU が電源管理されていることを意味し、no が表示されている場合は CPU の電源が投入されていることを意味します。100 パーセント未使用の CPU はデフォルトで電源管理されることが前提となっているので、PM の下にダッシュ (---) が表示されます。


      # ldm list-devices -a cpu
      VCPU
         PID     %FREE      PM
         0       0          no
         1       0          yes
         2       0          yes
         3       0          yes
         4       100        ---
         5       100        ---
         6       100        ---
         7       100        ---
    2. list-devices -a cpu サブコマンドに解析可能なオプション (-p) を使用します。

      Power Management (pm=) フィールドに yes が表示されている場合は CPU が電源管理されていることを意味し、no が表示されている場合は CPU の電源が投入されていることを意味します。100 パーセント未使用の CPU はデフォルトで電源管理されることが前提となっているので、このフィールドは空白になります。


      # ldm list-devices -a -p cpu
      VERSION 1.4
      VCPU
      |pid=0|free=0|pm=no
      |pid=1|free=0|pm=yes
      |pid=2|free=0|pm=yes
      |pid=3|free=0|pm=yes
      |pid=4|free=0|pm=no
      |pid=5|free=0|pm=yes
      |pid=6|free=0|pm=yes
      |pid=7|free=0|pm=yes
      |pid=8|free=100|pm=
      |pid=9|free=100|pm=
      |pid=10|free=100|pm=

動的資源管理ポリシーの使用

Logical Domains 1.3 ソフトウェア以降では、ポリシーを使用して、動的再構成活動を自動的に実行する方法を決定できます。現時点では、仮想 CPU の動的資源管理を制御するポリシーのみを作成できます。


注意 – 注意 –

次の問題が CPU の動的資源管理 (DRM) に影響します。


資源管理ポリシーでは、論理ドメインで仮想 CPU を自動的に追加および削除できる条件について指定します。ポリシーを管理するには、ldm add-policyldm set-policy、および ldm remove-policy コマンドを使用します。


ldm add-policy [enable=yes|no] [priority=value] [attack=value] [decay=value]
  [elastic-margin=value] [sample-rate=value] [tod-begin=hh:mm[:ss]]
  [tod-end=hh:mm[:ss]] [util-lower=percent] [util-upper=percent] [vcpu-min=value]
  [vcpu-max=value] name=policy-name ldom...
ldm set-policy [enable=[yes|no]] [priority=[value]] [attack=[value]] [decay=[value]]
  [elastic-margin=[value]] [sample-rate=[value]] [tod-begin=[hh:mm:ss]]
  [tod-end=[hh:mm:ss]] [util-lower=[percent]] [util-upper=[percent]] [vcpu-min=[value]]
  [vcpu-max=[value]] name=policy-name ldom...
ldm remove-policy [name=]policy-name... ldom

これらのコマンドの詳細および資源管理ポリシーの作成については、ldm(1M) マニュアルページを参照してください。

ポリシーは、tod-begin プロパティーと tod-end プロパティーで指定された期間の間有効です。複数のポリシーが同時に有効になっている場合、ポリシーは、priority プロパティーの値を使用して、使用するポリシーを決定します。

ポリシーは、util-high および util-low プロパティーの値を使用して、CPU 利用率の高位境界値と低位境界値を指定します。利用率が util-high の値を超えた場合、仮想 CPU の数が vcpu-min から vcpu-max までの値の範囲に収まるまで、仮想 CPU がドメインに追加されます。利用率が util-low の値を下回った場合、仮想 CPU の数が vcpu-min から vcpu-max までの値の範囲に収まるまで、仮想 CPU がドメインから削除されます。vcpu-min に達すると、仮想 CPU をそれ以上動的に削除できません。vcpu-max に達すると、仮想 CPU をそれ以上動的に追加できません。


例 9–1 資源管理ポリシーの追加

たとえば、数週間に渡ってシステムの標準利用率を観測したあと、資源使用状況を最適化するためにポリシーを設定する場合があります。使用率が最も高いのは、毎日太平洋標準時の午前 9:00 ~午後 6:00、使用率が低いのは、毎日太平洋標準時の午後 6:00 ~午前 9:00 です。

このシステム利用率の観測に基づき、システム全体の利用率に従って次の高利用率ポリシーと低利用率ポリシーを作成することにします。

次の ldm add-policy コマンドで、高利用率時に ldom1 ドメインで使用される high-usage ポリシーを作成します。

次の high-usage ポリシーは次のことを行います。


# ldm add-policy tod-begin=09:00 tod-end=18:00 util-lower=25 util-upper=75 \
vcpu-min=2 vcpu-max=16 attack=1 decay=1 priority=1 name=high-usage ldom1

次の ldm add-policy コマンドで、低利用率時に ldom1 ドメインで使用される med-usage ポリシーを作成します。

次の med-usage ポリシーは次のことを行います。


# ldm add-policy tod-begin=18:00 tod-end=09:00 util-lower=10 util-upper=50 \
 vcpu-min=2 vcpu-max=16 attack=1 decay=1 priority=1 name=med-usage ldom1

論理ドメインのリソースの一覧表示

この節では、ldm サブコマンドの構文の使用法、フラグや利用統計情報などの出力項目の定義、および実際と同様の出力例について説明します。

マシンが読み取り可能な出力

ldm list コマンドの出力を使用するスクリプトを作成する場合は、常に -p オプションを使用してマシンが読み取り可能な形式で出力を生成します。詳細は、「解析可能でマシンが読み取り可能なリストを生成する (-p)」 を参照してください。

Procedureldm サブコマンドの構文の使用法を表示する

  1. ldm のすべてのサブコマンドの構文の使用法を確認します。


    primary# ldm --help
    

    ldm サブコマンドの詳細は、ldm(1M) マニュアルページを参照してください。

フラグの定義

ドメインの出力 (ldm list) では、次のフラグを表示できます。コマンドに長形式および解析可能オプション (-l -p) を使用すると、flags=normal,control,vio-service のように、フラグが省略されずに表示されます。このオプションを使用しない場合は、-n-cv- のように略語が表示されます。リストフラグ値は位置に依存します。次に、左から順に 6 つの列のそれぞれに表示される可能性のある値を示します。

列 1

列 2

列 3

列 4

列 5

列 6

利用統計情報の定義

ldm list コマンドの長形式 (-l) オプションでは、仮想 CPU ごとの利用統計情報 (UTIL) が表示されます。この統計情報は、ゲストオペレーティングシステムの代わりに仮想 CPU が実行に費やした時間の割合です。仮想 CPU は、ハイパーバイザに制御が渡される場合を除き、ゲストオペレーティングシステムに代わって実行するものと考えられます。ゲストオペレーティングシステムが仮想 CPU の制御をハイパーバイザに渡さない場合、ゲストオペレーティングシステムの CPU の利用率は常に 100% として表示されます。

論理ドメインについて報告された利用統計情報は、ドメインの仮想 CPU に対する仮想 CPU 利用率の平均です。UTIL 列にダッシュ (---) が表示されている場合、ストランドが電源管理されていることを意味します。

さまざまなリストの表示

Procedureソフトウェアのバージョンを表示する (-V)

  1. インストールされている現在のソフトウェアのバージョンを表示します。


    primary# ldm -V
    

Procedure省略形式のリストを生成する

  1. すべてのドメインの省略形式のリストを生成します。


    primary# ldm list
    

Procedure長形式のリストを生成する (-l)

  1. すべてのドメインの長形式のリストを生成します。


    primary# ldm list -l
    

Procedure拡張リストを生成する (-e)

  1. すべてのドメインの拡張リストを生成します。


    primary# ldm list -e
    

Procedure解析可能でマシンが読み取り可能なリストを生成する (-p)

  1. すべてのドメインの解析可能でマシンが読み取り可能なリストを生成します。


    primary# ldm list -p
    

Procedure長形式のリストのサブセットを生成する (-o format)

  1. 次に示す 1 つ以上の format オプションを入力して、出力をリソースのサブセットとして生成します。1 つ以上の形式を指定する場合、スペースなしでコンマを使用して項目を区切ります。


    primary# ldm list -o resource[,resource...] ldom
    
    • console - 出力には、仮想コンソール (vcons) および仮想コンソール端末集配信装置 (vcc) サービスが含まれます。

    • cpu - 出力には、仮想 CPU (vcpu) および物理 CPU (pcpu) が含まれます。

    • crypto - 暗号化装置の出力には、モジュラー演算ユニット (mau) と、Control Word Queue (CWQ) など、LDoms がサポートするその他の暗号化装置が含まれます。

    • disk - 出力には、仮想ディスク (vdisk) および仮想ディスクサーバー (vds) が含まれます。

    • domain - 出力には、変数 (var)、ホスト ID (hostid)、ドメインの状態、フラグ、およびソフトウェアの状態が含まれます。

    • memory - 出力には、memory が含まれます。

    • network - 出力には、メディアアクセス制御 (mac) アドレス、仮想ネットワークスイッチ (vsw)、および仮想ネットワーク (vnet) デバイスが含まれます。

    • physio - 物理入出力には、Peripheral Component Interconnect (pci) およびネットワークインタフェースユニット (niu) が含まれます。

    • resmgmt - 出力には、動的資源管理 (DRM) ポリシー情報が含まれます。

    • serial - 出力には、仮想論理ドメインチャネル (vldc) サービス、仮想論理ドメインチャネルクライアント (vldcc)、仮想データプレーンチャネルクライアント (vdpcc)、仮想データプレーンチャネルサービス (vdpcs) が含まれます。

    • stats - 出力には、資源管理ポリシーに関連する統計が含まれます。

    • status - 出力には、進行中のドメインの移行に関する状態情報が含まれます。

    次の例に、指定可能なさまざまな出力のサブセットを示します。

    • 制御ドメインの CPU 情報のリスト


      # ldm list -o cpu primary
      
    • ゲストドメインのドメイン情報のリスト


      # ldm list -o domain ldm2
      
    • ゲストドメインのメモリーおよびネットワーク情報のリスト


      # ldm list -o network,memory ldm1
      
    • ゲストドメインの DRM ポリシー情報のリスト


      # ldm list -o resmgmt,stats ldm1
      

Procedure変数を一覧表示する

  1. ドメインの変数とその値を表示します。


    primary# ldm list-variable variable-name ldom
    

    たとえば、次のコマンドは、ldg1 ドメインの boot-device 変数の値を表示します。


    primary# ldm list-variable boot-device ldg1
    boot-device=/virtual-devices@100/channel-devices@200/disk@0:a

Procedureバインドを一覧表示する

  1. ドメインにバインドされたリソースを一覧表示します。


    primary# ldm list-bindings ldom
    

Procedure構成を一覧表示する

  1. SP に格納されている論理ドメイン構成を一覧表示します。


例 9–2 構成のリスト

ldm list-config コマンドは、サービスプロセッサに格納されている論理ドメイン構成を一覧表示します。-r オプションとともに使用する場合、このコマンドは、制御ドメインに存在する自動保存ファイルの構成を一覧表示します。

構成の詳細は、「Logical Domains 構成の管理」 を参照してください。ほかの例については、ldm(1M) マニュアルページを参照してください。


primary# ldm list-config
factory-default
3guests
foo [next poweron]
primary
reconfig-primary

ラベルの意味

構成名の右にあるラベルの意味は、次のとおりです。

Procedureデバイスを一覧表示する

  1. すべてのサーバーリソース (バインドされたリソースおよびバインドされていないリソース) を一覧表示します。


    primary# ldm list-devices -a
    

Procedure使用可能なメモリーを一覧表示する

  1. 割り当て可能なメモリーの量を一覧表示します。


    primary# ldm list-devices mem
    MEMORY
        PA                   SIZE
        0x14e000000          2848M

Procedureサービスを一覧表示する

  1. 使用可能なサービスを一覧表示します。


    primary# ldm list-services
    

制約の一覧表示

Logical Domains Manager に対する制約とは、特定のドメインに割り当てられる 1 つ以上のリソースです。使用可能なリソースに応じて、ドメインに追加するように要求したすべてのリソースを受け取るか、まったく受け取らないかのいずれかです。list-constraints サブコマンドは、ドメインに割り当てるように要求したリソースを一覧表示します。

Procedure1 つのドメインの制約を一覧表示する

  1. 1 つのドメインの制約を一覧表示します。


    primary# ldm list-constraints ldom
    

Procedure制約を XML 形式で一覧表示する

  1. 特定のドメインの制約を XML 形式で一覧表示します。


    primary# ldm list-constraints -x ldom
    

Procedure制約をマシンが読み取り可能な形式で一覧表示する

  1. すべてのドメインの制約を解析可能な形式で一覧表示します。


    primary# ldm list-constraints -p