Solaris 移行ガイド

パート II 開発者用移行情報

C 言語とその関連ツールは、SunOS 4.x から Solaris 7 になって大幅に変更されています。これらの変更は、すべての開発者にさまざまな影響を与えます。オペレーティングシステムのカーネルと、そのインターフェースも SunOS 4.x ソフトウェアとは大幅に異なっています。パート II では、これらの違いについて説明し、両リリース間の類似点を指摘し、既存のソフトウェアを移植したり、Solaris 7 用に新しいソフトウェアを開発したりするために必要な情報を提供し、プログラミング環境との関連についても説明します。

第 15 章 コンパイラ、リンカ、デバッガ

この章では、コンパイラ、リンカ、デバッガについて説明します。この章の内容は次のとおりです。

コンパイラ

SunOS 4 から Solaris 7 に移行する開発者にとって最も大きな変更点は、C コンパイラがバンドルされなくなったことです。コンパイラをバンドルしない理由の 1 つに、動的なカーネルがあります。動的なカーネルでは、必要に応じて自動的にデバイスが追加されるので、カーネルの再構築にコンパイラを使用する必要がありません。

Sun WorkShop(TM) には、ANSI C 互換コンパイラのほか、拡張されたデバッグ機能とプログラム開発環境があります。このコンパイラは、Solaris 7 のネイティブオブジェクト形式である 実行形式リンク形式から成る ELF 形式で実行可能ファイルを作成します。lint と lint ライブラリも Sun WorkShop の一部として提供されています。 lintlint ライブラリも Sun WorkShop の一部として提供されます。

Sun WorkShop については、http://www.sun.com にアクセスしてください。

Making the Transition to ANSI C』は、バンドル製品の Sun OS 4.x C コンパイラとアンバンドル製品の Sun WorkWhop C コンパイラのそれぞれによって実装される C 言語の違いを解説しています。一方のコンパイラ用のソースを他方に移植するときに参照してください。このマニュアルは、http://docs.sun.com の Programming/Languages で、Sun WorkShop Compiler C4.2 AnswerBook Collection の一部として閲覧できます。

Sun WorkShop C コンパイラのオプションフラグ -Xs は、K&R C と ANSI C で動作が異なる言語構成要素について警告します。この特別なフラグについては、『C User's Guide 』を参照してください。このマニュアルは、http://docs.sun.comSun WorkShop Compiler C 4.2 AnswerBook Collection でも閲覧できます。

リンカ

このリリースではリンクエディタ ld(1) に対していくつかの変更があります。最も重要な変更は新しい ELF のファイルフォーマットを処理する機能です。


注 -

ライブラリと実行可能プログラムを構築するには、リンカを直接起動することよりもコンパイラドライバによる方法をお勧めします。コンパイラは、リンカが必要とする多数のファイルを自動的に供給します。


ライブラリを混合することはできません。32 ビットプログラムは 32 ビットライブラリ、64 ビットプログラムは 64 ビットライブラリとリンクする必要があります。ELF32 オブジェクトは他の ELF32 オブジェクト、ELF64 オブジェクトは他の ELF64 オブジェクトとリンクします。

リンクエディタオプションの相違

新しいリンカでリネームされたオプションもあれば同じものもあり、また不要になったオプションもあります。表 15-1 では SunOS 4.x の ld を Solaris 7 の ld コマンドと比較します。

表 15-1 に続く節で、リンク作業がオプションの相違によってどのように影響を受けるかについて説明します。

表 15-1 ld オプションの比較

SunOS 4.x のオプション 

Solaris 7 での変更 

注 

-align datum

-M mapfile

mapfile と異なるセクションの使用

-assert definitions

デフォルト 

 

-assert nodefinitions

-znodefs

警告ではなく致命的エラーを発行 

-assert nosymbolic

-zdefs

警告ではなく致命的エラーを発行 

-assert pure-text

-ztext

警告ではなく致命的エラーを発行 

-A name

変更なし 

dlopen(3X)dlclose(3X) はこの動作に接近可能

-Bdynamic

-Bdynamic

共用ライブラリの取り込みにのみ適用される。動的にリンクされた実行可能プログラムを構築するには -dy (デフォルト) を使用。「実行可能ファイルの作成」を参照。

-Bnosymbolic

-zdefs

 

-Bstatic

-dn & -Bstatic

動的なリンカを完全に除去するには、-dn オプションを指定しなければならない。アーカイブライブラリを取り込むために動的モードで -Bstatic を使用 (トグルとして使用。「実行可能ファイルの作成」を参照)。

-Bsymbolic

-Bsymbolic

このオプションを付けて-assert nosymbolic も取得する。

-d -dc -dp

デフォルト 

オフに設定するには、SVR4 で -b オプションを使用しなければならない。

-D hex

-M mapfile

mapfile には、希望する結果を達成するためにいろいろなメカニズムが含まれる。

-e entry

-e entry

 

no -e

-G

共有オブジェクトを作成する。 

-lx[.v]

-lx

共用ライブラリのメジャー番号が示すバージョンだけが現在サポートされている。 

-Ldir

-Ldir

dir は実行可能プログラムに記録されない。かわりに、-R オプションを使用。

-M

-m

 

-n

デフォルト 

SVR4 の実行可能プログラムのフォーマットは、ディスクイメージを -n として圧縮

-N

変更なし  

 

-o name

-o name

 

-p

デフォルト 

-M mapfile で取り消し可能。

-r

-r

 

-S

変更なし 

 

-s

-s

 

-t

変更なし  

 

-T hex

-M mapfile

mapfile には、希望する結果を達成するためにいろいろなメカニズムが含まれる。

-Tdata hex

-M mapfile

mapfile には、希望する結果を達成するためにいろいろなメカニズムが含まれる。

-u name

-u name

 

-x

変更なし  

 

-X

変更なし  

 

-y sym

変更なし 

 

-z

デフォルト 

-z としての SVR4 実行可能プログラムフォーマットのデマンドページ

共用ライブラリの作成

Solaris 7 で共用ライブラリを作成するには、-G オプションを指定する必要があります。SunOS 4.x では、-e オプションなしで共用ライブラリを作成することをリンカが自分で判断しますが、Solaris 7 では共用ライブラリがエントリポイントを持つ可能性があるため、このオプションは使用できなくなりました。

実行可能ファイルの作成

-Bdynamic-Bstatic オプションはまだ利用できますが、その動作はかなり異なります。現在では、これらのオプションは実行可能バインディングではなくライブラリのインクルードを指します。実行可能バインディングは、Solaris 7 で新しい -dy-dn オプションでのみ排他的に設定されます。-dy オプションがデフォルトです。これは、動的にリンクされた実行可能ファイルを作成するために必要です。-dn オプションは、静的にリンクされた実行可能ファイルを作成するために必要です。

-Bdynamic-Bstatic オプションは、-dy オプションを使用したときだけ適用されます。 -Bdynamic はリンクエディタに共用ライブラリを含めるように指示し、-Bstatic はアーカイブライブラリを含めるように指示します。これらのオプションは、次の -Bdynamic または -Bstatic オプション指定が現れるまで、-l 引数を管理する切り替え (トグル) として機能します。

次の例に、同様の実行可能プログラムを作成するのに使用できる SunOS 4.x と Solaris 7 コマンドを示します。

ライブラリ検索パスの指定

SunOS 4.x では、-L オプションを付けて指定したディレクトリはリンク時に検索され、その情報は実行時に使用するために保持されていました。この動作は現在では、 -L-R オプションに分けられています。 -L オプションはリンク時に検索するディレクトリを指定し、-R オプションはリンカに対して、実行時に使用するために保持する検索パスを指示します。詳細については、「検索パスの規則」を参照してください。

-Bdynamic-Bstatic オプションと同様に、 -L オプションの位置には意味があります。これは、それに続く -l オプションにだけに適用されます。

検索パスの規則

動的リンカと実行時リンカが SunOS 4.x リンカによって使用されたのとは異なるアルゴリズムを使って検索パスを決定します。

以下の例では、SunOS 4.x と Solaris 7 の動的リンカおよび実行時リンカの検索パスを比較します。Solaris 7 では、リンクエディタと実行時リンカの検索パスは LD_LIBRARY_PATH 設定値の影響を受けることに注意してください。ただし、実行時リンカでは、プログラムが LD_LIBRARY_PATH を設定しないで共用ライブラリを検索できるほか、共用ライブラリのローディングがさらに効率的になります。したがって、Solaris 7 では $ORIGIN を代用することをお勧めします。prog がインストールされた位置からの組み込みライブラリの相対パスを指定してプログラムをビルドしなければならないからです。 たとえば、.../package/bin/prog は、.../package/lib/libmine.so.1 を使用します。

SunOS 4.x リンカ検索パス

LD_LIBRARY_PATH=dirlist1 がある Solaris 7 リンカ検索パス

LD_LIBRARY_PATH=dirlist1, dirlist2) がある Solaris 7 リンカ検索パス

Solaris 7 リンカは、$ORIGIN を使ってパスを検索します。

また、Solaris 7 では、LD_LIBRARY_PATH_ 64LD_LIBRARY_PATH の 64 ビット専用バージョンです。

バージョン番号

SunOS 4.x は、共用ライブラリに対してメジャーとマイナーの両方のバージョン番号をサポートしていました。Solaris 7 は、メジャーバージョン番号だけをサポートします。バイナリ互換性のサポートについては、メジャーおよびマイナーバージョン番号は SunOS 4.x 共用ライブラリで認識されます。これらのライブラリは、SunOS 4.x ソフトウェアにあったのと同じメジャーおよびマイナーバージョン番号を保持するために必要となります。

表 15-2 は、SunOS 4.x および Solaris 7 の共用ライブラリのバージョンを示します。

表 15-2 共用ライブラリの例

SunOS 4.x 

Solaris 7 

libc.so.1.7

libc.so.1

libdl.so.1.0

libdl.so.1

SunOS 4.x システムソフトウェアにおいては、 -l オプションを指定した場合、build environment linker はメジャーおよびマイナー番号をともに持つライブラリを検索しました。たとえば、-ldl を指定した場合、ライブラリ、libdl.so.1.0 がリンクされます。Solaris 7 環境では、メジャー番号はサポートされていますが、デフォルトのリンクエディタはバージョン番号を無視します。前の例では、build envrionment linker は現在では libdl.so と特定のバージョンのファイルを指すシンボリックリンクを検索します。

リンカによって参照された時、デフォルトでは、動的に実行可能なオブジェクトまたは共有オブジェクト中の dependency レコードは関連する共有オブジェクトのファイル名です。依存性の指定をより一貫した方法にするために、共有オブジェクトは実行時に参照されるべきファイル名をそれ自身に記録することができます。これはライブラリファイルをリンクする時に -h オプションによって指定します。

Solaris 7 では、シンボリックリンクはほとんどのライブラリに対して作成されています。メジャー番号をつけて新しい共用ライブラリを構築し、それから最もよく使用するライブラリのバージョンを指すシンボリックリンクを作成してください。

新しいユーティリティの dump(1) (「ファイルのバックアップと復元」を参照) により、オブジェクトファイルのデバッグ、または静的および動的リンクのチェックが容易になります。dump -L オプションは、実行可能プログラムに含まれる実行時リンカに必要な情報を表示します。この情報は、ELF ファイルの動的セクションに含まれます。 RPATH エントリは、ld. の -R オプションにより指定された検索パスを表示します。

例を以下に示します。

examples% cc -G -o libx.so.1 -h libx.so.1 libx.o

examples% cp libx.so.1 /mylibs
examples% ln -s /mylibs/libx.so.1 /mylibs/libx.so
examples% dump -Lv libx.so.1

libx.so.1:

  **** DYNAMIC SECTION INFORMATION ****
.dynamic :
[INDEX] Tag      Value
[1]     INIT     0x3b8
[2]     FINI     0x3f4
[3]     SONAME   libx.so.1
[4]     HASH     0x94
[5]     STRTAB   0x33c
[6]     SYMTAB   0x14c
[7]     STRSZ    0x62
[8]     SYMENT   0x10
[9]     PLTGOT   0x10404
[10]    PLTSZ    0xc
[11]    PLTREL   0x7
[12]    JMPREL   0x3ac
[13]    RELA     0x3a0
[14]    RELASZ   0x18
[15]    RELAENT  0xc

ライブラリが他の動的ライブラリを必要とするときは、次の例に示すように、RPATH と共に動的ライブラリを指定するようにします。

次の例では prog.c をコンパイルし、(前の例で構築された) libx.so を動的にリンクし、バイナリが実行のためカレントディレクトリ情報を保持するように指定します。この例は、コンパイル済みプログラムの prog.c についての dump 出力を示します。ここで、前の例の SONAME フィールドに格納された情報は、prog により NEEDED として示されます。prog が実行されると、libx.so.1 は、libx.so でも、異なるバージョンにリンクされます。

examples% cc -o prog prog.c -L/mylibs -R/mylibs -lx
example% dump -Lv prog

prog:

  **** DYNAMIC SECTION INFORMATION ****
.dynamic :
[INDEX]   Tag   Value
[1]  NEEDED   libx.so.1
[2]  NEEDED   libc.so.1
[3]  INIT     0x1b1ac
[4]  FINI     0x1b248
[5]  RPATH    /mylibs
[6]  HASH     0x100e8
[7]  STRTAB   0x17f90
[8]  SYMTAB   0x12be0
[9]  STRSZ    0x31e1
[10] SYMENT   0x10
[11] DEBUG    0x0
[12] PLTGOT   0x2b25c
[13] PLTSZ    0x30
[14] PLTREL   0x7
[15] JMPREL   0x1b180
[16] RELA     0x1b174
[17] RELASZ   0x3c
[18] RELAENT  0xc

デバッガ

この節ではデバッグツールの変更について説明します。

dbxdbxtool

dbxdbxtool は、デフォルトのシステムソフトウェアには含まれません。アンバンドル製品の Sun WorkShop には、これらの改良版が含まれています。

adbkadb

adbkadb は、Solaris 7 オペレーティングシステムにバンドルされていて、SunOS 4.x のツールと同じ機能を提供します。kadb はマルチプロセッサで使用できるよう改良されました。kadb のプロンプトにはプロセッサ ID が表示されます。以下の例では、プロセッサ ID が 0 になっています。

Solaris 7 環境で容易にカーネルのデバッグを行うには、次のようにします。

adb は、64 ビット用として次のように拡張されています。

kadb マクロ

以下の kadb マクロは、マルチスレッドカーネルといっしょに使用すると特に有効です。

現在のスレッドを表示します。現在のスレッドポインタは、SPARC グローバルレジスタ g7 です。

kadb[0]: <g7$<thread

threadlist は、システム内のすべてのカーネルスレッドのスタックトレースを表示します。このリストは非常に長くなることがあります。

kadb[0]: $<threadlist

mutex は、所有スレッドのアドレスを表示します。この例では、グローバルで危険なドライバ mutex を使用しています。

kadb[0]: unsafe_driver$<mutex

kadb[0]: moddebug/W 0x80000000

moddebug は、モジュールのロードを監視できるようにします。デバッグ専用に使用する moddebug の有効な値については、<sys/modctl.h> の最後を参照してください。

動作中のカーネルのデバッグ

稼働中のカーネルをデバッグするには、次のコマンドを使用します。

# adb -k /dev/ksyms /dev/mem

/dev/ksyms は、稼働中のカーネルの完全な名前を含む擬似デバイスです。

truss コマンド

truss は、実行したシステムコール、受信シグナル、ハードウェア障害などを追跡するために開発された新しいユーティリティです。truss には、 エントリを有効にして追跡対象のプロセスで実行されたユーザーレベルの関数呼び出しを終了するオプションのほか、フォークされたプロセスの追跡やマルチスレッドプロセスの処理のように SunOS 4.x の trace(1) コマンドにない大幅な改良も加えられています。

また、truss は、プロセスのシステムコール、シグナル、ハードウェア障害を追跡します。このユーティリティには、エントリを有効にして、追跡対象のプロセスで実行されたユーザーレベルの関数呼び出しの追跡を終了する新しいオプションが追加されています。

次の例は、date コマンドの追跡結果を要約したものです。-c オプションを指定すると、truss は行単位の追跡を表示せず、システムコール、シグナル、フォルトの回数をカウントして、その合計を表示します。

example% truss -c date
Fri Sep 18 14:31:30 PDT 1992
syscall      seconds   calls  errors
_exit            .00       1
read             .00       7
write            .00       1
open             .03      12
close            .00      12
time             .00       1
brk              .01       4
lseek            .00       1
fstat            .00       4
ioctl            .00       1
execve           .00       1
mmap             .01      17
munmap           .00       8
                ----     ---    ---
sys totals:      .05      70      0
usr time:        .03
elapsed:         .28

truss オプションの詳細については、truss(1) のマニュアル・ページを参照してください。Solaris 7 ではこの他に pmap(1) のような proc(4) を基本としたデバッグツールが数多く用意されています。

第 16 章 ツールと資源

この章では、開発環境におけるツールと資源の変更について説明します。この章の内容は次のとおりです。

ioctl() 要求

dkio(7I)filiomtio(7I)sockio(7I)streamio(7I)termio(7I)termios(7I) に関連するすべての ioctl は、Solaris 7 でサポートされます。

SunOS 4.x の termios 構造体と Solaris 7 の termios 構造体との間に、互換性のない部分がいくつかあります。例えば SunOS 4.x の termios 構造体にはある c_line フィールドが、Solaris 7 には含まれていません。

<sys/ttold.h> に定義がある次の ioctl は、実装されていません。

次の ttycom ioctl 要求は Solaris 7 にはありません。

Solaris 7 でサポートされる ioctl()表 16-1 に示します。

表 16-1 ioctl() のサポート

ioctl()

説明 

DKIOCGPART

これらの要求は、Solaris 7 では DKIOCGAPARTDKIOCSAPART に置き換えられる。

DKIOCGCONF

この要求は、Solaris 7 では、SunOS 4.x の DKIOCGCONFDKIOCINFO 構造体の情報を合わせたものが含まれる DKIOCINFOに置き換えられる。

DKIOCSCMD

この要求は、IPI ドライブに対してのみ正常に実行される。この ioctl は、SCSI デバイスでは異常終了する。SCSI デバイスに対しては、USCSI ioctl を使用する。

DKIOCGLOG

EINVAL が戻される。DKIOCWCHK コマンドは、フロッピーデバイスに対する書き込みチェックを切り換える。

filio

次の filio ioctl 要求は、Solaris 7 または SVR4 ではサポートされていない: FIOSETOWNFIOGETOWNFIOCLEXFIONCLEXfilioioctl 要求は ABI または SVID では、定義されていない。

mtio

Solaris 7 では mtio ioctl 要求のすべてをサポートしていないデバイスもある。マニュアルページの mtio(7) を参照のこと。

sockio

次の sockio ioctl 要求は、SVR4 と Solaris 7 において実装されている:SIOCSPGRP, SIOCGPGRPSIOCATMARKsockio ioctl 要求は ABI または SVID では、定義されていない。

streamio

すべての SunOS 4.x の streamio ioctl 要求は、Solaris 7、ABI、SVID、および SVR4 に実装されている。I_FDINSERT 要求は、strfdinsert 構造体を指す引数が必要となる。SunOS 4.x の strfdinsert 構造体は fd (int) フィールドを含むが、ABI、SVID、または SVR4 strfdinsert 構造体は fildes (int) フィールドを含む。

audioio

SunOS 4.x の <sun/audioio.h> ファイルは、Solaris 7 では <sys/audioio.h> に移動されている。さらに、Solaris 7 では、インタフェースの機能が強化されている。詳細については、audio(7)audioamd(7)dbri(7) マニュアルページを参照のこと。

termio, termios

すべての SunOS 4.x の termio、および termios ioctl 要求は、Solaris 7、ABI、SVID、および SVR4 に実装される。SunOS 4.x termios 構造体と Solaris 7 、あるいは ABI、SVID、または SVR4 termios 構造体との間には一部互換性がない。SunOS 4.x の termios構造体には、c_line フィールドがある。c_cflag (端末のハードウェア制御) の内容は SunOS 4.x ソフトウェアでは CRTSCTS (RTS/CTS フロー制御を有効にする) が可能だが、この値は Solaris 7 リリース、ABI、SVID、または SVR4 には定義がない。しかし、機能性は termiox(7) インタフェースを通してサポートされる。

ptrace() 要求値

ptrace() 機能は /proc の先頭に実装されています。新しいアプリケーションは直接 proc(4) を使用してください。

Solaris 7 では、ptrace() ルーチンは BCP モードで実行するアプリケーションをサポートするために単独で存在します。ptrace() ルーチンは要求値として整数 1〜9 を使用しますが、SunOS 4.x ルーチンは <sys/ptrace.h> で要求値をシンボリック定数として定義します。次のシンボリック定数は、Solaris 7 と互換性があります。

SunOS 4.x の PTRACE_CONT addr 引数は、中断しているプロセスが実行を再開すべき場所を指定します。ただし、プロセスが中断したところから実行が再開する addr = 1 の場合は除きます。Solaris 7 は、addr が常に 1 に等しく、実行が常にプロセスが中断したところから再開することを要求します。また、データによって指定されたものを除いたすべてのペンディングシグナルをキャンセルします。SunOS 4.x の PTRACE_CONT は、ペンディングシグナルをすべてキャンセルするとは限りません。

表 16-2 に示す SunOS 4.x の有効な要求は、 Solaris 7 ptrace() ルーチンではサポートされません。

表 16-2 Solaris 7 でサポートされていない ptrace() 要求

PTRACE_ATTACH

PTRACE_GETWINDOW

PTRACE_DETACH

PTRACE_SETWINDOW

PTRACE_GETREGS

PTRACE_22

PTRACE_SETREGS

PTRACE_23

PTRACE_GETFPREGS

PTRACE_26

PTRACE_SETFPREGS

PTRACE_27

PTRACE_READDATA

PTRACE_28

PTRACE_WRITEDATA

PTRACE_SYSCALL

PTRACE_READTEXT

PTRACE_DUMPCORE

PTRACE_WRITETEXT

PTRACE_SETWRBKPT

PTRACE_GETFPAREGS

PTRACE_SETACBKPT

PTRACE_SETFPAREGS

PTRACE_CLRDR7

ライブラリ

Solaris 7 は、System V Inrerface Definition, Third Edition (SVID 3) に準拠しています。SunOS 4.1 System V ライブラリとともに書かれたプログラムは Solaris 7 への移植が簡単ですが、SunOS 4.x BSD C ライブラリを使用するプログラムにとっては多くの労力を必要とします。

再編成ライブラリ

機能や機能グループの中には、Solaris 7 では別のライブラリに移動されたものがあります。このため、SunOS 4.x のアプリケーションを Solaris 7 でコンパイルする時に、これらの移動された機能を参照することで未定義とフラグされる可能性があります。

コンパイルした後、未定義とフラグされた任意の機能のマニュアルページを確認してください。機能説明のところに、-l リンカーオプションと、シンボルを解決する必要のある任意のインクルードファイルの両方がリストされます。

共用ライブラリ

共用ライブラリは現在、マイナーバージョン番号をサポートしません。

共用初期設定データファイル (.sa) はすでに不要となっており、.sa ファイルは Solaris 7 では提供されません。

資源の制限

Solaris 7 での資源の制限は大きく異なります。前リリースでは、静的テーブルの割り当てがファイル記述子やアクティブなプロセスなどの資源に使用されました。これらの資源は、現在は動的に割り当てられます。つまり、空いている物理メモリによって制限されることを意味します。表 16-3 に資源の制限を示します。

表 16-3 資源の制限

構成 

制限 

RLIMIT_CORE

プロセスによって作成できるコアファイルの最大サイズ (バイト単位) 

RLIMIT_CPU

プロセスが使用できる最大 CPU タイム (秒単位) 

RLIMIT_DATA

プロセスのヒープの最大サイズ (バイト単位) 

RLIMIT_FSIZE

プロセスによって作成できるファイルの最大サイズ (バイト単位) 

RLIMIT_NOFILE

プロセスによって作成できるファイル記述子の最大数より 1 大きい値 

RLIMIT_VMEM

プロセスのマップされたアドレスサイズが増大できる最大サイズ (バイト単位) 

RLIMIT_STACK

プロセスのスタックの最大サイズ (バイト単位) 


注 -

ネットワークライブラリを必要とする共有オブジェクトはすべて動的にリンクしなければなりません。ネットワークライブラリは、libdl.so.1 を必要とし、アーカイブライブラリは利用できません。


表 16-4 に SunOS 4.x ライブラリと Solaris 7 ライブラリ、およびそれらの位置を示します。

表 16-4 ライブラリ位置の比較

ライブラリ名 

SunOS 4.x ディレクトリ 

Solaris 7 ディレクトリ 

libbsdmalloc.a

/usr/lib

/usr/lib

libc.a

/usr/lib および /usr/5lib

/usr/lib

libc.so.1.7

/usr/lib

/usr/lib

libc.so.2.7

/usr/5lib

/usr/lib

libc_p.a

/usr/5lib

なし 

libcurses.a

/usr/lib および /usr/5lib

/usr/ucblib および /usr/ccs/lib

libcurses_p.a

/usr/5lib

なし 

libdbm.a

/usr/lib

/usr/ucblib

libdl.so.1.0

/usr/lib

/usr/lib

libg.a

/usr/lib

なし 

libkvm.a

/usr/lib

なし  

libkvm.so.0.3

/usr/lib

/usr/lib

libl.a

/usr/lib

/usr/ccs/lib

libln.a

/usr/lib

なし 

liblwp.a

/usr/lib

なし 

libm.a

/usr/lib

/usr/lib および /usr/lib/libp

libmp.a

/usr/lib

/usr/lib

libnbio.a

/usr/lib

なし 

libnsl.a

/usr/lib

/usr/lib

libpixrect.a

/usr/lib

なし

libpixrect.so.2.14

/usr/lib

なし 

libposix.a

/usr/lib

なし 

libresolv.a

/usr/lib

/usr/lib

librpcsvc.a

/usr/lib

/usr/lib

libsuntool.so.0.54

/usr/lib

なし 

libsunwindow.so.0.55

/usr/lib

なし 

libsvidm.a

/usr/5lib

なし 

libsvidm_p.a

/usr/5lib

なし 

libtermcap.a

/usr/lib および

/usr/5lib

/usr/ucblib および /usr/ccs/lib

libtermlib.a

/usr/lib および

/usr/5lib

/usr/ccs/lib

libxgl.so.1.1

/usr/lib

/opt/SUNWits/

Graphics-sw/xgl/lib

libxpg.a

/usr/xpg2lib

なし 

liby.a

/usr/lib および

/usr/5lib

/usr/ccs/lib

make の使用

Solaris 7 で利用できる make ユーティリティは 2 種類あります。デフォルトである /usr/ccs/bin/make は、SunOS 4.x の make コマンドと同じです。SVR4 版は /usr/ccs/bin/make で利用できます。

デフォルトの make を使うと、Makefile を変更する必要はありません。ただし、Makefile で使用するコマンドのいくつかは変更されている可能性があります。たとえば、Makefile で一般に使用される install(1) は、オプションに変更が加えられたために次の例のように予期しない結果を生むことがあります。

/usr/ueb にある install(1B) のバージョンは SunOS 4.x のバージョンと互換性があります。

個々のインタフェースに関する情報については、付録 A 「コマンドリファレンス」 の互換性に関する表で確認してください。

SCCS の使用

Solaris 7 のソースコード管理システム (SCCS) は SunOS 4.x の SCCS とは少し異なっています。コマンドとサブコマンドの同じセットが両方の環境でサポートされています。SunOS 4.x システムで使用される SCCS ディレクトリおよび s.files は Solaris 7 システムでも同様に動作します。

SunOS 4.x ソフトウェアでは、SCCS コマンドは /usr/sccs ディレクトリに置かれていました。Solaris 7 ではこれらのコマンドは他のプログラミングツールとともに /usr/ccs/bin に置かれています。

SunOS 4.x と Solaris 7 ユーティリティの相違の 1 つに読み取り不可能な s.file の処理があります。SunOS 4.x コマンドは、読み取り不可能な s.file が出現すると、エラーを出力して続行します。Solaris 7 コマンドはエラーを無視します。

アプリケーション互換性の判断

バイナリ互換パッケージは開発環境としては提供されていませんが、将来のリリースとのバイナリ互換性を改善できる適切なプログラミングが必要です。

バイナリ互換パッケージは、部分的に静的にリンクされているかあるいは動的にリンクされているハイブリッドと同じく、動的または静的にリンクされたアプリケーションと互換性があります。

バイナリ互換パッケージは、「お行儀の良い」ユーザアプリケーションで使用することができます。「お行儀の良い」アプリケーションとは、次の条件を満たすアプリケーションを指します。

上記の条件を満たしていないと、アプリケーションは予想できない結果を生じることがあります。

バイナリ互換パッケージの使用方法に関する情報は、『バイナリ互換性ガイド』に説明があります。

アプリケーションパッケージ作成

Solaris 7 環境は現在パッケージという単位でバンドルされています。これらのパッケージには、システムに追加したり、システムから削除したりする必要があるファイルおよび情報のすべてが含まれます。

パッケージは次のようなコンポーネントで構成されます。

アドオンアプリケーションソフトウェアは、フロッピーディスク、テープ、または CD-ROM から Solaris 7 システムにインストールできるようにパッケージ化されていなければなりません。『Application Packaging Developer's Guide』では、パッケージを作成するためのガイドラインを記載しています。

パッケージ作成ユーティリティ

パッケージを作成し、操作するためのユーティリティがいくつか提供されます。 表 16-5 にパッケージの作成に便利なコマンドを示します。

表 16-5 パッケージ作成用コマンド

pkgproto

pkgmk コマンドへ入力するプロトタイプファイルのエントリを生成する

pkgmk

インストール可能なパッケージを生成する 

pkgtrans

パッケージフォーマットを変換する 

表 16-6 にパッケージの追加と削除に便利なコマンドを示します。

表 16-6 パッケージの追加と削除用コマンド

pkgadd

システムにソフトウェアパッケージを追加する 

pkgask

要求スクリプトに対する応答を格納する 

pkgrm

システムからパッケージを削除する 

pkgchk

インストールの結果をチェックする 

表 16-7 にパッケージに関する情報を提供するコマンドを示します。

表 16-7 Cパッケージに関する情報を提供するコマンド

pkginfo

インストール済みパッケージに関するソフトウェアパッケージ情報を表示する 

pkgparam

パッケージパラメータ値を表示する

ツールキット

この節では OPEN LOOK Intrinsic ToolKit (OLIT) と XView について説明します。

OLIT

OPEN LOOK Intrinsics Toolkit (OLIT) は Xt Intrinsics をベースにしています。このツールキットは多くのウィジェットセットに共通な関数セットを提供し、X 環境のユーザインタフェースコンポーネントを作成したり、流用したり、削除したりします。

XView

XView Window Toolkit は OPEN LOOK グラフィカルユーザインタフェース (GUI) 仕様を実装しています。

XView は varargs に基づく可変長の属性値リストを使用し、ウィンドウ、メニュー、およびスクロールバーなど、作成するオブジェクトを指定します。このツールキットでは、すでに通常の動作が定義されているため、手続き型プログラミングによくあるように定型のコードを繰り返す必要がありません。

SunOS 4.x ツールの検索

ほとんどの SunOS 4.x のプログラミングツールが利用でき、同じ機能を提供しますが、多くのものが新しい位置にあります。現在バンドルされるプログラミングツールはすべて 2 つのディレクトリ、/usr/ccs/bin/usr/ccs/lib にあります。 表 16-8 にプログラミングツールと SunOS 4.x の位置を示します。

表 16-8 バンドルされるプログラミングツール

SunOS 4.x コマンド 

SunOS 4.x での位置 

admin

/usr/sccs

ar

/usr/bin

as

/usr/bin

cdc

/usr/sccs

comb

/usr/sccs

cpp

/usr/lib/cpp

delta

/usr/sccs

error

/usr/ucb

get

/usr/sccs

help

/usr/sccs

ld

/usr/bin

lex

/usr/bin

lorder

/usr/bin

m4

/usr/bin

make

/usr/bin

nm

/usr/bin

prof

/usr/bin

prs

/usr/sccs

prt

/usr/sccs

ranlib

/usr/bin

rmdel

/usr/sccs

sact

/usr/sccs

sccs

/usr/ucb

sccsdiff

/usr/sccs

size

/usr/bin

strip

/usr/bin

symorder

/usr/ucb

tsort

/usr/bin

unget

/usr/sccs

unifdef

/usr/ucb

val

/usr/sccs

vc

/usr/old

what

/usr/sccs

yacc

/usr/bin

yaccpar

/usr/lib

表 16-9 に、新しい Solaris プログラミングツールとその説明を示します。

表 16-9 新しいプログラミングツール

新しいコマンド 

説明 

dis

COFF のオブジェクトコード逆アセンブラ  

dump

オブジェクトファイルの選択された部分をダンプする 

exstr

ソースファイルから文字列を抽出する 

mcs

オブジェクトファイルのコメントセクションを操作する 

regcmp

正規表現コンパイラ 

truss

システムコールとシグナルを追跡する 

ptools

多方面の /proc ユーティリティ

表 16-10 に、現在アンバンドル製品である SunOS 4.x コマンドを示します。

表 16-10 アンバンドル製品のプログラミングツール

アンバンドルのコマンド 

説明 

cb

簡単な C プログラム整形ツール 

cc

C コンパイラ 

cflow

プログラムにフローグラフを生成する 

cscope

対話方式で C プログラムを検査する 

ctrace

C プログラム実行追跡を行う 

cxref

C プログラムクロスリファレンスを行う 

dbx

ソースレベルデバッガ 

dbxtool

ウィンドウベースのソースレベルデバッガ 

gprof

call-graph プロファイルデータを表示する 

indent

C プログラムソースファイルをインデントおよびフォーマットする 

inline

インラインのプロシージャコールの展開 

lint

C プログラムベリファイア 

objdump

COFF オブジェクトファイルの選択された部分をダンプする 

tcov

test coverage 解析および文単位のプロファイルを構築する 

第 17 章 ネットワークと国際化機能

この章では、プログラミング環境に関連する Solaris 7 のネットワーク機能と、改善された国際化機能について説明します。

ネットワーク

Solaris 7 には、次のネットワーク機能があります。

これらのサービスについての詳細は、『NIS+ への移行』と『NFS の管理』を参照してください。

NIS と NIS+

Solaris 7 は、ネットワーク情報サービス (NIS)、SunOS 4.x のネームサービス、ネットワーク情報サービスプラス (NIS+)、異機種分散システムの企業ネームサービスをサポートしています。Solaris 7 で使用できる NIS サポートについての詳細は、「NIS+ 」 を参照してください。

NIS+ は、名前空間オブジェクトの詳細なモデル、改善されたセキュリティ、NIS より高速な更新処理などを提供します。

NIS+ のプログラマインタフェースについては、『SunOS Reference Manual 』のセクション 3N「Library Routines」を参照してください。

nsswitch.conf ファイル

nsswitch.conf ファイルは、ネームサービス管理を簡略化するために設計されました。アプリケーションは、nsswitch.conf ファイルを使用してネームサービスを選択できます。これにより、ネームサービス情報をネットワークサービス内で直接定義する必要がなくなりました。nsswitch.conf ファイルの書式についての詳細は、nsswitch.conf(4) のマニュアルページを参照してください。

Network Interface Tap

SunOS 4.x で提供されていた Network Interface Tap (NIT) は Solaris 7 では必要なくなりました。Solaris 7 では、イーサネットドライバが真の STREAMS ドライバに変更されたので、ドライバを直接オープンして通信できます。

pfmod(7M)bufmod(7M)dlpi(7P) のマニュアルページを参照してください。

Solaris 7 のイーサネットドライバとその他のデータリンクドライバは、コネクションレスの Data Link Provider Interface (DLPI) バージョン 2 をサポートしています。

ソケット

ソケットは Solaris 7 でサポートされています。SunOS 4.x と違って、ソケットはカーネルの中にはまったく実装されなくなり、ライブラリ libsocket として STREAMS 上に実装されています。

国際化

Solaris 7 での変更のほとんどは以前の国際化機能の改善です。国際化サポートに関する詳細な情報については、『プログラミングの国際化』を参照してください。

プログラムの国際化に関わるアプリケーション開発者は次のガイドラインに従ってください。

文字サポート

Solaris 7 環境は拡張 UNIX コード (EUC)、VTF8、PCK、V165 をサポートしています。これにより、1 つのシステムで複数バイトと複数のコードセットを利用できます。

SunOS 4.x は ASCII 以外の文字のシングルバイト表現をサポートしていました。Solaris 7 では、複数バイト表現がサポートされています。このサポートは数千文字もあるアジア系言語の文字セットに必要です。

libc に含まれる複数バイトライブラリには次のような機能があります。

Solaris 7 は複数バイトファイル名をサポートしていますが、ログイン名とマシン名は ASCII 文字に制限するようにしてください。

メッセージカタログ

SunOS 4.x のメッセージカタログのサポートは Solaris 7 で強化され、複数バイト文字を使ってメッセージカタログを作成できるようになりました。

メッセージカタログを使うと、アプリケーションはアプリケーションが実行された母国語で実行時のメッセージを表示できます。これらのメッセージカタログは、言語ロケールによって指定される母国語用にはじめに作成しなければなりません。

ロケールデータベース

SunOS リリース 5.6 のロケールデータベース (/usr/lib/locale/locale) は、SunOS 5.x のロケールデータベースとは全く異なります。ただし、ユーザ側からは違いは分かりません。

コマンド

Solaris 7 のほとんどのシステムコマンドはメッセージ化されました。これらコマンドの多くには複数バイト機能があります。つまり、複数バイト文字表現が可能になっています。より多くのコマンドがメッセージ化されたことにより、ローカリゼーションの労力は軽減されます。

installtxt(1) コマンドは msgfmt(1) に変更されました。メッセージを抽出するには新しい xgettext(1) コマンドを使用します。

strftime(3C) を変更すると、日付および時刻フォーマットに影響を与えます。date(1) コマンドの出力フォーマットに依存するシェルプログラムは、新しいフォーマットを処理できるように修正しなければなりません。

chrtbl(8)catdef(8) は、localedef(1) に置き換えられました。

ライブラリ

/usr/xpg2lib/libxpg2.a アーカイブライブラリは利用できません。これらのルーチンは、libc に入りました。

表 17-1 にこれらのインタフェースの新しい位置を示します。

表 17-1 xpg2lib ライブラリルーチンの位置

ルーチン 

Solaris 7 での位置 

bindtextdomain

/usr/lib/libc

chroot

/usr/lib/libc

catgets

/usr/lib/libc

dgettext

/usr/lib/libc

getcwd

/usr/lib/libc

getut

/usr/lib/libc

l3tol

未サポート 

logname

/usr/lib/libc

malloc

/usr/lib/libc

swab

/usr/lib/libc

langinfo

/usr/lib/libc

gettext

/usr/lib/libc

sbrk

/usr/lib/libc

textdomain

/usr/lib/libc

これらのルーチンを使用するプログラムは -lxpg2 を C コンパイラに渡す必要はありませんが、libintl.h を含む必要があるものが現在あります。(これらのルーチンについては、表 17-1 を参照してください)。

catgetmsg(3C) ルーチンは利用できません。

setlocale(3C) によって戻される文字列におけるロケールカテゴリの順位は、SunOS 4.x と Solaris 7 では異なります。この文字列は通常 setlocale(3C) への次の呼び出しによって使用され、順位は問題とされません。アプリケーションはロケールカテゴリの特定の順位に依存しないようにしてください。

第 18 章 システムとデバイスの構成

オペレーティングシステムのカーネルとそのインタフェースは大幅に変更されています。SunOS 4.x のデバイスドライバは、バイナリ互換を提供していません。この章では、カーネルおよびシステム開発者に影響を与える Solaris 7 の変更点について説明します。

システム構成

システム構成の変更点には、動的にロード可能なカーネルとカーネルの配置、config コマンドと boot コマンド、/etc/system ファイルがあります。

動的にロードされるカーネル

以前の SunOS リリースと異なり、Solaris 7 のカーネルは動的に構成されます。現在のカーネルは小さな静的コアと動的にロードできる多くのカーネルモジュールで構成されます。ドライバ、ファイルシステム、STREAMS モジュール、またその他のモジュールは、ブート時または実行時に、必要に応じて自動的にロードされます。これらのモジュールは使用されなくなるとアンロードされます。モジュールは、そのメモリ領域が必要になるまで、メモリ内に維持されます。modinfo(1M) は、現在システムにロードされているモジュールに関する情報を提供します。

modload(1M) コマンドと modunload(1M) コマンドは、Solaris 7 ではまだ使用できますが、動作が異なります。Solaris 7 では、これらのコマンドの使用方法に制限があり、ロード可能なドライバをシステムに正しくインストールするには不十分です。modunload は現在アンロード可能な (ビジー状態ではない) モジュールをすべてアンロードする機能が含まれます。次のように modunload を使用してください。

# modunload -i 0

カーネルの配置

以前は 1 つのファイル /vmunix にあったカーネルの内容は、現在ではディレクトリ階層の複数のモジュールに別れています。デフォルトでは、ディレクトリ階層は /platform/'uname -i'/kernel/kernel/usr/kernel です。

モジュールに対するディレクトリ検索パスは、/etc/system ファイルの moddir 変数により設定できます。system(4) のマニュアルページを参照してください。通常、最初にロードされるのは /platform/'uname -i'/kernel/unix です。kernel(1M) のマニュアルページを参照してください。

config コマンド

SunOS 4.x リリースでは、config コマンドを使用して、/vmunix がオブジェクトファイルから再リンクできるようにシステム構成ファイルを生成しました。次の Solaris 7 の機能により、このコマンドは必要なくなります。

/etc/system ファイル

システム構成情報は、現在 /etc/system ファイルに設定されています。また、このファイルはロード可能なモジュールのカーネルの処理方法も変更します。このファイルには、次の形式のコマンドが含まれます。

set parameter=value

たとえば、SunOS 4.x ソフトウェアにおいて、MAXUSERSconfig(8) を使用して設定されました。Solaris 7 では、/etc/system ファイルの中の次のような行により設定されます。

set maxusers = number

ロード可能なモジュールに影響を与えるコマンドは、次の形式になります。

set module:variable=value

/etc/system ファイルに対して行われた変更は、システムをリブートする際に影響を与えます (system(4) のマニュアルページを参照)。

boot コマンド

Solaris 7 では、次のブートプログラムが使用できます。

システムファームウェアは、一次ブートストラップ (ブートブロック) プログラムをメモリにロードし、それを実行します。ブートブロックは、UFS ファイルシステムを読み取るプログラムで、二次ブートプログラム (/platform/'uname -i'/ufsboot) をメモリにロードします。

ufsboot/kernel/unix をロードします。それから /kernel/unix は、ルートファイルシステムのマウントが可能となるまで、ufsboot を使って /kernel ディレクトリ階層からモジュールをロードします。

これらの動作の間、ブートブロックと ufsboot は、ファームウェアによって提供されるドライバを使用します。ufsboot またはブートブロックのいずれにも、ドライバコードはまったく含まれません。ufsboot が SBus カード PROM ドライバを使用するため、ufsboot コードを変更して新しいディスクタイプで新しい SBus カードを取り込む必要はありません。

ネットワークを通してブートする場合、ブートプログラムは SunOS 4.x ソフトウェアのディスクレスブートと同じように実行されます。ただし、現在、ブートプログラムは inetboot と呼ばれ、クライアントの vfstab ファイルエントリは異なります。ディスクレスのブート時の情報については、『Solaris のシステム管理 (第 1 巻)』を参照してください。

ブートの相違点の要約

表 18-1 には、SunOS 4.x と Solaris 7 とのブートシーケンスの相違点を要約します。

表 18-1 ブートの相違点の要約

SunOS 4.x 

Solaris 7 

説明 

ブートブロック

bootblk

ディスクから ufsboot をロードする

ブートプログラム

ufsboot

ディスクから unix をロードする

vmunix

unix

ブート可能なカーネルイメージ 

boot.sun4c.sunos.4.1.1

inetboot

ネットワークから unix をマウントしてコピーする

rc.boot, rc.single

/etc/rcS

/usr をマウントし、ファイルシステムをチェックする

rc.local

/etc/rc2, /etc/rc3, /etc/rc2.d, /etc/rc3.d

システムの構成スクリプト 

config

modload, /etc/system, add_drv, rem_drv

システムカーネルをカスタマイズし、必要なモジュールをロードする 

PROM モニタ、シングルユーザ、マルチユーザ 

実行レベル 0〜6、および S 

システム実行レベル

再構成ブート

再構成ブートは、接続されたすべてのデバイスをチェックし、/devices/dev にそれらの名前を構築するようシステムに指示します。新しいハードウェアをシステムに追加したときは、再構成ブートを行います。次のように -r オプションを使ってブートを開始します。

ok> boot -r

既存のタイプ (ドライバはすでにインストールされている) のデバイスを別に追加して、再構成ブートを忘れた場合、次のコマンドを使用して新しいデバイスを認識するようにシステムに指示することができます。

# touch /reconfigure
# _INIT_RECONFIG=YES /etc/init.d/drvconfig
# _INIT_RECONFIG=YES /etc/init.d/devlinks

開発者に関係するデバイスの命名規則

この節では、「デバイス命名規則」の説明を拡張して、システムとカーネル開発者に関係するデバイス命名規則を中心に説明します。

/devices

/devices ツリーは、カーネルで認識されたデバイスのツリーを表します。このツリーは drvconfig(1M) プログラムによって構成されます。通常 drvconfig(1M) は、システムが -r フラグでブートされた場合のみ実行されます。「再構成ブート」を参照してください。drvconfig は、ブート時に接続されて準備しているデバイス (ドライバのある) を格納するように /devices を構成します。

デバイスドライバがデバイスの存在を確認すると、デバイスドライバは ddi_create_minor_node(9F) を呼び出してエントリを作成します。

デバイスをシステムに追加するには add_drv(1M) コマンドを使用します。ドライバが正常に追加された場合、add_drv(1M)drvconfig も実行します。

/dev

Solaris 7 では、/dev/devices の中の実際のエントリへシンボリックリンクを作成するユーティリティプログラムによって管理されます。

デバイスドライバの命名規則

システムにおける各デバイスは、デバイスドライバによって駆動されます。デバイスドライバは、デバイスの多くのインスタンスを管理します。デバイスは以下のような名前を与えられます。

物理名

物理名は /devices に格納されています。物理名はハードウェアについて記述し、プラットホームおよび構成に依存します。以下に例を示します。

/devices/vme/xdc@6d,ee80/xd@0,0:g

物理名を使用すると、どのハードウェアが使用されているかを識別することができます。たとえば、 xdc@6d,ee80 は、VME A16, D32 空間のアドレス 0xee80 にあるディスクコントローラを指します。vme(4)driver.conf(4) のマニュアルページを参照してください。

論理名

論理名は /dev に格納されています。論理名はデバイスの物理名のプラットホーム固有の内容をできるだけ抽象化しています。たとえば xd というデバイスの論理名は次のようになります。

/dev/dsk/c2d0s6 (コントローラ 2、スレーブ 0、スライス 6 (4.x パーティション `g'))

また、sd というデバイスの論理名は次のようになります。

/dev/dsk/c0t3d0s0 (コントローラ 3、ターゲット 0、lun 0、スライス 0 (4.x パーティション `a'))

論理名は、コントローラのタイプについてはなにも表していません。つまり、SCSI でも IPI でも差はなく、両方とも単にディスクであるということです。

ディスク名

ディスク名は、SunOS 4.x リリースで使用されていた英字 a〜h ではなくスライス番号 0〜7 の SVR4 規約に従っています。

ディスク名は、ブロックディスクデバイスについては /dev/dsk/*、raw ディスクについては /dev/rdsk/* という SVR4 規約に従っています。詳細については、『Solaris のシステム管理 (第 1 巻)』を参照してください。

インスタンス名

インスタンス名とは、システムの n 番目のデバイスを意味します。たとえば、sd20 のようになります。

インスタンス名は、ドライバエラーメッセージでレポートされることがあります。次のように dmesg(1M) の出力を見ると、物理名へのインスタンス名のバインディングを知ることができます。

sd9 at esp2: target 1 lun 1
sd9 is /sbus@1,f8000000/esp@0,800000/sd@1,0
     <SUN0424 cyl 1151 alt 2 hd 9 sec 80>

インスタンス名がデバイスに割り当てられると、その名前がそのデバイスにバインドされたままになります。

インスタンス番号はデバイスのマイナー番号でコード化されます。リブートしてもインスタンス番号を一貫したものにするために、システムはそれらを /etc/path_to_inst ファイルに記録します。このファイルは起動時にだけ読み込まれ、現在は add_drv(1M) および drvconfig(1M) コマンドによって更新されます。/etc/path_to_inst ファイルについては、path_to_inst(4) のマニュアルページを参照してください。