Solaris のシステム管理 (第 2 巻)

印刷クライアントソフトウェアの使用

この節では、印刷クライアントソフトウェアがどのように動作するかについて概要を説明します。

印刷クライアントの処理手順

図 1-1 に、ユーザーが要求を発行してから印刷されるまでの、印刷要求の流れを示します。

図 1-1 印刷クライアントの処理手順の概要

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  1. ユーザーは印刷クライアントコマンドを使用して、印刷クライアントから印刷要求を出します。

  2. 印刷クライアントコマンドは印刷構成資源の階層をチェックして、印刷要求をどこに送信するか決定します。

  3. 印刷クライアントコマンドは、印刷要求を適切な印刷サーバーに直接送信します。印刷サーバーは、BSD 印刷プロトコルを受け付ける任意のサーバーです。SVR4 (LP) 印刷サーバーや BSD 印刷サーバー (SunOS 4.1 の BSD 印刷サーバーなど) が印刷サーバーとなります。

  4. 印刷サーバーは印刷要求を適切なプリンタに送信します。

  5. 印刷要求が印刷されます。

印刷クライアント

この節では「印刷クライアント」、つまり印刷要求を印刷サーバーに送信できるシステムと、印刷クライアントが印刷要求を発行するための印刷コマンドを中心に説明します。

図 1-2 に、印刷手順の中で、ユーザーが印刷クライアントから印刷要求を発行する処理を強調して示します。

図 1-2 ユーザーが 印刷クライアントから印刷要求を発行する

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印刷クライアントとは

システムに印刷クライアントソフトウェアをインストールして、リモートプリンタにアクセスできるようにすると、そのシステムは印刷クライアントになります。印刷クライアントコマンドの名前と出力は、以前の Solaris リリースの印刷コマンドのものと同じです。

印刷クライアントコマンドによる印刷処理の向上

印刷クライアントコマンドを使用すると、クライアントシステムは、より効率的な印刷クライアントになります。プリンタ構成情報を見つけるために、より多くのオプションを印刷クライアントコマンドに指定できるようになりました。また、クライアントは印刷サーバーと直接通信します。以前の Solaris オペレーティング環境では、印刷クライアントにこのような機能はありませんでした。

印刷クライアントコマンドには、次のような利点があります。

プリンタ構成資源

この節では、印刷クライアントコマンドが、プリンタ名とプリンタ構成情報を見つけるのに使用する資源について説明します。

印刷クライアントコマンドは、ネットワーク上のすべてのプリンタのプリンタ構成情報を格納するネットワーク (共有) 資源である、ネームサービスを使用できます。ネームサービス (NIS または NIS+) は、プリンタ構成情報の管理を簡単にします。プリンタをネームサービスに追加すると、ネットワーク上のすべての印刷クライアントは、そのプリンタにアクセスできます。

図 1-3 に、印刷手順の中で、印刷クライアントコマンドによりプリンタ構成資源の階層を調べ、どこに印刷要求を送信するか決定する処理を強調して示します。

図 1-3 印刷クライアントが資源を調べてプリンタを見つける

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印刷クライアントソフトウェアがプリンタを見つける手順

図 1-4 に示すように、印刷クライアントのコマンドには、プリンタとプリンタ構成情報を見つけるためにより多くのオプションを指定できます。

図 1-4 印刷クライアントソフトウェアがプリンタを見つける手順

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  1. ユーザーは lp コマンドまたは lpr コマンドを使用して、印刷クライアントから印刷要求を出します。ユーザーは、次の 3 つの形式のいずれかを使用して、出力先のプリンタ名またはプリンタクラスを指定できます。

    • 単独名形式。次の例に示すように、印刷コマンドとオプションの後にプリンタ名またはプリンタクラスが続きます。

      % lp -d neptune filename
      
    • POSIX 形式。次の例に示すように、印刷コマンドとオプションの後に server:printer が続きます。

      % lpr -P galaxy:neptune filename
      
    • コンテキストベース形式。次の例に示すように、『Federated Naming Service Programming Guide』で規定されている指定形式です。

      % lpr -d thisdept/service/printer/printer-name filename
      
  2. 印刷コマンドは、次の手順でプリンタとプリンタ構成情報を見つけます。

    • ユーザーが宛先のプリンタ名またはプリンタクラスを 3 つの有効な形式のいずれかで指定しているかどうかを調べます。

    • ユーザーがプリンタ名またはプリンタクラスを有効な形式で指定していない場合、ユーザーの PRINTER 環境変数または LPDEST 環境変数にデフォルトプリンタ名が指定されていないか調べます。

    • どちらの環境変数にもデフォルトプリンタが指定されていない場合は、ユーザーのホームディレクトリの .printers ファイルで _default プリンタ別名が設定されていないか調べます。

    • .printers ファイルに _default プリンタ別名が設定されていない場合は、印刷クライアントの /etc/printers.conf ファイルで構成情報を調べます。

    • /etc/printers.conf ファイルでプリンタが見つからない場合は、ネームサービス (NIS または NIS+) があればそれを調べます。

プリンタを検出する際に 印刷クライアントが用いる方法には、次の利点があります。

どのような環境でネームサービスを使用するか

ネームサービスは、ネットワーク上のプリンタ構成情報を追加、変更、削除するための最も効率的な方法です。ほとんどすべてのサイトはネームサービスを使用することにより大きな恩恵を受けます。ただし、数台のプリンタと印刷クライアントだけしか存在しない小規模なネットワークは例外です。

印刷サーバーの使用

概要のこの節では、印刷サーバーに焦点を当てて説明します。印刷サーバーにはローカルプリンタが接続されており、印刷サーバーは、ネットワーク上の他のシステムがそのプリンタを利用できるようにします。図 1-5 に、印刷手順の中で、印刷サーバーが印刷要求をプリンタに送信する処理を強調して示します。

図 1-5 印刷サーバーが印刷要求をプリンタに送信する

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BSD 印刷プロトコル

印刷クライアントコマンドは、BSD 印刷プロトコルを使用します。このプロトコルの利点の 1 つは、さまざまな印刷サーバーと通信できることです。

BSD 印刷プロトコルは業界標準のプロトコルです。このプロトコルは広く使用されており、さまざまなメーカーの異なるタイプのシステム間で互換性を提供します。Sun は、将来の相互運用性を提供するために、BSD 印刷プロトコルをサポートします。

次に進む手順

次に第 3 章「プリンタの設定手順」に進みます。

計画を立てるための情報が必要な場合は、第 2 章「ネットワーク上でのプリンタの計画方法の概要」を参照してください。