Solaris のシステム管理 (第 2 巻)

プリンタ設定の計画

この節では、Solaris 環境で印刷するための計画の立て方の概要を説明します。

プリンタの定義の設定

ネットワーク上でのプリンタの定義は、より効率的な印刷環境をユーザーに提供するための継続的な作業です。この作業によって、たとえばユーザーがプリンタの位置を見つけやすいようにすべてのプリンタのパラメタを設定したり、プリンタのクラスを定義して印刷要求への応答時間を短縮したりできます。

lpadmin コマンドを使用すると、すべての印刷定義を設定できますが、Admintool を使用するとプリンタのインストールまたは変更時にその一部のみを設定できます。表 2-1 は、印刷定義と、その定義を Admintool で割り当てることができるかどうかを示しています。

表 2-1 Admintool で設定される印刷定義

印刷定義 

Admintool で設定できるか 

プリンタ名

設定できる 

プリンタの説明

設定できる 

プリンタポート

設定できる 

プリンタタイプ

設定できる 

ファイル内容形式

設定できる。ただし lpadmin コマンドより機能は少ない

障害通知

設定できる。ただし lpadmin コマンドより機能は少ない

デフォルトプリンタ

設定できる 

バナーページの印刷

設定できる。ただし lpadmin コマンドより機能は少ない

プリンタへのユーザーアクセスの制限

設定できる。ただし lpadmin コマンドより機能は少ない

プリンタクラス

設定できない 

障害回復

設定できない 

プリンタ名

システムにプリンタを追加するときは、その「プリンタ名」を指定します。プリンタ名は、次の規則に従ってください。

サイトに合った命名規則を設定してください。たとえば、ネットワーク上で異なるタイプのプリンタを使用する場合は、プリンタ名の一部にプリンタタイプを含めると、ユーザーは適切なプリンタを選択しやすくなります。たとえば、PostScript プリンタは文字 PS で識別できます。ただし、サイトのプリンタがすべて PostScript プリンタである場合は、PS というイニシャルをプリンタ名の一部として含める必要はありません。

プリンタの説明

lpadmin -D コマンドまたは Admintool を使用すると、プリンタに説明を割り当てることができます。プリンタに割り当てる説明には、ユーザーがプリンタを識別できるような情報を含める必要があります。プリンタが設置されている部屋番号、プリンタのタイプやメーカー、印刷に問題がある場合に連絡する担当者名などを含めることができます。

次のコマンドでプリンタの説明を調べることができます。

$ lpstat -D -p printer-name

プリンタポート

プリンタのインストール時、またはその設定を後から変更するときに、lpadmin -p printer-name -v device-name コマンドまたは Admintool を使用して、プリンタの接続先となるデバイス、つまり「プリンタポート」を指定できます。

ほとんどのシステムが、2 つのシリアルポートと 1 つのパラレルポートを持っています。システムにポートを追加しないかぎり、3 台以上のシリアルプリンタおよび 2 台以上のパラレルプリンタを接続できません。

Admintool を使用すると、/dev/term/a または /dev/term/b を選択するか、「その他 (Other)」を選択して印刷サーバーで認識されるポート名を指定できます。これらのオプションには、lpadmin コマンドと同じ柔軟性があります。

LP 印刷サービスは、標準プリンタインタフェースプログラムからの設定を使用してプリンタポートを初期設定します。プリンタインタフェースプログラムの詳細は、「印刷フィルタの管理」を参照してください。デフォルト設定で機能しないパラレルプリンタやシリアルプリンタがある場合は、「プリンタポート特性の調整」のポート設定をカスタマイズする方法を参照してください。


注 -

x86 搭載システムで複数のポートを使用している場合、デフォルトでは最初のポートだけが有効です。2 番目以降のポートはデフォルトでは無効です。複数のポートを使用するためには、追加の asy (シリアル) ポートや lp (パラレル) ポートごとに、デバイスドライバのポート構成ファイルを手作業で編集しなければなりません。x86 ポート構成ファイルのパスは、次のとおりです。

/platform/i86pc/kernel/drv/asy.conf

/platform/i86pc/kernel/drv/lp.conf

x86 システムのシリアルポートとパラレルポートを構成する方法については、『Solaris 7 インストールライブラリ (Intel 版)』を参照してください。


プリンタタイプ

プリンタタイプとは、プリンタの種類を表す一般名です。プリンタタイプは、プリンタの様々な制御シーケンスが入っている terminfo データベースエントリを識別します。通常、プリンタタイプはメーカーのモデル名からとります。たとえば、DECwriter のプリンタタイプ名は decwriter です。ただし、共通プリンタタイプ PS はこの規則に従いません。PS は LaserWriter I や LaserWriterII プリンタなど、多くの PostScript プリンタモデルのプリンタタイプとして使用されます。

lpadmin -T コマンドまたは Admintool を使用すると、プリンタタイプを指定できます。Admintool では、プリンタのインストール時にのみプリンタタイプを指定できます。既存のプリンタのタイプを変更したい場合は、Admintool を使用してそのプリンタを削除してインストールし直さなければなりません。既存のプリンタ以外の場合、lpadmin コマンドによりプリンタタイプを変更します。

Admintool を使用すると、メニューからプリンタタイプを選択するか、「その他 (Other)」を選択して terminfo データベース内でプリンタタイプを指定できます。この方法には、lpadmin コマンドと同じ機能があります。

terminfo データベース内のプリンタ名

各プリンタタイプに関する情報は、terminfo データベース (/usr/share/lib/terminfo) に格納されています。この情報には、プリンタの機能と初期設定制御データが含まれます。インストールするプリンタは、terminfo データベース内のエントリに対応していなければなりません。

$ pwd
/usr/share/lib/terminfo
$ ls
1   4   7   A   M   a   d   g   j   m   p   s   u   x
2   5   8   B   P   b   e   h   k   n   q   t   v   y
3   6   9   H   S   c   f   i   l   o   r   ti  w   z
$ 

各サブディレクトリには、端末またはプリンタに関してコンパイル済みのデータベースエントリが入っています。各エントリは、プリンタまたは端末のタイプの頭文字別に編成されています。たとえば、Epson プリンタがある場合は、/usr/share/lib/terminfo/e 内を探すと、Epson プリンタの特定のモデルが見つかります。

$ cd /usr/share/lib/terminfo/e
$ ls
emots        ep2500+high  ep48           ergo4000    exidy2500
env230       ep2500+low   epson250       esprit
envision230  ep40         epson2500-80   ethernet
ep2500+basic ep4000       epson2500-h    ex3000
ep2500+color ep4080       epson2500-hi8  exidy
$ 

上記のように、Epson プリンタのエントリがあります。

NEC プリンタがある場合は、/usr/share/lib/terminfo/n ディレクトリ内を探すと、使用中の NEC プリンタモデルが見つかります。

$ cd /usr/share/lib/terminfo/n
$ ls
ncr7900        ncr7901        netty-Tabs     newhpkeyboard
ncr7900-na     nec            netty-vi       nuc
ncr7900i       net            network        nucterm
ncr7900i-na    netronics      netx
ncr7900iv      netty          newhp
$ 

上記のように、このディレクトリには、NEC のエントリが含まれています。

プリンタタイプの選択

ローカル PostScript プリンタの場合は、プリンタタイプとして PostScript (PS) または Reverse PostScript (PSR) を使用します。使用するプリンタが PostScript をサポートしていれば、プリンタタイプが terminfo データベースに含まれていても、PS または PSR を選択してください。

PostScript プリンタでページの印刷面を上にして印刷すると、文書は逆方向に印刷されます。1 ページ目はスタックの 1 番下になり、最終ページは 1 番上になります。プリンタのタイプを PSR として指定すると、LP 印刷サービスはプリンタに送る前にページの順序を逆転させます。つまり、最終ページが最初に印刷され、各ページは正順にスタックされます。ただし、LP 印刷サービスがページ順を確実に変更できるのは、『PostScript Language Reference Manual』(Adobe Systems Incorporated 制作、Addison-Wesley 社、1990 年刊) の付録 C の Adobe Document Structuring 規格に準拠する PostScript ファイルの場合だけです。

プリンタで複数の種類のプリンタをエミュレートできる場合は、lpadmin -T コマンドを使用して複数のタイプを割り当てることができます。複数のプリンタタイプを指定すると、LP 印刷サービスは各印刷要求に適したタイプを使用します。

該当する terminfo ディレクトリ内でプリンタタイプが見つからないことがあります。プリンタのタイプは、そのプリンタのメーカー名に対応しているとは限りません。たとえば、PostScript プリンタのタイプによっては、メーカーや製品名に固有のエントリの代わりに、PS または PSR エントリ (/usr/share/lib/terminfo/P ディレクトリに入っています) を使用できます。

例外的なタイプのプリンタを使用する場合は、さまざまなエントリを試してみなければ、プリンタのモデルに使用できる特定の terminfo エントリを判断できないことがあります。できれば、プリンタに使用できるエントリを terminfo データベース内で見つけてください。その方が、新しくエントリを作成するよりもはるかに簡単です。独自のエントリを作成しなければならない場合は、「サポートされていないプリンタの terminfo エントリを追加する」を参照してください。役立つヒントが掲載されています。

ファイル内容形式の選択

印刷フィルタはファイルの内容を、目的のプリンタが受け付けることができる形式に変換します。「ファイル内容形式」は、フィルタを通さずに直接印刷できるファイル内容の形式を LP 印刷サービスに通知します。フィルタなしに印刷するには、必要なフォントをプリンタ上でも利用できなければなりません (他のファイルタイプにはフィルタを設定して使用しなければなりません)。

lpadmin -I コマンドまたは Admintool を使用すると、プリンタのファイル内容形式を指定できます。Admintool を使用すると、メニューからファイル内容形式を選択できます。一部のファイル内容形式はメニューにありません。lpadmin コマンドを使用して、Admintool メニューにないファイル内容形式を指定してください。

多くのプリンタでは、次の 2 種類のファイルを直接印刷できます。

ユーザーがファイルの印刷要求を出すときは、そのファイルの内容形式を指定します (lp -T content-type)。指定しないと、ファイルは simple (ASCII テキスト) と見なされます。LP 印刷サービスはファイル内容形式を使用して、ファイル内容をプリンタで処理できる形式に変換するためのフィルタを決めます。

Admintool ではファイル内容形式のリストが表示されるので、ローカルプリンタをインストールまたは変更するときに、そこから形式を選択できます。選択結果は LP 印刷サービスが使用する名前に変換されます。表 2-2 は、Admintool で選択できるファイル内容形式を示しています。

表 2-2 Admintool によるファイル内容形式の選択

ファイル内容形式 

LP 印刷サービス名 

説明 

PostScript 

postscript

PostScript ファイルはフィルタを通す必要がない。ASCII ファイルはフィルタを通す必要がある 

ASCII 

simple

PostScript ファイルはフィルタを通す必要がある。ASCII ファイルはフィルタを通す必要がない 

PostScript と ASCII 

simple,postscript

PostScript ファイルも ASCII ファイルもフィルタを通す必要がない 

None 

""

プリンタのタイプに一致するもの以外は、すべてのファイルがフィルタを通す必要がある 

Any 

any

フィルタは使用されない。プリンタがファイル内容形式を直接処理できなければ、そのファイルは印刷されない 

プリンタの機能に最も適合するファイル内容形式を選択してください。PostScript は、Admintool のデフォルトの選択で、通常はほとんどこのまま使用できます (PostScript ファイルには、フィルタ処理が不要なことを示します)。

通常使用するプリンタ

この節では、SunOS 5.x ソフトウェアで最も一般的に使用されるプリンタのプリンタタイプとファイル内容形式について説明します。掲載されていませんが、ここで説明するプリンタの多くは、simple 内容形式のファイルも直接印刷できます。

PostScript プリンタがある場合は、プリンタタイプ PS または PSR と内容形式 postscript を使用してください。PSR はページの順序を逆転させ、各ページを逆順で印刷してバナーページを最後に印刷します。

表 2-3 は、PostScript 以外の他のプリンタと、各プリンタの構成に使用するプリンタタイプを示しています。これらのプリンタでは、ファイル内容形式は simple です。


注 -

Sun では表 2-3 のプリンタをサポートしていませんが、フィルタ処理を行うか、プリンタがファイル内容形式を直接印刷できれば、サポートしていないプリンタを使用できます。以下の製品に不明な点がある場合は、製造元に問い合わせてください。


表 2-3 Sun がフィルタを提供していない PostScript 以外のプリンタ

プリンタ 

プリンタタイプ 

Daisy 

daisy

Datagraphix 

datagraphix

DEC LA100 

la100

DEC LN03 

ln03

DECwriter 

decwriter

Diablo 

diablo

 

diablo-m8

Epson 2500 系列 

epson2500

 

epson2500-80

 

epson2500-hi

 

epson2500-hi80

Hewlett-Packard HPCL printer 

hplaser

IBM Proprinter 

ibmproprinter

terminfo データベースにないプリンタを設定したい場合は、「サポートされていないプリンタの terminfo エントリを追加する方法」を参照してください。