この節では、印刷クライアントコマンドが、プリンタ名とプリンタ構成情報を見つけるのに使用する資源について説明します。
印刷クライアントコマンドは、ネットワーク上のすべてのプリンタのプリンタ構成情報を格納するネットワーク (共有) 資源である、ネームサービスを使用できます。ネームサービス (NIS または NIS+) は、プリンタ構成情報の管理を簡単にします。プリンタをネームサービスに追加すると、ネットワーク上のすべての印刷クライアントは、そのプリンタにアクセスできます。
図 1-3 に、印刷手順の中で、印刷クライアントコマンドによりプリンタ構成資源の階層を調べ、どこに印刷要求を送信するか決定する処理を強調して示します。
図 1-4 に示すように、印刷クライアントのコマンドには、プリンタとプリンタ構成情報を見つけるためにより多くのオプションを指定できます。
ユーザーは lp コマンドまたは lpr コマンドを使用して、印刷クライアントから印刷要求を出します。ユーザーは、次の 3 つの形式のいずれかを使用して、出力先のプリンタ名またはプリンタクラスを指定できます。
単独名形式。次の例に示すように、印刷コマンドとオプションの後にプリンタ名またはプリンタクラスが続きます。
% lp -d neptune filename
POSIX 形式。次の例に示すように、印刷コマンドとオプションの後に server:printer が続きます。
% lpr -P galaxy:neptune filename
コンテキストベース形式。次の例に示すように、『Federated Naming Service Programming Guide』で規定されている指定形式です。
% lpr -d thisdept/service/printer/printer-name filename
印刷コマンドは、次の手順でプリンタとプリンタ構成情報を見つけます。
ユーザーが宛先のプリンタ名またはプリンタクラスを 3 つの有効な形式のいずれかで指定しているかどうかを調べます。
ユーザーがプリンタ名またはプリンタクラスを有効な形式で指定していない場合、ユーザーの PRINTER 環境変数または LPDEST 環境変数にデフォルトプリンタ名が指定されていないか調べます。
どちらの環境変数にもデフォルトプリンタが指定されていない場合は、ユーザーのホームディレクトリの .printers ファイルで _default プリンタ別名が設定されていないか調べます。
.printers ファイルに _default プリンタ別名が設定されていない場合は、印刷クライアントの /etc/printers.conf ファイルで構成情報を調べます。
/etc/printers.conf ファイルでプリンタが見つからない場合は、ネームサービス (NIS または NIS+) があればそれを調べます。
プリンタを検出する際に 印刷クライアントが用いる方法には、次の利点があります。
ネームサービス (NIS または NIS+) を使用して、プリンタ情報を 1 つの場所に格納できます。これは、印刷クライアントソフトウェアの最も重要な機能です。プリンタを追加して、ネットワーク上のすべての 印刷クライアントで利用できるようにするには、ネームサービスにプリンタ情報を入力するだけです。プリンタの変更や削除に関しても同じことが適用されます。ネームサービス中のプリンタ情報は、すべての 印刷クライアントで利用できます。
ユーザーは各自の .printers ファイルを用いて、プリンタ情報をカスタマイズできます。印刷クライアントがネームサービスにリストされているプリンタを知っている場合でも、クライアントのプリンタ構成ファイルをカスタマイズすれば、印刷要求を取り消したり状態情報を取得するときに、プリンタ別名を使用して特定のプリンタだけを見つけることも可能です。
ネームサービスを使用しない場合でも、印刷の設定と管理に要する時間を減らすことは可能です。そのためには、ネットワーク上のすべてのプリンタに対応する /etc/printers.conf のマスターファイルを作成し、そのファイルを印刷クライアントにコピーします。/etc/printers.conf ファイルの使用方法については、第 3 章「プリンタの設定手順」を参照してください。
印刷クライアントソフトウェアは、POSIX 形式の名前を使用します。このことは、印刷クライアントが、印刷クライアントやネームサービスに定義されていないプリンタにもアクセスできることを意味します。
ネームサービスは、ネットワーク上のプリンタ構成情報を追加、変更、削除するための最も効率的な方法です。ほとんどすべてのサイトはネームサービスを使用することにより大きな恩恵を受けます。ただし、数台のプリンタと印刷クライアントだけしか存在しない小規模なネットワークは例外です。