TCP/IP とデータ通信

/etc/uucp/Devices ファイル

/etc/uucp/Devices ファイルには、リモートコンピュータへのリンクを確立するために使用できるすべてのデバイスに関する情報が入っています。この種のデバイスには、ACU (が含まれます)、直接リンク、ネットワーク接続などがあります。

Devices ファイルのエントリの形式は次のとおりです。

Type

Line

Line2

Class

Dialer-Token-Pairs

次に示す /etc/uucp/Devices のエントリは、ポート A に接続され 38,400 bps で動作する US Robotics V.32bis モデムを表しています。


ACUEC cua/a - 38400 usrv32bis-ec

以下各フィールドについて説明します。

Type フィールド

このフィールドは、デバイスが確立するリンクの種類を記述します。このフィールドには次のセクションに示すキーワードのいずれかを入れることができます。

キーワード Direct

キーワード Direct は、主として cu 接続用のエントリ内で使用されます。このキーワードは、このリンクが他のコンピュータまたはポートセレクタへの直接リンクであることを示します。cu-l オプションで参照したい各回線について、それぞれ独立したエントリを作成する必要があります。

キーワード ACU

キーワード ACU は、(cu、UUCP、または PPP を介した) リモートコンピュータへのリンクを、モデムを介して確立することを示します。このモデムは、直接ローカルコンピュータに接続しているものでも、ポートセレクタを介して間接的に接続しているものでもかまいません。

ポートセレクタ

これは、ポートセレクタの名前で置き換えるものとして、Type フィールド内で使用される変数です。ポートセレクタは、ネットワークに接続されたデバイスで、呼び出し側モデムの名前を要求し、アクセスを許可します。 /etc/uucp/Dialers ファイルに入っている呼び出しスクリプトは、micom ポートセレクタと develcon ポートセレクタについてのものだけです。ユーザーは、Dialers ファイルに独自のポートセレクタエントリを追加できます (詳細は /etc/uucp/Dialers ファイル」を参照してください)。

Sys-Name

Type フィールド内のこの変数は、特定のマシンの名前で置き換えられます。これは、リンクがこのマシンへの直接リンクであることを示します。この命名スキーマは、この Devices エントリ内の行と、コンピュータ Sys-Name についての /etc/uucp/Systems ファイルエントリを対応付けるために使用されます。

Type フィールドと /etc/uucp/Systems ファイル

例 12-5 は、/etc/uucp/Devices のフィールドと、/etc/uucp/Systems のフィールドの対応を示しています。各列の見出しは Devices ファイルに対応するものです。

例 12-5 でフィールドの書体を変えて示したように、Devices ファイルの Type フィールドで使用されているキーワードは、Systems ファイルエントリの 3 番目のフィールドと突き合わされます。Devices ファイルの Type フィールドには ACUEC というエントリが入っており、これは自動呼び出し装置、つまりこの例では V.32bis モデムを示しています。この値は、Systems ファイルの 3 番目のフィールドと突き合わされます。このフィールドにも ACUEC というエントリが入っています (詳細は /etc/uucp/Systems ファイル」を参照してください)。


例 12-5 Type フィールドと /etc/uucp/Systems の対応関係


File Name  Type   Line  Line2  Class  Dialer-Token-Pairs
 
Devices    ACUEC  cua/a -      38400  usrv32bis-ec
 
System     nubian Any   ACUEC  38400  9998888 "" ¥d¥d¥r¥n¥c-ogin-¥r¥n¥c-ogin....... 
 

Line フィールド

このフィールドには、Devices エントリに対応付けられる回線 (ポート) のデバイス名が入ります。たとえば、特定のエントリに対応付けられているモデムが /dev/cua/a (シリアルポート A) に接続されている場合、このフィールドに入力する名前は cua/a です。Line フィールドでオプションのモデム制御フラグ M を使用すると、キャリアを待たないでデバイスをオープンすることを指定できます。たとえば次のようになります。


cua/a,M

Line2 フィールド

このフィールドは、フィールドの数を合わせるために存在しているだけです。ここには常にダッシュ (-) を指定します。Line2 フィールドを使用するのは 801 型のダイヤラですが、この種類は Solaris 環境ではサポートされていません。801 型以外のダイヤラは通常はこの設定を使用しませんが、このフィールドにダッシュだけは入れておく必要があります。

Class フィールド

Type フィールドでキーワード ACU または Direct を使用した場合は、Class フィールドにはデバイスの速度が入ります。ただし、このフィールドには、ダイヤラのクラス (Centrex または Dimension PBX) を区別するために、1 個の英字と速度値を含めることができます (たとえば、C1200D1200)。

大規模な事業所では複数種の電話ネットワークを使用することが多いため、このような指定が必要になります。たとえば、1 つのネットワークは事業所内の内線通信専用に使用し、もう 1 つのネットワークは外線通信に使用するといった方式が考えられます。このような場合は、内線回線と外線回線とを区別する必要があります。

例 12-6 に示すように、Devices ファイルの Class フィールドで使用するキーワードは、Systems ファイルの Speed フィールドと突き合わされます。各列の見出しは、Devices ファイルのフィールドのものであることに注意してください。


例 12-6 Class フィールドと /etc/uucp/Systems の対応関係


File Name  Type   Line  Line2  Class  Dialer-Token-Pairs
 
Devices    ACU    cua/a -      D2400  hayes
 
System     gobi   Any   ACUEC  D2400  3251 ogin: nuucp ssword: taheya
 

どのような速度でも使用できるデバイスでは、Class フィールドにキーワード Any を使用します。Any を使用した場合は、回線は、Systems ファイルの Speed フィールドで要求された任意の速度に適合します。このフィールドが Any で、Systems ファイルの Speed フィールドも Any である場合は、速度はデフォルトの 2400 bps となります。

Dialer-Token-Pairs フィールド

Dialer-Token-Pairs (DTP) フィールドには、ダイヤラの名前とそれに渡すトークンが入ります。DTP フィールドの構文は次のとおりです。

dialer token [dialer token]

dialer の部分は、モデムかポートモニターの名前あるいは直接リンクデバイスの場合は direct または uudirect です。ダイヤラとトークンのペアはいくつでも指定できます。指定しなかった場合は、Systems ファイル内の関連エントリから取得されます。token 部は、dialer 部の直後に指定できます。

対応するダイヤラによっては、最後のダイヤラとトークンのペアはない場合もあります。ほとんどの場合は、最後のペアには dialer 部だけが含まれます。token 部は、対応する Systems ファイルエントリの Phone フィールドから取得されます。

dialer 部の有効エントリは、Dialers ファイル内で定義されているものか、いくつかの特殊ダイヤラタイプのうちの 1 つとなります。これらの特殊ダイヤラタイプはコンパイル時にソフトウェア中に組み込まれているので、Dialers ファイル内に該当エントリがなくても使用できます。表 12-3 に、特殊ダイヤラタイプを示します。

表 12-3 ダイヤラとトークンのペア

TCP

TCP/IP ネットワーク 

TLI

トランスポートレベルインタフェースネットワーク (STREAMS を使わないもの) 

TLIS

トランスポートレベルインタフェースネットワーク (STREAMS を使うもの) 

詳細は、Devices ファイル内のプロトコル定義」を参照してください。

Dialer-Token-Pairs フィールドの構造

DTP フィールドの構造は、エントリに対応するデバイスに応じて 4 通りに設定できます。


例 12-7 Dialers フィールドと /etc/uucp/Dialers の対応関係


File Name Type  Line  Line2 Class Dialer-Token-Pairs
 
Devices   ACU   cua/b -     2400  hayes
 
Dialers   hayes =,-,  ""          ¥¥dA¥pTE1V1X1Q0S2=255S12=255¥r¥c
                                  ¥EATDT¥T¥r¥c CONNECT
 

Devices ファイルエントリの DTP フィールドには、dialer 部 (hayes) だけが示されている点に注意してください。これは、ダイヤラに渡すトークン (この例では電話番号) が、Systems ファイルエントリの Phone フィールドから取得されることを意味します (例 12-9 で説明する ¥T が暗黙で指定されます)。


例 12-8 Dialers フィールドと /etc/uucp/Dialers の対応関係


File Name  Type     Line  Line2  Class  Dialer-Token-Pairs
 
Devices    develcon cua/a -      1200   develcon
 
Dialers    develcon ,""   ""            ¥pr¥ps¥c est:¥007 ¥E¥D¥e ¥007
 

token 部が空である点に注意してください。これは、この部分が Systems ファイルから取得されることを示しています。このコンピュータ用の Systems ファイルエントリには、Phone フィールドにトークンが含まれています。このフィールドは、通常、コンピュータの電話番号用として確保されています (/etc/uucp/Systems ファイル」を参照してください)。この種類の DTP にはエスケープ文字 (¥D) が含まれています。これは、Phone フィールドの内容が、Dialcode ファイル内の有効エントリとして解釈されないことを保証します。


例 12-9 Dialers フィールドと /etc/uucp/Dialers の対応関係


File Name  Type     Line  Line2  Class     Dialer-Token-Pairs
 
Devices    ACU      cua/b -      1200      develcon    vent        ventel
 
Dialers    develcon ""    ""     ¥pr¥ps¥c  est:¥007    ¥E¥D¥e      ¥007
 
Dialers    ventel   =&-%   t""   ¥r¥p¥r¥c  $           <K¥T%¥r>¥c  ONLINE!
 

最初のペアでは、develcon がダイヤラで、vent が Develcon スイッチに渡されるトークンです。トークンは、コンピュータに接続するデバイス (たとえば Ventel モデム) をダイヤラに指示しています。各スイッチごとに設定が異なることがあるので、このトークンは各ポートセレクタに固有のものにします。Ventel モデムが接続されると、第 2 のペアがアクセスされます。このペアでは、Ventel がダイヤラで、トークンは Systems ファイルから取得されます。

DTP フィールドでは 2 つのエスケープ文字が使用できます。

Devices ファイル内のプロトコル定義

/etc/uucp/Devices では、各デバイスに使用するプロトコルを定義できます。通常は、デフォルトを使用するか、または呼び出そうとしている個々のシステムごとにプロトコルを定義できるので、この指定は不要です (/etc/uucp/Systems ファイル」を参照してください)。プロトコルを指定する場合は、次の形式を使用する必要があります。

Type,Protocol [parameters]

たとえば、TCP/IP プロトコルを指定するには、TCP,te を入力します。

表 12-4 に、Devices ファイルで使用できるプロトコルを示します。

表 12-4 /etc/uucp/Devices で使用されるプロトコル

プロトコル 

説明 

t

このプロトコルは、TCP/IP や、その他の信頼性のある接続を介した伝送に、最もよく使われる。このプロトコルはエラーのない伝送を前提としている 

g

UUCP のネイティブプロトコル。低速で信頼性があり、ノイズの多い電話回線を介した伝送に適している 

e

このプロトコルは、(TCP/IP のようなバイトストリーム指向ではなく) メッセージ指向でエラーのないチャネルを介した伝送を前提としている 

f

このプロトコルは X.25 接続を介した伝送に使用される。このプロトコルは、データストリームのフロー制御に関係している。特に X.25/PAD リンクなどのように、完全に (またはほとんど) エラーがないことが保証されるリンクでの使用を意図している。検査合計はファイル全体についてのみ実施される。伝送が失敗した場合は、受信側は再伝送を要求する 

次に、デバイスエントリ用のプロトコル指定の例を示します。


TCP,te - - Any TCP - 

この例は、デバイス TCP について t プロトコルの使用を試みるように指示しています。相手側がそれを拒否した場合は、e プロトコルが使用されます。

et のどちらも、モデムを介した通信には適していません。モデムがエラーのない伝送を保証するものであったとしても、モデムと CPU との間でデータが失われる可能性があります。