DHCP は、インターネットプロトコル (IP) アドレスやその他のインターネット構成パラメータをホストに提供します。DHCP を使用すると、ユーザーが事前に構成を行う必要がなくなります。この新しいプロトコルにより、システム管理者が個々の IP アドレスを個別に割り当てたり変更したりする必要があった、従来のインターネットアーキテクチャが改善されます。手作業による処理には、費用がかかる、難しい、エラーが発生しやすい、時間がかかる、という短所があります。
DHCP は、管理者が何度も IP アドレスを割り当てたり変更したりする必要性をなくすことにより、ネットワークの管理費用を削減します。使用されていない IP アドレスのプールから動的 IP アドレスを選択して、一時使用または永久使用のために自動的にホストに割り当てます。さらに、割り当てた IP アドレスが不要になるまたは使用期限が切れた場合には、DHCP はその他のクライアントに使用させるために当該 IP アドレスを回収します。
DHCP と BOOTP のパケットフォーマットは同じですが、BOOTP パケットは固定長、DHCP パケットは可変長です。DHCP パケットの長さについては、クライアントとサーバーとの間でネゴシエーションが行われます。
インターネット技術タスクフォース (IETF) の動的なホスト構成のための作業グループは、約 5 年間にわたって、現在の IP アドレス割り当てのアーキテクチャが持っている問題について作業を行なってきました。IETF は、DHCP の標準化を行なっている途上です。現状は、複数のコメント要求 (RFC)、すなわち RFC 1542、2131、2132 が出されている状態です。
インターネットが急速に成長しているため、ネットワークアドレスが不足しています。この問題に対処するために、クラスレスドメイン間ルーティング (CIDR) が開発されました。IP アドレスは、大規模、中規模、小規模のネットワークに対応するクラス A、B、C に分けられていました。クラス B の IP アドレスが不足したため、CIDR の設計が使用されることになりました。CIDR は、65,536 個のアドレスから構成されるクラス B ネットワークを 1 つの組織に 1 つ割り当てるのではなく、必要な数だけのクラス C アドレスを割り当てるという考えをベースにしていました。
CIDR 戦略に従って割り当てられたクラス C ネットワーク番号は、ランダムではありません。番号は連続しており、同じ接頭辞を共有しています。このことが、非常に大きいルーティングテーブルを操作することによって引き起こされる問題の大部分を軽減するのに役立ちます。
以前は、IP アドレスのブロックが個別の要求者や企業に割り当てられていましたが、CIDR 戦略の場合は、個別の ISP に割り当てられます。したがって、ISP を簡単に変更するためには、簡単に番号の付け直しができることが重要になります。DHCP では、ネットワークの番号を簡単に付け直すことができ、したがって、ISP を簡単に変更することができます。
DHCP の技術では、以下の便利な機能を使用することができます。
自動的なネットワーク構成。これにより、DHCP をサポートするネットワーク上でクライアントマシンに電源を入れると、クライアントマシンは必要な情報を獲得することができます。たとえば、IP アドレス、デフォルトのルーター、サブネットマスク、DNS ドメイン、DNS サーバー、NIS+ ドメイン、NIS+ サーバー、タイムゾーン、時間サーバー、および動作に必要なその他のすべての情報を獲得しますが、管理者が個別に構成を行う必要はありません。
自動的な IP アドレス管理、すなわち、IP アドレスの割り当て、回収、再構成、再番号付け。TCP/IP の全パラメータは集中管理され、かつ DHCP サービスが IP アドレスの割り当てと再使用を自動的に管理するため、管理者の関与の必要性は最小限です。
ネットワーク構成情報の位置が集中化されたことによって非常に簡素化されたシステム管理。TCP/IP 構成情報は、ネットワーク内のクライアントのそれぞれに分散するのではなく、中央の 1 か所に格納することができます。1 つのネットワークの番号の付け直しは、相対的に短期の IP アドレスのリースを使用して、簡単かつ迅速 (通常は数日以内) に行うことができます。
さらに、DHCP は BOOTP をベースとしているため、既存の BOOTP 中継機能を活用することができます。これにより、ネットワーク管理者は、ルーターを設定して BOOTP/DHCP トラフィックをリモート BOOTP/DHCP サーバーへ転送することができます。その結果として、in.rarpd と bootparams による構成サービスの場合には必要であった、ネットワークセグメントごとのネットワークパラメータサーバーは必要なくなりました。
ネットワーク管理者は、このコマンドを使用して、Solaris サーバー上に DHCP サービスと BOOTP サービスを迅速かつ容易に構成することができます。このコマンドは、DHCP サービスを立ち上げて、ローカルネットワークとリモートネットワークを構成します。ローカルネットワークは、サーバーが直接接続されているネットワークです。リモートネットワークは、サーバーが直接には接続されていないネットワークであり、BOOTP 中継エージェントを介してアクセスします。
リモートネットワーク上のクライアントにサービスを提供するには、クライアントのネットワーク上で BOOTP 中継エージェントを設定する必要があります。BOOTP 中継エージェントの機能は、普及している数多くのルーターや交換機内に存在します。ルーターがこの機能をサポートしていない場合は、クライアントのネットワーク上の任意の Solaris マシン上で、in.dhcpd デーモン (in.dhcpd(1M) マニュアルページを参照) を中継エージェントモードで動作させることができます。これは、Solaris 2.6 から利用できるようになった方法です。図 14-1 に、DHCP と BOOTP の概要を示します。