TCP/IP とデータ通信

リース時間ポリシー

DHCP は IP アドレスを動的に割り当てるメカニズムを提供します。IP アドレスにはリース期間が伴っており、永久または一時に設定することができます。ユーザーサイトのポリシーとして、一時 IP アドレスと永久 IP アドレスの数を決定し、さらに一時 IP アドレスのリース期間を決定する必要があります。

DHCP サービスを最大限利用するには、DHCP に IP アドレスの割り当てを動的に管理させることが最善です。DHCP を用いた場合には、クライアントとサーバーが特定の期間に渡る IP アドレス設定の貸し出し (リース時間と呼ぶ) についてネゴシエーションを行います。dhcptab 内の特定のマクロ定義の LeaseTim シンボルと LeaseNeg シンボルを使用することによって、サーバー、ネットワーク、クライアントのベンダークラス、個別のクライアント IP アドレスのいずれかをベースにしてリース時間ポリシーを設定することができます。

LeaseNeg シンボルと LeaseTim シンボルを使用すると、ユーザーサイトのポリシーを設定することができます。LeaseTim は相対的な時間であり、24時間、2 時間、または 10 時間などとなります。クライアントに IP アドレスが割り当てられると (または、すでに割り当てられている IP アドレスのリースについて再度ネゴシエーションを行うと)、クライアントが DHCP の回答を受け取った絶対時間に LeaseTim の値が追加されます。絶対時間は現在時刻であり、たとえば 1996 年 9 月 27 日です。絶対的な現在時刻に LeaseTim の値を加算した時刻は、IP アドレスについてのクライアントのリースが期限切れとなる絶対時間として、クライアントの dhcp_network レコード内に格納されます。

LeaseTim シンボルの設定は、クライアントに対して許可することができる、リースの最大時間間隔を定義します。一般的にはこの値を相対的に小さな値にしておく必要がありますが、その理由は、クライアントとサーバーの同期を維持するため、使用されていない IP アドレスを遅滞なく回収するため、さらにネットワークの再番号付けをより円滑に行うためです。

ただし、DHCP サーバーが使用不可能になった場合に DHCP サービスを実行しているマシン (複数可) が修復されるまでの間、クライアントが機能を継続することができる程度には大きい値である必要があります。1 〜 3 日が最善の LeaseTim ポリシーとなります。所定の環境において適切に動作する値を選択してください。

LeaseNeg シンボルは、リースの期限が切れる前にクライアントがサーバーとリースについて再度ネゴシエーションを行うことを可能とするかどうかを決定します。このシンボルが存在する場合、クライアントはリースについて再度ネゴシエーションを行うことができます。LeaseNeg が存在する場合、クライアントは既存の接続に対してリース関連の割り込みを行わないでネットワーク上で動作することができます。

IP アドレスよりマシンの方が数が多く、したがって IP アドレスの使用に時間制限を実施したい環境では、LeaseNeg を省略する方が実用的です。このような場合の例として、コンピュータサイエンスの教室内のマシンに対して時間制限を実施する場合があります。LeaseTim と同様に、LeaseNegdhcptab の各種マクロ内で使用することができます。詳細は、dhcptab(4) および dhcp_network(4) を参照してください。

サービス (たとえば、メールや Web ページ) をエクスポートするマシンは IP アドレスを保持する必要がありますが、当該ノードが使用する IP アドレスがもはや使用されていない場合に (おそらくは廃棄された場合に)、その事実を検出可能であることを希望する場合もあります。この希望は、手動で割り当てられた旨を (必要に応じて割り当て者も) 当該ノードの dhcp_network レコードにマークし、そのノードのフラグフィールドを MANUAL に設定することによって実現することができます。たとえば、ホスト名が gandalf でネットワークが 10.50.0.0 である場合は、pntadm gandalf -f MANUAL 10.50.0.0 と入力します。

永久リースで IP アドレスを割り当てることもできますが、DHCP サービスを使用して自動的に IP アドレスを回収することはできません。したがって、永久 IP アドレスの数は最小限の管理可能な数に抑えてください。

DHCP サービスは、このフラグフィールドを使用して、dhcp_network レコードエントリの期限が切れて回収可能となる時点を判定します。この値は、pntadm コマンドの e オプションを使用することによって変更できます。このコマンドを使用すると、クライアントのリースの有効期限を過去の時間に設定することができますが、クライアントとそのクライアントのユーザー (複数可) に悪影響を及ぼすことを避けるために、未来の時間にのみ設定してください。

DHCP サービスが動的に IP アドレスを割り当てるか、または既存の有効期限について再度ネゴシエーションを行うたびに、dhcp_network テーブル内のこのフィールドが更新されます。

lease フラグは IP アドレスを割り当てる条件を表します。フラグの設定は、以下を結合したものになります。

0 (Dynamic)

IP アドレスのこのリースには有効期限があります。リースが期限切れとなった場合は、更新が可能である旨がサイトのポリシーに指示してあれば更新することができます。現在のクライアントがリースを更新しない場合、その IP アドレスは別のクライアントに割り当てることができます。フラグが 0 に設定されている場合は、リース時間を変更することができます。

1 (Permanent)

この IP アドレスのリースは永久的に割り当てられており、クライアントがリース時間を変更することはできません。ただし、IP アドレスを使用しているクライアントがその IP アドレスの割り当てを解除することは可能です。割り当て解除された IP アドレスは、別のクライアントに割り当てることができます。

2 (Manual)

この IP アドレスは特定のクライアントのマシンに割り当てられます。クライアントが割り当てを解除することはできません。フラグが 2 に設定されている限り、その IP アドレスを再度割り当てることができるのは、管理者が手動で変更した場合だけです。

4 (Unusable)

この IP アドレスは使用できません。フラグを 4 に設定することにより、IP アドレスの割り当てを防止することができます。DHCP サーバーは、IP アドレスの配置を試行してそれがすでに使用中であることがわかった場合に、その IP アドレスを使用不可とマークします。DHCP サーバーは、IP アドレスを割り当てる前に、通常は ping コマンドを用いてすでに使用中であるかどうかを確認します。この設定は、dhcpconfig 内に構成可能です。

フラグが設定の結合であることがあります。たとえば、フラグが 3 に設定されている場合は、12 を結合したものです。つまり、この設定は永久かつ手動という設定であり、この IP アドレスのリースは永久リースで、かつ管理者が割り当てたリースになります。