この章では、AP 構成の状態を保持するAP データベースの生成・管理方法について説明します。
AP は、すべての定義済みメタディスクおよびメタネットワーク、およびそれらに対応する代替パスと属性に関する情報が入ったデータベースを持っています。Sun Enterprise 10000 サーバー上の各ドメインについて、それぞれデータが 1 セットずつ保持されています。さらに他の Sun Enterprise サーバーでは、マシン全体についてのデータが一式保持されています。それでも、データベースの複製を複数設定しておいてください。この方法によって、所定のデータベースにアクセスできない場合や、データベースが破壊された場合に、AP は現在、破壊されていないデータベースの複製を自動的に使い始めることができます。
データベースの複製それぞれには、最低 300 KB の専用ディスクパーティションを割り当てる必要があります。300 KB よりも大きいパーティションを使用することもできますが、ディスク容量が無駄になります。AP データベースのディスクパーティションを選択するときは、以下のことを念頭に置いてください。
データベースの複製は 3 〜 5 個設定してください。
出荷時設定では、ルートディスクのパーティション 4 が未割り当てのまま、AP データベース用の適切なサイズに設定されています。パーティション 4 がまだ使用されていなければ、このパーティションを AP データベースの複製領域として使用することをお薦めします。
データベースの複製間では、共通の入出力コントローラを指定しないでください。異なる入出力コントローラを指定しておくことで、コントローラでの障害発生時に可用性を高く保てます。
システムで DR を使用している場合は、データベースの各複製へのパスをそれぞれ異なるシステムボード上の入出力コントローラを介して設定してください。この操作によって、システムボードの 1 つが切り離されてもデータベースのどれかの複製にアクセスできます。
AP データベースの複製を代替パスで指定された先のディスクのパーティションに置く場合は、パスを 2 つ使用することでデータベースの複製を作成してください。データベースへのパスには、AP メタディスクがそのパーティションにアクセスするときの「物理パス」を使用してください。ディスクは 2 つのパスを経由してアクセスできるので、AP は、実際にはデータベースは 1 つであっても、あたかも2 つのデータベースが存在するように動作します。AP は常にデータベースの複製を順次に更新してアクセスするので、この動作はデータベースに不整合を生じさせません。また、AP データベースは頻繁にはアクセスされないので、この動作によって性能上の問題は発生しません。
Sun Enterprise 10000 サーバーでは、AP データベースの情報のサブセットが、起動時に使用できるように自動的に SSP 上で保持されます。このデータベースには、起動ディスクのための代替パス設定情報が入っています。
データベースを配置する最良の位置を決めるには、AP データベースを格納するディスク用入出力コントローラのホストとなるシステムボードを今後どのように使用するのかを考慮する必要があります。もしドメイン間でボードを切り替えるなどの理由で、頻繁にボードの切り離しを行う予定がある場合は、そのボードがホストになっているコントローラに接続しているディスクには、AP データベースを格納しない方が良いでしょう。さもないと、ボードを切り離すごとにデータベースが使用不能になるので、AP が書き込みを行おうとするたびにコンソールにエラーメッセージが表示されることになります。このことが重大な問題になることはありません。ボードはいつでも再接続可能で、また再接続すると古くなったデータベースはすぐに再同期されます。ただし他のドメインにボードを接続した場合は、データベース用に予約されているスライスに、接続したドメインによりデータが書き込まれる可能性があります。
以下の AP コマンド例では、コマンドの検索パスに指定されているディレクトリに、コマンドがインストールされていると想定しています。「シングルユーザーモードの使用」を参照してください。
-c、-f オプションを指定した apdb(1M) コマンドを実行します。
# apdb -c /dev/rdsk/c0t1d0s4 -f
-c オプションは、データベースの複製を作成する raw ディスクスライス (/dev/rdsk下) を指定します。データベースの複製のそれぞれには、ディスクパーティション全体を専用に割り当てる必要があります。ディスクパーティションには、最低 300 KB が必要です。
-f (強制) オプションは、最初の AP データベースの複製を作成する場合だけ必要です。
-d、-f、-D オプションを指定した apdb(1M) コマンドを実行します。
# apdb -d /dev/rdsk/c0t1d0s4 -f # apconfig -D #
-d オプションは、削除するデータベースの複製がある raw ディスクスライス (/dev/rdsk 下) を指定します。
-f (強制) オプションは、最後から 2 番目と最後の AP データベースの複製を削除する場合にだけ必要です。
この例では、apdb -d コマンドを使ってデータベースの複製を削除した後、apconfig -D コマンドを使用して既存の AP データベースの複製に関する情報を表示しています。次の行で情報がまったく返されないことから、apdb(1M) コマンドが最後のデータベースの複製を削除したことが分かります。
AP データベースの最新のコピーを削除しても、その内容 (確定済みおよび未確定のいずれのエントリも含む) はメモリーに残っています。このため、その後で再起動せずに AP の新しいコピーを作成した場合は、前のデータベースと同じ内容のデータベースが新たに作成されます。これに対し、データベースの最新のコピーを削除した後で再起動を実行した場合は、メモリー上のデータベース情報は失われます。このため、新たに作成したデータベースのコピーには、データがまったく含まれません。
データベースの複製、データベース内のディスクエントリ、およびデータベース内のネットワークエントリに関する情報など、データベース内の情報を表示することができます。
-D オプションを指定した apconfig(1M) コマンドを実行します。
# apconfig -D パス: /dev/rdsk/c0t1d0s4 メジャー: 32 マイナー: 12 時刻表示: Thu Jul 27 16:24:27 1995 検査合計: 687681819 破壊: No アクセス不可: No
この例では、AP データベースが 1 つだけあります。apconfig -D コマンドを実行すると、このデータベースのメジャー番号、マイナー番号、時刻表示、および検査合計とともにデータベースへのパスが表示されます。破壊フィールドには、データベースが破壊されているかどうかが示されます (破壊フィールドに Yes が表示された場合、検査合計を使用したデータの妥当性検査が不正な結果になっています)。アクセス不可フィールドには、データベースが保存されているデバイスにアクセスできるかどうかが示されます。
AP データベースには、ディスクおよびネットワークパスグループについての情報が含まれています。パスグループが最初に定義されたときは、そのパスグループ定義は「未確定の」データベースエントリです。パスグループの定義については、第 3 章「メタディスクとディスクパスグループの使用」および第 5 章「メタネットワークとネットワークパスグループの使用」を参照してください。未確定のエントリに関連付けられているメタディスクまたはメタネットワークは、パスグループ定義が「確定される」までは使用できません。逆に、パスグループ定義を削除する場合は、削除を確定しないと定義は削除されません。2 つの状態 (未確定と確定) によって、操作を実行する前にその影響を確認することができます。未確定のデータベースエントリを確定するには、apdb -C コマンドを使用します。未確定のエントリは、それらを確定するか削除するまで無期限にデータベース内に残ります。
-S、-u オプションを指定した apconfig(1M) コマンドを実行します。S は SCSI、u は uncommitted (未確定) を表します。
# apconfig -S -u c1 sf0 P A c2 sf1 メタディスク名: mc1t5d0 U mc1t4d0 U mc1t3d0 U mc1t2d0 U mc1t1d0 U mc1t0d0 U
詳細は、第 3 章「メタディスクとディスクパスグループの使用」を参照してください。
-S オプションを指定した apconfig(1M) コマンドを実行します。S は記憶装置を意味します。
# apconfig -S c1 pln0 P A c2 pln1 メタディスク名: mc1t5d0 R mc1t4d0 mc1t3d0 mc1t2d0 mc1t1d0 mc1t0d0
詳細は、第 3 章「メタディスクとディスクパスグループの使用」を参照してください。
-N、-u オプションを指定した apconfig(1M) コマンドを実行します。N は ネットワーク、u は uncommitted (未確定) を表します。
# apconfig -N -u メタネットワーク: mle0 U 物理デバイス: le2 le0 P A
詳細は、第 5 章「メタネットワークとネットワークパスグループの使用」を参照してください。
-N オプションを指定した apconfig(1M) コマンドを実行します。
# apconfig -N メタネットワーク: mle3 物理デバイス: le4 le3 P A
詳細は、第 5 章「メタネットワークとネットワークパスグループの使用」を参照してください。