Sun Enterprise サーバー Alternate Pathing ユーザーマニュアル

ディスクのミラー化に関する注意事項

Sun Enterprise Volume Manager (SEVM) などの製品を用いてディスクをミラー化している環境で DR (Dynamic Reconfiguration) によりシステムボードを切り離す場合は、AP と DR の両方で正しく動作するように、ボリュームとミラーを構成する必要があります。

たとえば、システムボードが 12 枚あり、それぞれにホストアダプタ (下図では「コントローラ」と表記) が 1 つずつ存在する場合を考えてみましょう。

図 3-2 システムボードとコントローラ

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この状況でミラー化されたボリュームを作成する必要があるとします。次の構成を検討していると仮定します。

図 3-3 ボリュームのミラー化例 1

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この構成では、vol01-01 は、それぞれが異なる 4 つシステムボードに存在する 4 つのコントローラによってアクセスされる 4 方向のスライスで構成されます。vol01-01 は、同じく 4 方向のスライスで構成される vol01-02 にミラー化されます。たとえば、コントローラ 0 のスライス 0 はコントローラ 3 のスライス 1 にミラー化されます。

これらの 4 つのコントローラの 1 つが搭載されているボードを切り離す必要がある状況を考えてみます。その場合、ボードを切り離す前に、そのボード上のコントローラを使用するミラーの一方を停止する必要があります。しかし、上図の構成では、それは不可能です。たとえば、コントローラ 0 があるボード 0 を切り離す場合、ミラー化する側とされる側の両方を停止する必要があり、その場合、ファイルシステムはアクセスできなくなります。つまり、上図の構成では、どのボードに対しても DR を使用することはできません。

この状況を回避する 1 つの方法は、たとえば、下図に示すように、同じシステムボードのコントローラがミラー化する側とされる側のいずれか一方にしか現れないようにボリュームをミラー化することです。

図 3-4 ボリュームのミラー化例 2

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上図の構成では、切り離そうとするボード (ボード 0 〜 5 のいずれか) 上のコントローラを使用するミラーの一方を最初に停止することによってボードを切り離すことができます。たとえば、ボード 4 (コントローラ 4 のボード) を切り離すには、まず vol01-02 を停止すればよいだけです。ファイルシステムには vol01-01 を使ってアクセスできますから、ファイルシステムに対するアクセスが失われることはありません。後でボード 4 を再接続すると、再びミラーに vol01-02 を追加することができます。

この回避策で問題なのは、ミラーが停止しているときシステムが単一点障害に弱くなるという点です。ディスクに障害が発生しても、ミラー化バックアップディスクは存在しません。しかしながら、この問題には、AP を使用して対処することができます。以下の AP メタデバイスを構成します。

上記の mc で始まる名前は説明を簡単にするためのものです。完全なメタデバイス名は、たとえば mc0t0d0s0 であり , これは代替パスとしてデバイス c0t0d0s0c6t0d0s0 をカプセル化します。

次の構成を考えてみます。

図 3-5 ボリュームのミラー化例 3

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この構成では、ミラーを停止させることなくどのボード (ボード 0 〜 11) でも切り離すことができ、単一点障害にも強くなります。たとえば、コントローラ 4 のあるボード 4 を切り離すには、まずメタデバイス mc4 を切り替えて、ボード 10 上のコントローラ 10 を使用するようにします (AP のコマンド、apconfig -P を使用するだけで可能)。

この例では、RAS サポートのレベル (すなわち、ディスク入出力資源の可用性と単一点障害に対する保護レベル) を高めるにつれて、コントローラとボード数を増やす必要があります。つまり、RAS 機能のサポートレベルを向上させるには、システムコストの増大が伴うということになります。

これは、実際の例ではありません。この例の主眼点は、ボリュームとミラーを構成するときには AP と DR の両方を考慮する必要があるということです。両方を考慮しないと、いずれか一方が使用できなくなる状況に陥ることがあります。Sun Enterprise Volume Manager (SEVM) を使用する場合は、ボリュームを構成する「物理」コントローラおよびスライスの記録を残してください。SEVM は、物理コンポーネントを自動的に選択するように使用することができますが、この選択プロセスでは、AP と DR に関する注意事項は考慮されません。AP と DR の両方に対応するには、ボリュームを構成する物理コンポーネントを明示的に選択する必要があります。