Sun Enterprise サーバー Alternate Pathing ユーザーマニュアル

ディスクパスグループとメタディスクの操作


注 -

この節では (SSA ディスクアレイ用の) pln ポートを使用するコマンドの例を用いています。Sun StorEdge (TM) A5000 ディスクアレイを使用している場合は、pln ポートと示されている部分に sf ポートを指定します。Sun StorEdge A7000 ディスクアレイを使用している場合は isp ポートを指定します。


ディスクパスグループとメタディスクを作成する
  1. パスグループの代替パスを構成する 2 つ のポートを決定します。

    1. apinst(1M) コマンドを以下のように実行し、すべてのポート (pln0pln1 など) およびそれらのディスクデバイスノード (/dev/dsk/c1t0d0 など) を表示します。


      # apinst
      pln0
              /dev/dsk/c1t0d0
              /dev/dsk/c1t1d0
              /dev/dsk/c1t2d0
              /dev/dsk/c1t3d0
              /dev/dsk/c1t4d0
              /dev/dsk/c1t5d0
      pln1
              /dev/dsk/c2t0d0
              /dev/dsk/c2t1d0
              /dev/dsk/c2t2d0
              /dev/dsk/c2t3d0
              /dev/dsk/c2t4d0
              /dev/dsk/c2t5d0

    2. 2 つのポートが同じディスクアレイに接続される機会を知るには、システムのハードウェア構成を理解している必要があります。

      この例では、SSA が 6 つのディスクと 2 つの SSA ポートを持っていると想定しています。1 つの SSA ポートは pln ポート c1 に接続され、他方の SSA ポートは pln ポート c2 に接続されます。

  2. -p-a-c オプションを指定した apdisk(1M) コマンドを実行し、未確定のディスクパスグループを作成します。


    # apdisk -c -p pln0 -a pln1
    

    指定内容は次のとおりです。

    -p には主パスを指定します。 -a には代替パスを指定します。 -c にはこの情報の作成を指示します。

    apdisk(1M) コマンドは、メタディスク名を生成します。また、AP データベース内に、6 つのディスクに対する 2 つの代替パスを維持するのに必要な全情報を作成します。

  3. -S-u オプションを指定した apconfig(1) コマンドを実行し、結果を確認します。


    # apconfig -S -u
    
    c1      pln0  P A
    c2      pln1  
            メタディスク名:
                    mc1t5d0  U
                    mc1t4d0  U 
                    mc1t3d0  U 
                    mc1t2d0  U 
                    mc1t1d0  U 
                    mc1t0d0  U 

    apconfig -S -u コマンドは、未確定のメタディスクを一覧表示します。-S は、記憶装置デバイスだけ (つまり、ネットワークではなくディスク) を一覧表示します 。-u は未確定のデバイスだけを表示します。各メタディスク名に続く U は、そのメタディスクエントリが未確定であることを示します。

    pln0 に続く P は、pln0 が主パスであることを示し、Apln0 が入出力中の代替パスであることを示します。入出力中の代替パスは変更することができますが、主パスは常に不変です。主パスで重要なことは、最初は入出力中の代替パスであること、メタディスク名が付けられたときに使用されること、およびメタディスクの識別に使用されることです。この例では、主パス名の c1t0d0 が、メタディスク名 mc1t0d0 の一部になります。

  4. 手順 3 で得られた結果に問題がなければ、-C オプションを指定した apdb(1M) コマンドを実行し、未確定のデータベースエントリを確定します。


    # apdb -C
    

  5. -S オプションを指定した apconfig(1) コマンドを実行し、データベースにある確定済みの記憶装置エントリを表示します。


    # apconfig -S
    
    c1      pln0  P A
    c2      pln1  
            メタディスク名:
                    mc1t5d0  
                    mc1t4d0   
                    mc1t3d0   
                    mc1t2d0   
                    mc1t1d0   
                    mc1t0d0   

    パーティションを物理パス名でマウントしている場合は、いったんマウント解除し、メタディスクパス名でマウントし直します。

    たとえば、たえず使用されているために、パーティションをマウント解除できない場合は、保守のためにシステムを停止して、再起動する準備が整うまでパーティションを AP の制御下に置くのを遅らせることができます。このためには /etc/vfstab ファイルを編集して、システムが再起動したとき、パーティションが AP デバイスの制御下に入るようにします (起動ディスクを AP の制御下に置く場合は、第 4 章で説明するように、apboot(1M) を使用して /etc/vfstab を編集する必要があります)。

    apconfig -S コマンドは、データベースにある確定済みの 記憶装置エントリを表示します。上記の例が示すように、この一覧は手順 3 の一覧と同じです。しかし、メタディスク名に続く U が消えていることから、メタディスクが確定されたことが分かります。

  6. drvconfig(1M) コマンドを指定します。


    # drvconfig -i ap_dmd
    

    drvconfig コマンドは、カーネル内のデバイスツリーを表すデバイスディレクトリを再構築します。AP ディスクメタドライバは、擬似デバイスです。

  7. ls コマンドを実行して、結果を確認します。


    # ls /devices/pseudo/ap_dmd*
    /devices/pseudo/ap_dmd@0:128,blk 
    /devices/pseudo/ap_dmd@0:128,raw
    /devices/pseudo/ap_dmd@0:129,blk
    /devices/pseudo/ap_dmd@0:129,raw
    /devices/pseudo/ap_dmd@0:130,blk
    /devices/pseudo/ap_dmd@0:130,raw
    ...

    この一覧から分かるように、drvconfig によって、代替パスが設定されたデバイスに対してマイナーノードが作成されました。

  8. -R オプションを指定した apconfig(1M) コマンドを実行し、デバイスディレクトリ /dev/ap/dsk および /dev/ap/rdsk から /devices/pseudo 下のメタディスク特殊ファイルへのシンボリックリンクを作成します。


    # apconfig -R
    

  9. ls コマンドを実行してシンボリックリンクを表示し、結果を確認します。


    # ls -l /dev/ap/dsk
    total 8
    lrwxrwxrwx  1 root           40 Jul 27 16:47 mc1t0d0s0 -> 
         ../../../devices/pseudo/ap_dmd@0:128,blk
    lrwxrwxrwx  1 root           40 Jul 27 16:47 mc1t0d0s1 -> 
         ../../../devices/pseudo/ap_dmd@0:129,blk
    lrwxrwxrwx  1 root           40 Jul 27 16:47 mc1t0d0s2 -> 
         ../../../devices/pseudo/ap_dmd@0:130,blk

    これで必要なデバイスノード、つまり /dev/ap/dsk および /dev/ap/rdsk の下のノードが使用できる状態になりました。

  10. 対応するメタディスクデバイスノード (/dev/ap/dsk または /dev/ap/rdsk で始まるパス) を使用するために、物理デバイスノードを使用するすべての参照 (/dev/dsk または /dev/rdsk で始まるパス) を変更します。

主パスから代替パスに切り替える

注 -

デバイスへの入出力の最中でも、パスの切り替えはできます。実際に障害が発生する前に、切り替えのプロセスを実験してみて、切り替え操作の理解とシステムの設定を確認することをお薦めします。



注意 - 注意 -

AP は、パスを切り替えた後、新しいパスでデータが転送できるかどうかは確認しません (ただし、パスが切り離されている、すなわちオフラインであるかどうかは判定します)。代替パスに切り替える前に、prtvtoc(1M) コマンドなどで入出力操作を実行して、パスの状態を確認することができます。正しく機能しないパスに切り替えても、AP はエラーや警告メッセージを出力しません。起動ディスクとして正常に機能しないパスに切り替えた場合は、すぐに元のパスに戻してください。システムに障害が発生することがあります。


  1. -S オプションを指定した apconfig(1) コマンドを実行して、現在の構成を表示します。


    # apconfig -S
    
    c1      pln0  P A
    c2      pln1  
            メタディスク名:
                    mc1t5d0   
                    mc1t4d0   
                    mc1t3d0   
                    mc1t2d0   
                    mc1t1d0 

    この例では、pln0A が続いているので、これが入出力中の代替パスであることがわかります (P も表示されているので、pln0 は主パスでもあります)。

  2. -P、-a オプションを指定した apconfig(1) コマンドを実行して、パスを切り替えます。


    # apconfig -P pln0 -a pln1
    

    -p は主パスを指定し、その結果として、入出力中の代替パスを変更する「パスグループを特定」します。このように、上記の例の -p pln0 は、pln0 が主パスであるパスグループを特定します。-a は入出力を実行する代替パスを指定します。

  3. -S オプションを指定した apconfig(1) コマンドを実行して、データベース内の確定済みメタディスクを表示します。


    # apconfig -S
    
    c1      pln0  P
    c2      pln1  A  
            メタディスク名:
                    mc1t5d0   
                    mc1t4d0   
                    mc1t3d0   
                    mc1t2d0   
                    mc1t1d0 

    入出力中の代替パスは pln1 に切り替えられています。

    切り替え操作は確定する必要がありません。

主パスに戻す
  1. apconfig(1) コマンドを以下のように実行して、代替パスを主パスに戻します。


    # apconfig -P pln0 -a pln0
    # apconfig -S
    
    c1      pln0  P A
    c2      pln1    
            メタディスク名:
                    mc1t5d0   
                    mc1t4d0   
                    mc1t3d0   
                    mc1t2d0   
                    mc1t1d0 

最初の apconfig コマンドによって、入出力中の代替パスが主コントローラ pln0 を持つパスグループのパスに切り替えられます。入出力中の代替パスは pln0 になります。

ディスクパスグループとメタディスクを削除する
  1. メタディスクへの参照を物理デバイス参照形式に変更します。

    1. 起動ディスクが AP の制御下にある場合は、「起動ディスクを AP の制御対象から除外する」の手順に従い、apboot(1M) を使用して、起動ディスクを AP の制御対象から除外します。

      起動ディスクからマウントしたファイルシステムをマウント解除する必要はありません。これは、マウント解除しなくても、 apboot(1M) によって物理デバイス上にファイルシステムが配置されるためです。

    2. AP メタディスク上に作成されたファイルシステム (起動ディスクからマウントされた以外のファイルシステム) をすべてマウント解除します。

    3. スクリプトとプログラムに /dev/ap/dsk/mc?t?d?s? あるいは /dev/ap/rdsk/mc?t?d?s?の形式のメタディスク参照が含まれている場合は、それぞれ /dev/dsk/c?t?d?s?/dev/rdsk/c?t?d?s? の形式の参照に変更します。

      一般的に、メタディスクへの参照は、以下に含まれています。

      • /etc/vfstab

      • /etc/system

      • /etc/dumpadm.conf

      • ディスクを参照するアプリケーションまたはスクリプト

  2. -d オプションで削除するパスグループの主パスを指定した apdisk(1M) を実行します。


    # apdisk -d pln0
    

  3. -S オプションを指定した apconfig(1M) コマンドを実行し、データベース内の確定済みディスクエントリを表示します。


    # apconfig -S
    
    c1      pln0  P A
    c2      pln1  
            メタディスク名:
                    mc1t5d0  D
                    mc1t4d0  D 
                    mc1t3d0  D 
                    mc1t2d0  D 
                    mc1t1d0  D 
                    mc1t0d0  D 

    パスグループがまだ確定されていない場合は、apdisk -d コマンドがパスグループをデータベースから削除します。ただし、パスグループがすでに確定済みの場合、apdisk -d コマンドはそれを削除済みと記録するだけで、ユーザーがそのエントリをデータベース内で確定するまで実際に削除されません。上記の例では、pln0 パスグループは既に確定済みなので、D という文字が付いています。これは、実際に削除されたことを示します。

  4. -C オプションを指定した apdb(1M) コマンドを実行し、データベースエントリを確定します。その結果、削除が完了します。


    # apdb -C
    

  5. -S オプションを指定した apconfig(1M) コマンドを実行して、削除を確認します。


    # apconfig -S
    


    注 -

    削除を確定する前であれば、取り消しができます。削除を取り消すには、apdisk -z コマンドで操作対象となるポートを指定します。


メタディスクを構成解除する
  1. スクリプトとプログラムに /dev/ap/dsk/mc?t?d?s? あるいは /dev/ap/rdsk/mc?t?d?s? の形式のメタディスク参照が含まれている場合は、それぞれ /dev/dsk/c?t?d?s?/dev/rdsk/c?t?d?s? の形式の参照に変更します。

    一般的に、メタディスクへの参照は、以下に含まれています。

    • /etc/vfstab

    • /etc/system

    • /etc/dumpadm.conf

    • ディスクを参照するアプリケーションまたはスクリプト

メタディスクを再構成する
  1. 物理デバイスへの参照をメタディスク参照形式に変更します。


    注 -

    この手順では、ディスクパスグループとメタディスクが作成され、その後でメタディスクが構成解除されていることが前提になります。単にメタディスクインタフェースを再構成する場合は、次の手順を使用してください。


    /dev/ap/dsk/mc?t?d?s? あるいは /dev/ap/rdsk/mc?t?d?s? の形式で、スクリプトやプログラムに物理デバイスへの参照が含まれていることがあります。

    一般的に、メタディスクへの参照は、以下に含まれています。

    • /etc/vfstab

    • /etc/system

    • /etc/dumpadm.conf

    • ディスクを参照しているアプリケーションおよびスクリプト