Sun Enterprise サーバー Alternate Pathing ユーザーマニュアル

起動ディスクの AP による制御

Sun Enterprise 10000 サーバーでは、起動ディスクを AP の制御下に置くことによって、起動ディスクのコントローラに障害が発生した場合でも、自動的にシステムを起動することができます。

Sun Enterprise サーバーでは、DR (Dynamic Reconfiguration) を使用して、システムボードを切り離すことができます。これは、切り離そうとするシステムボードが起動ディスクのコントローラのホストになっている場合でも可能です。ただし、このためには、 異なる 2 つのシステムボードのコントローラを使用して、起動ディスクに代替パスを設定する必要があります。ただし、主ネットワークのコントローラが起動ディスクのコントローラと同じシステムボード上に存在する場合は、同様に主ネットワークへの代替パスも設定する必要があります。代替パスを設定しなかった場合、DR を使用してボードを切り離すことはできません。

起動ディスクを AP の制御下に置く
  1. 起動ディスク用の AP パスグループを作成します。

    このプロセスは、第 3 章「メタディスクとディスクパスグループの使用」で説明しています。

  2. apboot(1M) コマンドを実行して、新しい AP 起動デバイスを定義します。

    apboot によって /etc/vfstab/etc/system が変更されます。


    # apboot mc2t0d0
    

    この例では、mc2t0d0 は起動ディスクのメタディスク名です。apboot は、/etc/vfstab を検査し、ディスクの物理デバイス名 (/dev/dsk/c2t0d0*/dev/dsk/c1t0d0* など) をメタディスク名 (/dev/dsk/mc2t0d0* など) に置き換えます。また、AP 起動ディスクの使用に必要なカーネルドライバが適宜読み込まれるように、/etc/system を編集します。

    /etc/vfstab にある物理デバイスを、手動で起動ディスクのメタディスクに置き換えないでください。必ず apboot を使用して、必要な変更がすべて加えられるようにします。

    また、apboot(1M) は スワップデバイスをメタデバイスに切り替える設定が /etc/vfstab に含まれているかどうか調べます。含まれている場合は、適切な apboot(1M) コマンドを発行します。同様にダンプデバイスの構成も調べ、ダンプデバイスをメタデバイスとして構成する必要がある場合は、dumpadm(1M) を呼び出します。

  3. OpenBoot (TM) PROM (OBP) devalias 変数の boot-device を、起動に使用される可能性が最も高い物理パスに設定します。


    ok setenv boot-device ¥ 
    /sbus@68,0/SUNW,soc@0,0/SUNW,pln@a0000000,78cab4/ssd@0,2
    

  4. 代替起動デバイスパスの devalias を手動での起動に便利なパスに定義します。

この時点で、AP 起動デバイスの使用を開始するためにシステムを再起動します。

通常、起動プロセスの一部としてマウントされるファイルシステムは、(ディスク容量条件のため) 2 つの異なるディスクに分割されます。起動ディスクを (apboot(1M) コマンドを使用して) AP の制御下に置いた場合は、/etc/vfstab ファイルを手動で編集して、起動プロセス中にマウントされる他のファイルシステムも AP の制御下に置く必要があります。/etc/vfstab ファイルで、AP の制御下に置くすべてのマウントポイントの device to mount パスと device to fsck パスを変更してください。

起動ディスクを AP の制御下に置いた後で、新しい AP データベースコピーを作成し、そのデータベースコピーを、現在どの AP データベースパーティションも制御していないコントローラポートが制御するパーティションに保存する場合は、起動ディスクを AP の制御から一度切り離す必要があります。次に、新しい AP データベースを作成します。最後に、起動ディスクを再度 AP の制御下に置きます。この手順を間違えると、起動中にデータベースにアクセスできなくなることがあります。

ミラー起動ディスクへの代替パスを設定する

起動ディスクのミラー化は、主にディスク管理ソフトウェアの機能です。ミラー化された起動ディスクへの代替パスを設定するのは、ミラー化された起動ディスクを AP に通知するためです。ミラー化されていて、かつ代替パスが設定されている起動ディスクを使用すると、各ミラーに 2 つずつ、つまり起動ディスクに対して合計 4 つの物理パスがあることになります (コントローラ障害の影響を最小に留めるには、この構成をお薦めします)。以降の手順を実行することの利点は、以下の 2 つあります。

  1. 起動ディスクを AP の制御下に置きます。この操作については、「起動ディスクを AP の制御下に置く」を参照してください。

  2. 起動ディスクのミラー用に、AP パスグループを作成します。

    この操作については、第 3 章「メタディスクとディスクパスグループの使用」を参照してください。

  3. 起動ディスクのミラーについて AP に通知します。以下に例を示します。


    # apboot -m mc3t0d0
    

    この例では、mc3t0d0 が起動ディスクのミラーのためのメタディスクを示しています。

  4. ディスク管理ソフトウェアで、起動ディスクのミラーを作成します (2 つのメタディスクを使用します)。

ミラー起動ディスクを AP の制御対象から除外する
  1. -u オプションを指定した apboot(1M) コマンドを実行して、AP ミラー起動ディスクを未定義にします。


    # apboot -u mc3t0d0
    

起動ディスクを AP の制御対象から除外する
  1. apboot(1M) コマンドを実行して、適切な物理デバイスノードを指定します。


    # apboot c2t0d0
    

上記のコマンドで、c2t0d0 は起動ディスクの代替パスの物理デバイスノードを示します(現在は /etc/vfstab に指定されています)。また、apboot コマンドは /etc/system ファイルから、 AP カーネルドライバモジュールの強制読み込みの記述を削除します。これは、起動ディスクが AP デバイスでないなら AP カーネルドライバモジュールが不要になるためです。また apboot(1M) は、スワップデバイスおよびダンプデバイスが必要に応じて適切な代替パスを使用するように再構成します。


注意 - 注意 -

起動ディスクを AP の制御下に置いた後で、(pkgrm(1M) コマンドを使用して) AP パッケージを削除する場合、最初に apboot(1M) コマンドを使用して起動ディスクを AP の制御から削除する必要があります。最初に起動ディスクを AP の制御から削除しないと、そのディスクを使用する構成では、起動ができなくなります。