SunVTS 3.2 テストリファレンスマニュアル

第 4 章 オーディオテスト (audiotest)

audiotest は、オーディオサブシステムのハードウェアとソフトウェア部品を検査します。いくつかの異なったサンのオーディオ処理系があり、それぞれにサブテストが用意されています。

オーディオデバイスは、「排他使用デバイス」です。1 つのアプリケーションだけがオーディオデバイスを使用することができます。このテストはスケーラブルではありません。

以下のサブテストが使用できるかどうかは、テストするオーディオ処理系に依存します。

audiotest のサブテスト

表 4-1 audiotest のサブテスト

サブテスト 

説明 

録音・再生テスト(Record/Play Test) 

このテストは、1 秒間のデータの再生と録音をします。データ検査は行われません。このテストは、すべてのオーディオ処理系に対して実行されます。 

クリスタルテスト(Crystal Test) 

このテストは、サンプリングレートクロックを生成するクリスタル (水晶発振器) の精度を測定します。このテストでは、1 秒の信号を再生し、その信号の再生に要した実際の時間を測定します。この測定は、8 つの標準サンプリングレートごとに行われます。このテストを利用できるのは、dbri(7) と audiocs(7) のオーディオ処理系です。

ループバックテスト(Loopback Tests) 

このテストは、オーディオポートの機能と信号品質を検査します。既知の信号の再生と録音を行います。録音信号に対しては、さまざまなサンプリングレート、復号化、精度、チャンネルでループ利得と S/N 比に加えて、ひずみが解析されます。テスト可能なオーディオポートは、テストするオーディオ処理系によって異なります。audiocs(7) 処理系では、ヘッドホンとライン出力、マイク、ライン入力に対してループバックテストを行うことができます。dbri(7) スピーカーボックス処理系では、行えるループバックテストは、これより少なくなります。audioamd(7) 処理系に、ループバックテストを行うことはできません。大部分のテストでは、ステレオループバックケーブルが必要です。

注 - マイクループバックテストは、特別なハードウェアを必要とし、製造センターおよび特別なテスト施設で使用されます。必要とされるハードウェアがない場合は、マイクループバックテストを実行しないでください。 

制御テスト(Controls Test) 

このテストは、Sun Speakerbox にある 3 つの制御ボタンを検査します。このテストでは、音楽の再生中に、Volume Down、Volume Up、Mute の各ボタンを一定の順序で押します。30 秒の間にボタンを押さないと、テストは失敗します。このテストは、dbri(7)/ スピーカーボックス処理系に対してのみ行うことができます。

オーディオテスト(Audio Test) 

このテストは、30 秒の音楽ファイルをスピーカーまたはヘッドホンから再生します。このテストでは、ユーザーが実際に音を聞いて問題の有無を判断する必要があります。音が聞こえないか、ひどく歪んでいる場合は問題があります。このテストは、すべてのオーディオ処理系に対して行うことができます。 

audiotest のオプション

SunVTS のプローブユーティリティは、起動時に、存在しているオーディオ処理系を判断し、audiotest のオプションメニューを適切に調整します。オプションメニューを次に示します。

図 4-1 audioamd(7) の audiotest テストオプションメニュー

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audioamd(7) は、8 ビットモノラルで電話品質のオーディオデバイスです。

図 4-2 スピーカーボックス dbri (7) オーディオの audiotest テストオプションメニュー

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スピーカーボックス dbri(7) は、16 ビットステレオの高品質マルチメディアコーデックです。

図 4-3 SPARCstation LX dbri (7) オーディオテストの audiotest テストオプションメニュー (スピーカーボックス接続なし)

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オンボード DBRI インタフェースは、16 ビットステレオの高品質マルチメディアコーデックです。

図 4-4 SPARCstation 20 および S240 のオンボード dbri (7) オーディオテストのaudiotest テストオプションメニュー

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SPARCstation 20 のオンボード dbri は、16 ビットステレオの高品質マルチメディアコーデックです。

図 4-5 audiocs (7) の audiotest テストオプションメニュー

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audiocs(7) は、オンボードの 16 ビットステレオの高品質マルチメディアコーデックです。

図 4-6 内部ループバックのある audiocs(7) の audiotest テストオプションメニュー

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audiocs(7) は、オンボードの 16 ビットステレオの高品質マルチメディアコーデックです。


注 -

内部ループバックは、オーディオジャックが未使用の (何も接続されてない) 場合にのみ有効です。


一部のオプションは、コマンド行でのみ選択することができます。audiotest のコマンド行構文」のコマンド行オプションの説明を参照してください。

表 4-2 audiotest のオプション

オプション 

説明 

Audio Test 

音楽再生テストを有効または無効にします。デフォルトでは有効になっています。 

Audio Output 

音楽再生テストの出力ポートを選択します。 

Volume 

音楽再生テストの音量を設定します。 

Loopback Test 

ループバックテストを有効または無効にします。外部ループバックテストを実行するには、選択するポート間をループバックケーブルで接続する必要があります。このテストは、デフォルトでは無効になっています。 

Loopback type 

実行するループバックテストのタイプを選択します。 

Crystal Test 

クリスタルテストを有効または無効にします。このテストは、デフォルトでは無効になっています。 

Controls Test 

スピーカーボックスの制御テストを有効または無効にします。これは対話形式のテストであり、テスト中にスピーカーボックスの制御ボタンを押すように求められます。このテストは、デフォルトでは無効になっています。 


注 -

他の SunVTS テストの実行中にクリスタルテストを実行しないでください。クリスタルテストはタイミングに依存するため、システムがビジー状態になっていると、時間切れエラーによってテストが失敗します。


audiotest のテストモード

表 4-3 audiotest のテストモード

テストモード 

説明 

接続テスト 

オープン/クローズのみをテストします。データは転送しません。デバイスを正常にオープン/クローズできた場合、このテストはパスを返します。ビジーが原因でデバイスをオープンできなかった場合は、他のプロセスにデバイスを正常に接続できたものとして、このテストには通ったとみなされます。 

 機能テスト (オフライン)

録音/再生のテストに加え、任意のテストを選択して実行できます。デバイスがビジーの場合は、テストは失敗したとみなされます。 

 機能テスト (オンライン) 録音/再生をテストします。ビジーが原因でデバイスをオープンできなかった場合は、他のプロセスにデバイスを正常に接続できたものして、このテストには通ったとみなされます。

audiotest のコマンド行構文

/opt/SUNWvts/bin/audiotest 標準引数 -o dev=/dev/sound/ユニット番号, I=/dev/入出力制御デバイス,M,L,Q,S,T=ループバックテストタイプ, X,E,LE,CD,CDD=CD_デバイス名,CDT=トラック番号,CDG=再生利得,CDL=再生時間, W,MF=ファイル名, TF=ファイル名

表 4-4 audiotest のコマンド行構文

引数 

説明 

dev=/dev/オーディオ デバイス

テストするオーディオデバイスを指定します。デフォルトは dev=/dev/audio です。

I=/dev/入出力制御 デバイス

テストするオーディオ入出力制御デバイスを指定します。デフォルトは /dev/audioctl です

M

音楽再生テストを有効にします。 

L

ループバックテストを有効にします。 

Q

音質テストを有効にします。終了後に特別な状態メッセージが表示されること以外は、L オプションと同じ働きをします。 

S

スピーカーボックスの制御テストを有効にします。 

T=ループバックテスト タイプ

ループバックテストのタイプを指定します。以下の値から選択することができ、デフォルトは 1 です。 

0 コーデック内部ループバック (CS4231 オーディオのみ) 

1 ライン入力/ライン出力 

2 ヘッドホン/ライン入力 

3 ヘッドホン/マイク 

4 スピーカー/CD 入力 

I1 内蔵ライン入力/ライン出力 

I2 内蔵スピーカー/マイク 

I3 内蔵ヘッドホン/AUX1 

I4 内部スピーカー/AUX1 

I5 ヘッドホン/マイク 

注 - テストタイプ 0 は、CS4231 オーディオが実装されているシステムで常にデフォルトで実行されます。テストタイプ 3、4 は、特別なハードウェアを必要とし、製造センターや特別なテスト施設で使用されます。必要とされるハードウェアがない場合は、これらのテストを実行しないでください。 

X

オーディオクリスタルテストを有効にします。 

E

エラーが発生してもテストを継続します。 

LE 

エラー時にループします。連続ループで信号データが再生されます。 

CD 

cdtest を有効にします。これは、CD-ROM ドライブを内蔵しているシステム用です。このテストの実行前に、音楽トラックのある CD ディスクをセットしておきます 

CDD=CD デバイス名 

CD-ROM ドライブの raw デバイス名を指定します。デフォルトは CDD=/dev/rdsk/c0t6d0s0 です。

CDT=番号 

再生する CD-ROM の曲番号を指定します。デフォルトでは、ディスク上の 1 曲目を再生します 

CDG=再生利得 

CD 再生テストの再生利得 (0〜255) を指定します。デフォルトは 120 です。 

CDL=再生時間 

CD 再生テストを実行する秒数を指定します。デフォルトは 30 秒です。 

ループバックテスト中に警告メッセージを表示します。 

MF=ファイル名 

オプションの音楽ファイルを選択します。 

TF=ファイル名 

オプションの許容誤差ファイルを指定します。 

注 - 許容誤差ファイルは、製造センターや特別なテスト施設で使用します。許容誤差ファイルの形式をご存知ない場合は、このオプションは使用しないでください。 


注 -

64 ビットのテストは、sparcv9 サブディレクトリに格納されています (/opt/SUNWvts/bin/sparcv9/テスト名)。このディレクトリにテストが存在しない場合、そのテストは、32 ビットのテストとしてだけ実行することができます。詳細は、「32 ビットテストと 64 ビットテスト」を参照してください。


audiotest のエラーメッセージ

表 4-5 audiotest のエラーメッセージ

 

エラーメッセージ 

考えられる原因 

対処方法 

6000

Signal To Noise ratio too low (名前) on 名前, SNR =数値 db, Min SNR =数値 db (テキスト)

ループバックケーブルが見つからないか、不良です。 

オーディオハードウェアの問題 (通常は常時発生する障害) 

システムソフトウェアの問題 (通常は断続的に発生する障害) 

 

6001

Channel Separation too low (名前), SEP =数値 db, Min SEP =数値 db (テキスト)

ループバックケーブルが見つからないか、不良です。 

オーディオハードウェアの問題 (通常は常時発生する障害) 

システムソフトウェアの問題 (通常は断続的に発生する障害) 

 

6002

Loop gain is out of range (名前), 名前 GAIN =数値 db, Min =数値 Max =数値 db (テキスト)

ループバックケーブルが見つからないか、不良です。 

オーディオハードウェアの問題 (通常は常時発生する障害) 

システムソフトウェアの問題 (通常は断続的に発生する障害) 

 

8000

Must be super user (root) to execute

ユーザーはスーパーバイザー特権を持っていません。 

 

8012

Invalid audio device (デバイス名) for Crystal test

システムオーディオデバイスにクリスタルテストを行うことはできません。 

 

8013

Invalid audio device (デバイス名) for Controls test

システムオーディオデバイスは、スピーカーボックスをサポートしていません。 

 

8014

Invalid audio device (デバイス名) for Loopback Quality test

システムオーディオデバイスにループバックテストを行うことはできません。 

 

8015

Invalid audio device (デバイス名) for Loopback Quality test (T=数値)

指定されたループバックテストをシステムオーディオデバイスに行うことはできません。 

指定されたループバックテストをこのオーディオデバイスに行うことはできません。 

 

8020Incomplete button press sequence

一定の時間内にボタンが押されませんでした。 

 

8023Underrun/Overrun error failure

オーディオデバイスへのデータ転送中に、オーディオドライバによってアンダーランまたはオーバーランエラーが検出されました。通常、システムの負荷が大きいときにループバックテストを実行すると発生するエラーです。 

 

8027

名前: '名前(名前=数値, 名前=数値, 名前=数値)' system call timeout. No response after 数値 seconds. Device = デバイス名

システムコールがハングしています。 

 

オーディオハードウェアの問題 (通常は常時発生する障害) 

 

システムソフトウェアの問題 (通常は断続的に発生する障害 

 

8028

Audio crystal test did not complete in the expected time, rate = 数値 Hz, time = 数値 usecs, min = 数値, max = 数値

システムに多大な負荷がかかっています。 

他のすべてのテストを無効にし、テストをやり直してください。 

8029Speaker is an invalid output port for device

システムにオンボードのスピーカーがありません。 

 

8032

Failed ioctl 名前 (エラーメッセージ)

ioctl( ) システムコールが失敗しました。

エラーメッセージを参照してください。 

8033

Failed mmap (エラーメッセージ)

mmap( ) システムコールが失敗しました。

エラーメッセージを参照してください。 

8034

Failed fstat (エラーメッセージ)

fstat( ) システムコールが失敗しました。

エラーメッセージを参照してください。 

8035

Failed ftruncate (エラーメッセージ)

ftruncate( ) システムコールが失敗しました。

エラーメッセージを参照してください。 

8036

Write to audio device returned error condition (エラーメッセージ)

write( ) システムコールが失敗しました。

エラーメッセージを参照してください。 

8037

Read from audio device returned error condition (エラーメッセージ)

read( ) システムコールが失敗しました。

エラーメッセージを参照してください。 

8038

Failed to allocate 数値 bytes of memory (エラーメッセージ)

 

エラーメッセージを参照してください。 

8051

Unknown audio device (名前=デバイス名, config=名前)

 

 

8052

Unable to get platform 名前

 

 

8053

Unknown architecture/audio = 名前 / デバイス名

 

 

8055

Could not open デバイス名: エラーメッセージ

open( ) システムコールが失敗しました。デバイスから応答がありません。

mmcodec デバイスが見つかりません。

スピーカーボックスと通信できません。 

システムメッセージファイル (/var/adm/messages) に他の情報がないかを調べてください。

8075Invalid audio file format

指定されたオーディオファイルは有効な形式ではありません。 

 

8077Invalid audio encoding

サポートされていないオーディオ復号化タイプが指定されました。 

 

8090

Only one 名前 loopback can be selected at a time

同じポートに複数のループバックテストが指定されています 

 

8091Cannot enable loopback testing without selecting a loopback type

ループバックテストが有効になっていますが、ループバックのタイプが指定されていません。