Sun Enterprise 10000 InterDomain Networks ユーザーマニュアル

IDN の概要

InterDomain Network (IDN: ドメイン間相互ネットワーク) 機能は、単一の Sun Enterprise 10000 プラットフォーム上での、動的システムドメイン (または単に「ドメイン」) 間の高速ネットワーキングをサポートします。IDN ドライバは、DLPI エクスポートドライバです。この IDN ドライバにより、ドメインは TCP/IP (Transmission Control Protocol/Internet Protocol) のような標準ネットワークインタフェースを使用して、相互に通信を行うことができます。しかも、IDN は配線や特別なハードウェアを必要としません。

Sun Enterprise 10000 には、常駐ドメインが共有メモリーを使用してシステムセンタープレーン経由で互いに通信できるようにするための、ハードウェア機能があります。InterDomain Networks では、この機能を利用します。Shared Memory Region (SMR: 共有メモリー領域) が、ネットワークパケットのコンジットとして使用されます。SMR は、IDN 内の 1 つのドメイン上に保持され、同じ IDN 内にある他のすべてのドメインによって使用されます。

1 つの Sun Enterprise 10000 プラットフォーム内に、複数の独立した IDN を存在させることもできます。それぞれのネットワークに複数の論理ネットワークインタフェース、すなわちチャネルを持たせることも可能で、この場合は各チャネルが別々の IP サブネットとなります。ネットワークの数や、特定のネットワークを形成するドメインを構成する際には、使用するアプリケーションの性能を考慮してください。たとえば、高速接続を必要とするのはどのドメインであるか、またそれらのドメインに InterDomain のネットワークを効果的に利用するための十分な処理能力があるか、といったことを考慮する必要があります。

IDN には、数多くの用途があります。たとえば、IDN を以下のような用途に使用できます。

ドメインのリンク

ドメインを IDN にリンクする、または IDN を作成するには、domain_link(1M) コマンドを使用します。ドメイン名を指定する順序は関係ありません。domain_link(1M) コマンドの使用法については、「非アクティブドメインに対して domain_link(1M) コマンドを使用する」を参照してください。

domain_link(1M) の引数に、すでに IDN の一部であるドメインを指定すると、その IDN 内にある他のドメインもすべて domain_link(1M) コマンドによってリンクされます。

IDN 内の各ドメインをリンクすると、各ドメインはネットワーク上にある他のドメインと、共有メモリー領域 (SMR) を使用して相互に直接通信することが可能になります。IDN に追加した順序によって、ドメイン間に優先順位が設定されることはありません。

マスタードメイン

IDN 内のドメインを 1 つだけマスタードメインとして指定することができます。マスタードメインには、ネットワークトラフィックのコンジットとして使用される SMR が保持されます。たとえば、domain_a がマスタードメインの場合は、domain_bdomain_cdomain_a にある SMR を使用して互いに通信します。

図 1-1 マスタードメインの SMR を使用したドメインの通信

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既存の IDN のどれにも属さない 2 つのドメインから新規の IDN を作成する場合は、システムによってマスタードメインが自動的に選択されます。いったんこの決定が行われると、マスタードメインをリンク解除しない限り、またはマスターがハングアップしてネットワークが代替マスターを使用するように自動的に再構成されない限り、マスタードメインを変更することはできません。この規則の唯一の例外は、単一の domain_link(1M) コマンドを使用して、2 つの既存の IDN を統合する場合です。この場合は、現在の 2 つのマスタードメインのうちのどちらかのドメインを新たな IDN のマスタードメインとするのかを、システムが決定します。

システムは、どちらのドメインが最大の処理能力と最大のメモリー帯域幅を持っているかを判定することによって、マスタードメインを選択します (メモリー帯域幅は、実際にはドメイン内に存在するシステムボードの枚数と相関関係にあります)。本来、総合的な容量が最大であるドメインが他のドメインのために IDN バッファー要求に対応する必要があるので、そのようなドメインがマスタードメインとして使用されます。

ドメインのリンク解除

IDN からドメインをリンク解除するには、domain_unlink(1M) コマンドを使用します。domain_unlink(1M) コマンドは、1 つ以上のドメインをパラメタとして受け付けます。ドメインをリンク解除すると、IDN 内の残りのドメインにメッセージが送られ、それ以降リンク解除されるドメインと通信を行ってはならないことが通知されます。ネットワーク内の他のドメイン間では、リンク解除操作の間も、またその後も、中断されることなく引き続き通信が行われます。

IDN リンクの構成解除とそれに関連するネットワークインタフェースの構成解除は、どちらを先に行っても構いませんが、切断されたリンクをユーザーが不必要に使用しないよう、ドメインをリンク解除する前に、ifconfig(1M) コマンドを使用してネットワークインタフェースの構成を解除しておくことをお勧めします。

デフォルトでは、同じ IDN 内に未認識 (AWOL) 状態 (たとえば停止やハングアップ状態) のドメインがあると、システムはリンク解除操作を行いません。ユーザーがリンク解除操作を行った時点で、ドメインの状態が検出されて報告されます。

強制オプション

2 つの強制オプション、-f または -F のどちらかを使用して、未認識状態のドメインのチェックを行わずにリンク解除操作を実行できます。弱い強制オプション、-f を指定すると、domain_unlink(1M) コマンドは、通常の方法で指定されたすべてのドメインのリンク解除を試みますが、IDN 内に AWOL ドメインが存在することにより時間切れになる場合は、-F オプションを使用してドメインのリンクを強制的に解除します。

強い強制オプション、-F を指定すると domain_unlink(1M) コマンドは、指定されたドメインを IDN 内の他のすべてのドメインから、同期をとらずに切断します。このオプションは、指定されたドメインがまったく応答しない (つまり、要求されているログに応答しない) か、または AWOL 回復処理の一環として IDN から指定されたドメインを分離する必要があるときにだけ使用します。


注意 - 注意 -

強制オプションは、ドメインが未認識 (AWOL) 状態であるときの回復の手段としてのみ使用します。通常の状態では、このオプションを使用しないでください。このオプションを使用したために、IDN がアクティブな時にハードウェアが再プログラムされると、アービトレーション停止が発生することがあります。


IDN の解消

IDN 全体を 1 つの操作で解消することができます。これによって、IDN のメンバーであるドメインを 1 つ 1 つに分離します。domain_unlink(1M) コマンドを実行するときは、少なくとも IDN 内のドメインの総数 n-1 個の名前を指定します。

IDN の自動化処理

SSP からのサポートと連動することにより、IDN サブシステムはドメインのリンクおよびリンク解除を自動的に行えます。自動リンクは、ドメインが IDN の一部として構成されている場合は、起動時に行われます。自動リンク解除は、IDN のいずれかのメンバーが、他のメンバーが IDN 要求に応答しないことを検出し、レポートしてきたときに行われます。マスタードメインが応答しない場合は、マスタードメインのリンク解除後、利用可能なドメインの中から新しいマスタードメインが選択されます。ドメインのリンクが自動的に解除された後も、domain_status(1M) コマンドは解除されたドメインがリンクされているとレポートします。