LP (ラインプリンタ用サブシステム) プリントサービスは、Solaris オペレーティング環境で使用できる印刷ツールを提供します。LP プリントサービスには多種多様の機能がありますが、このマニュアルではその一部分だけを取り扱います。この章では、LP プリントサービスを使って、次に示す基本的な印刷作業を実行するために必要な手順を説明します。
LP プリントサービスについての詳細は、『Solaris のシステム管理 (上級編)』を参照してください。
コマンドプロンプトからファイルを印刷するには、そのファイルを印刷するプリンタに対して lp コマンドを使って要求を送信します。要求が送信されると、LP プリントサービスはその要求を印刷待ち行列に登録し、要求 ID 番号を表示したあと、シェルプロンプトを再表示します。
システム管理者がデフォルトプリンタを指定して LP 印刷サービスを設定している場合、次のコマンドによりプリンタ名を入力することなく印刷要求を送信できます。
$ lp filename |
filename は、印刷するファイル名です。
指定されたファイルはデフォルトプリンタの印刷待ち行列に登録され、要求 ID 番号が表示されます。
たとえば、/etc/profile ファイルを印刷するには、次のコマンドを入力します。
$ lp /etc/profile request id is jetprint-1 (1 file) $ |
デフォルトプリンタの指定方法については、『Solaris システム管理 (上級編)』を参照してください。
システム上でのデフォルトプリンタの指定の有無にかかわらず、接続されている任意のプリンタに対して印刷要求を実行できます。特定のプリンタに印刷要求を送るには、次のコマンドを入力します。
$ lp -d printername filename |
printername は特定のプリンタの名前、filename は印刷するファイルの名前です。
指定されたファイルは宛先プリンタの印刷待ち行列に登録され、要求 ID 番号が表示されます。
たとえば、/etc/profile ファイルを fastprint というプリンタで印刷するには、次のコマンドを入力します。
$ lp -d fastprint /etc/profile request id is fastprint-1 (1 file(s)) $ |
システム上で接続されていないプリンタ (ここでは thorn) に対して印刷要求を行うと、次の例に示すようなメッセージが表示されます。
$ lp -d newprint /etc/profile newprint: unknown printer $ |
プリンタの接続方法については、『Solaris のシステム管理 (上級編)』を参照してください。また、システムで利用できるプリンタの確認方法については、プリンタの状態を確認するを参照してください。
大きいファイルの印刷要求を行う場合は、印刷処理が完了したときに LP プリントサービスから完了通知があると便利です。LP プリントサービスに対しては、次の 2 つの形式の完了通知を要求できます。
電子メール (email) メッセージの送信
コンソールウィンドウに対するメッセージの書き込み
電子メールによる通知を要求するには、印刷要求時に -m オプションを指定します。
$ lp -m filename |
コンソールウィンドウに対するメッセージの書き込みを要求する場合は、印刷要求時に -w オプションを指定します。
$ lp -w filename |
filename は、印刷するファイル名です。
lp コマンドに -n オプションを指定することにより、1 つのファイルを複数部印刷できます。
複数部の印刷を要求するには、次の形式のコマンドを入力します。
$ lp -n number filename |
number は印刷する部数、filename は印刷するファイル名です。このような印刷要求は 1 つのプリントジョブと見なされ、ヘッダページは 1 ページだけ印刷されます。
たとえば、ファイル /etc/profile を 4 部印刷するには、次のコマンドを入力します。
$ lp -n4 /etc/profile request id is jetprint-5 (1 file) $ |
lp コマンドにオプションを指定することにより、印刷要求をカスタマイズできます。lp コマンドで頻繁に使われるオプションを表 8–1 にまとめてあります。これらのオプションは、コマンド行で 1 つだけ指定しても任意の順序で組み合わせて指定してもかまいません。 複数のオプションを組み合わせる場合は、各オプションの前にハイフン (-) を付け、各オプション間はスペースで区切って指定します。
たとえば、プリンタの指定と電子メールによる通知の要求を行い、さらにファイルの印刷部数を 6 部と指定する場合は、次のコマンドを入力します。
$ lp -d printername -m -n6 filename |
printername は印刷するプリンタの名前、filename は印刷するファイル名です。
表 8–1 頻繁に使われる lp オプション
オプション |
説明 |
---|---|
印刷宛先。宛先のプリンタ名を指定する |
|
メール。ファイルの印刷が正常終了したときに、印刷要求元に電子メールを送信する |
|
部数。印刷の出力部数を指定する |
|
表題。印刷要求の表題 (バナーページ上にだけ印刷される) を指定する |
|
オプション。個別の印刷要求に関するバナーページの印刷を抑止する |
|
メッセージ書き込み。ファイルの印刷が正常終了したときに、コンソールウィンドウにメッセージを書き込む. |
lp コマンドオプションの詳細なリストについては、『man pages section 1: User Commands』を参照してください。
LP プリントサービスの状態を調べるには、lpstat コマンドを使います。lpstat を使って、印刷待ち行列内のジョブ状態の検査、利用可能なプリンタの確認、ジョブを取り消すためのリクエスト ID の確認などを行うことができます。
$ lpstat |
印刷要求を実行したファイルのリストが表示されます。
次の例では、プリンタ jetprint で印刷するファイルが 1 つ待ち行列に登録されています。
$ lpstat jetprint-1 user2 11466 Nov 01 15:10 on jetprint $ |
lpstat コマンドは、印刷ジョブごとに 1 行ずつ要求 ID、その要求をスプールしたユーザ、バイト単位の出力サイズ、印刷要求を実行したシステムと日付と時刻に関する情報を表示します。
システムに接続されているプリンタを確認するには、次のコマンドを入力します。
$ lpstat -s |
最初にスケジューラの状態が表示され、その後デフォルトの宛先プリンタ、利用可能なシステムとプリンタのリストが表示されます。
次の例ではスケジューラが実行中であり、デフォルトプリンタは jetprint です。プリンタ jetprint と fastprint の印刷サーバは prtsrv1 です。
$ lpstat -s scheduler is running system default destination: jetprint system for jetprint: prtsrv1 system for fastprint: prtsrv1 $ |
lpstat コマンドに -t オプションをつけると、LP プリントサービスの全状態を要約したリストが表示できます。
このリストを表示するには、次のコマンドを入力します。
$ lpstat -t |
利用可能な状態情報がすべて出力されます。
次の例では、印刷待ち行列内にジョブが存在しません。ファイルが印刷のためにスプールされると、それらの印刷要求の状態も表示されます。
lpstat コマンドに -p オプションを指定することにより、個々のプリンタについての状態情報を要求できます。このオプションは、プリンタの活動状況 (アクティブまたはアイドル)、使用可能または不可能になった時間、印刷要求の受付の可否などを表示します。
システム上の全プリンタに関する状態情報を表示するには、次のコマンドを入力します。
$ lpstat -p |
次の例は、2 つのプリンタがアイドル状態、使用可能、印刷要求受付可能であることを示しています。
$ lpstat -p printer jetprint is idle. enabled since Wed Nov 1 15:09:28 MST 2000. available. printer fastprint is idle. enabled since Wed Nov 1 15:09:46 MST 2000. available. $ |
これらのプリンタの印刷待ち行列にジョブが存在すれば、そのジョブ情報も表示されます。
個々のプリンタに関する状態情報を表示するには、次のコマンドを入力します。
$ lpstat -p printername |
lpstat コマンドを使うと、プリンタの状態に関するさまざまな情報を表示できます。lpstat コマンドで頻繁に使われるオプションを表 8–2 にまとめてあります。これらのオプションは、コマンド行で 1 つだけ指定しても、任意の順序で組み合わせて指定してもかまいません。 複数のオプションを組み合わせる場合は、各オプションの前にハイフン (-) を付け、各オプション間はスペースで区切って指定します。
表 8–2 頻繁に使われる lpstat オプション
オプション |
説明 |
---|---|
受付状態。印刷宛先プリンタの要求受付状況を表示する |
|
クラス。プリンタクラスとそのメンバを表示する |
|
印刷宛先。デフォルトの印刷宛先プリンタを表示する |
|
書式。印刷書式を表示する |
|
出力。印刷要求の状態を表示する |
|
プリンタ指定・説明・詳細リスト。プリンタの状態を表示する |
|
要求。要求スケジューラの状態を表示する |
|
印刷待ち行列内のジョブの位置を表示する |
|
状態情報。要約した状態情報を表示する |
|
文字セット。文字セットを表示する |
|
ユーザ。要求の状態をユーザごとに表示する |
|
プリンタのデバイス名を表示する |
lpstat コマンドオプションの詳細なリストについては、『man pages section 1: User Commands』を参照してください。
印刷要求が待ち行列内にあるときや印刷実行中に要求を取り消すには、cancel コマンドを使います。要求を取り消す場合は、印刷の要求 ID が必要になります。要求 ID は、必ずプリンタ名、ハイフン、印刷要求番号から構成されています。印刷要求を実行すると、その要求 ID が表示されます。この要求 ID を忘れた場合は、lpstat -o コマンドを入力して Return キーを押すと確認できます。印刷要求を取り消せるのは、その要求を実行したユーザ、あるいは root または lp としてログインしたユーザだけです。
指定の ID 番号を使って印刷要求を取り消すには、次のコマンドを入力します。
$ cancel request_id |
request_id 指定する印刷要求のID 番号(printername-number から成る)です。
要求が取り消されることを知らせるメッセージが表示され、待ち行列内の次のジョブの印刷が開始されます。
次の例では、2 つの印刷要求が取り消されています。
$ cancel jetprint-6 fastprint-5 jetprint-6: cancelled fastprint-5: cancelled $ |
リクエスト ID の代わりにプリンタ名を入力しても、現在印刷中のジョブ (自分で実行依頼したものに限る) を取り消すことができます。
$ cancel printername |
printername は、要求の送信先となったプリンタの名前です。
要求が取り消されることを知らせるメッセージが表示され、待ち行列内の次のジョブの印刷が開始されます。
次の例では、現在の印刷要求が取り消されています。
$ cancel jetprint jetprint7: cancelled $ |
システム管理者は root または lp としてログインし、プリンタ名を cancel コマンドの引数に指定することによって、現在印刷中の任意の要求を取り消すことができます。