ディスク上に格納されたファイルは、ファイルシステム中で管理されます。ディスク上の各ファイルシステムは「スライス」、つまりファイルシステム用に確保されたセクターセットのグループに割り当てられます。オペレーティングシステム (および、システム管理者) からは、各ディスクスライスは別個のディスクドライブであるかのように見えます。
ファイルシステムの詳細は、第 37 章「ファイルシステムの管理 (概要)」を参照してください。
スライスをパーティションと呼ぶこともあります。このマニュアルでは「スライス」と呼びますが、format ユーティリティなど、特定のインタフェースではスライスを「パーティション」と呼びます。
スライスを設定するときには、次の規則に注意してください。
各ディスクスライスは、ファイルシステムを 1 つしか持てない。
ファイルシステムを複数のスライスにまたがって割り当てることはできない。
SPARC プラットフォームと IA プラットフォームでは、スライスの設定が少し異なります。次の表に、主な相違点を示します。
表 31-1 プラットフォームによるスライスの違い
SPARC プラットフォーム |
IA プラットフォーム |
---|---|
ディスク全体が Solaris オペレーティング環境用になる。 |
ディスクはオペレーティング環境ごとに 1 つの fdisk パーティションに分割される。 |
ディスクは 0 から 7 までの番号が付いた 8 つのスライスに分割される。 |
Solaris の fdisk パーティションは 0 から 9 までの番号が付いた 10 個のスライスに分割される。 |
SPARC システム上では、Solaris は 8 つのディスクスライスを定義して、それぞれにある程度決まった役割を割り当てます。これらのスライスには、0 から 7 までの番号が付いています。次の表に、SPARC システム上の 8 つの Solaris スライスの内容を示します。
表 31-2 SPARC: ディスクスライス
スライス |
ファイルシステム |
通常クライアントかサーバーのどちらにあるか |
種類 |
---|---|---|---|
0 |
ルート (/) |
両方 |
オペレーティングシステムを構成するファイルとディレクトリを含む。 |
1 |
スワップ |
両方 |
仮想メモリー、つまり「スワップ空間」を提供する。スワップ空間は、実行中のプログラムが大きすぎてコンピュータのメモリーに入りきらないときに使用される。その場合、Solaris 環境では、プログラムがメモリーからディスクに「スワップ」され、必要に応じて戻される。 |
2 |
- |
両方 |
慣例的に、このスライスは Solaris fdisk パーティション全体を表す。このスライスは、Sun の format ユーティリティと Solaris インストールプログラムによって自動的に定義される。このスライスのサイズは変更しないこと。 |
3 |
/export |
サーバーのみ |
オペレーティングシステムの代替バージョンを含む。これらの代替バージョンは、サーバーとはアーキテクチャが異なるクライアントシステムに必要である。アーキテクチャのタイプがサーバーと同じクライアントは、/usr ファイルシステム (通常はスライス 6) にある実行可能プログラムを利用する。 |
4 |
|
|
サイトの必要に応じて定義可能なスライス (任意)。 |
5 |
|
|
サイトの必要に応じて定義可能なスライス (任意)。 システムに追加するアプリケーションソフトウェアを格納する。インストール時に、/opt ファイルシステムにスライスが割り当てられていなければ、スライス 0 に /opt ディレクトリが作成される。 |
6 |
/usr |
両方 |
オペレーティングシステムのコマンド (「実行可能」コマンドとも呼ぶ) を含む。また、このスライスには、マニュアル、システムプログラム (init や syslogd など)、ライブラリルーチンも含まれる。 |
7 |
/home または /export/home |
両方 |
ユーザーによって作成されるファイルを含む。 |
IA システム上では、ディスクは fdisk パーティションに分割されます。fdisk パーティションは、Solaris など、特定のオペレーティングシステムで使用するように確保されたディスクの一部です。
次の表に示すように、Solaris は Solaris fdisk パーティション上に、0 から 9 までの番号が付いた 10 個のスライスを配置します。
表 31-3 IA: ディスクスライス
スライス |
ファイルシステム |
通常クライアントまたはサーバーのどちらにあるか |
種類 |
---|---|---|---|
0 |
ルート (/) |
両方 |
オペレーティングシステムを構成するファイルとディレクトリを含む。 |
1 |
スワップ |
両方 |
仮想メモリー、つまり「スワップ空間」を提供する。スワップ空間は、実行中のプログラムが大きすぎてコンピュータのメモリーに入りきらないときに使用される。その場合、Solaris 環境では、プログラムがメモリーからディスクに「スワップ」され、必要に応じて戻される。 |
2 |
- |
両方 |
慣例的に、このスライスは Solaris fdisk パーティション全体を表す。このスライスは、Sun の format ユーティリティと Solaris インストールプログラムによって自動的に定義される。このスライスのサイズは変更しないこと。 |
3 |
/export |
サーバーのみ |
オペレーティングシステムの代替バージョンを含む。これらの代替バージョンは、サーバーとはアーキテクチャが異なるクライアントシステムに必要である。 |
4 |
|
|
サイトの必要に応じて定義可能なスライス (任意)。 |
5 |
|
両方 |
サイトの必要に応じて定義可能なスライス (任意)。 システムに追加されるアプリケーションソフトウェアを格納する。インストール時に、/opt ファイルシステムにスライスが割り当てられていなければ、スライス 0 に /opt ディレクトリが作成される。 |
6 |
/usr |
両方 |
オペレーティングシステムのコマンド (「実行可能」コマンドとも呼ぶ) を含む。また、このスライスには、マニュアル、システムプログラム (init や syslogd など)、ライブラリルーチンも含まれる。 |
7 |
/home または /export/home |
両方 |
ユーザーによって作成されるファイルを含む。 |
8 |
- |
両方 |
Solaris がハードディスクからブートするために必要な情報を含む。このスライスのスライス番号は 8 であるが、Solaris fdisk パーティションの先頭に存在するため、ブートスライスと呼ばれる。 |
9 |
- |
両方 |
代替ディスクブロック用に予約された領域であり、代替セクタースライスと呼ばれる。 |
SunOS オペレーティングシステムは、各ディスクのブロック 0 にディスクラベルを格納します。これは、raw データスライスを作成する Sun 以外の製品のデータベースアプリケーションを使用するときは、ブロック 0 から開始してはならないことを意味します。この領域に raw データスライスを作成すると、ディスクラベルが上書きされて、ディスク上のデータにアクセスできなくなります。
ディスク上の次の領域は、raw データスライス用に使用しないでください。raw データスライスは Sun 以外のデータベースアプリケーションによって作成されることがあります。
ブロック0 (ディスクラベルが格納される領域)
スライス 2 (ディスク全体を表す)
十分な大きさのディスクであれば、1 台ですべてのスライスとそれに対応するファイルシステムを確保できますが、通常はシステムのスライスとファイルシステムを確保するために複数のディスクが使用されます。
1 つのスライスを複数のディスクに分割することはできません。ただし、複数のスワップスライスを別々のディスクに配置することはできます。
たとえば、1 台のディスクにルート (/) ファイルシステム、スワップ領域、/usr ファイルシステムを入れ、別のディスクにユーザーデータを含む /export/home ファイルシステムやその他のファイルシステムを入れます。
複数のディスクを使用する場合、オペレーティングシステムソフトウェアとスワップ領域が入っているディスク (つまり、ルート (/)、/usr ファイルシステム、およびスワップ領域用のスライスが入っているディスク) を、「システムディスク」と呼びます。システムディスク以外のディスクを、「二次ディスク」または「非システムディスク」と呼びます。
システムのファイルシステムを複数のディスクに入れると、システムをシャットダウンしたりオペレーティングシステムソフトウェアをロードし直したりしなくても、二次ディスクのファイルシステムとスライスを変更できます。
また、複数のディスクを使用すると、入出力 (I/O) のパフォーマンスが改善されます。ディスク負荷を複数のディスクに分散すると、I/O のボトルネックを回避できます。
ディスクのファイルシステムを設定するときには、各スライスのサイズだけでなく、どのスライスを使用するかも決定します。どのように決定するかは、ディスクを接続するシステムの構成と、ディスクにインストールするソフトウェアによって異なります。
次のシステム構成があります。
サーバー
スタンドアロンシステム
システム構成ごとに、使用すべきスライスが異なります。次の表に、これらの要件を示します。
表 31-4 システム構成とスライスの要件
スライス |
サーバー |
スタンドアロンシステム |
---|---|---|
0 |
ルート |
ルート |
1 |
スワップ |
スワップ |
2 |
- |
- |
3 |
/export |
- |
6 |
/usr |
/usr |
7 |
/export/home |
/home |
システム構成の詳細は、「システムタイプの概要」を参照してください。
Solaris インストールプログラムは、インストール用に選択したソフトウェアに基づいて推奨スライスサイズを表示します。