ネットワークに差別化サービスを提供するには、IPQoS 対応システムが最低 1 つと diffserv 対応ルーターが 1 台必要です。 この節で説明するように、この基本構成はさまざまな方法で拡張できます。
一般に、IPQoS はサーバーやサーバー統合 (Sun EnterpriseTM 10000 サーバーなど) 上で実行します。 一方、ネットワークのニーズに応じて、UltraSPARC システムなどのデスクトップシステムで IPQoS を実行することもできます。 次に、IPQoS 構成に使用できるシステムの例を示します。
Solaris システム。Web サーバーやデータベースサーバーなどの各種サービスを提供する
アプリケーションサーバー。電子メール、FTP などのよく使われるネットワークアプリケーションを提供する
Web キャッシュサーバーまたはプロキシサーバー
IPQoS 対応サーバーファームのネットワーク。diffserv 対応ロードバランサによって管理される
ファイアウォール。単一の異機種システム混在ネットワークのトラフィックを管理する
IPQoS システム。仮想 LAN の一部である
IPQoS システムを導入しようとするネットワークトポロジでは、diffserv 対応ルーターがすでに機能していることもありえます。もし、現在使用しているルーターが diffserv に対応していない場合は、Cisco Systems 社や Juniper Networks 社などのルーター製造元が提供する diffserv のソリューションを検討してください。ローカルルーターが diffserv を実装していないと、パケットのマークは評価されずに次のホップへ渡されてしまいます。
以下では、ネットワーク上のさまざまなニーズを満たす IPQoS 計画を、いくつかの図で説明します。
次の図は、IPQoS 対応システムの単一ネットワークを示しています。
前の図に示すネットワークは、企業のイントラネットの 1 つのセグメントにすぎません。 アプリケーションサーバーや Web サーバーで IPQoS を有効にすると、各 IPQoS システムが発信トラフィックをネットワークストリームに送出する速度を制御できます。 ルーターが diffserv に対応していれば、着信トラフィックおよび発信トラフィックをさらに制御できます。
このマニュアルで取り上げる例では、個々のホストでの IPQoS をシナリオとして使用します。このマニュアルを通じて使用するトポロジ例については、図 2–4 を参照してください。
次の図は、いくつかの異機種サーバーファームを備えたネットワークを示しています。
このようなトポロジでは、ルーターが diffserv に対応しているため、着信トラフィックと発信トラフィックの両方をキューに入れたり評価したりできます。また、ロードバランサも diffserv 対応システムであるため、サーバーファームは IPQoS 対応となります。ロードバランサは、アプリケーションデータに含まれているユーザー ID やプロジェクト ID などのセレクタを使って、ルーターの向こう側へ追加のフィルタ処理を実行することもできます。
このシナリオでは、フロー制御とトラフィック転送を行って、ローカルネットワーク上の輻輳を管理しています。また、このトポロジでは、サーバーファームからの発信トラフィックが原因でイントラネットの他の部分が過負荷状態になるのを防いでいます。
次の図は、ファイアウォールによって他のセグメントから保護されている、企業ネットワークのセグメントの 1 つを示しています。
このシナリオでは、トラフィックはまず diffserv 対応ルーターに入り、そこでフィルタにかけられ、キューに入れられます。次に、ルーターによって転送された着信トラフィックはすべて、IPQoS 対応のファイアウォールに進みます。IPQoS を使用するには、ファイアウォールで IP 転送スタックをバイパスしてはなりません。
ファイアウォールのセキュリティポリシーによって、着信トラフィックを内部ネットワークに入れて良いかどうかが決まります。QoS ポリシーは、ファイアウォールを通過した着信トラフィックのサービスレベルを制御します。QoS ポリシーによっては、発信トラフィックに転送動作を付けることもできます。