QoS ポリシーを定義する最初の手順は、トラフィックフローをいくつかのクラスに分類することです。diffserv ネットワーク上のトラフィックの種類ごとにクラスを作成する必要はありません。また、計画したネットワークトポロジによっては、IPQoS 対応システムごとに異なる QoS ポリシーを作成する必要があります。
クラスの概要については、クラスを参照してください。
次の手順の前に、IPQoS 用のネットワークを準備する方法で特定したとおり、ネットワーク上のどのシステムを IPQoS 対応とするかが決まっているものとします。
QoS ポリシーを構成するための表を作成します。
推奨される表については、表 2–2を参照してください。
ネットワーク上にあるすべての QoS ポリシーについて、残りの手順を実行します。
QoS ポリシーで使用するクラスを定義します。
次の質問は、ネットワークトラフィックを解析してクラス定義を行うためのガイドラインとなります。
顧客にサービスレベル契約を提示しているか
提示する場合は、顧客に提供する複数の SLA 間の相対的な優先レベルを評価します。保証されている優先レベルが異なる顧客に同じアプリケーションを提供する場合もあります。
たとえば、企業が各顧客に対して Web サイトの運営サービスを提供するとします。この場合は、顧客の Web サイトごとに 1 つのクラスを定義する必要があります。また、プレミアム Web サイトをサービスレベルの 1 つとして提供する SLA もあれば、ベストエフォートの個人用 Web サイトを割引き客に提供する SLA もあります。この場合は、Web サイトのクラスが異なるだけでなく、クラスに割り当てられる PHB も異なる可能性があります。
IPQoS システムでは、フロー制御を必要としそうなよく使われるアプリケーションを提供しているか
よく使われるアプリケーションを提供しているために大量のトラフィックが生成されるサーバーの場合、IPQoS を有効にするとネットワークパフォーマンスが向上します。そのようなアプリケーションの例として、電子メール、ネットワークニュース、FTP などがあげられます。該当する場合は、サービスの種類ごとに着信トラフィックと発信トラフィックのクラスを別々に作成することを検討してください。たとえば、メールサーバーの QoS ポリシーに対して、mail-in クラスと mail-out クラスを作成します。
ネットワークでもっとも高い優先順位の転送動作を必要とする特定のアプリケーションを実行しているか
もっとも高い優先順位の転送動作を必要とする重要なアプリケーションは、ルーターで特別な処理を受ける必要があります。一般的な例は、ストリーミングビデオやストリーミングオーディオです。
まず、優先順位の高いこれらのアプリケーションに対して、それぞれ着信クラスと発信クラスを定義します。次に、定義したクラスを、それらのアプリケーションを提供する IPQoS 対応システムと diffserv ルーターの両方の QoS ポリシーに追加します。
帯域幅を大量に消費するため、ネットワークで制御を必要とするトラフィックフローが発生したことがあるか
netstat、snoop などのネットワーク監視ユーティリティを使用して、ネットワーク上で問題のあるトラフィックの種類を検出します。これまでに作成したクラスを確認し、問題のトラフィックカテゴリが未定義である場合は、このカテゴリに対して新しいクラスを作成します。問題のトラフィックカテゴリのクラスが定義済みである場合は、このトラフィックを制御するメーターの速度を定義します。
問題のあるトラフィックのクラスは、ネットワーク上の IPQoS 対応システムごとに作成します。これによって、各 IPQoS システムは、問題のあるトラフィックを受け取った場合に、トラフィックフローをネットワークに送出する速度を制限できるようになります。また、diffserv ルーターの QoS ポリシーにもこれらの問題のあるクラスを必ず定義してください。これによって、diffserv ルーターは、QoS ポリシーの設定に従って、問題のあるフローをキューに入れたりスケジュールしたりできるようになります。
特定の種類のトラフィックに対して統計情報を取得する必要があるか
SLA をざっと確認すると、どのタイプの顧客のトラフィックにアカウンティングが必要であるかがわかります。自分のサイトで SLA を提供している場合は、アカウンティングを必要とするトラフィックのクラスはおそらく作成済みです。また、クラスを新たに定義して、監視中のトラフィックフローやセキュリティ上の目的でアクセスを制限しているトラフィックフローの統計情報を取得することもできます。
QoS 構成表に定義したクラスを記入します。
優先レベルを各クラスに割り当てます。
たとえば、優先レベル 1 がもっとも高い優先順位のクラスを表すようにし、それ以降の優先レベルを残りのクラスに割り当てます。優先レベルは、構成上の目的で割り当てているだけで、IPQoS が実際に使用するわけではありません。また、QoS ポリシーによっては、同じ優先順位を複数のクラスに割り当てることもできます。
クラスの優先順位付けの重要性については、次の項を参照してください。
クラスの定義が終わったら、次はクラスごとにフィルタを定義します (QoS ポリシーにフィルタを定義する方法を参照)。
クラスを作成するうちに、どのクラスの優先順位が高いか、中程度か、ベストエフォートでよいかがすぐに明らかになってきます。クラスの優先順位付けは、PHB (ホップ単位動作) を発信トラフィックに割り当てるときに特に重要となります (転送動作を計画する方法を参照)。
PHB をクラスに割り当てるほかに、そのクラスのフィルタに優先順位セレクタを定義することもできます。優先順位セレクタは、IPQoS 対応ホストでのみ有効です。たとえば、同じ速度と同じ DSCP を持ついくつかのクラスが、IPQoS システムから送出されるときに帯域幅をめぐって競合することがあるとします。このような場合、各クラスの優先順位セレクタによって、他の点ではまったく同じ評価のクラスに割り当てられるサービスレベルをさらに細かく順序付けることができます。