Solaris のシステム管理 (ネーミングとディレクトリサービス : FNS、NIS+ 編)

サーバーの必要条件を決める

各 NIS+ ドメインは、一組の NIS+ サーバーによってサポートされています。各組は、1 つのマスタサーバーと 1 つ以上の複製サーバーを持っています。これらのサーバーは、ドメインのディレクトリ、グループ、テーブルを格納して、ユーザー、管理者、アプリケーションからのアクセス要求に応答します。各ドメインをサポートしているのは、一組のサーバーだけです。一組のサーバーで、複数のドメインをサポートすることができますが、お勧めできません。

NIS+ サービスでは、マスターサーバーを少なくとも 1 つ各 NIS+ ドメインに割り当てる必要があります。各ドメインが必要とする複製サーバーの数は、通信量の負荷、ネットワークの構成、NIS クライアントの有無などによって決まります。サーバーメモリーの量、ディスク記憶容量、プロセッサの速度は、クライアントの数とサーバー上に置かれる通信量の負荷によって決まります。

Solaris オペレーティング環境で稼動する任意のマシンを NIS+ サーバーにすることができます。ただし、ハードディスク要件を満たしていなければなりません。NIS+ のサーバー用、クライアント用のソフトウェアは、どちらも Solaris 製品に含まれています。つまり、Solaris オペレーティング環境がインストールされていれば、任意のマシンをサーバーまたはクライアント、あるいはその両方にすることができます。

NIS+ 名前空間をサポートするために必要なサーバーを決定するとき、次の節で説明する要因を考慮する必要があります。

サポートするドメインの数

まず、階層内のドメインごとに、マスターサーバーを 1 つずつ割り当てます。次の図は、可能な割り当ての例です。

図 26–6 サーバーをドメインに割り当てる

この図は、各ドメインへのサーバーの割り当てを示しています。

1 つ以上の複製を各ドメインに割り当てます。複製を使うと、マスターサーバーが一時的に使用不可能な場合でも、要求に応答することができます。使用する複製の数については、複製サーバーの数を参照してください。

図 26–7 ドメインへの複製サーバーの追加

この図は、指定されたドメインのサーバーおよび複製サーバーを示しています。

複製サーバーの数

ドメインに最適なサーバーの数 (マスターと複製) は、数多くの要因によって決まります。

各種のマシンを使わないでドメインあたりの複製の数を十分なものにする 1 つの方法は、マルチホームのサーバーを作成することです。マルチホームサーバーとは、複数のイーサネットまたはネットワークインタフェースを持っているマシンをいいます。マルチホームサーバーは、1 つのドメイン内にある複数のサブネットにサービスを提供することができます (マスターあるいは複製サーバーに複数のドメインを設定することもできますが、これはお勧めできません)。

サーバーの速度

サーバーの速度が早いほど、 NIS+ の性能は向上します (しかし、その場合 NIS+ サーバーは SMP マルチスレッドハードウェアを有効に利用することはできません)。NIS+ サーバーは、平均的なクライアントと同等かそれ以上に強力にする必要があります。新しいクライアントのサーバーとして古いマシンを使うことはお勧めできません。

サーバーの速度以外に、その他の多くの要因が NIS+ のパフォーマンスに影響を与えます。ユーザーおよびホストの数と種類、実行しているアプリケーションの種類、ネットワークトポロジ、負荷の密度、その他の要因すべてが NIS+ のパフォーマンスに影響します。したがって、 2 つの異なるネットワークにおいて、同じサーバーハードウェアからまったく同じパフォーマンスを期待することはできません。

下の表のベンチマークは、比較のために掲載しています。各ネットワーク上のパフォーマンスは、この数字とは違うこともあります。下に示したベンチマークの数字は、10,000 エントリという標準的なテーブルサイズのテストネットワークに基づいています。

表 26–2 ハードウェア速度と NIS+ 動作の比較

対象マシン 

秒当たりの整合動作数 

秒当たりの追加動作数 

 SS5-110  400 6
 SS20-50  440 6
 PPro-200 760 13
 Ultra-167 800 11
 Ultra-200 1270 8

サーバーメモリーの容量

サーバーの絶対最低メモリー必要量は 32M バイトですが、中から大規模ドメインのサーバーは少なくとも 64M バイトを装備した方が良いでしょう。

理想的には、 NIS+ サーバーは、 有効な NIS+ テーブルすべての検索可能列のエントリすべてを RAM 内に一度に保存できるほど十分なメモリーが必要です。要するに、最適なサーバーメモリーは、すべてのNIS+ テーブルが必要とするの合計メモリー必要量になります。

分かりやすくするため、下の表は検索可能列が 5 つある netgroup テーブルのメモリー必要量を示し、表 26–4passwdhost および cred テーブルのおおよそのメモリー必要量を示しています。

表 26–3 netgroups テーブルに必要なサーバーメモリー

エントリの数 

サーバーメモリー使用量 ( M バイト) 

 6,000  4.2
 60,000 39.1
 120,000 78.1
 180,000 117.9
 240,000 156.7
 300,000 199.2

表 26–4 passwd テーブルに必要なおおよそのメモリー

エントリの数 

サーバーメモリー使用量 ( M バイト) 

 6,000  3.7
 60,000 31.7
 120,000 63.2
 180,000 94.9
 240,000 125.8
 300,000  159.0
 1,000,000 526.2

他のテーブルには、検索可能な各列に対してエントリ当たりの平均バイト数に予測エントリ数を掛けると、メモリーサイズを予測することができます。たとえば、エントリが 10,000 で検索可能列が 2 のテーブルがあるとします。最初の列でのエントリ当たりの平均バイト数は 9 で、 2 番目の列でのエントリ当たり平均バイト数は 37 です。したがって、計算結果は、 (10,000 × 9) + (10,000 × 37) = 460,000 になります。


注 –

cred テーブルのエントリ数を予測するときは、ユーザーのローカル資格証明書に 1 つ、DES 資格証明書に 1 つずつ、すべてのユーザー2 つのエントリを持つことを忘れないでください。各マシンが使用するエントリは 1 つだけです。


標準的な NIS+ テーブルのそれぞれにある検索可能列の数については、NIS+ 標準テーブルを参照してください。

サーバーのディスク容量

必要なディスク容量は、次の 4 つの要因によって決まります。

Solaris オペレーティング環境に必要なディスク容量は、インストール方法によっては、220M バイトを超えることがあります。正確な数字については、Solaris のインストールガイドを参照してください。また、サーバーが使用する他のソフトウェアの使用するディスク容量も計算に入れる必要があります。NIS+ ソフトウェア自体は、Solaris オペレーティング環境配布の一部であるため、余分なディスク容量を使用しません。

NIS+ のディレクトリ、グループ、テーブル、クライアント情報は、/var/nis に格納されています。この /var/nis ディレクトリは、1 つのクライアントごとにおよそ 5K バイトのディスク容量を使用します。たとえば、名前空間に 1000 のクライアントがあると、/var/nis には、およそ 5M バイトのディスク容量が必要になります。ただし、同じく /var/nis に格納されるトランザクションのログが大量になる場合があるため、クライアントごとにディスク容量を追加する必要があるかもしれません。この場合は 10〜15M バイトの容量を追加するようお勧めします。つまり、1000 のクライアントがあるときは、15〜20M バイトを /var/nis に割り当ててください。トランザクションのログに対して定期的にチェックポイントを実行する場合、この数字を減らすことができます。/var/nis には独立したパーティションを設けることをお勧めします。パーティションが独立していることにより、オペレーティングシステムのアップグレードを行う際、その作業が容易になります。

NIS+ を NIS と並行して使用するときは、/var/yp に対して、/var/nis に割り当てている量と同じ容量を割り当てて、NIS から転送する NIS マップを格納してください。

さらに、サーバーの通常のスワップ空間の所要量に加えて、rpc.nisd のサイズの 2 倍のスワップ空間も必要になります。システム上で rpc.nisd が使用しているメモリーの量を確認するには、 nisstat コマンドを実行します。詳細は、 rpc.nisd マニュアルページを参照してください。この空間のほとんどは、コールバック操作中や、 nisping-C によってディレクトリに対しチェックポイントを実行するか、複製サーバーが作成されるときに使用されます。これは、このような手続き中には、NIS+ サーバープロセス全体がフォークされるためです。使用するスワップ空間が、64M バイト未満になることはありません。