マルチパスグループには、待機インタフェースを構成できます。名前が示すとおり、そのインタフェースは待機インタフェースと見なされます。待機インタフェースは、グループ内のその他のインタフェースに障害が発生したときだけ使用されます。待機インタフェースが障害迂回 IP アドレスとして機能していない場合には、IFF_INACTIVE フラグが設定されます。その結果、アクティブなインタフェースに障害が発生すると、障害経路の迂回に待機インタフェースが必ず選択されます。待機インタフェースが選択されたあと、IFF_INACTIVE フラグがそのインタフェースで消去されます。その後、アクティブとなった待機インタフェースは他のアクティブなインタフェースと同様に処理されます。一部の障害では、待機インタフェースが選択されないことがあります。この場合、待機インタフェースではなく、いくつかの IP アドレスにアクティブなインタフェースが選択されます。
待機インタフェースは、通常のデータパケットの送信には使用されません。したがって、待機インタフェースでのデータの流量は限られています。待機インタフェースが正常であるかどうかを判定するための検査信号の送信に使用するため、待機インタフェースには検査用 IP アドレスが必要です。待機インタフェースに検査用 IP アドレスが指定されていないと、グループの別のインタフェースに障害が発生しても、この待機インタフェースは障害経路の迂回先にはなりません。次の場合には、待機インタフェースにデータが流れることがあります。
ネットワーク上の別ホストが待機インタフェースのアドレスを使ってこのホストと通信すると、着信パケットにはその待機インタフェースが使用されます。
bind または IP_ADD_MEMBERSHIP を使って、アプリケーションはアドレスを指定できます。待機インタフェース上にアドレスを指定するアプリケーションは、待機インタフェースを使って引き続きトラフィックを生成できます。
このように、待機インタフェースは、アプリケーションによって明示的に選択されていない限り、検査目的以外には使用されません。グループのインタフェースに障害が発生すると、すべてのネットワークアクセスは待機インタフェースに切り替わります。待機インタフェースを構成するには、次のように ifconfig コマンドの standby オプションを使用します。
# ifconfig interface-name standby group group-name |
この手順については、インタフェースの 1 つが待機インタフェースであるマルチパスグループを構成する方法を参照してください。
待機インタフェースに検査用 IP アドレスが設定されていると、in.mpathd デーモンは、待機インタフェースを通して検査信号を送信します。待機インタフェースには、検査用 IP アドレスだけを設定してください。待機インタフェースに他のアドレスを追加しても、追加は失敗します。待機インタフェースに検査用 IP アドレス以外のアドレスが割り当てられている場合、自動的に障害経路の迂回処理が行われ、割り当て済みのアドレスは同じグループ内の別のインタフェースに移されます。 検査用 IP アドレスが存在する場合、その検査用 IP アドレスはそのままです。待機インタフェース上に検査用 IP アドレス以外のアドレスを構成することは避けてください。
待機インタフェース上に検査用 IP アドレスを指定するには、ifconfig コマンドの standby や up オプションの前に deprecated と -failover オプションを指定します。
待機インタフェースに検査用 IP アドレスを設定するには、次の構文を使用します。
# ifconfig interface-name plumb ip-address <その他のパラメータ> deprecated -failover standby up |
<その他のパラメータ> には、実際の構成に応じたパラメータを指定します。詳細については、ifconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。
待機インタフェースに検査用 IP アドレスが設定されていないと、待機インタフェースは障害経路の迂回には使用されません。
たとえば、次の構成で待機インタフェースに検査用 IP アドレスを作成するとします。
物理インタフェース hme2 を待機インタフェースにする
アドレスは 19.16.85.22
deprecated と -failover を指定
ネットマスクおよびブロードキャストアドレスをデフォルト値に設定
この場合、コマンド行に次のように入力します。
# ifconfig hme2 plumb 19.16.85.22 netmask + broadcast + deprecated -failover standby up |
インタフェースは、アドレスに対して障害経路の迂回が行われないように設定されたあとにだけ、待機インタフェースとして設定されます。
この手順については、インタフェースの 1 つが待機インタフェースであるマルチパスグループを構成する方法を参照してください。
待機状態を解除するには、次の構文を使用します。
# ifconfig interface-name -standby |