Solaris のシステム管理 (上級編)

印刷フィルタ定義の作成

印刷フィルタ定義は、フィルタ、実行する印刷フィルタプログラム、実行する変換の種類などを LP 印刷サービスに指示します。/etc/lp/fd ディレクトリには、一連のフィルタ記述子ファイルが組み込まれています。これらのファイルは、フィルタの特性 (高速または低速フィルタなど) を記述し、フィルタプログラム (/usr/lib/lp/postscript/postdaisy など) を指します。

新しい印刷フィルタを定義するときには、フィルタプログラムを作成するだけでなく、印刷フィルタ定義を作成しなければなりません。印刷フィルタ定義には、LP 印刷サービスが使用する次の情報が入っています。

lpfilter コマンドへの直接入力として特性を入力できます。また、フィルタの特性を指定するファイルを作成し、ファイル名を lpfilter コマンドへの入力として使用することもできます。この種のファイルは「フィルタ記述子ファイル」と呼ばれ、/etc/lp/fd ディレクトリに配置してください。これらのファイルはフィルタそのものではなく、フィルタを指すものです。

情報をファイルに格納するかコマンド行に直接入力するかに関係なく、次の形式を使用してください。


Command: command-pathname [options]
Input types: input-type-list
Output types: output-type-list
Printer types: printer-type-list
Printers: printer-list
Filter type: fast または slow
Options: template-list

注 –

Options 以外のフィルタ特性に複数の定義 (つまり複数行) を与えると、2 番目の定義のみが印刷サービスに使用されます。


情報はどんな順序で配置してもかまいません。また、すべての情報が必要とは限りません。値を指定しなければ、表 7–5 の値がデフォルトで割り当てられます。デフォルト値はあまり便利ではないので、明示的な値を指定するようにしてください。

表 7–5 lpfilter 引数のデフォルト値

項目 

デフォルト 

入力タイプ 

任意

出力タイプ 

任意

プリンタタイプ 

任意

プリンタ 

任意

フィルタタイプ 

slow

コマンド

フィルタプログラムのフルパスを使用してください。プログラムが必ず必要とする固定オプションがある場合は、それらをこのコマンドに含めます。

入力タイプ

印刷フィルタが処理できるファイル内容形式のリストです。LP 印刷サービスには入力タイプ数の制限はありませんが、ほとんどのフィルタは 1 つのタイプしか受け付けません。いくつかのファイルタイプは、フィルタで処理できる程度に類似しています。14 文字以内の英数字とダッシュを使用した名前を指定できます。入力タイプ名の一部として下線 (_) は使用できません。

LP 印刷サービスは、一貫した命名規則に合致するように、これらの名前を使用してフィルタをファイルタイプと一致させます。たとえば、複数のフィルタが同じ入力タイプを受け付ける場合は、各フィルタ用に指定するときに、その入力タイプに同じ名前を使用します。ユーザーには、ファイルの印刷を依頼するときにファイルタイプの識別方法がわかるように、これらの名前を通知してください。

出力タイプ

出力タイプは、フィルタが出力として生成できるファイルタイプのリストです。入力タイプごとに、フィルタは 1 つずつ出力タイプを生成します。ただし、出力タイプはジョブごとに異なることがあります。出力タイプ名は、14 文字以内の英数字とダッシュ (-) です。

出力タイプ名は、利用できる (ローカルまたはリモート) プリンタのタイプと一致するか、他のフィルタで処理される入力タイプと一致しなければなりません。LP 印刷サービスは、ファイルを変換するために異なるフィルタを複数回かける必要があることがわかると、フィルタをシェルパイプラインにグループ化します。このように複雑な処理はほとんど必要ありませんが、LP 印刷サービスではこの処理を実行できます。ユーザーが印刷したいあらゆるファイルを入力タイプにするフィルタの集合を探して、各ファイルをプリンタで処理できるファイルタイプに直接変換してください。

プリンタタイプ

プリンタタイプは、印刷フィルタがファイルを変換できるプリンタタイプのリストです。ほとんどのプリンタとフィルタの場合、これは出力タイプのリストと同じなので、フィルタ定義のこの部分はブランクにしておいてかまいません。しかし、別のタイプを使用することもできます。たとえば、初期化には 1 つのプリンタタイプを使用するプリンタでも、複数のファイル内容形式を認識できるものがあります。実際には、このプリンタには、各種ファイルタイプを、処理できるファイルタイプに変換する内部フィルタが付いています。したがって、1 つのフィルタは、プリンタで処理できるファイルタイプに合った複数の出力タイプのいずれかを生成できます。印刷フィルタには、そのプリンタタイプで機能することを示すマークを付ける必要があります。

もう 1 つの例として、同じファイルタイプを受け付けるものとして表示される 2 つのモデルのプリンタを使用できます。ただし、内部に若干違いがあるので、一方のプリンタが生成する結果と異なります。それらのプリンタには、A と B など、異なるプリンタタイプであることを示すラベルを付けます。この場合、B はズレがある方のプリンタです。タイプ B のプリンタで生成されるズレを考慮してファイルを調整するフィルタを作成します。このフィルタはこの種のプリンタタイプにのみ必要なので、タイプ B プリンタでのみ機能するものとして指定します。

プリンタ

一般に、印刷フィルタはその出力を受け付けるどのプリンタでも機能するので、通常はフィルタ定義のこの部分をスキップできます。

ただし、プリンタによっては、フィルタが生成する出力に適したものと適さないものがあります。たとえば、1 台のプリンタを高速出力専用にして、フィルタを通す必要がないファイルのみをそのプリンタに送信できます。同じタイプの他のプリンタは、印刷前に広範囲にフィルタを通す必要があるファイルに使用できます。

フィルタタイプ

LP 印刷サービスは、フィルタのタイプで説明しているように、高速フィルタと低速フィルタを認識します。

印刷モードで (lp -y コマンドを使用して) 呼び出される低速フィルタは、印刷要求が出されたシステム上で実行しなければなりません。LP 印刷サービスはモード値をプリンタサーバーに渡せません。ただし、ファイル内容形式 (lp コマンドの -T オプションの後で指定) をプリンタサーバー上の内容形式と一致させることはできます。したがって、プリンタサーバー上で特殊モードを有効にしたい場合は、LP 印刷サービスが入力タイプと出力タイプを一致することができる内容形式を指定しなければなりません。

オプション

オプションは、各種の情報をフィルタコマンドのコマンド行引数にどのように変換するかを指定します。この情報には、ユーザーからの (印刷要求を伴う) 指定、プリンタ定義、要求の処理に使用されるフィルタによって実装される仕様などを含めることができます。

テンプレートによる印刷フィルタオプションの定義

印刷フィルタオプションの定義には 13 個の情報源があり、それぞれが「キーワード」で表されています。各オプションは「テンプレート」内で定義されます。テンプレートとは、フィルタのいずれかの特性値に基づいてフィルタコマンドに渡されるオプションを定義する、フィルタ定義内のステートメントです。

フィルタ定義で指定するオプションには、13 個のキーワードを使用しなくても、すべて使用しても、そのサブセットを使用してもかまいません。また、完全なフィルタ定義に複数の定義が必要な場合は、1 つのキーワードを複数回指定することもできます。印刷フィルタ定義における Options を定義するための 13 個のキーワードについては、表 7–6 を参照してください。

表 7–6 印刷フィルタオプションのキーワード

特性

キーワード 

考えられるパターン 

例  

内容形式 (入力) 

INPUT

内容形式

troff

内容形式 (出力) 

OUTPUT

内容形式

postscript, impress

プリンタタイプ 

TERM

プリンタタイプ

att495

プリンタ名 

PRINTER

プリンタ名

lp1

文字ピッチ 

CPI

四捨五入された 10 進数

10

行ピッチ 

LPI

四捨五入された 10 進数

6

ページ長 

LENGTH

四捨五入された 10 進数

66

ページ幅 

WIDTH

四捨五入された 10 進数

80

印刷ページ数 

PAGES

ページリスト

1-5,13-20

文字セット 

CHARSET

文字セット

finnish

フォーム名 

FORM

フォーム名

invoice2

部数 

COPIES

整数

3

特殊モード

MODES

モード

landscape

印刷フィルタ定義には、複数のテンプレートを含めることができます。複数のテンプレートを指定する場合は、1 行にコンマで区切って入力するか、先頭に Options: を付けて複数行に入力します。

テンプレートの形式は次のとおりです。

keywordpattern = replacement

keyword は、フィルタの特定の特性に関して登録されたオプションのタイプを識別します。

pattern は、キーワードの特定のオプションです。

replacement は、キーワードが指定した値のときに発生する動作です。

特定のフィルタのオプションを定義する方法を示す例として、印刷サービススケジューラを使って次の条件でフィルタに印刷要求を割り当てたいものと仮定します。

上記の条件を指定するには、lpfilter コマンドのオプションとして次のテンプレートを与えます。


Options: OUTPUT impress=-I, OUTPUT postscript=-P

Options 行が長くなりすぎる場合は、次のように各テンプレートを別々の行に入れます。


Options: OUTPUT impress=-I
Options: OUTPUT postscript=-P

どちらのテンプレートでも、keywordOUTPUT として定義されています。第 1 のテンプレートでは、パターンは impress で、replacement の値は -I です。第 2 のテンプレートでは、pattern の値は postscript で、replacement の値は -P です。

各種テンプレート (つまり、各キーワードの pattern 引数と replacement 引数) に与える値を見つけるには、次のことに注意する必要があります。

テンプレートの replacement 部は、テンプレートの値をフィルタプログラムに与える方法を示します。通常はリテラルオプションですが、値の位置を示すプレースホルダのアスタリスク (*) が付いていることがあります。patternreplacement には、ユーザー入力オプションからフィルタオプションへの複雑な変換を行うために、ed コマンドの正規表現の構文を使用することもできます。ed の正規表現の構文はすべて使用できます。たとえば、\( ... \)\n 構成を使用すると、pattern の各部を抽出して replacement にコピーできます。また、& を使用すると、pattern 全体を replacement にコピーできます。詳細は、ed(1) のマニュアルページを参照してください。


注 –

pattern または replacement にコンマまたは等号 (=) を含める場合は、その前にバックスラッシュ (\) を付けてください。これらの文字の前にバックスラッシュが付いていると、pattern または replacement が使用されるときに削除されます。