Solaris システムソフトウェアでは、次の 3 種類のファイルシステムがサポートされます。
ディスクベースのファイルシステム
ネットワークベースのファイルシステム
仮想ファイルシステム
ファイルシステムのタイプを確認するには、ファイルシステムのタイプを調べるを参照してください。
ディスクベースのファイルシステムは、ハードディスク、CD-ROM、フロッピーディスクなどの物理メディアに格納されます。ディスクベースのファイルシステムは、さまざまな形式で作成できます。利用できる形式は次のとおりです。
ディスクベースのファイルシステム |
形式の説明 |
---|---|
UFS |
UNIX ファイルシステム (4.3 Tahoe リリースに組み込まれていた BSD Fast File システム)。UFS は、Solaris オペレーティング環境のデフォルトのディスクベースファイルシステムです。 UFS ファイルシステムをディスク上に作成する前に、そのディスクをフォーマットし、スライスに分割しなければなりません。ディスクのフォーマットとスライスへの分割については、第 31 章「ディスクの管理 (概要)」を参照してください。 |
HSFS |
High Sierra と ISO 9660 のファイルシステム。High Sierra は、初めての CD-ROM ファイルシステムです。ISO 9660 は、High Sierra ファイルシステムの公式の標準バージョンです。HSFS ファイルシステムは CD-ROM 上で使用される読み取り専用ファイルシステムです。Solaris HSFS では、ISO 9660 への Rock Ridge 拡張がサポートされるので、CD-ROM 上でも、すべての UFS ファイルシステムのセマンティクスとファイルタイプを提供します。ただし、書き込み可能ではなく、ハードリンクも提供しません。 |
PCFS |
PC ファイルシステム。DOS ベースのパーソナルコンピュータ用に作成された DOS フォーマットのディスク上のデータとプログラムに読み取りと書き込みのアクセスができます。 |
UDF |
UDF (Universal Disk Format) ファイルシステム。DVD (Digital Versatile Disc または Digital Video Disc) と呼ばれる光学式メディアテクノロジに情報を格納するための業界標準形式。 |
ディスクベースの各種ファイルシステムは、次のように特定のメディアのタイプに対応しています。
UFS とハードディスク
HSFS と CD-ROM
PCFS とフロッピーディスク
UDF と DVD
ただし、上記以外の組み合わせも可能です。たとえば、CD-ROM やフロッピーディスクにも、UFS ファイルシステムを格納できます。
ネットワークベースのファイルシステムは、ネットワークからアクセスされるファイルシステムです。一般に、ネットワークベースのファイルシステムは 1 つのシステム上 (通常はサーバー上) にあり、他のシステムからネットワーク経由でアクセスされます。
NFS で分散されたリソース (ファイルやディレクトリ) を管理するには、サーバーからそれらのリソースをエクスポートして個々のクライアントシステムでマウントします。詳細については、NFS 環境を参照してください。
仮想ファイルシステムは、特殊なカーネル情報と機能へのアクセスを提供するメモリーベースのファイルシステムです。ほとんどの仮想ファイルシステムは、ディスク領域を使用しません。ただし、CacheFS ファイルシステムは、ディスク上のファイルシステムを使用してキャッシュを保持します。また、一時ファイルシステム (TMPFS) などの一部の仮想ファイルシステムは、ディスク上のスワップ空間を使用します。
CacheFSTM ファイルシステムを使用すると、リモートファイルシステムや、CD-ROM ドライブのような低速デバイスのパフォーマンスを改善できます。ファイルシステムをキャッシュすると、リモートファイルシステムや CD-ROM から読み込まれたデータは、ローカルシステム上のキャッシュに格納されます。
NFS や CD-ROM ファイルシステムのパフォーマンスとスケーラビリティを向上させるには、CacheFS ファイルシステムを使用してください。CacheFS ソフトウェアは、サーバーとネットワークの負荷を軽減して NFS サーバーのパフォーマンスとスケーラビリティを改善する汎用ファイルシステムキャッシュメカニズムです。
CacheFS ソフトウェアは、階層化ファイルシステムとして設計されており、あるファイルシステムを別のファイルシステムのキャッシュに書き込む機能を持っています。NFS 環境では、CacheFS ソフトウェアはサーバーあたりのクライアント比率を高め、サーバーとネットワークの負荷を軽減し、ポイントツーポイントプロトコル (PPP) などの低速リンク上のクライアントのパフォーマンスを向上させます。また、CacheFS ファイルシステムと AutoFS サービスを組み合わせると、パフォーマンスとスケーラビリティをさらに向上させることができます。
CacheFS ファイルシステムの詳細については、第 40 章「CacheFS ファイルシステムの使用 (手順)」を参照してください。
UDF ファイルシステムは、DVD (Digital Versatile Disc または Digital Video Disc) 光学式メディアに情報を格納するための業界標準形式です。
UDF ファイルシステムは、SPARC と IA の両方のプラットフォームにおいて、動的に読み込み可能な 32 ビットと 64 ビットのモジュールとして提供されます。また、ファイルシステムを作成、マウント、および検査するシステム管理ユーティリティも同時に提供されます。Solaris の UDF ファイルシステムは、サポートされている ATAPI と SCSI の DVD ドライブ、CD-ROM デバイス、ハードディスク、およびフロッピーディスクドライブで機能します。さらに、Solaris の UDF ファイルシステムは UDF 1.50 仕様に完全に準拠しています。
UDF ファイルシステムには次のような機能があります。
UDF ファイルシステムが入っている業界標準の CD-ROM や DVD-ROM のメディアにアクセスできます。
プラットフォームやオペレーティングシステムを超えて情報を交換できます。
UDF 形式に基づく DVD ビデオ仕様を使用することで、相互対話性が豊富な放送品質並みの映像や高品質のサウンドを持つ新しいアプリケーションを実装できます。
次の機能は、UDF ファイルシステムにはありません。
CD-RW (何度でも書き換えが可能な CD メディア) と DVD-RAM への順次ディスク同時記録方式と増分記録方式での書き込み
UDF 1.50 仕様の一部ではないディスク割り当て、ACL、トランザクションのロギング、ファイルシステムのロック、およびファイルシステムのスレッドなど UFS 構成要素
UDF ファイルシステムの要件は以下の通りです。
Solaris 7 11/99、Solaris 8、または Solaris 9 リリースで動作していること
SPARC または IA プラットフォームがサポートされていること
CD-ROM または DVD-ROM ドライブがサポートされていること
Solaris で実装された UDF ファイルシステムには、次のような互換性があります。
業界標準の読み取り / 書き込み UDF バージョン 1.50 のサポート
完全に国際化されたファイルシステムのユーティリティ
一時ファイルシステム (TMPFS) は、ファイルシステムの読み取りと書き込みにローカルメモリーを使用します。一般に、一時ファイルシステムは、UFS ファイルシステムに比べてアクセス速度が高速です。TMPFS を使用すると、ローカルディスク上で、あるいはネットワーク経由で一時ファイルの読み書きを行う際のオーバヘッドを軽減でき、システムパフォーマンスを改善できます。たとえば、プログラムをコンパイルすると一時ファイルが作成されます。オペレーティングシステムは、これらのファイルを処理する間に大量のディスク処理やネットワーク処理を行います。TMPFS を使用してこれらの一時ファイルを格納すると、その作成、処理、または削除が大幅に高速になります。
TMPFS ファイルシステムのファイルは、永続的に保存されるわけではありません。ファイルシステムのマウントが解除されるときと、システムがシャットダウンまたはリブートされるときに、一時ファイルシステムのファイルは削除されます。
TMPFS は、Solaris オペレーティング環境内の /tmp ディレクトリのデフォルトのファイルシステムです。UFS ファイルシステムの場合と同様に、/tmp ディレクトリとの間でファイルをコピーまたは移動できます。
TMPFS ファイルシステムは、一時的な退避場所としてスワップ空間を使用します。TMPFS ファイルシステムがマウントされたシステムのスワップ空間が足りないと、次の 2 つの問題が発生する可能性があります。
TMPFS ファイルシステムは、通常のファイルシステムと同様に容量不足になる可能性がある。
TMPFS はスワップ空間を割り当ててファイルのデータを保存するので (必要な場合)、一部のプログラムがスワップ空間不足のために実行できなくなる可能性がある。
TMPFS ファイルシステムの作成方法については、第 38 章「ファイルシステムの作成 (手順)」を参照してください。スワップ空間を拡張する方法については、第 41 章「追加スワップ空間の構成 (手順)」を参照してください。
ループバックファイルシステム (LOFS) を使用すると、代替パス名を使用してファイルにアクセスできるように、新しい仮想ファイルシステムを作成できます。たとえば、ルート (/) のループバックマウントを /tmp/newroot 上で作成できます。ファイルシステム階層全体が、NFS サーバーからマウントされるファイルシステムを含め、/tmp/newroot 上に複写されたように見えます。どのファイルにも、ルート (/) で始まるパス名または /tmp/newroot で始まるパス名を使用してアクセスできます。
LOFS ファイルシステムの作成方法については、第 38 章「ファイルシステムの作成 (手順)」を参照してください。
プロセスファイルシステム (PROCFS) はメモリー内にあり、/proc ディレクトリには、アクティブなプロセスのプロセス番号別リストが入っています。/proc ディレクトリの内容は、ps などのコマンドで使用されます。デバッガや他の開発ツールも、ファイルシステムコールを使用して、プロセスのアドレス空間にアクセスできます。
/proc ディレクトリ内のファイルは削除しないでください。/proc ディレクトリからプロセスを削除しても、そのプロセスは強制終了されません。/proc ファイルはディスク容量を消費しないため、このディレクトリからファイルを削除してもあまり意味がありません。
/proc ディレクトリは、管理が不要です。
次のタイプの仮想ファイルシステムは、参考のために掲載してあります。管理は不要です。
仮想ファイルシステム |
説明 |
---|---|
FIFOFS (先入れ先出し) | |
FDFS (ファイル記述子) | |
MNTFS |
ローカルシステムに、マウント済みファイルシステムのテーブルへの読み取り専用アクセスを提供する |
NAMEFS | |
SPECFS (特殊) | |
SWAPFS |