ファイルシステムの管理は、最も重要なシステム管理作業の 1 つです。
この章の内容は以下のとおりです。
この節では、Solaris 9 リリースの新しいファイルシステム機能について説明します。
UFS、NFS、TMPFS の各ファイルシステムには、拡張ファイル属性が追加されたため、アプリケーション開発者は、拡張ファイル属性を使用して、特定の属性をファイルに関連付けることができます。たとえば、ウィンドウシステムファイル管理アプリケーションの開発者は、表示アイコンをファイルに関連付けることができます。拡張ファイル属性は、論理的には、ターゲットファイルに関連付けられている隠しディレクトリ内のファイルとして表されます。
runat コマンドを使用すると、属性を追加したり、拡張属性の名前空間に入っているシェルコマンドを実行したりできます。拡張属性の名前空間とは、指定のファイルに関連付けられている隠し属性ディレクトリのことです。
runat コマンドを使用して属性をファイルに追加するには、最初に属性ファイルを作成する必要があります。
$ runat filea cp /tmp/attrdata attr.1 |
次に、runat コマンドを使用して、ファイルの属性をリストに表示します。
$ runat filea ls -l |
詳細については、runat(1) のマニュアルページを参照してください。
ファイル属性の照会、コピー、または検索に使用できる属性対応のオプションを提供することにより、Solaris ファイルシステムコマンドの多くは、ファイルシステム属性をサポートするよう変更されました。詳細については、各ファイルシステムコマンドのマニュアルページを参照してください。
fssnap コマンドを使用して、ファイルシステムの読み取り専用のスナップショットを作成することができます。スナップショットは、バックアップ操作のためのファイルシステムの一時的イメージです。
詳細については、第 47 章「UFS スナップショットの使用 (手順)」を参照してください。
バッファー処理されていないファイルシステムのデータにアクセスするためにデータベースアプリケーションが使用する直接入出力のパフォーマンスが改良され、通常の UFS ファイルへの読み取りおよび書き込みのアクセスの並行処理が可能になりました。これまでは、ファイルデータを更新する操作は、その更新操作が完了するまで、その他すべての読み取りアクセスまたは書き込みアクセスをロックアウトするようになっていました。
書き込みの並行処理は、ファイルのリライトという特別なケースのみに限られます。ファイルを拡張する場合は、書き込みは従来のようにシングルスレッドで行われます。一般に、データベースはファイルを事前に割り当て、その後はあまり拡張することはありません。そのため、この拡張による効果は通常のデータベース操作時に見られます。
直接入出力の改良により、UFS ファイルシステムにおける入出力を長時間使用するデータベースのパフォーマンスは、raw パーティションのアクセススピードの約 90 % に短縮されます。データベースが CPU やバス帯域幅を長時間使用する場合は、パフォーマンスの向上が見られないことがあります。
データベーステーブルの保存にすでに UFS を使用している場合、入出力データベースのアプリケーションを直接入出力が可能な状態で実行することを想定してみてください。可能であれば、直接入出力の有効化にデータベースの管理手順を使用してください。データベース製品を通じて直接入出力を有効にする方法がない場合は、mount -forcedirectio オプションを使用して、ファイルシステムごとに直接入出力を有効にしてください。あるいは、directio(3C) ライブラリコールを使用して、直接入出力を有効にしてください。
詳細については、mount_ufs(1M) または directio(3C) のマニュアルページを参照してください。
mkfs コマンドのパフォーマンスの向上は、ファイルシステムの作成時に見られます。これにより、mkfs コマンドのパフォーマンスは、以前の Solaris リリースの 10 倍の速さになることもあります。mkfs コマンドのパフォーマンスの向上は、大規模ファイルシステムと小規模ファイルシステムのどちらの作成時にも見られます。特に大容量のディスクや高速のディスクを備えたシステムで最も顕著に現れます。
labelit コマンドは、UDF (Universal Disk Format) ファイルシステムで使用する新しいオプションをいくつか提供します。新しい labelit コマンドオプションを使用すると、UDF ボリュームの作成者名、組織、および製品サポート情報を指定することができます。
Solaris の旧リリースでは、この情報は UDF ファイルシステムの汎用部分であり、この情報を更新するためのメカニズムはありませんでした。
labelit コマンドの新しい UDF 専用オプション (-o オプションを指定) は、次のとおりです。
lvinfo1 - UDF ファイルシステムの作成者を指定します。
lvinfo2 - UDF ファイルシステムの作成に携わっている組織を指定します。
lvinfo3 - UDF ファイルシステムを含むメディアに関する製品サポート情報を指定します。
各オプションの長さは最大 35 バイトです。
詳細は、labelit_udfs(1M) のマニュアルページを参照してください。
ファイルシステムの管理に関する手順を調べるには、次の参照先を使用します。
ファイルシステム管理作業 |
参照先 |
---|---|
新しいファイルシステムを作成する | |
ローカルファイルとリモートファイルをユーザーが利用できるようにする | |
新しい記憶デバイスを接続して構成する | |
バックアップスケジュールを計画して導入し、必要に応じてファイルとファイルシステムを復元する | |
ファイルシステムの矛盾をチェックして訂正する |
ファイルシステムは、ファイルを編成して格納するためのディレクトリ構造です。「ファイルシステム」という用語には、次のような使用方法があります。
ディスクベース、ネットワークベース、または仮想ファイルシステムなど、特定のタイプのファイルシステムを指す場合
ルートディレクトリから始まるファイルツリー全体を指す場合
ディスクスライスや他の記憶メディアデバイスのデータ構造を指す場合
ファイルツリー構造のうち、ファイルがアクセスできるように主なファイルツリー上のマウントポイントに接続されている部分を指す場合
通常、その意味は状況に応じて判断できます。
Solaris オペレーティング環境では、いろいろなファイルシステムタイプへの標準インタフェースを提供する「仮想ファイルシステム」 (VFS) アーキテクチャを使用します。VFS アーキテクチャを使用すると、カーネルはファイルの読み取り、書き込み、一覧表示などの基本操作を処理でき、新しいファイルシステムの追加が簡単になります。
Solaris システムソフトウェアでは、次の 3 種類のファイルシステムがサポートされます。
ディスクベースのファイルシステム
ネットワークベースのファイルシステム
仮想ファイルシステム
ファイルシステムのタイプを確認するには、ファイルシステムのタイプを調べるを参照してください。
ディスクベースのファイルシステムは、ハードディスク、CD-ROM、フロッピーディスクなどの物理メディアに格納されます。ディスクベースのファイルシステムは、さまざまな形式で作成できます。利用できる形式は次のとおりです。
ディスクベースのファイルシステム |
形式の説明 |
---|---|
UFS |
UNIX ファイルシステム (4.3 Tahoe リリースに組み込まれていた BSD Fast File システム)。UFS は、Solaris オペレーティング環境のデフォルトのディスクベースファイルシステムです。 UFS ファイルシステムをディスク上に作成する前に、そのディスクをフォーマットし、スライスに分割しなければなりません。ディスクのフォーマットとスライスへの分割については、第 31 章「ディスクの管理 (概要)」を参照してください。 |
HSFS |
High Sierra と ISO 9660 のファイルシステム。High Sierra は、初めての CD-ROM ファイルシステムです。ISO 9660 は、High Sierra ファイルシステムの公式の標準バージョンです。HSFS ファイルシステムは CD-ROM 上で使用される読み取り専用ファイルシステムです。Solaris HSFS では、ISO 9660 への Rock Ridge 拡張がサポートされるので、CD-ROM 上でも、すべての UFS ファイルシステムのセマンティクスとファイルタイプを提供します。ただし、書き込み可能ではなく、ハードリンクも提供しません。 |
PCFS |
PC ファイルシステム。DOS ベースのパーソナルコンピュータ用に作成された DOS フォーマットのディスク上のデータとプログラムに読み取りと書き込みのアクセスができます。 |
UDF |
UDF (Universal Disk Format) ファイルシステム。DVD (Digital Versatile Disc または Digital Video Disc) と呼ばれる光学式メディアテクノロジに情報を格納するための業界標準形式。 |
ディスクベースの各種ファイルシステムは、次のように特定のメディアのタイプに対応しています。
UFS とハードディスク
HSFS と CD-ROM
PCFS とフロッピーディスク
UDF と DVD
ただし、上記以外の組み合わせも可能です。たとえば、CD-ROM やフロッピーディスクにも、UFS ファイルシステムを格納できます。
ネットワークベースのファイルシステムは、ネットワークからアクセスされるファイルシステムです。一般に、ネットワークベースのファイルシステムは 1 つのシステム上 (通常はサーバー上) にあり、他のシステムからネットワーク経由でアクセスされます。
NFS で分散されたリソース (ファイルやディレクトリ) を管理するには、サーバーからそれらのリソースをエクスポートして個々のクライアントシステムでマウントします。詳細については、NFS 環境を参照してください。
仮想ファイルシステムは、特殊なカーネル情報と機能へのアクセスを提供するメモリーベースのファイルシステムです。ほとんどの仮想ファイルシステムは、ディスク領域を使用しません。ただし、CacheFS ファイルシステムは、ディスク上のファイルシステムを使用してキャッシュを保持します。また、一時ファイルシステム (TMPFS) などの一部の仮想ファイルシステムは、ディスク上のスワップ空間を使用します。
CacheFSTM ファイルシステムを使用すると、リモートファイルシステムや、CD-ROM ドライブのような低速デバイスのパフォーマンスを改善できます。ファイルシステムをキャッシュすると、リモートファイルシステムや CD-ROM から読み込まれたデータは、ローカルシステム上のキャッシュに格納されます。
NFS や CD-ROM ファイルシステムのパフォーマンスとスケーラビリティを向上させるには、CacheFS ファイルシステムを使用してください。CacheFS ソフトウェアは、サーバーとネットワークの負荷を軽減して NFS サーバーのパフォーマンスとスケーラビリティを改善する汎用ファイルシステムキャッシュメカニズムです。
CacheFS ソフトウェアは、階層化ファイルシステムとして設計されており、あるファイルシステムを別のファイルシステムのキャッシュに書き込む機能を持っています。NFS 環境では、CacheFS ソフトウェアはサーバーあたりのクライアント比率を高め、サーバーとネットワークの負荷を軽減し、ポイントツーポイントプロトコル (PPP) などの低速リンク上のクライアントのパフォーマンスを向上させます。また、CacheFS ファイルシステムと AutoFS サービスを組み合わせると、パフォーマンスとスケーラビリティをさらに向上させることができます。
CacheFS ファイルシステムの詳細については、第 40 章「CacheFS ファイルシステムの使用 (手順)」を参照してください。
UDF ファイルシステムは、DVD (Digital Versatile Disc または Digital Video Disc) 光学式メディアに情報を格納するための業界標準形式です。
UDF ファイルシステムは、SPARC と IA の両方のプラットフォームにおいて、動的に読み込み可能な 32 ビットと 64 ビットのモジュールとして提供されます。また、ファイルシステムを作成、マウント、および検査するシステム管理ユーティリティも同時に提供されます。Solaris の UDF ファイルシステムは、サポートされている ATAPI と SCSI の DVD ドライブ、CD-ROM デバイス、ハードディスク、およびフロッピーディスクドライブで機能します。さらに、Solaris の UDF ファイルシステムは UDF 1.50 仕様に完全に準拠しています。
UDF ファイルシステムには次のような機能があります。
UDF ファイルシステムが入っている業界標準の CD-ROM や DVD-ROM のメディアにアクセスできます。
プラットフォームやオペレーティングシステムを超えて情報を交換できます。
UDF 形式に基づく DVD ビデオ仕様を使用することで、相互対話性が豊富な放送品質並みの映像や高品質のサウンドを持つ新しいアプリケーションを実装できます。
次の機能は、UDF ファイルシステムにはありません。
CD-RW (何度でも書き換えが可能な CD メディア) と DVD-RAM への順次ディスク同時記録方式と増分記録方式での書き込み
UDF 1.50 仕様の一部ではないディスク割り当て、ACL、トランザクションのロギング、ファイルシステムのロック、およびファイルシステムのスレッドなど UFS 構成要素
UDF ファイルシステムの要件は以下の通りです。
Solaris 7 11/99、Solaris 8、または Solaris 9 リリースで動作していること
SPARC または IA プラットフォームがサポートされていること
CD-ROM または DVD-ROM ドライブがサポートされていること
Solaris で実装された UDF ファイルシステムには、次のような互換性があります。
業界標準の読み取り / 書き込み UDF バージョン 1.50 のサポート
完全に国際化されたファイルシステムのユーティリティ
一時ファイルシステム (TMPFS) は、ファイルシステムの読み取りと書き込みにローカルメモリーを使用します。一般に、一時ファイルシステムは、UFS ファイルシステムに比べてアクセス速度が高速です。TMPFS を使用すると、ローカルディスク上で、あるいはネットワーク経由で一時ファイルの読み書きを行う際のオーバヘッドを軽減でき、システムパフォーマンスを改善できます。たとえば、プログラムをコンパイルすると一時ファイルが作成されます。オペレーティングシステムは、これらのファイルを処理する間に大量のディスク処理やネットワーク処理を行います。TMPFS を使用してこれらの一時ファイルを格納すると、その作成、処理、または削除が大幅に高速になります。
TMPFS ファイルシステムのファイルは、永続的に保存されるわけではありません。ファイルシステムのマウントが解除されるときと、システムがシャットダウンまたはリブートされるときに、一時ファイルシステムのファイルは削除されます。
TMPFS は、Solaris オペレーティング環境内の /tmp ディレクトリのデフォルトのファイルシステムです。UFS ファイルシステムの場合と同様に、/tmp ディレクトリとの間でファイルをコピーまたは移動できます。
TMPFS ファイルシステムは、一時的な退避場所としてスワップ空間を使用します。TMPFS ファイルシステムがマウントされたシステムのスワップ空間が足りないと、次の 2 つの問題が発生する可能性があります。
TMPFS ファイルシステムは、通常のファイルシステムと同様に容量不足になる可能性がある。
TMPFS はスワップ空間を割り当ててファイルのデータを保存するので (必要な場合)、一部のプログラムがスワップ空間不足のために実行できなくなる可能性がある。
TMPFS ファイルシステムの作成方法については、第 38 章「ファイルシステムの作成 (手順)」を参照してください。スワップ空間を拡張する方法については、第 41 章「追加スワップ空間の構成 (手順)」を参照してください。
ループバックファイルシステム (LOFS) を使用すると、代替パス名を使用してファイルにアクセスできるように、新しい仮想ファイルシステムを作成できます。たとえば、ルート (/) のループバックマウントを /tmp/newroot 上で作成できます。ファイルシステム階層全体が、NFS サーバーからマウントされるファイルシステムを含め、/tmp/newroot 上に複写されたように見えます。どのファイルにも、ルート (/) で始まるパス名または /tmp/newroot で始まるパス名を使用してアクセスできます。
LOFS ファイルシステムの作成方法については、第 38 章「ファイルシステムの作成 (手順)」を参照してください。
プロセスファイルシステム (PROCFS) はメモリー内にあり、/proc ディレクトリには、アクティブなプロセスのプロセス番号別リストが入っています。/proc ディレクトリの内容は、ps などのコマンドで使用されます。デバッガや他の開発ツールも、ファイルシステムコールを使用して、プロセスのアドレス空間にアクセスできます。
/proc ディレクトリ内のファイルは削除しないでください。/proc ディレクトリからプロセスを削除しても、そのプロセスは強制終了されません。/proc ファイルはディスク容量を消費しないため、このディレクトリからファイルを削除してもあまり意味がありません。
/proc ディレクトリは、管理が不要です。
次のタイプの仮想ファイルシステムは、参考のために掲載してあります。管理は不要です。
仮想ファイルシステム |
説明 |
---|---|
FIFOFS (先入れ先出し) | |
FDFS (ファイル記述子) | |
MNTFS |
ローカルシステムに、マウント済みファイルシステムのテーブルへの読み取り専用アクセスを提供する |
NAMEFS | |
SPECFS (特殊) | |
SWAPFS |
ほとんどのファイルシステム管理コマンドには、汎用コマンドとファイルシステムに固有のコマンドの2 種類があります。可能な場合には、常に汎用コマンドを使用してください。汎用コマンドは、ファイルシステム固有のコマンドを呼び出します。次の表に、ファイルシステム管理用の汎用コマンドを示します。これらのコマンドは、/usr/sbin ディレクトリに入っています。
表 37-1 ファイルシステム管理用の汎用コマンド
コマンド |
マニュアルページ |
説明 |
---|---|---|
clri(1M) |
i ノードをクリアする。 |
|
df(1M) |
空きディスクブロック数とファイル数を出力する。 |
|
ff(1M) |
ファイルシステムのファイル名と統計情報を表示する。 |
|
fsck(1M) |
ファイルシステムの完全性をチェックし、検出された損傷を修復する。 |
|
fsdb(1M) |
ファイルシステムをデバッグする。 |
|
fstyp(1M) |
ファイルシステムのタイプを調べる。 |
|
labelit(1M) |
テープにコピーするときに、ファイルシステムのラベルを表示または作成する (volcopy コマンド専用)。 |
|
mkfs(1M) |
新しいファイルシステムを作成する。 |
|
mount |
mount(1M) |
ローカルおよびリモートのファイルシステムをマウントする。 |
mountall(1M) |
仮想ファイルシステムテーブル (/etc/vfstab) に指定されているすべてのファイルシステムをマウントする。 |
|
ncheck(1M) |
パス名とその i ノード番号のリストを生成する。 |
|
mount(1M) |
ローカルおよびリモートのファイルシステムをマウント解除する。 |
|
mountall(1M) |
仮想ファイルシステムテーブル (/etc/vfstab) に指定されているすべてのファイルシステムをマウント解除する。 |
|
volcopy(1M) |
ファイルシステムのイメージコピーを作成する。 |
汎用ファイルシステムコマンドは、次の順序でファイルシステムのタイプを判断します。
指定されている場合は、-F オプションで指定されているファイルシステムのタイプから判断します。
特殊デバイスを /etc/vfstab ファイルのエントリと突き合わせて判断します (special が指定されている場合)。たとえば fsck は、まず fsck device フィールドと突き合わせて一致するエントリを検索します。一致するエントリが見つからなければ、特殊デバイスフィールドと突き合わせてチェックします。
ローカルファイルシステムの場合は /etc/default/fs ファイル内に指定されたデフォルトを使用し、リモートファイルシステムの場合は/etc/dfs/fstypes ファイル内に指定されたデフォルトを使用して判断します。
汎用コマンドと専用コマンドについては、『man pages section 1M: System Administration Commands』を参照してください。ファイルシステムの汎用コマンドのマニュアルページには、汎用コマンドオプションに関する情報だけが記載されています 。専用コマンドのマニュアルページには、該当するファイルシステムに固有のオプション情報が記載されています。特定のマニュアルページを見つけるには、汎用コマンド名の末尾にアンダースコアとファイルシステムタイプの略称を追加してください。たとえば、UFS ファイルシステムのマウントについてのマニュアルページを参照するには、次のように入力します。
$ man mount_ufs |
Solaris UFS ファイルシステムは階層構造になっており、ルートディレクトリ (/) から始まり、下位に多数のディレクトリが形成されています。Solaris のインストールプロセスは、デフォルトのディレクトリセットをインストールし、一連の規則を適用して類似するタイプのファイルをグループ化します。次の表に、デフォルトの Solaris ファイルシステムの概要を示します。
表 37-2 デフォルトの Solaris ファイルシステム
システムを動作させるには、ルート (/) と /usr のファイルシステムが必要です。/usr ファイルシステムに置かれている最も基本的なコマンドの一部 (mount など) は、システムのブート時や、システムがシングルユーザーモードで実行しており、/usr ファイルシステムがマウントされていない場合でも使用できるように、ルート (/) ファイルシステムにも置かれています。ルート (/) と /usr ファイルシステムのデフォルトディレクトリの詳細については、第 43 章「UFS ファイルシステム (参照情報)」を参照してください。
Solaris オペレーティング環境は、一部のディスクスライスをファイルシステムではなく一時記憶域として使用します。これらのスライスを「スワップスライス」または「スワップ空間」と呼びます。スワップスライスは、現在のプロセスを処理するだけの十分な物理メモリーがシステムにない場合に、仮想メモリー記憶域として使用されます。
多くのアプリケーションは十分なスワップ空間が使用できることを前提に作成されているため、スワップ空間を割り当て、その使われ方を監視して、必要に応じてスワップ空間を追加する方法を知っておく必要があります。スワップ空間の概要とスワップ空間を追加する手順については、第 41 章「追加スワップ空間の構成 (手順)」を参照してください。
UFS は、Solaris オペレーティング環境内のデフォルトのディスクベースファイルシステムです。ほとんどの場合、ディスクベースのファイルシステムを管理するときには、UFS を管理していることになります。UFS ファイルシステムの機能は次の通りです。
UFS ファイルシステム構造の詳細については、第 43 章「UFS ファイルシステム (参照情報)」を参照してください。
UFS ロギングは、トランザクション (完全な UFS 操作を構成する変更) をログに保存してから、そのトランザクションを UFS ファイルシステムに適用するプロセスです。保存されたトランザクションは、後でファイルシステムに適用できます。
システムの再起動時に、不完全なトランザクションは廃棄され、操作が完結しているトランザクションは適用されます。つまり、完結したトランザクションだけが適用されるために、ファイルシステムの整合性が常に保たれます。通常であればシステムコールの実行が中断され、UFS ファイルシステムの整合性が確保できないシステムクラッシュ時にも、ファイルシステムの整合性が保たれます。
UFS ロギングには 2 つの長所があります。
1 つは、ファイルシステムの整合性が保持されるため、fsck コマンドを実行する必要がなくなることです。もう 1 つは、fsck による検査を省略できるため、システムがクラッシュしたり、異常停止 (クリーンではない停止) した場合でもシステムをリブートするのに要する時間を短縮できることです (クリーンではない停止については、fsck コマンドでチェックして修復される内容を参照)。
UFS ロギングを使用すれば、特に、通常であれば fsck コマンドによる読み込みと確認に時間がかかる大規模ファイルシステムを持つシステムのブート時間をかなり短縮できます。
UFS ロギングが作成するログは、いっぱいになるとフラッシュされます。また、ファイルシステムがマウント解除されたとき、あるいは lockfs -f コマンドを実行したときにも、ログはフラッシュされます。
デフォルトでは、UFS ロギングは無効です。UFS ロギングを有効にするには、ファイルシステムを手動でマウントするときか /etc/vfstab ファイル内で、-o logging オプションを指定して mount(1M) コマンドを実行する必要があります。ログはファイルシステムの空きブロックから割り当てられ、1G バイトのファイルシステムごとに約 1M バイトのサイズ (合計で 64M バイトまで) が割り当てられます。ログは、ルート (/) ファイルシステムを含む、任意の UFS ファイルシステムで有効にできます。また、fsdb コマンドには、UFS ロギングをサポートするための新しいデバッグコマンドが用意されています。
ファイルシステムの配置を決めるときには、要求が競合する可能性があることを考えなければなりません。次にいくつかの推奨事項を示します。
作業負荷を異なる入出力システムやディスクドライブ間でできるだけ均等に分散します。/export/home ファイルシステムやスワップ空間を異なるディスク間で均等に分散させます。
プロジェクトの個々の部分やグループのメンバーを同じファイルシステム内に入れます。
1 ディスク当たりのファイルシステム数をできるだけ少なくします。通常、システム (またはブート) ディスク上には、ルート (/)、/usr、スワップ空間の 3 つのファイルシステムがあります。他のディスク上では、1 つまたは多くても 2 つのファイルシステム (1 つはなるべく追加スワップ空間) を作成します。多数の小規模なファイルシステムに分割しすぎるよりもファイルシステム数を少なくして余地を設ける方が、ファイルがフラグメントに分割される可能性が小さくなります。容量の大きいテープドライブを使用し、ufsdump コマンドで複数のボリュームを処理できるようにしておけば、大規模なファイルシステムでも簡単にバックアップをとることができます。
絶えずきわめて小さいファイルを作成するユーザーがいる場合は、i ノード数を増やして別のファイルシステムを作成することを検討します。ただし、ほとんどのサイトでは、類似するタイプのファイルを同じファイルシステム内で保管する必要はありません。
デフォルトのファイルシステムパラメータや、新しい UFS ファイルシステムを作成する手順については、第 38 章「ファイルシステムの作成 (手順)」を参照してください。
直接入出力の目的は、大容量入出力処理のスピードを速くすることです。大容量入出力処理では、大規模ファイル (256K バイトを超える) を転送するために、大容量のバッファーサイズを使用します。
UFS の直接入出力を使用すると、データベースエンジンなど、独自の内部バッファリングを行うアプリケーションにメリットがあります。Solaris 8 1/01 リリースから開始された UFS の直接入出力は、raw デバイスのアクセス時に見られる同様の入出力の並行処理に対応するよう改善されました。現在では、パフォーマンスがわずかに低下するだけで、ファイルシステムのネーミングや柔軟性がもたらすメリットを受けることができます。データベースの製造元を調べて、その製品構成オプションで UFS の直接入出力を有効にできるかどうかを確認してください。
mount コマンドに forcedirectio オプションを使用しても、直接入出力をファイルシステムで有効にできます。直接入出力を有効にしてパフォーマンスが向上するのは、ファイルシステムが大量の連続するデータを転送するときだけです。
forcedirectio オプションでファイルシステムをマウントするとき、データはユーザーのアドレス空間とディスクの間で直接伝送されます。直接入出力がファイルシステムで無効な場合、ユーザーのアドレス空間とディスクの間で転送されるデータは、まず、カーネルアドレス空間にバッファーされます。
デフォルトでは、UFS ファイルシステムでは直接入出力は行われません。詳細は、mount_ufs(1M) のマニュアルページを参照してください。
ファイルシステム上のファイルにアクセスするには、ファイルシステムをマウントする必要があります。ファイルシステムをマウントするときは、ファイルシステムをディレクトリ (マウントポイント) に接続し、システムで使用可能にすることです。ルート (/) ファイルシステムは、常にマウントされています。他のファイルシステムは、ルート (/) ファイルシステムに接続したり切り離したりできます。
ファイルシステムをマウントすると、そのファイルシステムがマウントされている間は、マウントポイントのディレクトリ内に実際に存在しているファイルやディレクトリは使用できなくなります。これらのファイルはマウント処理の影響を永続的に受けるわけではなく、ファイルシステムをマウント解除すると再び使用できるようになります。通常は存在はするがアクセスできないファイルは混乱の原因になるので、マウントディレクトリを空にしておきます。
たとえば、次の図は、ルート (/) ファイルシステムと、その下の sbin、etc、opt の各サブディレクトリから始まるローカルファイルシステムを示しています。
別パッケージの製品が含まれている /opt ファイルシステムからローカルファイルシステムにアクセスするには、次の作業を行います。
まず、ファイルシステムをマウントするためのマウントポイントとして使用するディレクトリを作成しなければなりません (たとえば、/opt/unbundled)。
マウントポイントを作成すると、mount コマンドでファイルシステムをマウントでき、/opt/unbundled 内のすべてのファイルとディレクトリにアクセスできるようになります (次の図を参照)。
ファイルシステムのマウント方法については、第 39 章「ファイルシステムのマウントとマウント解除 (手順)」を参照してください。
ファイルシステムをマウントまたはマウント解除すると、現在マウントされているファイルシステムのリストを使用して、/etc/mnttab (マウントテーブル) ファイルが変更されます。このファイルの内容は cat または more コマンドを使用して表示できますが、編集することはできません。次にマウントテーブルファイル /etc/mnttab の例を示します。
$ more /etc/mnttab /dev/dsk/c0t0d0s0 / ufs rw,intr,largefiles,onerror=panic,suid,dev=2200000 938557523 /proc /proc proc dev=3180000 938557522 fd /dev/fd fd rw,suid,dev=3240000 938557524 mnttab /etc/mnttab mntfs dev=3340000 938557526 swap /var/run tmpfs dev=1 938557526 swap /tmp tmpfs dev=2 938557529 /dev/dsk/c0t0d0s7 /export/home ufs rw,intr,largefiles,onerror=panic,suid,dev=2200007 ... $ |
アクセスするたびにファイルシステムを手動でマウントするのは、時間がかり、またまちがいが起こりやすい作業です。この問題を解決するために、仮想ファイルシステムテーブル (/etc/vfstab ファイル) にファイルシステムのリストとそのマウント方法を指定できます。
/etc/vfstab ファイルは、2 つの重要な機能を持っています。
1 つは、システムブート時に自動的にマウントするファイルシステムを指定できることです。
もう 1 つは、マウントポイント名だけでファイルシステムをマウントできることです。これは、/etc/vfstab ファイルにマウントポイントと実際のデバイススライス名とのマッピングを指定することができるためです。
デフォルトの /etc/vfstab ファイルは、システムをインストールするときに作成され、その内容はシステムソフトウェアをインストールするときに行なった選択によって異なります。ただし、システムの /etc/vfstab ファイルはいつでも編集できます。エントリを追加するときに指定する必要がある主な情報は、ファイルシステムが置かれているデバイス、マウントポイントの名前、ファイルシステムのタイプ、システムブート時に自動的にマウントするかどうか (mountall コマンドを使用する)、およびマウントオプションです。
次の例は、/etc/vfstab ファイルの内容を示しています。コメント行は # で始まります。この例は、2 つのディスク (c0t0d0 と c0t3d0) を持つシステムの /etc/vfstab ファイルを示しています。
$ more /etc/vfstab #device device mount FS fsck mount mount #to mount to fsck point type pass at boot options /dev/dsk/c0t0d0s0 /dev/rdsk/c0t0d0s0 / ufs 1 no - /proc - /proc proc - no - /dev/dsk/c0t0d0s1 - - swap - no - swap - /tmp tmpfs - yes - /dev/dsk/c0t0d0s6 /dev/rdsk/c0t0d0s6 /usr ufs 2 no - /dev/dsk/c0t3d0s7 /dev/rdsk/c0t3d0s7 /test ufs 2 yes - $ |
上の例の最後のエントリは、システムブート時に /dev/dsk/c0t3d0s7 スライス上の UFS ファイルシステムが自動的にマウントポイント /test にマウントされることを示しています。ルート (/) と /usr では、mount at boot フィールドの値が no に指定されていることに注意してください。これはこの 2 つのファイルシステムが、mountall コマンドを実行する前にブートシーケンスの一部としてカーネルによってマウントされるからです。
/etc/vfstab の各フィールドの説明、およびこのファイルの編集/使用方法については、 第 39 章「ファイルシステムのマウントとマウント解除 (手順)」を参照してください。
NFS は、1 つのシステム (通常はサーバー) の「リソース」 (ファイルやディレクトリ) をネットワーク上の他のシステムと共有するための分散型ファイルシステムサービスです。たとえば、Sun 以外のアプリケーションやソースファイルを他のシステム上のユーザーと共有できます。
NFS は、リソースの実際の物理的な位置をユーザーが意識しなくてすむようにします。よく使用されるファイルのコピーをシステムごとに配置しなくても、あるシステムのディスク上にコピーを 1 つ配置することによって NFS は、他のすべてのシステムがそのコピーにネットワークからアクセスできるようにします。NFS の環境では、リモートファイルシステムは、実際にはローカルシステムと区別がつきません。
システムは、ネットワーク上で共有するリソースがあるときに、NFS サーバーになります。サーバーは、現在共有されているリソースとそのアクセス制限 (読み取り/書き込み、読み取り専用アクセスなど) のリストを管理します。
リソースを共有する場合は、リモートシステムにマウントできるように、そのリソースを使用可能な状態にします。
リソースを共有するには、次の方法があります。
リソースを共有する方法については、第 39 章「ファイルシステムのマウントとマウント解除 (手順)」を参照してください。NFS の詳細については、『Solaris のシステム管理 (資源管理とネットワークサービス)』の「ネットワークファイルシステムの管理 (概要)」を参照してください。
NFS ファイルシステムのリソースをマウントするには、自動マウント (または AutoFS) というクライアント側のサービスを使用します。このサービスによってシステムは、ユーザーがアクセスしたときに自動的に NFS リソースをマウントまたはマウント解除できます。ユーザーがファイルシステム内のファイルを使用している間、ファイルシステムのリソースはマウントされたままになります。リソースが一定の時間アクセスされなかった場合、リソースは自動的にマウント解除されます。
次に、AutoFS の特徴を示します。
システムブート時に NFS リソースをマウントする必要がないために、ブート時間が短くなります。
NFS リソースをマウントまたはマウント解除するために、スーパーユーザーのパスワードを知っている必要はありません。
NFS リソースは使用されるときにだけマウントされるために、ネットワークトラフィックが軽減されます。
AutoFS サービスは automount ユーティリティによって初期化されます。このコマンドは、システムのブート時に自動的に実行されます。automountd デーモンは永続的に動作し、必要に応じて NFS ファイルシステムをマウントまたはマウント解除します。デフォルトでは、/home ファイルシステムは automount デーモンによってマウントされます。
AutoFS を使用すると、同じファイルシステムを提供するサーバーを指定できます。このような方法では、1 つのサーバーがダウンしても、AutoFS が他のマシンからファイルシステムをマウントすることができます。
AutoFS の設定と管理方法については、『Solaris のシステム管理 (IP サービス)』を参照してください。
ファイルシステムのタイプは、次のいずれかを使用して判断できます。
この手順は、ファイルシステムがマウントされているかどうかに関わらず使用できます。
grep コマンドを使用して、ファイルシステムのタイプを調べます。
$ grep mount-point fs-table |
mount-point |
ファイルシステムタイプを調べるファイルシステムのマウントポイント名を指定する。たとえば、/var ディレクトリ |
fs-table |
ファイルシステムのタイプを調べるファイルシステムテーブルへの絶対パスを示す。ファイルシステムがマウントされている場合、 fs-table は /etc/mnttab。マウントされていない場合、fs-table は /etc/vfstab |
マウントポイントの情報が表示されます。
ディスクスライスの raw デバイス名がわかる場合、fstyp コマンドで、ファイルシステムのタイプを調べることができます (そのディスクスライスにファイルシステムが含まれている場合)。詳細は、fstyp(1M) のマニュアルページを参照してください。
次の例では、/etc/vfstab を使用して、/export ファイルシステムのタイプを調べます。
$ grep /export /etc/vfstab /dev/dsk/c0t3d0s6 /dev/rdsk/c0t3d0s6 /export ufs 2 yes - $ |
次の例では、/etc/mnttab ファイルを使用して、現在マウントされているフロッピーディスク (vold でマウントされたもの) のファイルシステムのタイプを調べます。
$ grep /floppy /etc/mnttab /vol/dev/diskette0/unnamed_floppy /floppy/unnamed_floppy pcfs rw, nohidden,nofoldcase,dev=16c0009 89103376 $ |