Solaris のシステム管理 (資源管理とネットワークサービス)

スコープの配置

スコープを使用すると、論理的、物理的、および管理上のユーザーのグループによるサービスへの対応が可能です。スコープを使用することで、サービス通知へのアクセスの管理が可能になります。

net.slp.useScopes プロパティを使用すると、スコープを作成できます。たとえば、次のように構成すると、ホスト上の /etc/inet/slp.conf ファイルに、newscope という名前の新規のスコープが追加されます。


net.slp.useScopes=newscope

スコープの概念を理解しやすくするために、会社にプリンタや FAX などのネットワーク接続されたオフィス機器の小部屋がビルディング 6 の 2 階の南の大部屋の端にあるとします。これらのオフィス機器は 2 階のすべてのユーザーに提供されている場合や、使用が特定の部署のメンバーに限定されている場合があります。スコープはこれらの機器に対するサービス通知へのアクセスに対応する手段を提供します。

オフィス機器をマーケティング部専用にすると、mktg という名前のスコープを作成することができます。別の部署に所属しているオフィス機器は、別のスコープ名で構成できます。

また、部署が分散している場合もあります。たとえば、機械工学部門と CAD/CAM 部門が 1 階と 2 階に分かれているとします。この場合でも、両者に同じスコープを割り当てることにより、1 階と 2 階にあるホストに 2 階のマシンを提供できます。ネットワークとユーザーに都合よく動作するように、スコープはどのように配置してもかまいません。


注 -

特定のスコープを持つ UA は、別のスコープで通知されたサービスを実際に使用できないわけではありません。スコープの構成は、UA が検出するサービス通知を制御するだけです。サービス自体が、なんらかのアクセス制御の制限を行う必要があります。


スコープを構成する場合

SLP はスコープ構成をまったく行わなくても十分機能します。Solaris オペレーティング環境では、SLP のデフォルトのスコープは default です。構成されているスコープがない場合は、default がすべての SLP メッセージのスコープになります。

次の環境のどれかに当てはまれば、スコープを構成できます。

最初の場合の例をダイアルアップネットワークに対する DA 検出の構成に挙げました。2 番目の例は、組織が 2 つの建物に分かれていて、1 つの建物のユーザーはその建物のローカルサービスにアクセスするようにしたい場合です。ビルディング 1 のユーザーはスコープ B1 を使用して、ビルディング 2 のユーザーはスコープ B2 を使って構成できます。

スコープを構成する場合の検討事項

slpd.conf ファイル内の net.slp.useScopes プロパティを変更する場合は、ホスト上のすべてのエージェントにスコープを構成します。ホストが SA を実行している場合や DA として機能している場合に、その SA と DA に default 以外のスコープを構成するには、このプロパティを構成する必要があります。UA だけがマシン上で動作し、UA が、default 以外のスコープをサポートしている SA と DA を検出する必要がある場合は、UA が使用するスコープを制限するのでなければ、プロパティを構成する必要はありません。プロパティを構成しない場合、UA は、slpd を通じて、使用可能な DA とスコープを自動的に検出します。SLP デーモンは、能動的および受動的 DA 検出を使用して DA を見つけるか、DA が動作していない場合は SA 検出を使用して DA を見つけます。プロパティを構成する場合、UA は構成されたスコープを使用するだけで、構成されたスコープを破棄することはありません。

スコープを構成することを決定した場合、ネットワークのすべての SA にスコープが構成されていることを確認できなければ、構成されたスコープのリストに default スコープを保存することを考えてください。構成されていない SA があると、構成されたスコープを持つ UA はそれらの SA を見つけることができません。これは、構成されていない SA が自動的に default スコープを持つのに対し、UA は構成されたスコープを持つためです。

net.slp.DAAddresses プロパティを設定して DA も構成しようとする場合は、構成される DA によってサポートされるスコープが、net.slp.useScopes プロパティで構成したスコープと同じであることを確認してください。スコープが同じでない場合は、再起動時に slpd がエラーメッセージを出力します。

スコープの構成方法

次の手順に従って、スコープ名を slp.conf ファイルの net.slp.useScopes プロパティに追加します。

  1. スーパーユーザーになります。

  2. ホスト上の slpd とすべての SLP 動作を停止します。


    # /etc/init.d/slpd stop
    
  3. 構成の設定を変更する前に、デフォルトの /etc/inet/slp.conf ファイルのバックアップをとります。

  4. slpd.conf ファイル内の net.slp.useScopes プロパティを変更します。


    net.slp.useScopes=<scope names>
    

    scope names

    文字列のリストで、DA または SA が要求時に使用を許されるスコープを示すか、DA がサポートする必要があるスコープを示す 

    デフォルトの値は、SA と DA の場合は Default、UA の場合は未設定 

     


    注 -

    スコープ名は、次の文法上のガイドラインに従って構成します。

    • 大文字または小文字の英数字

    • 句読点 ('' \!< =>、および ~ を除く)

    • 名前の一部と考えられるスペース

    • 非 ASCII 文字

      ASCII でない文字をエスケープするには、バックスラッシュを使用します。たとえば、UTF-8 コード体系では、フランス語の aigue アクセントのある文字 e を表すために、16 進コード 0xc3a9 を使用します。プラットフォームが UTF-8 をサポートしていない場合は、UTF-8 の 16 進コード \c3\a9 をエスケープシーケンスとして使用します。


    ここでは、例として、bldg6 にスコープ engmktg を作成することを考えます。この場合は、net.slp.useScopes 行を次のように変更します。


    net.slp.useScopes=eng,mktg,bldg6
  5. 変更を保存し、ファイルを閉じます。

  6. 変更を反映するには、slpd を再起動します。


    # /etc/init.d/slpd start