Solaris のシステム管理 (資源管理とネットワークサービス)

UCCP /etc/uucp/Dialers ファイル

/etc/uucp/Dialers ファイルには、よく使用される多くのモデムに関するダイアリング指示が入っています。標準外のモデムの使用や、UUCP 環境のカスタマイズを予定している場合以外は、通常このファイルのエントリの変更や追加は必要ありません。しかし、このファイルの内容と、Systems ファイルや Devices ファイルとの関係は理解しておく必要があります。

このファイルの中のテキストは、回線をデータ転送に使用できるようにするために、最初に行わなければならない対話を指定します。chat スクリプトと呼ばれるこの対話は、通常は送受信される一連の ASCII 文字列で、電話番号をダイアルするためによく使用されます。

UUCP /etc/uucp/Devices ファイルの例に示したように、Devices ファイルの 5 番目のフィールドは、Dialers ファイルへのインデックスか、または特殊ダイアラタイプ (TCPTLI、または TLIS) です。 uucico デーモンは、Devices ファイルの 5 番目のフィールドを、Dialers ファイルの各エントリの最初のフィールドと突き合わせます。さらに、Devices の 7 番目の位置から始まる奇数番号の各フィールドは、Dialers ファイルへのインデックスとして使用されます。これらが一致すると、その Dialers のエントリがダイアラ対話を行うために解釈されます。

Dialers ファイルの各エントリの形式は次のとおりです。

dialer 
substitutions 
expect-send

例 40–10 に、US Robotics V.32bis モデム用のエントリの例を示します。


例 40–10 /etc/uucp/Dialers ファイルのエントリ


Dialer       Substitution  Expect-Send
usrv32bis-e  =,-,  ""      dA\pT&FE1V1X1Q0S2=255S12=255&A1&H1&M5&B2&W\r\c OK\r 
                           \EATDT\T\r\c CONNECT\s14400/ARQ STTY=crtscts

Dialer フィールドは、Devices ファイルの中の 5 番目以降の奇数番号のフィールドと突き合わされます。Substitutions フィールドは変換文字列です。各文字ペアの最初の文字が 2 番目の文字に変換されます。通常この変換は =- を、「発信音待ち」と「一時停止」用としてダイアラが必要とする文字に変換するために使用されます。

それ以降の expect-send の各フィールドは文字列です。

例 40–11 に、Dialers ファイルのエントリの例をいくつか示します。これは、Solaris インストールプログラムの一環として UUCP をインストールしたときに提供されるファイルです。


例 40–11 /etc/uucp/Dialers の抜粋


penril	=W-P "" \d > Q\c : \d- > s\p9\c )-W\p\r\ds\p9\c-) y\c : \E\TP > 9\c OK 
 
ventel	=&-%	"" \r\p\r\c $ <K\T%%\r>\c ONLINE! 
 
vadic	=K-K	"" \005\p *-\005\p-*\005\p-* D\p BER? \E\T\e \r\c LINE 
 
develcon	""	"" \pr\ps\c est:\007 
 
\E\D\e \n\007 micom	""	"" \s\c NAME? \D\r\c GO 
 
hayes	=,-,	"" \dA\pTE1V1X1Q0S2=255S12=255\r\c OK\r \EATDT\T\r\c CONNECT 
 
#   Telebit TrailBlazer 
tb1200	=W-,	"" \dA\pA\pA\pTE1V1X1Q0S2=255S12=255S50=2\r\c OK\r 
\EATDT\T\r\c CONNECT\s1200   
tb2400	=W-,	"" \dA\pA\pA\pTE1V1X1Q0S2=255S12=255S50=3\r\c OK\r 
\EATDT\T\r\c CONNECT\s2400   
tbfast	=W-,	"" \dA\pA\pA\pTE1V1X1Q0S2=255S12=255S50=255\r\c OK\r 
\EATDT\T\r\c CONNECT\sFAST 
 
# USrobotics, Codes, and DSI modems 
 
dsi-ec  =,-,    "" \dA\pTE1V1X5Q0S2=255S12=255*E1*F3*M1*S1\r\c OK\r \EATDT\T\r\c 
CONNECT\sEC STTY=crtscts,crtsxoff 
 
dsi-nec =,-,    "" \dA\pTE1V1X5Q0S2=255S12=255*E0*F3*M1*S1\r\c OK\r \EATDT\T\r\c CONNECT 
STTY=crtscts,crtsxoff 
 
usrv32bis-ec =,-,  "" \dA\pT&FE1V1X1Q0S2=255S12=255&A1&H1&M5&B2&W\r\c OK\r \EATDT\T\r\c 
CONNECT\s14400/ARQ STTY=crtscts,crtsxoff 
 
usrv32-nec =,-, "" \dA\pT&FE1V1X1Q0S2=255S12=255&A0&H1&M0&B0&W\r\c OK\r \EATDT\T\r\c 
CONNECT STTY=crtscts,crtsxoff 
 
codex-fast =,-, "" \dA\pT&C1&D2*MF0*AA1&R1&S1*DE15*FL3S2=255S7=40S10=40*TT5&W\r\c OK\r 
\EATDT\T\r\c CONNECT\s38400 STTY=crtscts,crtsxoff 
 
tb9600-ec =W-,  "" \dA\pA\pA\pTE1V1X1Q0S2=255S12=255S50=6\r\c OK\r 
\EATDT\T\r\cCONNECT\s9600 STTY=crtscts,crtsxoff 
 
tb9600-nec =W-, "" \dA\pA\pA\pTE1V1X1Q0S2=255S12=255S50=6S180=0\r\c OK\r \EATDT\T\r\c 
CONNECT\s9600 STTY=crtscts,crtsxoff

表 40–5 に、Dialers ファイルの send 文字列でよく使用されるエスケープ文字を示します。

表 40–5 /etc/uucp/Dialers で使用するエスケープ文字

文字 

説明 

\b

バックスペース文字を送信または想定する 

\c

改行、キャリッジリターンを抑止する 

\d

遅延 (約 2 秒) 

\D

Dialcodes 変換なしの電話番号またはトークン

\e

エコーチェックを使用しない 

\E

エコーチェックを使用する (低速デバイス用) 

\K

ブレーク文字を挿入する 

\n

改行文字を送信する 

\nnn

8 進数値を送信する。使用できるその他のエスケープ文字については、UUCP /etc/uucp/Systems ファイルを参照

\N

NULL 文字 (ASCII NUL) を送信または想定する 

\p

一時停止 (約 12 〜 14 秒) 

\r

リターン  

\s

スペース文字を送信または想定する 

\T

Dialcodes 変換を伴う電話番号またはトークン

次に示すのは Dialers ファイルの penril エントリです。


penril =W-P "" \d> Q\c : \d-> s\p9\c )-W\p\r\ds\p9\c-) y\c : \E\TP> 9\c OK 

最初に、電話番号引数の置換メカニズムが確立されます。その結果、= はすべて W (発信音待ち) で置き換えられ、- はすべて P (一時停止) で置き換えられるようになります。

上記の行の残りの部分に指定されているハンドシェークの働きは、次のとおりです。

UUCP ハードウェアフロー制御

擬似送信文字列 STTY=value を用いることによっても、モデムの特性を設定できます。たとえば、STTY=crtscts を使用すると、出力ハードウェアフロー制御が可能になります。STTY=crtsxoff を使用すると、入力ハードウェアフロー制御が可能になります。STTY=crtscts,crtsxoff を使用すると、入出力の両方のハードウェアフロー制御が可能になります。

STTY はすべての stty モードを受け入れます。詳細は、stty(1)termio(7I) のマニュアルページを参照してください。

次の例は、Dialers ファイルエントリ内でハードウェアフロー制御を使用可能にしています。


dsi =,–, "" \dA\pTE1V1X5Q0S2=255S12=255*E1*F3*M1*S1\r\c OK\r \EATDT\T\r\c 
CONNECT\sEC STTY=crtscts 

この擬似送信文字列は、Systems ファイルのエントリの中でも使用できます。

UUCP パリティの設定

場合によっては、呼び出そうとしているシステムがポートのパリティを検査し、パリティに誤りがあると回線を切断することがあります。そのため、パリティのリセットが必要になります。expect-send の対を成す文字列として P_ZERO を使用すると、パリティが 0 に設定されます。


foo =,-, "" P_ZERO "" \dA\pTE1V1X1Q0S2=255S12=255\r\c OK\r\EATDT\T\r\c CONNECT 

同様に、P_EVEN はパリティを偶数 (デフォルト) に、P_ODD はパリティを奇数に、P_ONE はパリティを 1 に設定します。この擬似送信文字列は、Systems ファイルのエントリの中でも使用できます。