Solaris のシステム管理 (基本編)

format.dat ファイル

Solaris オペレーティングシステムと一緒に出荷される format.dat ファイルでは、多数の標準的なディスクがサポートされます。使用中のディスクドライブが format.dat ファイルに含まれていない場合は、ファイルにエントリを追加するか、format ユーティリティで処理を実行中に type コマンドを選択してから other オプションを選択してエントリを追加できます。

ディスクドライブをサイト全体で使用する場合は、format.dat ファイルにエントリを追加すると時間を節約できます。format.dat ファイルを他のシステム上で使用する場合は、format.dat ファイルに追加する特定のディスクドライブを使用するシステムごとに、このファイルをコピーしてください。

次のいずれかの場合には、システムの /etc/format.dat ファイルを変更する必要があります。


注 –

/etc/format.dat ファイルのデフォルトエントリは変更しないでください。デフォルトエントリを変更する場合は、混乱を避けるために、そのエントリをコピーし、別の名前を付けてから変更します。


/etc/format.dat は、EFI ラベル付きディスクには適用できません。

format.dat ファイルの内容

format.dat データファイルには、format ユーティリティに使用されるディスクドライブ情報が入っています。format.dat ファイル内では、次の 3 つの項目が定義されています。

format.dat ファイルの構文

/etc/format.dat ファイルには、次の構文規則が適用されます。

format.dat ファイル中のキーワード

format.dat ファイルには、format ユーティリティが起動時に読み込むディスク定義が含まれます。各定義の先頭には、キーワード disk_type または partition が付きます。これらのキーワードについて、次の表で説明します。

表 36–6 format.dat ファイルのキーワードの説明

キーワード 

用途 

disk_type

コントローラとディスクのモデルを定義する。各 disk_type 定義には、ディスクの物理ジオメトリに関する情報が入っている。デフォルトのデータファイルには、Solaris オペレーティング環境でサポートされるコントローラとディスクの定義が入っている。

サポートされないディスクを使用する場合に限り、新しい disk_type を追加する必要がある。必要に応じて、disk_type 定義をデータファイルにいくつ追加してもかまわない。

partition

ディスクタイプのスライステーブルを定義する。スライステーブルには、スライス情報だけでなく、format ユーティリティ内で参照可能な名前が入っている。デフォルトの format.dat ファイルには、数種類のディスクドライブに対応するデフォルトのスライス定義が含まれる。システムのディスク上にスライスを作成し直した場合は、スライス定義を追加する。必要に応じて、スライス情報をデータファイルにいくつ追加してもかまわない。

ディスクタイプ (format.dat)

format.dat ファイル内の disk_type キーワードは、コントローラとディスクのモデルを定義します。各 disk_type 定義には、ディスクの物理ジオメトリに関する情報が含まれます。デフォルトの format.dat ファイルには、Solaris オペレーティング環境でサポートされるコントローラとディスクの定義が入っています。サポートされないディスクを使用する場合に限り、新しい disk_type を追加する必要があります。必要に応じて、disk_type 定義をデータファイルにいくつ追加してもかまいません。

キーワード自体が、ディスクタイプ名になります。この名前は、ディスクのラベルの一部になり、format ユーティリティの実行時にディスクタイプを識別するために使用されます。空白が含まれている名前は、二重引用符で囲んでください。次の表に、すべての disk_type 定義でキーワードの他に割り当てなければならない識別子を示します。

表 36–7 必須の disk_type 識別子

識別子 

説明 

ctlr

ディスクタイプで有効なコントローラのタイプ。現在、有効な値は SCSI と ATA である。 

ncyl

ディスクタイプ内のデータシリンダ数。この数によって、システムがアクセスできるディスクの論理シリンダ数が決まる。 

acyl

ディスクタイプ内の代替シリンダ数。format ユーティリティは、これらのシリンダを使用して、ドライブの欠陥リストなどの情報を格納する。代替シリンダとして、常に 2 つはシリンダを残しておく必要がある。

pcyl

ディスクタイプ内の物理シリンダ数。この数値は、ディスクメディアの境界を計算するために使用される。通常、この数値は ncylacyl の合計に等しくなる。

nhead

ディスクタイプ内のヘッド数。この数値は、ディスクメディアの境界を計算するために使用される。 

nsect

ディスクタイプ内の 1 トラック当たりのデータセクター数。この数値は、ディスクメディアの境界を計算するために使用される。これはデータセクターだけである。スペアは、各トラックのデータセクション数には含まれない。 

rpm

ディスクタイプの 1 分当たりの回転数。この情報はラベルに書き込まれ、後からファイルシステムでファイルデータの最適位置の計算に使用される。 

コントローラによっては、他の識別子が必要な場合があります。次の表に、SCSI コントローラに必要な識別子を示します。

表 36–8 SCSI コントローラの disk_type 識別子

識別子 

説明 

fmt_time

所定のドライブのフォーマットに要する時間を示す数値。詳細は、コントローラのマニュアルを参照。 

cache

format ユーティリティの処理中にオンボードキャッシュの動作を制御する数値。詳細は、コントローラのマニュアルを参照。

trks_zone

代替セクターのマッピング内で使用される 1 つの欠陥領域当たりのトラック数を指定した数値。詳細は、コントローラのマニュアルを参照。 

asect

所定の欠陥領域内で代替マッピングに利用可能なセクター数を指定する。詳細は、コントローラのマニュアルを参照。 

次に、disk_type 定義の例を示します。


disk_type = "SUN1.3G" \
        : ctlr = SCSI : fmt_time = 4 \
        : trks_zone = 17 : asect = 6 : atrks = 17 \
        : ncyl = 1965 : acyl = 2 : pcyl = 3500 : nhead = 17 : nsect = 80 \
        : rpm = 5400 : bpt = 44823

disk_type = "SUN2.1G" \
        : ctlr = SCSI : fmt_time = 4 \
        : ncyl = 2733 : acyl = 2 : pcyl = 3500 : nhead = 19 : nsect = 80 \
        : rpm = 5400 : bpt = 44823

disk_type = "SUN2.9G" \
        : ctlr = SCSI : fmt_time = 4 \
        : ncyl = 2734 : acyl = 2 : pcyl = 3500 : nhead = 21 : nsect = 99 \
        : rpm = 5400

パーティションまたはスライステーブル (format.dat)

format.dat ファイル内のパーティションテーブルに、特定のディスクタイプのスライステーブルが定義されています。

format.dat ファイル内の partition キーワードが、スライステーブル名になります。空白が含まれている名前は、二重引用符で囲んでください。次の表に、すべてのスライステーブル内で値を代入しなければならない識別子を示します。

表 36–9 スライステーブルの必須識別子

識別子 

説明 

disk

このスライステーブルが定義されている disk_type の名前。この名前は disk_type 内で使用されるとおりに指定しなければならない。

ctlr

このスライステーブルを接続できるコントローラタイプディスク。現在、有効な値は ATA コントローラを表す ATA とSCSI コントローラを表すSCSI である。ここで指定したコントローラタイプは、disk_type 定義で選択した disk_type にも定義する必要がある。

スライス定義内の他の識別子では、実際のスライス情報を記述します。識別子は 0 から 7 までの番号です。これらの識別子は省略可能です。明示的に割り当てられていないスライスは、長さ 0 に設定されます。これらの識別子の値は、それぞれカンマで区切られた数値のペアになります。最初の数値はスライスの開始シリンダで、第 2 はスライス内のセクター数です。次に、スライス定義の例を示します。


partition = "SUN1.3G" \
        : disk = "SUN1.3G" : ctlr = SCSI \
        : 0 = 0, 34000 : 1 = 25, 133280 : 2 = 0, 2672400 : 6 = 123, 2505120

partition = "SUN2.1G" \
        : disk = "SUN2.1G" : ctlr = SCSI \
        : 0 = 0, 62320 : 1 = 41, 197600 : 2 = 0, 4154160 : 6 = 171, 3894240

partition = "SUN2.9G" \
        : disk = "SUN2.9G" : ctlr = SCSI \
        : 0 = 0, 195426 : 1 = 94, 390852 : 2 = 0, 5683986 : 6 = 282, 5097708

format ユーティリティの代替データファイルを指定する

format ユーティリティは、次の方法で代替ファイルの位置を認識します。

  1. format -x オプションでファイル名を指定した場合、ファイルは常にデータファイルとして使用されます。

  2. -x オプションを指定しない場合、format ユーティリティは現在のディレクトリ内でファイル format.dat を検索します。このファイルが見つかると、データファイルとして使用されます。

  3. どちらの方法でもデータファイルが見つからない場合、format ユーティリティはデータファイルとして /etc/format.dat を使用します。このファイルは Solaris オペレーティング環境と共に出荷されるので、必ず存在するはずです。