リンカーとライブラリ

はじめに

SolarisTM オペレーティング環境では、アプリケーション開発者はリンカー ld(1) を使用してアプリケーションやライブラリを構築し、実行時リンカー ld.so.1(1) を使用してこれらのオブジェクトを実行します。このマニュアルは、Solaris リンカーの使用に関係する概念をより十分に理解することを望むユーザーを対象にしています。

お読みになる前に

このマニュアルでは、Solaris リンカーおよび実行時リンカーの操作について説明しています。動的実行可能ファイルと共有オブジェクトの生成および使用方法に関しては、動的実行環境において重要であるため、特に重点を置いて説明しています。

対象読者

このマニュアルは、次のような、Solaris リンカーに興味を持つ、意欲的な初心者から上級ユーザーまでのプログラマを対象としています。

すべてのプログラマがこのマニュアルの最初から最後までを通読する必要があるわけではありません。

内容の紹介

第 1 章「Solaris リンカーの紹介」では、Solaris オペレーティング環境でのリンクプロセスの概要、およびこのリリースで追加された新機能について説明します。この章は、すべてのプログラマを対象としています。

第 2 章「リンカー」では、リンカーの機能、その接続の (「静的」および「動的」な) 2 つの方法、入力の有効範囲と書式、出力書式についての概要を記載しています。この章は、すべてのプログラマを対象としています。

第 3 章「実行時リンカー」では、実行環境とプログラム制御によるコードおよびデータの実行時の結び付きについて記載しています。この章は、すべてのプログラマを対象としています。

第 4 章「共有オブジェクト」では、共有オブジェクトの定義について記載し、その機構と作成方法および使用方法について説明しています。この章は、すべてのプログラマを対象としています。

第 5 章「アプリケーションバイナリインタフェースとバージョン管理」では、動的オブジェクトによって提供されたインタフェースの管理および展開方法について記載しています。この章は、すべてのプログラマを対象としています。

第 6 章「サポートインタフェース」では、監視用のインタフェース、場合によっては修正用のインタフェース、リンカーと実行時リンカーの処理について記載しています。この章は、上級プログラマを対象としています。

第 7 章「オブジェクトファイル形式」は、ELF ファイル用のリファレンスです。この章は、上級プログラマを対象としています。

第 8 章「mapfile のオプション」では、出力ファイルのレイアウトを指定する、リンカーへの mapfile 命令について説明します。この章は、上級プログラマを対象としています。

付録 A 「リンカーのクイックリファレンス」 は、最も一般に使用されるリンカーオプションの概要を記載しています。

付録 B 「バージョン管理の手引き」 は、バージョンの共有オブジェクトごとの命名の規約と手引きを記載しています。この付録は、すべてのプログラマを対象としています。

付録 C 「動的ストリングトークンによる依存関係の確立」 では、予約動的ストリングトークンを使用して、動的依存関係を定義する方法の例を記載しています。この付録は、すべてのプログラマを対象としています。

付録 D 「リンカーとライブラリの新機能および更新された機能」 では、リンカーに追加された新機能と更新の概要をリリースごとに記載しています。

このマニュアル全体を通して、コマンド行の例ではすべて sh(1) 構文を使用し、プログラミングの例はすべて C 言語で書かれています。


注 –

このマニュアルでは、「x86」という用語は、Intel 32 ビット系列のマイクロプロセッサチップ、および AMD が提供する互換マイクロプロセッサチップを意味します。


Sun のオンラインマニュアル

docs.sun.com では、Sun が提供しているオンラインマニュアルを参照することができます。マニュアルのタイトルや特定の主題などをキーワードとして、検索を行うこともできます。URL は、http://docs.sun.com です。

表記上の規則

このマニュアルでは、次のような字体や記号を特別な意味を持つものとして使用します。

表 P–1 表記上の規則

字体または記号 

意味 

例 

AaBbCc123

コマンド名、ファイル名、ディレクトリ名、画面上のコンピュータ出力、コード例を示します。 

.login ファイルを編集します。

ls -a を使用してすべてのファイルを表示します。

system%

AaBbCc123

ユーザーが入力する文字を、画面上のコンピュータ出力と区別して示します。 

system% su

password:

AaBbCc123

変数を示します。実際に使用する特定の名前または値で置き換えます。 

ファイルを削除するには、rm filename と入力します。

『 』 

参照する書名を示します。 

『コードマネージャ・ユーザーズガイド』を参照してください。 

「 」 

参照する章、節、ボタンやメニュー名、強調する単語を示します。 

第 5 章「衝突の回避」を参照してください。 

この操作ができるのは、「スーパーユーザー」だけです。 

枠で囲まれたコード例で、テキストがページ行幅を超える場合に、継続を示します。 

sun% grep `^#define \
  XV_VERSION_STRING'

コード例は次のように表示されます。

[ ] は省略可能な項目を示します。上記の例は、filename は省略してもよいことを示しています。

| は区切り文字 (セパレータ) です。この文字で分割されている引数のうち 1 つだけを指定します。

キーボードのキー名は英文で、頭文字を大文字で示します (例: Shift キーを押します)。ただし、キーボードによっては Enter キーが Return キーの動作をします。

ダッシュ (-) は 2 つのキーを同時に押すことを示します。たとえば、Ctrl-DControl キーを押したまま D キーを押すことを意味します。