Solaris のシステム管理 (基本編)

第 7 章 サーバーとクライアントサポートの管理 (概要)

この章では、ネットワーク環境でのサーバーとクライアントの管理について説明し、Solaris 環境でサポートされる各システム構成 (「システムタイプ」と呼びます) に関する情報を紹介します。また、目的に合った最適なシステムを選択するためのガイドラインも示します。

この章の内容は次のとおりです。

ディスクレスクライアントサポートの管理手順については、第 8 章「ディスクレスクライアントの管理 (手順)」を参照してください。

サーバーおよびクライアント管理の新機能

この節では、サーバーとクライアントの新しい管理機能について説明します。

ディスクレスクライアントサポート

この Solaris 9 リリースでは、smosservice および smdiskless コマンドを使ってディスクレスクライアントを管理できます。ディスクレスクライアントとは、ディスクが搭載されておらず、すべてのサービスがサーバーに依存しているシステムのことです。

これらのコマンドは、Solaris 管理コンソールツール群の一部です。しかし、Solaris 管理コンソールでは、ディスクレスクライアントを管理できません。ディスクレスクライアントの管理に使用できるのは、smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドに限られます。

ディスクレスクライアントの管理方法の詳細については、ディスクレスクライアント管理の概要および第 8 章「ディスクレスクライアントの管理 (手順)」を参照してください。

サーバーとクライアントタスクの操作手順

サーバーとクライアントサポートの設定手順については、次の表を参照してください。

サーバー / クライアントサービス 

参照先 

インストールまたは JumpStart クライアント 

Solaris 9 インストールガイド

Solaris 9 でのディスクレスクライアントシステム 

ディスクレスクライアント管理の概要および第 8 章「ディスクレスクライアントの管理 (手順)」

Solaris の以前のリリースのディスクレスクライアントシステムおよび Solstice AutoClient システム 

Solstice AdminSuite 2.3 管理者ガイド

Solaris 8 または Solaris 9 での AutoClient 3.0.1 システム 

サービスプロバイダに問い合わせてください。 

サーバー、クライアント、およびアプライアンスとは

通常、ネットワーク上のシステムは、次のいずれかに該当します。

システムタイプ 

説明 

サーバー 

ネットワーク上のほかのシステムにサービスを提供するシステム。ファイルサーバー、ブートサーバー、Web サーバー、データベースサーバー、ライセンスサーバー、印刷サーバー、インストールサーバー、さらに、特定のアプリケーション用のサーバーなどもあります。この章では、サーバーとは、ネットワーク上の他のシステムにブートサービスとファイルシステムを提供するシステムのことを意味します。 

クライアント 

サーバーから提供されるリモートサービスを利用するシステム。クライアントによってはディスク容量に制限があったり、まったくディスクを持たず、サーバーから提供されるファイルシステムに依存するものもあります。ディスクレスシステム、AutoClient システム、および アプライアンスシステムは、このタイプのクライアントの一例です。 

またサーバーが提供するリモートサービス (インストールソフトウェアなど) を利用しながらも、サーバーに依存しなくても機能するクライアントもあります。この種類のクライアントの例として、ルート (/)、/usr/export/home ファイルシステムとスワップ空間をそのハードディスクに含むスタンドアロンシステムがあります。

Sun Cobalt サーバーアプライアンス 

Sun Cobalt サーバーアプライアンスは、あらかじめ設定されたインターネットサービスの統合セットを提供します。サーバーアプライアンスのユーザーが必要なのは、Web ブラウザと IP アドレスだけです。サーバーは、一元管理されるので、アプライアンスのユーザーはクライアントを管理する必要がありません。詳細については、http://www.sun.com/hardware/serverappliances を参照してください。

アプライアンス 

Sun Ray アプライアンスのようなネットワークアプライアンスを使うと、アプリケーションや Solaris 環境にアクセスできます。アプライアンスを使うと、サーバー管理を一元化できるので、クライアント管理またはアップグレードを行う必要がなくなります。Sun Ray アプライアンスでは、「ホットデスク」も提供されます。この機能を使うと、サーバーグループのどのアプライアンスからでもただちに、作業中のコンピュータセッション (正確に言うと作業を中断したところ) にアクセスできます。詳細については、 http://www.sun.com/products/sunray を参照してください。

クライアントサポートとは

クライアントに対するサポートとは、クライアントの機能を促進するソフトウェアおよびサービスを提供することです。サポートには、次の項目が含まれます。

システムタイプの概要

システムタイプは、ルート (/) と /usr ファイルシステム (スワップ領域を含む) にアクセスする方法によって決まる場合があります。たとえば、スタンドアロンとサーバーシステムでは、これらのファイルシステムをローカルディスクからマウントしていますが、その他のクライアントでは、これらのファイルシステムをリモートからマウントし、サーバーから提供されるサービスに依存しています。次の表にそれぞれのシステムタイプの特徴を示します。

表 7–1 一般的なシステムタイプの特徴

システムタイプ 

ローカルファイルシステム 

ローカルスワップ領域 

リモートファイルシステム 

ネットワーク利用度 

相対パフォーマンス 

サーバー 

ルート (/)

/usr

/home

/opt

/export/home

/export/root

あり 

なし 

高 

高 

スタンドアロンシステム 

ルート (/)

/usr

/export/home

あり 

なし 

低 

高 

ディスクレスクライアント 

なし 

なし 

ルート (/)

スワップ 

/usr

/home

高 

低 

AutoClient システム 

キャッシュルート (/)

キャッシュされた /usr

あり 

/var

低 

高 

アプライアンス 

なし 

なし 

なし 

高 

高 

サーバー

サーバーシステム上には、次のファイルシステムがあります。

サーバー上には、他のシステムをサポートするために次のソフトウェアも格納できます。

スタンドアロンシステム

「ネットワークに接続されたスタンドアロンシステム」は、ネットワーク上の他のシステムと情報を共有できますが、ネットワークから切り離されても機能できます。

スタンドアロンシステムは、ルート (/)、/usr/export/home の各ファイルシステムとスワップ空間を含むハードディスクを自ら持つため、独立して動作できます。つまり、スタンドアロンシステムは、オペレーティングシステムのソフトウェア、実行可能ファイル、仮想メモリー空間、ユーザーが作成したファイルにローカルにアクセスできます。


注 –

スタンドアロンシステムに必要なファイルシステムを保持するには、十分なディスク領域が必要です。


「ネットワークに接続されないスタンドアロンシステム」は、ネットワークに接続されていない点を除き、ネットワークに接続されたスタンドアロンシステムと同じです。

ディスクレスクライアント

「ディスクレスクライアント」とは、ディスクが搭載されておらず、必要なすべてのソフトウェアおよび記憶装置をサーバーに依存しているシステムのことです。ディスクレスクライアントには、サーバーからリモートで、ルート (/)、/usr、および /home ファイルシステムがマウントされます。

ディスクレスクライアントでは、ネットワークを介してオペレーティングシステムソフトウェアおよび仮想メモリー領域に継続的にアクセスする必要があるため、かなりのネットワークトラフィックが発生します。ディスクレスクライアントは、ネットワークから切り離されたり、そのサーバーが正しく機能しない場合は機能できません。

ディスクレスクライアントの概要については、ディスクレスクライアント管理の概要を参照してください。

AutoClient システム

AutoClient システムは、インストールおよび管理方法の点では、ディスクレスクライアントとほとんど同じです。AutoClient システムには、次の特徴があります。

アプライアンス

アプライアンス (たとえば、Sun Ray アプライアンス) は、管理を必要としない X ディスプレイデバイスです。このデバイスには、CPU、ファン、ディスクがなく、メモリーもわずかしか搭載されていません。アプライアンスは Sun ディスプレイモニターに接続されていますが、アプライアンスユーザーのデスクトップセッションは、サーバーで実行され、その結果がユーザーのモニタに表示されます。ユーザーの X 環境は自動的に設定されます。この環境には次の特徴があります。

システムタイプ選択のガイドライン

次の特徴に基づいてそれぞれのシステムタイプを比較することにより、使用中の環境にどのシステムタイプが適切かを判断することができます。

次の表では、各システムタイプの順位をカテゴリ別に表示しています。1 は、最も効果があることを意味します。4 は、最も効果が低いことを意味します。

表 7–2 システムタイプの比較

システムタイプ 

一元管理 

性能 

ディスク使用率 

スタンドアロンシステム 

ディスクレスクライアント 

AutoClient システム 

アプライアンス 

ディスクレスクライアント管理の概要

次の節および第 8 章「ディスクレスクライアントの管理 (手順)」では、Solaris 9 リリースでのディスクレスクライアントサポートの管理方法について説明します。

「ディスクレスクライアント」とは、オペレーティングシステム、ソフトウェア、および記憶装置を「OS サーバー」に依存しているシステムのことです。ディスクレスクライアントは、そのルート (/)、/usr、およびその他のファイルシステムを OS サーバーからマウントします。ディスクレスクライアントは独自の CPU と物理メモリーを持っており、データをローカルで処理することができます。しかしディスクレスクライアントは、ネットワークから切り離されたり、その OS サーバーが正しく機能しない場合は機能できません。ディスクレスクライアントは、ネットワークを経由して継続的に機能する必要があるため、多大なネットワークトラフィックを発生させます。

以前の Solaris リリースでは、Solstice グラフィカル管理ツールでディスクレスクライアントが管理されました。Solaris 9 リリースでは、ディスクレスクライアントの smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドを使って、OS サービスおよびディスクレスクライアントサポートを管理できるようになりました。

OS サーバーおよびディスクレスクライアントのサポート情報

次の表に smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドをサポートする Solaris リリースおよびアーキテクチャタイプを示します。

アーキテクチャタイプ 

Solaris 2.6 

Solaris 7 

Solaris 8 1/01、4/01、7/01、10/01、2/02 

Solaris 9 

SPARC サーバー 

x86 サーバー 

SPARC クライアント 

x86 クライアント 

次の表に smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドがサポートするOS サーバーとクライアントの組み合わせを示します。

 

Solaris 2.6 リリースサポート  

Solaris 7 リリースサポート 

Solaris 8 1/01、4/01、7/01、10/01、2/02 サポート 

Solaris 9 サポート 

OS サーバー/クライアント OS リリース

Solaris 2.6–Solaris 2.6 

Solaris 7–Solaris 2.6、または 7 

Solaris 8 1/01、4/01、7/01、10/01, 2/02–Solaris 2.6、7、または 8 1/01、4/01、7/01、10/01、2/02  

Solaris 9–Solaris 2.6、7、8 1/01、4/01、7/01、10/01、2/02 

ディスクレスクライアント管理機能

smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドを使うと、ネットワークにディスクレスクライアントサポートを追加したり、維持したりすることができます。ネームサービスを使うと、システム情報を一元管理できるので、ホスト名などの重要なシステム情報をネットワーク上のすべてのシステムに複製する必要がありません。

smosservice コマンドおよび smdiskless コマンドを使うと次の作業が実行できます。

ディスクレスクライアントコマンドは、ディスクレスクライアントの起動の設定にのみ使用できます。このコマンドは、リモートインストールまたはプロファイルサービスなど、ほかのサービスの設定では使用できません。リモートインストールを設定するには、sysidcfg ファイルにディスクレスクライアント仕様を定義する必要があります。詳細については、『Solaris 9 インストールガイド』を参照してください。

ディスクレスクライアントコマンドの使用

次の表のコマンドを使って独自のシェルスクリプトを記述すると、簡単にディスクレスクライアント環境を設定および管理できます。

表 7–3 ディスクレスクライアントコマンド

コマンド 

サブコマンド 

作業 

/usr/sadm/bin/smosservice

 

 

 

add

OS サービスを追加する 

 

delete

OS サービスを削除する 

 

list

OS サービスをリスト表示する 

 

patch

OS サービスのパッチを管理する 

/usr/sadm/bin/smdiskless

 

 

 

add

ディスクレスクライアントを OS サーバーに追加する 

 

delete

ディスクレスクライアントを OS サーバーから削除する 

 

list

OS サーバー上のディスクレスクライアントをリスト表示する 

 

modify

ディスクレスクライアントの属性を変更する  

次に示す 2 種類の方法で、これらのコマンドに関するヘルプを参照することができます。

ディスクレスクライアント管理に必要な RBAC 権限

smosserviceコマンド および smdiskless コマンドはスーパーユーザーとして使用できます。役割によるアクセス制御 (RBAC) を使用している場合、割当てられた RBAC 権限に応じて、すべてのディスクレスクライアントコマンドまたはそのサブセットのいずれかを使用できます。次の表にディスクレスクライアントコマンドを使用するのに必要な RBAC 権限を示します。

表 7–4 ディスクレスクライアントの管理に必要な権限

RBAC 権限 

コマンド 

作業 

基本的な Solaris ユーザー、ネットワーク管理 

smosservice list

OS サービスをリスト表示する 

 

smosservice patch

OS サービスパッチをリスト表示する 

 

smdiskless list

ディスクレスクライアントをリスト表示する 

ネットワーク管理 

smdiskless add

ディスクレスクライアントを追加する 

システム管理者 

すべてのコマンド 

すべての作業 

OS サービスの追加

Solaris OS サーバーとは、ディスクレスクライアントシステムをサポートするオペレーティングシステム (OS) サービスを提供するサーバーです。OS サーバーをサポートするか、smosservice コマンドを使用してスタンドアロンシステムを OS サーバーに変換することができます。

サポートする各プラットフォームグループおよび Solaris リリース用に、特定の OS サービスをOS サーバーに追加する必要があります。たとえば、Solaris 8 リリース上で実行中の SPARC® Sun4m システムをサポートする場合には、Sun4m/Solaris 8 OS サービスを OS サーバーに追加する必要があります。また、それぞれのシステムが属するプラットフォームグループが異なるため、Solaris 8 のリリースを実行する SPARC Sun4c システムまたは x86 システムをサポートする OS サービスも追加する必要があります。

OS サービスを追加するには、適切な Solaris CD またはディスクイメージへのアクセス権が必要です。

OS サーバーにパッチが適用された場合に OS サービスを追加する

OS サーバーに OS サービスを追加しようとすると、サーバー上の OS と追加するサービスの OS のバージョンが一致しないというエラーメッセージが表示される場合があります。このメッセージは、OS サーバーにインストールされている OS のパッケージにパッチが適用されていても、追加しようとしている OS サービスのパッケージにはパッチが適用されていない (パッチがパッケージに組み込まれているため) 場合に表示されます。

たとえば、Solaris 7 リリースを実行するサーバーがあるとします。また、このサーバーには、パッチが適用された Solaris 2.6 SPARC sun4m OS サービスなど、ほかの OS サービスも追加されているとします。CD-ROM から Solaris 2.6 SPARC sun4c OS サービスをこのサーバーに追加しようとすると、次のようなエラーメッセージが表示される場合があります。


Error: inconsistent revision, installed package appears to have been 
patched resulting in it being different than the package on your media. 
You will need to backout all patches that patch this package before 
retrying the add OS service option.

OS サーバーに必要なディスク容量

ディスクレスクライアント環境を設定する前に、各ディスクレスクライアントディレクトリに必要なディスク容量があるかどうか確認する必要があります。

以前のバージョンの Solaris リリースでは、インストール中にディスクレスクライアントサポートについてのプロンプトが表示されました。Solaris 9 リリースでは、手動でインストール中に /export ファイルシステムを割り当てるか、またはインストール後に作成してください。具体的なディスク容量要件については、次の表を参照してください。

表 7–5 OS サーバーに必要なディスク容量

ディレクトリ 

必要な容量 (M バイト) 

/export/Solaris_version

10 

/export/exec

800 

/export/share

/export/swap/diskless_client

32 (デフォルトのサイズ) 

/export/dump/diskless_client

32 (デフォルトのサイズ) 

/export/root/templates/Solaris_ version

30 

/export/root/clone/Solaris_ version/

machine_class

30 - 60 (マシンクラスによって異なる) 

/export/root/diskless_client (上記のクローン)

30 - 60 (マシンクラスによって異なる) 

/tftpboot/inetboot.machine_class .Solaris_

version

machine_class.Solaris_version ごとに 200 K バイト