メールサービスには、相互に対応する数多くのプログラムやデーモンが含まれています。ここでは、電子メールの管理に関連するファイル、プログラム、用語、および概念について説明します。
次の表にメールサービスに使用する /usr/bin ディレクトリの内容を示します。
名前 |
形式 |
説明 |
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ファイル |
NIS+ 別名マップを処理するプログラム |
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ファイル |
ユーザーエージェント |
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ファイル |
メールを SunOS 4.1 メールボックスフォーマットに格納するフィルタ |
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リンク |
/usr/lib/sendmail へのリンク。メールキューを表示するために使用 |
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ファイル |
/etc/mail/statistics ファイルに格納されたメール統計情報の読み込みに使用するプログラム (存在する場合のみ) |
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ファイル |
ユーザーエージェント |
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ファイル |
アドレスの検証とデバッグのためメールプログラムに接続するプログラム |
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ファイル |
別名データベースを表示するコマンド。praliases(1) のマニュアルページにあるコンパイルされていない情報を参照 |
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リンク |
/usr/bin/mail へのリンク。メール送信だけに使用されるコマンド |
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ファイル |
メールへの自動応答を設定するコマンド |
次の表に、/etc/mail ディレクトリの内容を示します。
名前 |
形式 |
説明 |
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ファイル |
mailtool ユーザーエージェントのデフォルトの設定値 |
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ファイル |
メール転送情報 |
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ファイル |
newaliases の実行によって作成されるデフォルトのバイナリ形式のメール転送情報 |
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ファイル |
newaliases の実行によって作成されるバイナリ形式のメール転送情報まだ使用できるが、Solaris 9 ではデフォルトでは使用されない |
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ファイル |
newaliases の実行によって作成されるバイナリ形式のメール転送情報まだ使用できるが、Solaris 9 ではデフォルトでは使用されない |
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ファイル |
mailx ユーザーエージェントのデフォルトの設定値 |
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ファイル |
メインシステム用の構成ファイルの例 |
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ファイル |
リレーを許容するすべてのドメインのリスト。デフォルトでは、ローカルドメインだけが使用できる |
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ファイル |
メールルーティング用の構成ファイル |
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ファイル |
メール送信プログラム (MSP) のための新しい構成ファイル。詳細は、新しい構成ファイル submit.cf を参照 |
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ファイル |
メールホスト用の別名の数が多すぎるときに作成可能なオプションファイル |
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ファイル |
SMTP HELP コマンドで使用するヘルプファイル |
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ファイル |
リスニングデーモンの PID をリストし、現在は /var/run にあるファイル |
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ファイル |
sendmail 統計ファイル。このファイルが存在すると、sendmail は各メールプログラムのトラフィック量をログに記録する。このファイルは以前 sendmail.st と呼ばれていた。 |
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ファイル |
サブシステム用の構成ファイルの例 |
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ファイル |
特定のメール操作を実行するための信頼を与えられたユーザーをリストするファイル (各行 1 ユーザー)。デフォルトでは、root だけがこのファイルに入っている。信頼されていないユーザーが特定のメール操作を実行すると、X-Authentication-Warning: header being added to a message という警告が生成される |
表 23–9 にメールサービスに使用する /usr/lib ディレクトリの内容を示します。
表 23–9 /usr/lib ディレクトリの内容
名前 |
形式 |
説明 |
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ファイル |
メールボックスにメールを配信するメールプログラム |
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ファイル |
メール転送エージェントとしても知られるルーティングプログラム |
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ファイル |
sendmail の |program 構文を使用して /var/adm/sm.bin ディレクトリにあるプログラムに対して sendmail を実行できるプログラムを制限するシェルプログラム (sendmail に限定されたシェル)。/var/adm/sm.bin に含める内容については、smrsh(1M) のマニュアルページを参照。有効にするには、この m4 コマンドと FEATURE(`smrsh') を mc ファイルに含める |
/usr/lib ディレクトリには、sendmail.cf ファイルを構築するために必要なすべてのファイルを含む mail というサブディレクトリがあります。表 23–10 に mail ディレクトリの内容を示します。
表 23–10 メールサービスに利用する /usr/lib/mail ディレクトリの内容
名前 |
形式 |
説明 |
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ファイル |
構成ファイルの説明 |
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ディレクトリ |
ホストのサイトに依存する、およびサイトに依存しない説明 |
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ファイル |
以前は cf/main-v7sun.mc という名前のファイル 。メインの構成ファイル |
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ファイル |
新しい構成ファイルを作成する場合の規則を提供する |
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ファイル |
メッセージを送信するためのメール差し出しプログラム (MSP) のための構成ファイル |
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ファイル |
以前は cf/subsidiary-v7sun.mc という名前のファイル。別のホストから /var/mail を NFS マウントするホストのための構成ファイル |
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ディレクトリ |
サイトに依存するサブドメインの説明 |
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ファイル |
Berkeley からの汎用ドメインファイル |
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ファイル |
sendmail 関数を以前の Solaris 版のようにする変更を伴うドメインファイル。ただし、リレーは完全に無効に設定されるので、ホスト名のない送信者アドレスは拒否され、解決されないドメインは拒否される |
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ファイル |
sendmail 関数を以前の Solaris 版のようにする変更を伴うデフォルトドメインファイル |
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ディレクトリ |
特定のホスト用の特別な機能の定義を含む。機能の詳細な説明は README を参照 |
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ディレクトリ |
サイトに依存しないインクルードファイルを含む |
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ディレクトリ |
local、smtp、uucp などのメールプログラムの定義を含む |
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ディレクトリ |
各種のオペレーティングシステム環境の説明 |
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ファイル |
デフォルトのローカルメールプログラムを mail.local に定義する |
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ファイル |
デフォルトのローカルメールプログラムを mail.local に定義する |
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ファイル |
ローカルメールプログラムを mail に定義する |
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ファイル |
ローカルメールプログラムを LMTP モードで mail.local に定義し、IPv6 を有効にし、sendmail.pid ファイルのディレクトリとして /var/run を指定する |
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ディレクトリ |
m4 構築プロセスと移行補助に使用するシェルスクリプトを含む |
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ファイル |
include: 別名と .forward ファイルのアクセス権、および正確なアクセス権に必要なこれらの親ディレクトリのパスを確認する |
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ファイル |
sendmail が完全指定のホスト名を判別できることを確認する |
メールサービスは、その他のいくつかのファイルおよびディレクトリを使用します。これらを表 23–11 に示します。
表 23–11 メールサービスに使用するその他のファイル
メールサービスは以下のプログラムで構成され、図 23–2 のように作用します。
さらに詳しい図については、sendmail プログラムの機能 を参照してください。
以下に、メールプログラムの相互作用について説明します。
ユーザーは、mailx 、mailtool などのプログラムを使ってメッセージを送信します。これらのプログラムについては、mailx(1) または mailtool(1) のマニュアルページを参照してください。
メッセージは、そのメッセージを生成したプログラムによって収集され、sendmail デーモンに渡されます。
sendmail デーモンがメッセージのアドレスを識別可能な各部に分割して解析します。sendmail デーモンは、/etc/mail/sendmail.cf という構成ファイルの情報を使ってネットワーク名の構文、別名、転送情報、およびネットワークトポロジを決定します。sendmail はこの情報を使用して、メッセージが受信者に到達する経路を決定します。
sendmail デーモンはメッセージを適切なシステムに渡します。
ローカルシステムの /usr/lib/mail.local プログラムは、メッセージの受信者の /var/mail/username ディレクトリのメールボックスにメールを配信します。
受信者は、メールが届いたことが通知されるので、mail、mailx、mailtool などのプログラムを使用してメールを受け取ります。
以下に、 sendmail プログラムの機能の一部を示します。
sendmail は、TCP/IP や UUCP などの異なる通信プロトコルを使用できます。
sendmail は、SMTP サーバー、メッセージキュー、メーリングリストを実装します。
sendmail は、以下の命名規則に準拠したパターンマッチングシステムを使って名前の解釈を制御します。
ドメインベースの命名規則ドメインの手法は、物理的なネーミング対論理的なネーミングの問題を分離します。詳細は、メールアドレス を参照してください。
他のネットワークのホストからローカルに見えるネットワーク名を提供するなどの即席のテクニック
任意 (以前) の命名構文
異種の命名スキーム
Solaris オペレーティング環境では、sendmail プログラムをメールルーターとして使用します。 以下に、機能の一部を示します。
sendmail は、電子メールメッセージの受信と配信を担当します。
sendmail は、mail、mailx、 mailtool などのメール読み出しプログラムと uucp などのメール転送プログラムとのインタフェースです。
sendmail は、次の要領でユーザーが送信する電子メールメッセージを制御します。
受信者のアドレスを確認します。
適切な配信プログラムを選択します。
アドレスを配信エージェントが処理できるフォーマットに書き換えます。
必要に応じて、メールヘッダーをフォーマットし直します。
最後に転送されたメッセージをメール配信プログラムに渡します。
sendmail の詳細は、以下のトピックを参照してください。
sendmail プログラムでは、メールルーティングに必要な 3 つのメカニズムをサポートしています。 適切なメカニズムは、変更の種類によって決まります。
サーバーの変更
ドメイン全体の変更
単独のユーザーの変更
さらに、選択する再ルーティングメカニズムによって必要な管理レベルが異なります。次のオプションを考慮してください。
再ルーティングメカニズムの 1 つは別名です。
別名を使用すれば、使用するファイルの種類に基づいて、サーバー全体またはネームサービス全体をベースにしてアドレス名をマップできます。
以下に、ネームサービスの別名の長所と短所を示します。
ネームサービス別名ファイルを使用すれば、メール再ルーティングの変更を単一のソースで管理できます。ただし、ネームサービスの別名指定では、再ルーティングの変更を伝達する際に遅延が起こります。
通常、ネームサービスの管理は、特定のシステム管理者グループに制限されます。一般ユーザーは、このファイルを管理しません。
以下に、サーバー別名ファイルを使用する際の長所と短所を示します。
サーバー別名ファイルを使用すれば、指定されたサーバーの root になることができる任意のユーザーが再ルーティングを管理できます。
サーバー別名指定は、再ルーティングの変更を伝達する際の遅延はほとんどありません。
変更はローカルサーバーだけに影響します。ほとんどのメールが単一のサーバーに送信される場合は、影響が少なくなります。ただし、この変更を多くのメールサーバーに伝達する必要がある場合は、ネームサービスの別名指定を使用します。
一般ユーザーは、この変更を管理しません。
詳細は、この章の メール別名ファイルを参照してください。 作業マップについては、第 22 章「メールサービス (手順)」 の メール別名ファイルの管理 (作業マップ) を参照してください。
次のメカニズムは、転送です。
このメカニズムでは、ユーザーがメールの再ルーティングを管理できます。ローカルユーザーは、受信メールを以下の対象に再ルーティングできます。
別のメールボックス
別のメールプログラム
別のメールホスト
このメカニズムは、.forward ファイルによってサポートされます。.forward ファイルの詳細は、この章の .forward ファイルを参照してください。作業マップについては、第 22 章「メールサービス (手順)」の .forward ファイルの管理 (作業マップ)を参照してください。
最後のメカニズムは、取り込みです。
このメカニズムでは、root アクセス権を持たないユーザーも別名リストを保守できます。このメカニズムを提供するには、root ユーザーは、サーバー上の別名ファイル内に適切なエントリを作成する必要があります。このエントリが作成されると、ユーザーは必要に応じてメールをルーティングし直すことができるようになります。取り込みの詳細は、この章の /etc/mail/aliases ファイルを参照してください。 作業マップについては、第 22 章「メールサービス (手順)」 の メール別名ファイルの管理 (作業マップ) を参照してください。
図 23–3 は、sendmail がユーザー別名をどのように使用するかを示します。 /usr/bin/mailx のようなメールを読み取るプログラムは、プログラム自身の別名を持つことができ、それらはメッセージが sendmail に達する前に展開されます。sendmail の別名は、ローカルファイル、NIS、NIS+ など、さまざまなネームサービスソースからのものでもかまいません。検索順序は nsswitch.conf ファイルによって決定されます。nsswitch.conf(4) のマニュアルページを参照してください。
sendmail プログラムには、次のような機能があります。
sendmail は、信頼性の高いプログラムです。すべてのメッセージを正しく配信するように設計されています。どのようなメッセージも完全に失われることはありません。
sendmail は、既存のソフトウェアを配信に随時使用します。
sendmail は、1 つのネットワークタイプ (UUCP や Ethernet など) に複数の接続を行う場合なども含め、複雑な環境を処理するように構成できます。sendmail は、名前とその構文を確認し、どのメールプログラムを使用するかを判断します。
sendmail は、構成情報をコードにコンパイルする代わりに、構成ファイルを使ってメール構成を制御します。
ユーザーは独自のメーリングリストを管理できます。さらに各ユーザーは、ドメイン全体で有効な別名ファイル (通常、NIS または NIS+ によって管理されるドメイン全体の別名の中にある) を修正することなく自分自身の転送メカニズムを指定できます。
各ユーザーは、受信メールを処理するカスタムメールプログラムを指定できます。カスタムメールプログラムは、「I am on vacation. (私は休暇中です)」のようなメッセージを返すこともできます。詳細は、vacation(1) マニュアルページを参照してください。
sendmail は、1 つのホストでアドレスを処理し、ネットワークトラフィックを削減します。
図 23–4 には、sendmail がメールシステムで他のプログラムと相互作用する方法を示します。
図 23–4 に示すように、ユーザーはメール作成プログラムおよびメール送信プログラムと対話できます。メール送信が依頼されると、メール生成プログラムは sendmail を呼び出し、sendmail は適切なメールプログラムにメッセージを送信します。 発信者の一部はネットワークサーバーであったり、またメールプログラムの一部はネットワーククライアントであるため、sendmail は、インターネットメールゲートウェイとしても使用できます。このプロセスの詳細は、メールプログラム間の相互作用を参照してください。
構成ファイルは、sendmail がその機能を実行する方法を制御します。構成ファイルにより、配信エージェント、アドレスの変換の規則、およびメールヘッダのフォーマットが選択されます。
sendmail プログラムは、/etc/mail/sendmail.cf ファイルの情報を使用して、その機能を実行します。各システムには、/etc/mail ディレクトリにインストールされたデフォルトの sendmail.cf ファイルがあります。メールサーバーまたはメールクライアントのためにデフォルト構成ファイルを編集または変更する必要はありません。カスタマイズされた構成ファイルを必要とするシステムは、メールホストとメールゲートウェイだけです。
Solaris オペレーティング環境には、以下に示すように、/etc/mail ディレクトリに 3 つのデフォルト構成ファイルがあります。
メールホストまたはメールゲートウェイとして使用する 1 つまたは複数のシステムを指定するための、main.cf という名前の構成ファイル
デーモンモードの代わりにメール送信プログラムモードで sendmail を実行するために使用する submit.cf という名前の構成ファイル。詳細は、新しい構成ファイル submit.cfを参照
システムで使用する構成ファイルは、メールサービスのシステムの役割によって異なります。
メールホストやメールゲートウェイを設定するには、main.cf ファイルをコピーし、/etc/mail ディレクトリでファイル名を sendmail.cf に変更します。次に、 sendmail の構成ファイルを再構成して、リレーメールプログラムを設定して、メール設定に必要なホストパラメータをリレーします。 作業手順については、第 22 章「メールサービス (手順)」 の メールサービスの設定 (作業マップ) または sendmail.cf 構成ファイルの構築 (手順) を参照してください。
次に、サイトの要求に応じて変更が可能な構成パラメータをいくつか説明します。
以下の情報を指定する時間値
読み取りのタイムアウト。Timeout オプションの変更点を参照してください。
メッセージが送信者に返送されるまで、配信されずにキューに置かれる時間。キューの新しい機能を参照してください。作業マップについては、キューディレクトリの管理 (作業マップ)を参照してください。
メール配信の速度を指定する配信 (delivery) モード
長いメッセージ、多くの受信者へのメッセージ、および長時間ダウンしているサイトへのメッセージを配信しないことにより、ビジー期間中の効率を高めるためのロード制限
別名を保守するには、以下のファイル、マップ、またはテーブルを使用します。
別名を保守する方法は、誰が使用し、誰が変更するかによって決まります。別名のタイプにはそれぞれ固有の形式要件があります。
関連する作業については、第 22 章「メールサービス (手順)」の メール別名ファイルの管理 (作業マップ)を参照してください。
.mailrc ファイルのリストに入っている別名には、ファイルを所有するユーザーしかアクセスできません。この制限により、ユーザーは自分で制御し、所有者だけが使用できる別名を作成できます。.mailrc ファイルの別名は、次のようになります。
alias aliasname value value value ... |
aliasname は、ユーザーがメールの送信時に使用する名前であり、value は有効な電子メールアドレスです。
ユーザーが scott に個人的な別名を作成し、それがネームサービスの scott の電子メールアドレスと一致しない場合、そのユーザーが作成したメールにユーザーが返信しようとするときに、メールが間違ったユーザーに転送されることになります。これを回避するには、別の別名命名方式を使用する以外にありません。
/etc/mail/aliases ファイルで作成したいずれの別名も、その別名の名前とファイルを含んでいるシステムのホスト名を知っているユーザーなら誰でも使用できます。ローカルの /etc/mail/aliases ファイルの配布リストは、以下のようになります。
aliasname: value,value,value ... |
aliasname は、ユーザーがこの別名にメールを送信するときに使用する名前で、value は有効な電子メールアドレスになります。
ご使用のネットワークがネームサービスを実行していない場合は、各システムの /etc/mail/aliases ファイルにすべてのメールクライアントのエントリを入れておく必要があります。各システムのファイルを編集するか、1 つのシステムのファイルを編集してからそのファイルを他のシステムに個々にコピーします。
/etc/mail/aliases ファイルの別名は、テキスト形式で保存されます。/etc/mail/aliases ファイルを編集するときには、newaliases プログラムを実行する必要があります。このプログラムは、データベースをコンパイルし直し、sendmail プログラムが別名をバイナリ形式で使用できるようにします。作業手順については、第 22 章「メールサービス (手順)」の ローカルメール別名ファイルを設定する方法を参照してください。 それ以外の場合、Solaris 管理コンソールの「メーリングリスト」機能を使ってローカルの /etc ファイルに保存されているメール別名を管理できます。
別名を作成できるのは、ローカル名、つまり現在のホスト名に対してだけ、またはホスト名は指定できません。 たとえば、システム saturn 上にメールボックスを持っているユーザー ignatz に対する別名エントリは、以下のエントリを /etc/mail/aliases ファイル内に持っています。
ignatz: ignatz@saturn |
各メールサーバーに管理アカウントを作成する必要があります。管理アカウントを作成するには、メールサーバーのメールボックスを root に割り当て、root のエントリを /etc/mail/aliases ファイルに追加します。たとえば、システム saturn がメールボックスサーバーの場合は、エントリ root: sysadmin@saturn を /etc/mail/aliases ファイルに追加します。
通常は、root ユーザーだけがこのファイルを編集できます。ただし、Administration を使用する場合は、sysadmin グループであるグループ 14 のすべてのユーザーが、ローカルファイルを変更できます。または、以下のエントリを作成します。
aliasname: :include:/path/aliasfile |
aliasname は、ユーザーがメールを送信するときに使用する名前であり、/path/aliasfile は別名リストを含むファイルへの完全パスになります。別名ファイルには、各行に 1 つの電子メールエントリを入れ、その他の表記は付けないでください。
user1@host1 user2@host2 |
/etc/mail/aliases に追加のメールファイルを定義して、ログやバックアップコピーの管理もできます。以下のエントリでは、filename の aliasname に送信されるすべてのメールを格納します。
aliasname: /home/backup/filename |
また、メールを他のプロセスにルーティングすることもできます。次の例のように入力すると、メールメッセージのコピーが filename 内に格納され、コピーが出力されます。
aliasname: "|tee -a /home/backup/filename |lp" |
作業マップについては、第 22 章「メールサービス (手順)」 の メール別名ファイルの管理 (作業マップ) を参照してください。
ローカルドメインのすべてのユーザーは、NIS aliases マップのエントリを使用できます。 sendmail プログラムは、ローカルの /etc/mail/aliases ファイルの代わりに NIS aliases マップを使って送信アドレスを決定できるからです。詳細は、nsswitch.conf(4) のマニュアルページを参照してください。
NIS aliases マップの別名は、以下のようになります。
aliasname: value,value,value ... |
aliasname は、ユーザーがメールを送信するときに使用する名前であり、value は有効な電子メールアドレスです。
NIS aliases マップには、すべてのメールクライアント用のエントリを含めてください。一般にこれらのエントリを変更できるのは、NIS マスターの root ユーザーだけです。この種の別名は頻繁に変更される場合には適していません。次の構文例のように、他の別名ファイルをポイントする場合には役立ちます。
aliasname: aliasname@host |
aliasname はユーザーがメールを送信するときに使用する名前であり、host は /etc/mail/alias ファイルを含むサーバー用のホスト名です。
作業手順については、第 22 章「メールサービス (手順)」の NIS mail.aliases マップを設定する方法を参照してください。
NIS+ mail_aliases テーブルには、名前が含まれており、それによってローカルドメインにおけるシステムや個人が登録されています。 sendmail プログラムは、ローカルの /etc/mail/aliases ファイルの代わりに NIS+ mail_aliases テーブルを使用して、メールアドレスを決定できます。詳細は、aliasadm(1M) と nsswitch.conf(4) のマニュアルページを参照してください。
NIS+ mail_aliases テーブルの別名は次のようになります。
alias: expansion # ["options " # "comments"] |
表 23–12 に、NIS+ mail_aliases テーブルの 4 つの列を示します。
表 23–12 NIS+ mail_aliases テーブルの列
列 |
説明 |
---|---|
alias |
別名の名前 |
expansion |
sendmail の /etc/mail/aliases ファイルに現れる別名の値または別名のリスト |
options |
今後の使用のために予約された列 |
comments |
個々の別名のコメントのための列 |
NIS+ mail_aliases テーブルには、すべてのメールクライアントのエントリを含めてください。NIS+ aliases テーブルでは、aliasadm コマンドで、エントリの表示、作成、変更、および削除ができます。aliasadm コマンドを使用するには、aliases テーブルを所有する NIS+ グループのメンバーでなければなりません。作業手順については、第 22 章「メールサービス (手順)」の NIS+ mail_aliases テーブルの別名エントリを管理する方法を参照してください。 Solaris 管理コンソールの「メーリングリスト」機能を使用して NIS+ メール別名を管理することもできます。
新規の NIS+ aliases テーブルを作成する場合は、エントリを作成する前にテーブルを初期設定する必要があります。テーブルが存在するときは、初期設定は不要です。
ホームディレクトリに .forward ファイルを作成すれば、sendmail およびその他のプログラムは、メールのリダイレクトや送信にこのファイルを使用できます。以下の節を参照してください。
作業マップについては、第 22 章「メールサービス (手順)」の .forward ファイルの管理 (作業マップ)を参照してください。
以下に、容易に回避または修復できる状況を示します。
メールが宛先のアドレスに配信されない場合は、ユーザーの .forward ファイルをチェックします。ユーザーが host1 のホームディレクトリに .forward ファイルを置いている場合があります。この場合、メールは user@host2 に転送されます。host2 にメールが着信すると、sendmail は NIS または NIS+ 別名に user があるかどうかを確認し、メッセージを user@host1 に返送します。これによってループが発生し、メールのバウンスが増加します。
セキュリティの問題を予防するために、.forward ファイルは決して root または bin アカウントに入れないでください。必要な場合は、代わりに aliases ファイルを使ってメールを転送してください。
メール配信で .forward ファイルを有効に使用するために、アクセス権などの以下の設定が正しく適用されていることを確認します。
.forward ファイルへの書き込みは、ファイルの所有者に制限されます。この制限によって、他のユーザーに対するセキュリティを確保できます。
ホームディレクトリのパスは root だけが所有し、root だけが書き込めるようにする必要があります。たとえば、.forward ファイルが /export/home/terry にある場合、 /export および /export/home は root が所有し、root だけが書き込めるようにします。
また実際のホームディレクトリに書き込めるのは、そのユーザーだけでなければなりません。
.forward ファイルをシンボリックリンクにすることはできません。また、複数のハードリンクを持つこともできません。
.forward.hostname ファイルを作成すれば、特定のホストに送信されるメールをリダイレクトできます。たとえば、ユーザーの別名が sandy@phoenix.example.com から sandy@example.com に変更された場合は、sandy のホームディレクトリに .forward.phoenix ファイルを置きます。
% cat .forward.phoenix sandy@example.com "|/usr/bin/vacation sandy" % cat .vacation.msg From: sandy@example.com (via the vacation program) Subject: my alias has changed My alias has changed to sandy@example.com. Please use this alias in the future. The mail that I just received from you has been forwarded to my new address. Sandy |
この例では、メールが正しい宛先に転送され、送信者には別名の変更が通知されます。vacation プログラムではメッセージファイルは 1 つしか使用できないため、この場合 1 回につき 1 つのメッセージしか実行できません。ただし、メッセージが特定のホストに限定されない場合、.forward ファイルで複数のホストに同じ休暇メッセージファイルを使用できます。
転送メカニズムの拡張機能にはこの他に、.forward+detail ファイルがあります。detail 文字列には、演算子文字を除く任意の文字を使用できます。演算子文字とは、.:%&!^[]+ です。この種のファイルを使用すれば、他のユーザーが電子メールアドレスを無断で使用しているかどうかを確認できます。たとえば、あるユーザーが、誰かに電子メールアドレス sandy+test1@example.com を使用するように指示した場合、ユーザーは、この別名に配信されるメールを、アドレスに送信されるメールの中から識別できます。デフォルトにより、sandy+test1@example.com の別名に送信されたメールはすべて、この別名と .forward+detail ファイルと突き合わせて検査されます。ここで一致しない場合は、そのメールは最終的に sandy@example.com に配信されますが、ユーザーは、これらのメールの To: ヘッダ内の変更箇所を調べることができます。
このファイルは、sendmail のための初期設定用オプションを保存し、ホストをアップグレードしたときにオプションが除去されないようにするために使用します。次の変数を使用することができます。
クライアントデーモンで使用する追加オプションを選択します。クライアントデーモンは、クライアントだけのキュー (/var/spool/clientmqueue) の内容を確認し、クライアントキューランナーとして動作します。構文の確認は行われないため、この変数を変更するときは間違えないように注意してください。
CLIENTQUEUEINTERVAL には、QUEUEINTERVAL オプションと同様に、メールキューの実行間隔を設定します。ただし、CLIENTQUEUEINTERVAL オプションは、マスターデーモンではなくクライアントデーモンの機能を制御します。一般に、マスターデーモンはすべてのメッセージを SMTP ポートに配信できます。ただし、メッセージ負荷が高すぎる場合、またはマスターデーモンが実行されていない場合、メッセージはクライアントだけのキューである /var/spool/clientmqueue に入ります。次に、クライアントだけのキューをチェックするクライアントデーモンがクライアントキューを処理します。
SMTP クライアントとサーバーが、定期的なキューの実行を待たずに即座に対話を実行できるようにします。サーバーは、指定されたホストに送信されるキューを即座に配信できます。詳細は、etrn(1M) のマニュアルページを参照してください。
sendmail を起動するためのモードを選択します。-bd オプションを使用するか、未定義のままにしておきます。
マスターデーモンで使用される追加オプションを選択します。構文の確認は行われないため、この変数を変更するときは間違えないように注意してください。
マスターデーモンのメールキューの実行間隔を設定します。# は正の整数とし、その後に秒の場合は s、分の場合は m、時の場合は h、日の場合は d、週の場合は w を付けます。この構文は sendmail の起動前に確認されます。この間隔が負の場合、またはエントリの最後の文字が不適当な場合、この間隔は無視され、sendmail は 15 分のキュー間隔で起動します。
キューを実行するたびに新しいキューランナーを作成する代わりに、各実行の間に休止する単一の永続的なキューランナーを使用できるようにします。このオプションに設定可能な値は p だけです。p 以外に設定すると、このオプションは無効になります。