Solaris のシステム管理 (基本編)

バックアップスケジュールを設定する際のガイドライン

「バックアップスケジュール」とは、ufsdump コマンドを実行するように設定するスケジュールです。この節では、バックアップスケジュールの作成時に検討すべき要素に関するガイドラインを説明します。また、バックアップスケジュールの例もいくつか紹介します。

バックアップスケジュールは、以下の点を考慮に入れて作成します。

バックアップ頻度

バックアップに費やす時間とメディアの数を最小限度に抑える必要がない場合は、完全バックアップを毎日実行してもかまいません。しかし、多くのサイトの場合、このようなバックアップ方法は現実的ではないので、ほとんどの場合は増分バックアップが使用されます。その場合は、サイトが過去 4 週間分のバックアップからファイルを十分復元できるようにしてください。そのためには、少なくとも 1 週分ごとに 1 組ずつ、合計 4 組のテープが必要です。各組のテープを毎月使い回すことになります。また、少なくとも 1 年分の月別のバックアップを保存する必要があります。そして、数年分の年度別バックアップを保管しておく必要があります。

バックアップの用語と定義

次の表に、バックアップの用語および定義を示します。

用語 

定義 

スナップショット 

ファイルシステムの一時イメージを作成する。 

完全バックアップ 

ファイルシステムまたはディレクトリの完全なコピーを作成する。 

増分バックアップ 

指定したファイルシステムのファイルのうち、前回のバックアップ以降に変更されたファイルだけをコピーする。増分バックアップには、次の種類がある。 

  • 日単位累積 – 月曜日に 1 日分のファイル変更をコピーする。次に、月曜日のバックアップを火曜日、水曜日のように、各曜日のファイル変更で上書きしていく。

  • 日単位増分 – 1 日分のファイル変更をコピーする。つまり、月曜日、火曜日のように、各曜日の変更の差分テープを記録していく。

  • 週単位累積 – その週に変更されたファイルをコピーする。前の週のファイル変更も残しておく。

  • 週単位増分 – 前の週のバックアップ以降に変更されたファイルをコピーする。

バックアップスケジュールに関するその他の推奨事項

次の表に、バックアップスケジュールに関するその他の推奨事項を示します。

表 46–6 バックアップスケジュールに関するその他の推奨事項

必要なファイル復元操作 

バックアップ間隔 

コメント 

各ファイルの別バージョン (ワード処理に使用するファイルシステムなど) を復元する必要がある 

作業日ごとに日単位増分バックアップを実行する 

日単位増分バックアップには同じテープを再利用しない 

このスケジュールでは、その日に変更があったすべてのファイルが保存されるだけでなく、下のレベルの最後のバックアップ以降に変更があったファイルがディスク上に残る。ただし、このスケジュールの場合は、毎日異なるテープを使用する必要がある。このように運用しないと、必要なバージョンのファイルを復元できなくなることがあるためである。 

たとえば、火曜日に変更があったファイルが木曜日にも変更されると、金曜 日の下のレベルのバックアップでは、火曜日の夜ではなく木曜日の夜に変更されたように見える。ユーザーが火曜日のバージョンを必要とする場合には、火曜日 (または水曜日) のバックアップテープを保存しておかなければ、それを復元できない。また、火曜日と水曜日には存在したファイルが木曜日に削除されても、金曜日の下のレベルのバックアップには表示されない。 

ファイルシステム全体を短時間で復元する必要がある 

下位のレベルのバックアップを頻繁に実行する 

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同じサーバー上で多数のファイルシステムのバックアップを作成する 

ファイルシステムごとにスケジュールをずらすことを検討する 

この方法では、すべてのレベル 0 のバックアップを同じ日に実行しないことになる 

テープの本数を最小限に抑える 

1 週間に実行する増分バックアップのレベルを上げる 

毎日の変更のみが各日単位テープに保存される 

 

週末に実行するバックアップのレベルを上げる。日単位と週単位の増分バックアップを同じテープに入れる 

変更は (月単位ではなく) 週単位でしか週単位テープに保存されない 

 

日単位と週単位の増分バックアップを同じテープに入れる 

この操作には、ufsdump の 'no rewind' オプションを使用する。たとえば、/dev/rmt/0n のように指定する

ダンプレベルを使用して増分バックアップを作成する

ufsdump コマンドで指定するダンプレベル (0–9) によって、どのファイルのバックアップが作成されるかが決まります。ダンプレベル 0 を指定すると、完全バックアップが作成されます。増分バックアップのスケジュール設定にレベル 1 から 9 までの番号が使用されますが、特に意味が定義されているわけではありません。レベル 1 から 9 は、累積バックアップまたは個別バックアップのスケジュール設定に使用する番号の範囲にすぎません。レベル 1 から 9 までが意味するのは、大小による相互関係だけです。下位ダンプレベル番号を使用した場合は、常に完全バックアップまたは累積バックアップが再開されます。次の例で、1 から 9 までのレベルを使用する増分ダンプの手順を示します。

例—日単位累積バックアップのダンプレベル

日単位の累積増分バックアップを実行するのが、もっとも一般に使用されるバックアップスケジュールで、ほとんどの場合に推奨できます。次の例で、月曜日から木曜日までレベル 9 のダンプを使用し、金曜日にはレベル 5 のダンプを使用してプロセスを再開するスケジュールを示します。

図 46–1 増分バックアップ: 日単位累積

この図は、月曜日から金曜日までの日単位累積バックアップで、必要なテープの量が増加していくことを示しています。

前の例では、1 から 9 までの範囲内で他の番号を使用しても同じ結果が得られます。ポイントは、月曜日から木曜日まで同じ番号を使用し、金曜日にはそれより「小さい」番号を使用することです。たとえば、レベル 4、4、4、4、2 や 7、7、7、7、5 を指定してもかまいません。

例—日単位増分バックアップのダンプレベル

次の例で、1 日分の作業内容のみを別々のテープ上で保存するスケジュールを示します。このようなバックアップは、日単位増分バックアップと呼ばれます。この場合、月曜日から木曜日までは連続するダンプレベル番号 (3、4、5、6) を使用し、金曜日にはそれより小さい番号 (2) を使用します。金曜日はレベル番号が小さいので、プロセスが再開されます。

図 46–2 増分バックアップ: 日単位増分

この図は、月曜日から金曜日までの日単位個別バックアップで、必要なテープ量はほぼ均一であることを示しています。

前の例では、連番 6、7、8、9 の次に 2 を使用しても、5、6、7、8 の次に 3 を使用してもかまいません。番号自体の意味は定義されていません。この例が示しているように、連続した番号を並べることによって、それらの番号に意味が生まれます。