Solaris 9 9/04 インストールガイド

第 38 章 Solaris Live Upgrade (例)

この章では、ブート環境を作成したあと、新しいブート環境を更新およびアクティブ化して、これを新たな稼動環境にする例を示します。この章の内容は次のとおりです。

Solaris Live Upgrade によるアップグレードの使用例 (コマンド行インタフェース)

この例では、Solaris 7 リリースを使用しているシステムで、lucreate コマンドを使用して新しいブート環境を作成します。この新しいブート環境は、luupgrade コマンドを使用して Solaris 9 にアップグレードされ、 次に、luactivate コマンドによってアクティブ化されます。この節では、以前のブート環境にフォールバックする例も示します。

アクティブブート環境で Live Upgrade をインストールする

  1. Solaris DVD または Solaris SOFTWARE 2 of 2 CD を挿入します。

  2. 使用しているメディアに合わせて操作を行います。

    • Solaris DVD を使用している場合は、インストーラのあるディレクトリに移動し、インストーラを実行します。


      # cd /cdrom/cdrom0/Solaris_9/Tools/Installers
      # ./liveupgrade20
      

      Solaris Web Start インストーラが表示されます。

    • Solaris SOFTWARE 2 of 2 CD を使用している場合は、トップディレクトリにあるインストーラを実行します。


      % ./installer
      

      Solaris Web Start インストーラが表示されます。

  3. 「インストール形式の選択 (Select Type of Install)」パネルで「カスタム (Custom)」をクリックします。

  4. 「ロケールの選択 (Locale Selection)」パネルで、インストールする言語をクリックします。

  5. インストールするソフトウェアを選択します。

    • DVD の場合、「コンポーネントの選択 (Component Selection)」パネルの「次へ (Next)」をクリックしてパッケージをインストールします。

    • CD の場合、「製品の選択 (Product Selection)」パネルの Solaris Live Upgrade の項目で「デフォルトインストール (Default Install)」をクリックします。

  6. Solaris Web Start の指示に従って、ソフトウェアをインストールします。

ブート環境を作成する

-c オプションを使用して、ソースブート環境に c0t4d0s0 という名前を付けます。ソースブート環境の名前設定は最初のブート環境を作成するときだけ必要です。-c オプションによる名前付けの詳細は、手順 2 を参照してください。

新しいブート環境の名前は c0t15d0s0 です。-A オプションを用いて、このブート環境名に関連付けられる説明を作成します。

ルート ( /) ファイルシステムを新しいブート環境にコピーし、 ソースブート環境のスワップスライスは共有せずに、新しいスワップスライスを作成します。


# lucreate -A 'BE_description' -c c0t4d0s0 -m /:/dev/dsk/c0t15d0s0:ufs \
-m -:/dev/dsk/c0t15d0s1:swap -n c0t15d0s0

非アクティブブート環境をアップグレードする

非アクティブブート環境の名前は c0t15d0s0 です。アップグレードに使用されるオペーレティングシステムイメージはネットワークから取得します。


# luupgrade -n c0t15d0s0 -u -s /net/ins-svr/export/Solaris_9 \
combined.solaris_wos

ブート環境がブート可能か確認する

lustatus コマンドは、ブート環境の作成が完了したかどうかを報告します。lustatus コマンドは、ブート環境がブート可能であるかどうかも報告します。


# lustatus
boot environment   Is        Active  Active     Can	    Copy
Name               Complete  Now	 OnReboot   Delete	 Status
------------------------------------------------------------------------
c0t4d0s0           yes       yes      yes      no      -
c0t15d0s0          yes       no       no       yes     -

非アクティブブート環境をアクティブにする

luactivate コマンドを使用して c0t15d0s0 ブート環境 をブート可能にします。続いてシステムをリブートします。これで c0t15d0s0 がアクティブブート環境になり、 c0t4d0s0 ブート環境が非アクティブになります。


# luactivate c0t15d0s0
# init 6

ソースブート環境へフォールバックする

新しいブート環境のアクティブ化の状況に応じて、次の 3 つの作業からいずれかを選択します。


例 38–1 ブート環境作成は正常に完了したが元のブート環境にフォールバックさせる場合

この例では、新しいブート環境のアクティブ化が正常に完了したにもかかわらず、元の c0t4d0s0 ブート環境をアクティブブート環境として復元しています。デバイス名は first_disk です。


# /usr/sbin/luactivate first_disk 
# init 6


例 38–2 SPARC: ブート環境のアクティブ化に失敗した場合のフォールバック

この例では、新しいブート環境のブートに失敗しています。シングルユーザーモードで元のブート環境 c0t4d0s0 からブートさせるために、OK プロンプトを表示させる必要があります。


OK boot net -s
# /sbin/luactivate first_disk
Do you want to fallback to activate boot environment c0t4d0s0 
(yes or no)? yes
# init 6

元のブート環境 c0t4d0s0 がアクティブブート環境になります。



例 38–3 SPARC: DVD、CD、またはネットワークインストールイメージを使って元のブート環境にフォールバックする

この例では、新しいブート環境のブートに失敗しています。元のブート環境からはブートできないためメディアまたはネットインストールイメージを使用する必要があります。デバイスは /dev/dsk/c0t4d0s0 です。元のブート環境 c0t4d0s0 がアクティブブート環境になります。


OK boot net -s
# fsck /dev/dsk/c0t4d0s0
# mount /dev/dsk/c0t4d0s0 /mnt 
# /mnt/sbin/luactivate
Do you want to fallback to activate boot environment c0t4d0s0 
(yes or no)? yes
# umount /mnt 
# init 6

RAID 1 ボリューム (ミラー) の一方を切り離してアップグレードする例 (コマンド行インタフェース)

この例では、次の作業の手順を示します。

図 38–1 は、3 つの物理ディスクから成る現在のブート環境を示します。

図 38–1 RAID-1 ボリューム (ミラー) の一方を切り離し、アップグレードする

この図については本文中で説明しています。

  1. ミラーを持つ新しいブート環境 second_disk を作成します。

    次のコマンドは、次のような処理を実行します。

    • lucreate コマンドにより、ルート (/) マウントポイントの UFS ファイルシステムが構成されます。d10 というミラーが作成されます。このミラー d10 に、現在のブート環境のルート (/) ファイルシステムがコピーされます。ミラー d10 にあるデータはすべて上書きされます。

    • 2 つのスライス c0t1d0s0 および c0t2d0s0 は、サブミラーとして指定されています。これら 2 つのサブミラーは、ミラー d10 に接続されます。


    # lucreate -c first_disk -n second_disk \
    -m /:/dev/md/dsk/d10:ufs,mirror \
    -m /:/dev/dsk/c0t1d0s0:attach \
    -m /:/dev/dsk/c0t2d0s0:attach 
    
  2. ブート環境 second_disk をアクティブ化します。


    # /usr/sbin/luactivate second_disk
    # init 6
    
  3. 別のブート環境 third_disk を作成します。

    次のコマンドは、次のような処理を実行します。

    • lucreate コマンドにより、ルート (/) マウントポイントの UFS ファイルシステムが構成されます。d20 というミラーが作成されます。

    • スライス c0t1d0s0 がその現在のミラーから切り離され、ミラー d20 に追加されます。このサブミラーの内容であるルート ( /) ファイルシステムは保持され、コピー処理は発生しません。


    # lucreate -n third_disk \
    -m /:/dev/md/dsk/d20:ufs,mirror \
    -m /:/dev/dsk/c0t1d0s0:detach,attach,preserve
    
  4. フラッシュアーカイブをインストールして、新しいブート環境 third_disk をアップグレードします。アーカイブはローカルシステムに存在します。-s および -a オプションで指定するオペレーティングシステムバージョンは、どちらも Solaris 9 リリースです。third_disk 上のファイルは、共有可能ファイルを除いてすべて上書きされます。


    # luupgrade -f -n third_disk \
    -s /net/installmachine/export/Solaris_9/OS_image \
    -a /net/server/archive/Solaris_9 
    
  5. ブート環境 third_disk をアクティブ化して、このブート環境からシステムを実行します。


    # /usr/sbin/luactivate third_disk
    # init 6
    
  6. ブート環境 second_disk を削除します。


    # ludelete second_disk 
    
  7. 次のコマンドは、次のような処理を実行します。

    • ミラー d10 を消去します。

    • c0t2d0s0 の連結の数を調べます。

    • metastat コマンドで見つけた連結を、ミラー d20 に接続します。metattach コマンドは、新しく接続した連結と、ミラー d20 の連結とを同期します。連結にあるデータはすべて上書きされます。


    # metaclear d10
    metastat -p | grep c0t2d0s0
    dnum 1 1 c0t2d0s0
    metattach d20 dnum
    
    num

    metastat コマンドで見つかった連結の数。

これで、新しいブート環境 third_disk がアップグレードされ、この環境からシステムが実行されます。third_disk には、ミラー化されたルート (/) ファイルシステムが含まれています。

図 38–2 は、上記の例のコマンドでミラーを切り離してアップグレードする手順の全体を示しています。

図 38–2 RAID-1 ボリューム (ミラー) の一方を切り離し、アップグレードする (続き)

この図については本文中で説明しています。

既存のボリュームから Solaris ボリュームマネージャ RAID-1 ボリュームへの移行例 (コマンド行インタフェース)

Solaris Live Upgrade では、RAID-1 ボリューム (ミラー) 上に新しいブート環境を作成できます。現在のブート環境のファイルシステムは、次のいずれかです。

ただし、新しいブート環境のターゲットは、Solaris ボリュームマネージャ RAID-1 ボリュームでなければなりません。たとえば、ルート(/) ファイルシステムのコピー用に指定するスライスは、/dev/md/dsk/rootvol となります。rootvol はルート (/) ファイルシステムを含むボリュームです。

この例では、現在のブート環境のルート (/) ファイルシステムは Solaris ボリュームマネージャボリューム以外のボリューム上にあります。新しいブート環境では、Solaris ボリュームマネージャ RAID-1 ボリュームである c0t2d0s0 上にルート(/) ファイルシステムが作成されます。lucreate コマンドは、現在のボリュームを Solaris ボリュームマネージャボリュームに移行させるコマンドです。新しいブート環境の名前は svm_be です。lustatus コマンドを使用すると、新しいブート環境のアクティブ化とリブートの準備ができているかどうかがわかります。ブート環境がアクティブ化され、現在のブート環境になります。


# lucreate -n svm_be -m /:/dev/md/dsk/d1:mirror,ufs \
 -m /:/dev/dsk/c0t2d0s0:attach
# lustatus
# luactivate svm_be
# lustatus
# init 6

空のブート環境を作成してフラッシュアーカイブをインストールする例 (コマンド行インタフェース)

以下の手順を 3 段階に分けて説明します。

lucreate コマンドは、アクティブなブート環境内のファイルシステムに基づいたブート環境を作成します。lucreate コマンドに -s - オプションを指定して実行すると、空のブート環境を短時間で作成できます。スライスは、指定のファイルシステム用に予約されていますが、ファイルシステムはコピーされません。このブート環境は、名前が付けられてはいますが、実際には、フラッシュアーカイブがインストールされる時にはじめて作成されることになります。空のブート環境にアーカイブがインストールされると、ファイルシステムは予約されたスライスにインストールされます。その後、ブート環境をアクティブ化します。

空のブート環境の作成

最初の手順で、空のブート環境を作成します。指定されたファイルシステム用にスライスが予約されますが、現在のブート環境からファイルシステムがコピーされることはありません。新しいブート環境の名前は second_disk です。


# lucreate  -s - -m /:/dev/dsk/c0t1d0s0:ufs \
 -n second_disk

これで、ブート環境にフラッシュアーカイブを格納する準備ができました。

図 38–3 は、空のブート環境の作成の様子を示しています。

図 38–3 空のブート環境の作成

この図については本文中で説明しています。

新しいブート環境へのフラッシュアーカイブのインストール

2 番目の手順では、前の例で作成した second_disk ブート環境に、アーカイブをインストールします。アーカイブはローカルシステムに存在します。-s および -a オプションで指定するオペレーティングシステムのバージョンは、どちらも Solaris 9 リリースです。アーカイブの名前は Solaris_9.flar です。


# luupgrade -f -n second_disk \
-s /net/installmachine/export/Solaris_9/OS_image \
-a /net/server/archive/Solaris_9.flar 

このようにして、ブート環境をアクティブにする準備が整います。

新しいブート環境のアクティブ化

最後の手順では、luactivate コマンドを使用して、second_disk ブート環境をブート可能な状態にします。続いてシステムをリブートします。これで second_disk がアクティブブート環境になります。


# luactivate second_disk
# init 6

Solaris Live Upgrade によるアップグレードの例 (キャラクタインタフェース)

この例では、Solaris 2.6 リリースを使用しているシステム上に新しいブート環境を作成しています。Solaris 9 リリースにアップグレードし、 アップグレードされたこのブート環境をアクティブにしています。

アクティブブート環境で Live Upgrade をインストールする

  1. Solaris DVD または Solaris SOFTWARE 2 of 2 CD を挿入します。

  2. インストーラを実行します。

    • Solaris DVD を使用している場合は、インストーラのあるディレクトリに移動し、インストーラを実行します。


      # cd /cdrom/cdrom0/Solaris_9/Tools/Installers
      # ./liveupgrade20
      

      Solaris Web Start インストーラが表示されます。

    • Solaris SOFTWARE 2 of 2 CD を使用している場合は、トップディレクトリにあるインストーラを実行します。


      % ./installer
      

      Solaris Web Start インストーラが表示されます。

  3. 「インストール形式の選択 (Select Type of Install)」パネルで「カスタム (Custom)」をクリックします。

  4. 「ロケールの選択 (Locale Selection)」パネルで、インストールする言語をクリックします。

  5. インストールするソフトウェアを選択します。

    • DVD の場合、「コンポーネントの選択 (Component Selection)」パネルの「次へ (Next)」をクリックしてパッケージをインストールします。

    • CD の場合、「製品の選択 (Product Selection)」パネルの Solaris Live Upgrade の項目で「デフォルトインストール (Default Install)」をクリックします。

  6. Solaris Web Start の指示に従って、ソフトウェアをインストールします。

ブート環境を作成する

この例では、ソースブート環境の名前は c0t4d0s0 です。ルート (/) ファイルシステムを新しいブート環境にコピーし、 ソースブート環境のスワップスライスは共有せずに、新しいスワップスライスを作成します。

  1. キャラクタインタフェースを表示します。


    # /usr/sbin/lu
    
    図 38–4 Solaris Live Upgrade のメインメニュー

    この画面には、Solaris Live Upgrade の行う作業と「Enter」キーおよび「Help」キーが示されています。

  2. メインメニューから「Create」を選択します。


    Name of Current Boot Environment:    c0t4d0s0
    Name of New Boot Environment:   c0t15d0s0 
    
  3. F3 を押します。

    図 38–5 Solaris Live Upgrade の「Configuration」メニュー

    この画面では、 2 つのブート環境でのファイルシステムの一覧と作業の実行に使用されるキーを示しています。

  4. 「Configuration」メニューで F2 を押して「Choices」メニューを表示します。

  5. ディスク c0t15d0 からルート (/) 用としてスライス 0 を選択します。

  6. 構成メニューで、分割するスワップスライスを選択して c0t15d0 上にスワップ用の新しいスライスを作成します。

  7. F2 を押して「Choices」メニューを表示します。

  8. 新しいスワップスライスとして、ディスク c0t15d0 からスライス 1 を選択します。

  9. F3 を押して新しいブート環境を作成します。

非アクティブブート環境をアップグレードする

アップグレードのためにネットワークからオペーレティングシステムイメージを取得します。

  1. メインメニューから「Upgrade」を選択します。


    Name of New Boot Environment:   c0t15d0s0 
    Package Media: /net/ins3-svr/export/Solaris_9/combined.solaris_wos
  2. F3 を押します。

非アクティブブート環境をアクティブにする

c0t15d0s0 ブート環境をブート可能にします。続いてシステムをリブートします。これで c0t15d0s0 がアクティブブート環境になり、 c0t4d0s0 ブート環境が非アクティブになります。

  1. メインメニューから「Activate」を選択します。


    Name of Boot Environment: c0t15d0s0
    Do you want to force a Live Upgrade sync operations: no
    
  2. F3 を押します。

  3. Return キーを押します。

  4. 次のコマンドを入力します。


    # init 6
    

フォールバックが必要な場合は、前述の例のコマンド行による作業を行います。ソースブート環境へフォールバックするを参照してください。