この節では、定足数デバイスを追加する手順について説明します。クラスタに必要な定足数投票数を確認する方法、推奨される定足数構成、障害回避などについては、『Sun Cluster の概念 (Solaris OS 版)』の「定足数と定足数デバイス」 を参照してください。
現在定足数デバイスとして構成されているディスクは、Solaris ZFS ストレージプールには追加しないでください。構成済みの定足数デバイスを Solaris ZFS ストレージプールに追加すると、ディスクは EFI ディスクとしてラベルが変更され、また定足数構成情報が失われ、ディスクはクラスタへの定足数投票を提供しなくなります。ディスクがストレージプール内に入ると、そのディスクは定足数デバイスとして構成できます。または、ディスクの構成を解除したり、ディスクをストレージプールに追加し、そのディスクを定足数デバイスとして再構成することができます。
Sun Cluster は、次の種類の定足数デバイス、SCSI、Network Appliance (NetApp) NAS、および Sun Cluster 定足数サーバー をサポートしています。これらのデバイスを追加する方法については、次の節で説明しています。
複製されたディスクを定足数デバイスとして構成することはできません。複製されたディスクを定足数デバイスとして追加しようとすると、次のエラーメッセージが表示され、その後コマンドはエラーコードとともに終了します。
Disk-name is a replicated device. Replicated devices cannot be configured as quorum devices. |
これらの作業は、Sun Cluster Manager GUI を使用しても実行できます。詳細については、Sun Cluster Manager のオンラインヘルプを参照してください。
次の手順で使用されるコマンドの詳細については、clsetup(1CL) および clquorum(1CL) のマニュアルページを参照してください。
この手順を実行するには、ノードが共有するデバイス ID (DID) によりディスクドライブを確認します。cldevice show コマンドを使用して、DID 名の一覧を参照します。詳細は、cldevice(1CL) のマニュアルページを参照してください。
この手順では、長形式の Sun Cluster コマンドを使用して説明します。多くのコマンドには短形式もあります。コマンド名の形式の長短を除き、コマンドは同一です。コマンドのリストとその短形式については、付録 A 「Sun Cluster オブジェクト指向コマンド」を参照してください。
クラスタの任意のノードで、スーパーユーザーになるか、RBAC の承認 solaris.cluster.modify を提供する役割になります。
clsetup ユーティリティーを起動します。
# clsetup |
clsetup のメインメニューが表示されます。
定足数のオプションに対応する番号を入力します。
「定足数メニュー」が表示されます。
定足数デバイスを追加するためのオプションに対応する番号を入力し、追加する定足数デバイスを確認するメッセージが表示されたら「yes」と入力します。
追加する定足数デバイスの種類を確認するメッセージが表示されます。
SCSI 定足数デバイスのオプションに対応する番号を入力します。
どのグローバルデバイスを使用するかを確認するメッセージが表示されます。
使用しているグローバルデバイスを入力します。
指定したグローバルデバイスに新しい定足数デバイスを追加するか確認を求めるメッセージが表示されます。
「yes」と入力し、新しい定足数デバイスの追加を続行します。
新しい定足数デバイスが正常に追加されると、その旨のメッセージが表示されます。
定足数デバイスが追加されていることを確認します。
# clquorum list -v |
次の例は、SCSI 定足数デバイスを追加する際に clsetup によって生成される clquorum コマンドと、検証ステップを示しています。
Become superuser or assume a role that provides solaris.cluster.modify RBAC authorization on any cluster node. [Start the clsetup utility:] # clsetup [Select Quorum>Add a quorum device] [Answer the questions when prompted.] [You will need the following information.] [Information: Example:] [SCSI device scsi] [Global device d20] [Verify that the clquorum command was completed successfully:] clquorum add d20 Command completed successfully. [Quit the clsetup Quorum Menu and Main Menu.] [Verify that the quorum device is added:] # clquorum list -v Quorums Type ------- ---- d20 scsi scphyshost-1 node scphyshost-2 node |
次に、Network Appliance (NetApp) ネットワーク接続ストレージ (NAS) デバイスを定足数デバイスとして使用する場合の要件を示します。
NetApp の iSCSI ライセンスをインストールする必要があります。
クラスタ化されたファイラを定足数デバイスとして使用する場合は、そのファイラに iSCSI LUN を構成する必要があります。
時間の同期をとるために NTP を使用するには、NetApp NAS ユニットを構成する必要があります。
クラスタ化されたファイラに選択されている NTP サーバーのうち少なくとも 1 つは、Sun Cluster ノードの NTP サーバーでなければなりません。
クラスタを起動する場合は、常にクラスタノードを起動する前に NAS デバイスを起動する必要があります。
誤った順序でデバイスを起動すると、ノードは定足数デバイスを検出できません。このような状況でノードが停止した場合、クラスタはサービスに対応できなくなる可能性があります。サービスの中断が発生した場合は、クラスタ全体を起動し直すか、NetApp NAS 定足数デバイスを削除して追加し直す必要があります。
クラスタは、各 NAS デバイスを単一の定足数デバイスにしか使用できません。
定足数デバイスがさらに必要な場合は、ほかの共有ストレージを構成できます。同じ NAS デバイスを使用するほかのクラスタは、そのデバイスの別の LUN をそれらの定足数デバイスとして使用できます。
Network Appliance NAS デバイスと LUN の構築と設定については、以下の Network Appliance NAS マニュアルを参照してください。これらのマニュアルは、http://now.netapp.com で利用できます。
作業 |
Network Appliance のマニュアル |
---|---|
NAS デバイスの設定 |
『System Administration File Access Management Guide』 |
LUN の設定 |
『Host Cluster Tool for Unix Installation Guide』 |
ONTAP ソフトウェアのインストール |
『Software Setup Guide』、『Upgrade Guide』 |
クラスタのボリュームのエクスポート |
『Data ONTAP Storage Management Guide』 |
クラスタノードへの NAS サポートソフトウェアパッケージのインストール |
http://now.netapp.com にログインし、「Software Download」ページから『Host Cluster Tool for Unix Installation Guide』をダウンロードしてください。 |
Sun Cluster 環境で NetApp NAS ストレージデバイスをインストールする方法については、Sun Cluster のマニュアル『Sun Cluster 3.1 - 3.2 With Network-Attached Storage Devices Manual for Solaris OS 』 参照してください。
この手順では、長形式の Sun Cluster コマンドを使用して説明します。多くのコマンドには短形式もあります。コマンド名の形式の長短を除き、コマンドは同一です。コマンドのリストとその短形式については、付録 A 「Sun Cluster オブジェクト指向コマンド」を参照してください。
すべての Sun Cluster ノードがオンライン状態であり、クラスタ化された NetApp ファイラと通信が行えることを確認します。
クラスタの任意のノードで、スーパーユーザーになるか、RBAC の承認 solaris.cluster.modify を提供する役割になります。
clsetup ユーティリティーを起動します。
# clsetup |
clsetup のメインメニューが表示されます。
定足数のオプションに対応する番号を入力します。
「定足数メニュー」が表示されます。
定足数デバイスを追加するためのオプションに対応する番号を入力します。定足数デバイスを追加することを確認するには、「yes」と入力します。
追加する定足数デバイスの種類を確認するメッセージが表示されます。
netapp_nas 定足数デバイスのオプションに対応する番号を入力します。netapp_nas 定足数デバイスを追加することを確認するには、「yes」と入力します。
新しい定足数デバイスの名前を入力するようにメッセージが表示されます。
追加する定足数デバイスの名前を入力します。
定足数デバイスの名前は任意に選択できます。この名前は、今後の管理コマンドの処理だけに使用されるものです。
新しい定足数デバイスのファイラの名前を入力するようにメッセージが表示されます。
新しい定足数デバイスのファイラの名前を入力します。
この名前には、ネットワークアクセスが可能なファイラ名またはファイラのアドレスを指定してください。
ファイラの LUN ID を指定するようにメッセージが表示されます。
ファイラの定足数デバイス LUN の ID を入力します。
ファイラに新しい定足数デバイスを追加するか確認を求めるメッセージが表示されます。
「yes」と入力し、新しい定足数デバイスの追加を続行します。
新しい定足数デバイスが正常に追加されると、その旨のメッセージが表示されます。
定足数デバイスが追加されていることを確認します。
# clquorum list -v |
次の例は、NetApp NAS 定足数デバイスを追加する際に clsetup によって生成される clquorum コマンドを示しています。またこの例では検証ステップも示します。
Become superuser or assume a role that provides solaris.cluster.modify RBAC authorization on any cluster node. [Start the clsetup utility:] # clsetup [Select Quorum>Add a quorum device] [Answer the questions when prompted.] [You will need the following information.] [Information: Example:] [Quorum Device Netapp_nas quorum device] [Name: qd1] [Filer: nas1.sun.com] [LUN ID: 0] [Verify that the clquorum command was completed successfully:] clquorum add -t netapp_nas -p filer=nas1.sun.com,-p lun_id=0 qd1 Command completed successfully. [Quit the clsetup Quorum Menu and Main Menu.] [Verify that the quorum device is added:] # clquorum list -v Quorums Type ------- ---- qd1 netapp_nas scphyshost-1 node scphyshost-2 node |
Sun Cluster 定足数サーバー を定足数デバイスとして追加するには、Sun Cluster 定足数サーバー ソフトウェアがホストマシン上にインストールされ、定足数サーバーが起動され実行中である必要があります。定足数サーバーのインストールと起動についての詳細は、『Sun Cluster 定足数サーバーユーザーズガイド』を参照してください。
この手順では、長形式の Sun Cluster コマンドを使用して説明します。多くのコマンドには短形式もあります。コマンド名の形式の長短を除き、コマンドは同一です。コマンドのリストとその短形式については、付録 A 「Sun Cluster オブジェクト指向コマンド」を参照してください。
クラスタの任意のノードで、スーパーユーザーになるか、RBAC の承認 solaris.cluster.modify を提供する役割になります。
すべての Sun Cluster ノードがオンライン状態であり、Sun Cluster 定足数サーバーと通信が行えることを確認します。
クラスタノードに直接接続されているネットーワークスイッチが次に示す条件のいずれかを確実に満たすようにしてください。
スイッチは Rapid Spanning Tree Protocol (RSTP) をサポートしています。
高速ポートモードは、スイッチ上で有効です。
クラスタノードと定足数サーバー間で確実に即時通信できるようにするためにこれらの機能のいずれかが必要になります。スイッチによってこの通信に大幅な遅延が生じる場合、クラスタはこの通信妨害を定足数デバイスの損失と解釈します。
パブリックネットワークで CIDR (Classless Inter-Domain Routing) とも呼ばれる可変長のサブネットが使用されている場合、各ノードで次に示すファイルを変更します。
RFC 791 に定義されているクラスフルサブネットを使用する場合、次の手順を実行する必要はありません。
クラスタ内の各ノード上で、定足数サーバーのホスト名を /etc/inet/hosts ファイルまたは /etc/inet/ipnodes ファイルに追加します。
次のように、ホスト名とアドレスのマッピングをファイルに追加します。
ipaddress qshost1 |
定足数サーバーが実行中であるコンピュータの IP アドレス。
定足数サーバーが実行中であるコンピュータのホスト名。
ネーミングサービスを使用する場合、定足数サーバーのホスト名とアドレスのマッピングをネームサービスデータベースに追加します。
clsetup ユーティリティーを起動します。
# clsetup |
clsetup のメインメニューが表示されます。
定足数のオプションに対応する番号を入力します。
「定足数メニュー」が表示されます。
定足数デバイスを追加するためのオプションに対応する番号を入力します。定足数デバイスを追加することを確認するには、「yes」と入力します。
追加する定足数デバイスの種類を確認するメッセージが表示されます。
quorum-server 定足数デバイスのオプションに対応する番号を入力します。quorum-server 定足数デバイスを追加することを確認するには、「yes」と入力します。
新しい定足数デバイスの名前を入力するようにメッセージが表示されます。
追加する定足数デバイスの名前を入力します。
定足数デバイスの名前は任意に選択できます。この名前は、今後の管理コマンドの処理だけに使用されるものです。
新しい定足数デバイスのファイラの名前を入力するようにメッセージが表示されます。
定足数サーバーのホストの名前を入力します。
この名前で、定足数サーバーが動作するマシンの IP アドレス、またはネットワーク上のマシンのホスト名を指定します。
ホストの IPv4 または IPv6 構成に応じて、マシンの IP アドレスを /etc/hosts ファイル、/etc/inet/ipnodes ファイル、またはその両方で指定します。
指定したマシンはすべてのクラスタノードから到達可能で、定足数サーバーをマシン上で実行してある必要があります。
clsetup ユーティリティーは、定足数サーバーのポート番号を入力するようメッセージを表示します。
クラスタノードとやり取りする際に定足数サーバーが使用するポート番号を入力します。
新しい定足数デバイスを追加するか確認を求めるメッセージが表示されます。
「yes」と入力し、新しい定足数デバイスの追加を続行します。
新しい定足数デバイスが正常に追加されると、その旨のメッセージが表示されます。
定足数デバイスが追加されていることを確認します。
# clquorum list -v |
次の例は、定足数サーバー定足数デバイスを追加する際に clsetup によって生成される clquorum コマンドを示しています。またこの例では検証ステップも示します。
Become superuser or assume a role that provides solaris.cluster.modify RBAC authorization on any cluster node. [Start the clsetup utility:] # clsetup [Select Quorum>Add a quorum device] [Answer the questions when prompted.] [You will need the following information.] [Information: Example:] [Quorum Device quorum_server quorum device] [Name: qd1] [Host Machine Name: 10.11.124.84] [Port Number: 9001] [Verify that the clquorum command was completed successfully:] clquorum add -t quorum_server -p qshost=10.11.124.84,-p port=9001 qd1 Command completed successfully. [Quit the clsetup Quorum Menu and Main Menu.] [Verify that the quorum device is added:] # clquorum list -v Quorums Type ------- ---- qd1 quorum_server scphyshost-1 node scphyshost-2 node -- Quorum Summary -- Quorum votes possible: 5 Quorum votes needed: 3 Quorum votes present: 5 -- Quorum Votes by Node -- Node Name Present Possible Status --------- ------- -------- ------ Node votes: phys-schost-1 1 1 Online Node votes: phys-schost-2 1 1 Online -- Quorum Votes by Device -- Device Name Present Possible Status ----------- ------- -------- ------ Device votes: qd1 1 1 Online Device votes: /dev/did/rdsk/d3s2 1 1 Online Device votes: /dev/did/rdsk/d4s2 1 1 Online |