この節では、クラスタ環境への Solaris ソフトウェアのインストールを計画するうえでの、次のガイドラインを説明します。
Solaris ソフトウェアの詳細については、Solaris のインストールマニュアルを参照してください。
Solaris ソフトウェアは、ローカルの DVD-ROM から、あるいは JumpStartTM によるインストール方法でネットワークインストールサーバーからインストールできます。また Sun Cluster では、JumpStart インストール方法を使用して、Solaris OS と Sun Cluster ソフトウェアを同時にインストールするカスタマイズ方法もあります。複数のクラスタノードをインストールする場合は、ネットワークインストールを検討してください。
scinstall JumpStart インストール方法の詳細については、「Solaris と Sun Cluster ソフトウェアをインストールする (JumpStart)」を参照してください。Solaris の標準的なインストール方法の詳細については、Solaris のインストールマニュアルを参照してください。
Sun Cluster 構成で Solaris OS を使用する場合は、次の点に注意してください。
Solaris 10 ゾーン - Sun Cluster フレームワークソフトウェアは、大域ゾーンにのみインストールします。
Sun Cluster データサービスを非大域ゾーンに直接インストールできるかどうかについては、データサービスのマニュアルを参照してください。
クラスタノードで非大域ゾーンを構成する場合、ループバックファイルシステム (LOFS) を有効にする必要があります。その他の注意事項については、LOFS の情報を参照してください。
ループバックファイルシステム (LOFS) - Solaris 9 バージョンの Sun Cluster ソフトウェアによるクラスタ作成中、LOFS 機能はデフォルトで無効になります。Solaris 10 バージョンの Sun Cluster ソフトウェアでクラスタを作成中、LOFS 機能はデフォルトでは有効になっています。
クラスタが次の条件の両方を満たす場合、スイッチオーバーの問題やその他の障害を防ぐために、LOFS を無効にする必要があります。
Sun Cluster HA for NFS が高可用ローカルファイルシステムに構成されている。
automountd デーモンが稼働している。
クラスタがこれらの条件の 1 つだけしか満たさない場合、LOFS を有効にしても安全です。
LOFS と automountd デーモンの両方を有効にする必要がある場合は、Sun Cluster HA for NFS によってエクスポートされる高可用ローカルファイルシステムに含まれるファイルをすべて自動マウンタマップから除外してください。
インタフェースグループ - Solaris インタフェースグループ機能は、Sun Cluster 構成ではサポートされません。Solaris のインタフェースグループ機能は、Solaris ソフトウェアのインストール中にデフォルトで無効に設定されます。Solaris インタフェースグループ機能は有効にしないでください。Solaris インタフェースグループについての詳細は、ifconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。
省電力シャットダウン - 省電力のための自動シャットダウンは、Sun Cluster 構成ではサポートされないため、有効にしないでください。詳細は、pmconfig(1M) および power.conf(4) のマニュアルページを参照してください。
IP フィルタ - Sun Cluster ソフトウェアは、スケーラブルサービスでは Solaris IP Filter 機能をサポートしませんが、フェイルオーバーサービスでは Solaris IP Filter をサポートします。
fssnap - Sun Cluster ソフトウェアは、UFS の機能である fssnap コマンドをサポートしません。ただし、Sun Cluster ソフトウェアによって制御されないローカルシステム上で fssnap コマンドを使用できます。fssnap サポートには、次の制限が適用されます。
fssnap コマンドは、Sun Cluster ソフトウェアによって管理されていないローカルファイルシステム上でサポートされています。
fssnap コマンドは、クラスタファイルシステムではサポートされていません。
fssnap コマンドは、HAStoragePlus によって制御されるローカルファイルシステムではサポートされていません。
Sun Cluster 3.2 2/08 ソフトウェアには少なくとも End User Solaris ソフトウェアグループが必要です。ただし、クラスタ構成の他のコンポーネントによっては、独自の Solaris ソフトウェアが必要となる場合があります。どの Solaris ソフトウェアグループをインストールするかを決定する際には、次の点を考慮してください。
サーバー - 使用するサーバーのマニュアルを参照し、Solaris ソフトウェアの必要条件を確認してください。たとえば、Sun EnterpriseTM 10000 サーバーには、Entire Solaris Software Group Plus OEM Support が必要です。
SCI-PCI アダプタ - SPARC ベースのクラスタでのみ使用可能な SCI-PCI アダプタ、または Remote Shared Memory Application Programming Interface (RSMAPI) を使用する場合は、必ず RSMAPI ソフトウェアパッケージ (SUNWrsm と SUNWrsmo。SPARC ベースプラットフォームで Solaris 9 OS を使用する場合は、さらに SUNWrsmx と SUNWrsmox) をインストールしてください。RSMAPI ソフトウェアパッケージは、一部の Solaris ソフトウェアグループのみに含まれます。たとえば、Developer Solaris ソフトウェアグループは、RSMAPI ソフトウェアパッケージを含みますが、End User Solaris ソフトウェアグループは、このパッケージを含みません。
インストールするソフトウェアグループが、RSMAPI ソフトウェアパッケージを含まない場合は、RSMAPI ソフトウェアパッケージを手動でインストールしてから、Sun Cluster ソフトウェアをインストールしてください。手動でソフトウェアパッケージをインストールするには、pkgadd(1M) コマンドを使用します。RSMAPI の使用方法についてはセクション (3RSM) のマニュアルページを参照してください。
追加の Solaris パッケージ - End User Solaris ソフトウェアグループに含まれていないほかの Solaris ソフトウェアパッケージのインストールが必要になる場合があります。Apache HTTP サーバパッケージがその例です。ORACLE® などの Sun 以外のソフトウェアの場合も、追加の Solaris ソフトウェアパッケージが必要になる場合があります。Solaris ソフトウェアの必要条件については、各製品のマニュアルを参照してください。
Solaris ソフトウェアパッケージを手動でインストールしなくてすむようにするには、Entire Solaris Software Group Plus OEM Support をインストールしてください。
適切な 「ローカルファイルシステム配置のワークシート」に、次の情報を追加してください。
Solaris OS をインストールするときは、必要な Sun Cluster パーティションを作成し、すべてのパーティションが各領域の最小必要条件を満たすようにします。
スワップ –Solaris と Sun Cluster ソフトウェアを合わせて 750M バイト以上を割り当てます。最適な結果を得るには、Solaris OS に必要とされるスワップに少なくとも 512M バイトを Sun Cluster ソフトウェア用に追加します。さらに、クラスタノード上で実行されるアプリケーションが必要とする追加の swap を割り当てます。
追加の swap ファイルを作成する場合は、グローバルデバイス上に swap ファイルを作成しないでください。ローカルディスクだけをノードの swap デバイスとして使用します。
/globaldevices – scinstall(1M)ユーティリティーがグローバルデバイスのために使用する少なくとも 512 M バイトのファイルシステムを作成します。
ボリュームマネージャー – ボリュームマネージャーで使用するために、スライス 7 に 20 M バイトのパーティションを作成します。クラスタで VERITAS Volume Manager (VxVM) を使用しており、ルートディスクをカプセル化する予定の場合は、VxVM で使用できるように、2 つの未使用スライスを用意します。
Solaris OS を対話的にインストールする場合は、上記の必要条件を満たすためにパーティションをカスタマイズする必要があります。
追加のパーティションを計画する際の情報については、次のガイドラインを参照してください。
Solaris OS を実行するほかのシステムと同様、ルート (/)、/var、/usr、/opt の各ディレクトリは、別個のファイルシステムとして構成できます。または、ルート (/) ファイルシステムにすべてのディレクトリを含めることもできます。次に、Sun Cluster 構成でのルート (/), /var, /usr、/opt の各ディレクトリのソフトウェアの内容を示します。パーティション分割案を計画するときは、次の情報を検討してください。
ルート (/) – Sun Cluster ソフトウェア自体は、ルート (/) ファイルシステムの領域を 40M バイト未満しか占有しません。Solaris Volume Manager ソフトウェアが必要とする領域は 5M バイト未満、VxVM ソフトウェアは 15M バイト未満です。十分な追加領域と i ノード容量を構成するには、一般的にルート (/) ファイルシステムに割り当てる容量に、100M バイト以上を追加します。この領域は、ブロック特殊デバイスと文字特殊デバイスの両方を作成するために、ボリューム管理ソフトウェアによって使用されます。クラスタ内に多数の共有ディスクがある場合は、特に、十分な領域を割り当てる必要があります。
/var – Sun Cluster ソフトウェアは、インストール時には /var ファイルシステム領域をわずかしか占有しません。ただし、ログファイル用に十分な領域を別途用意しておく必要があります。また、クラスタ化されたノードでは、標準的なスタンドアロンサーバーよりも、ログに記録されるメッセージが増えることがあります。したがって、/var ファイルシステムには最低でも 100M バイトの余裕を設けてください。
/usr – Sun Cluster ソフトウェアは、/usr ファイルシステムの領域を 25M バイト未満占有します。Solaris Volume Manager および VxVM ソフトウェアが必要とする領域は、それぞれ 15M バイト未満です。
/opt – Sun Cluster フレームワークソフトウェアは、/opt ファイルシステムの領域を 2M バイト未満使用します。ただし、各 Sun Cluster データサービスで 1M から 5M バイトが使用されることがあります。Solaris Volume Manager ソフトウェアは /opt ファイルシステムの領域をまったく使用しません。VxVM ソフトウェアは、そのパッケージとツールをすべてインストールした場合、40M バイト以上を使用することがあります。
また、ほとんどのデータベースおよびアプリケーションソフトウェアは、/opt ファイルシステムにインストールされます。
SPARC: Sun Management Center ソフトウェアを使用してクラスタを監視する場合、Sun Management Center エージェントと Sun Cluster モジュールパッケージをサポートするために、ノードごとに 25M バイトの追加の空間が必要です。
Sun Cluster ソフトウェアでは、グローバルデバイスの管理に使用するローカルディスクのいずれかに、専用のファイルシステムを別途用意しておく必要があります。このファイルシステムは、通常ルートディスクに置かれます。ただし、論理ボリュームマネージャーのボリュームなどのように、グローバルデバイスのファイルシステムを置く別のストレージを使用する場合は、このファイルシステムを Solaris Volume Manager 共有ディスクセットの一部やルートのディスクグループ以外の VxVM ディスクグループの一部にしてはいけません。このファイルシステムは、後にクラスタファイルシステムとしてマウントされます。このファイルシステムには、scinstall(1M) コマンドで認識されるデフォルトの名前 /globaldevices を付けます。
scinstall コマンドは、あとでファイルシステム /global/.devices/node@nodeid の名前を変更します。 ここで、nodeid は、クラスタメンバーになったときにノードに割り当てられる番号を表します。元の /globaldevices マウントポイントは、削除されます。
/globaldevices ファイルシステムには、ブロック特殊デバイスと文字特殊デバイスの両方を作成するための十分な領域と十分な i ノード容量が必要です。このガイドラインは、クラスタ内に多数のディスクがある場合に、特に重要です。通常のクラスタ構成の場合、ファイルシステムのサイズは 512M バイトで十分です。
Solaris Volume Manager ソフトウェアを使用する場合、状態データベースの複製の作成に使用できるように、ルートディスク上にスライスを別途用意しておく必要があります。つまり、各ローカルディスク上に、複製のためのスライスを別に用意します。ただし 1 つのノードにローカルディスクが 1 つしかない場合は、Solaris Volume Manager ソフトウェアが正しく動作するように、同じスライス内に 3 つの状態データベースの複製を作成する必要が生じることがあります。詳細については、Solaris Volume Manager のマニュアルを参照してください。
VxVM (VERITAS Volume Manager) を使用しており、ルートディスクをカプセル化する予定の場合は、VxVM で使用できるように、2 つの未使用スライスを用意します。さらに、ディスクの始点または終点に若干の割り当てられていない空き領域が必要になります。ルートディスクのカプセル化については、VxVM のマニュアルを参照してください。
表 1–2 に、750 M バイト未満の物理メモリーを持つクラスタノードのパーティション分割案を示します。この案では、End User Solaris ソフトウェアグループ、Sun Cluster ソフトウェア、および Sun Cluster HA for NFS データサービスをインストールします。ディスク上の最後のスライスであるスライス 7 には、ボリューム管理ソフトウェア用に若干の量を割り当てます。
この配置は、Solaris Volume Manager ソフトウェアまたは VxVM ソフトウェアの使用を意図したものです。Solaris Volume Manager ソフトウェアを使用する場合は、状態データベースの複製用にスライス 7 を使用します。VxVM を使用する場合は、スライスに 0 の長さを割り当てることで、後でスライス 7 を解放できます。この配置によって 必要な 2 つの空きスライス 4 と 7 が確保され、ディスクの終端に未使用領域が確保されます。
表 1–2 ファイルシステム割り当ての例
スライス |
内容 |
割り当てサイズ |
説明 |
---|---|---|---|
0 |
/ |
6.75GB |
スライス 1 から 7 にディスク容量を割り当てた後の、残りの空き容量。Solaris OS、Sun Cluster ソフトウェア、データサービスソフトウェア、ボリューム管理ソフトウェア、Sun Management Center エージェントおよび Sun Cluster モジュールエージェントパッケージ、ルートファイルシステム、データベースおよびアプリケーションソフトウェアに使用します。 |
1 |
swap |
1GB |
512M バイト - Solaris OS 用 512M バイト - Sun Cluster ソフトウェア用 |
2 |
オーバーラップ |
8.43GB |
ディスク全体 |
3 |
/globaldevices |
512MB |
このスライスは、Sun Cluster ソフトウェアによって後で別のマウントポイントに割り当てられ、クラスタファイルシステムとしてマウントします。 |
4 |
未使用 |
- |
VxVM でルートディスクをカプセル化するための空きスライスとして確保します。 |
5 |
未使用 |
- |
- |
6 |
未使用 |
- |
- |
7 |
ボリューム管理ソフトウェア |
20MB |
Solaris Volume Manager ソフトウェアにより状態データベースの複製用に使用するか、スライス解放後に VxVM によってインストールの際に使用します。 |
クラスタ内の Solaris 10 ゾーンの目的と機能についての詳細は、『Sun Cluster の概念 (Solaris OS 版)』の「Sun Cluster ノードでの Solaris ゾーンのサポート」を参照してください。
クラスタノードで、 Solaris 10 非大域ゾーン (あるいは単に「ゾーン」と呼ぶ) を作成する場合、次の点に注意してください。
一意のゾーン名 - ゾーン名はノード内で一意である必要があります。同一ノード上で複数のゾーンに同じ名前を指定しないでください。
複数のノードでのゾーン名の再使用 - クラスタ管理を簡単にするために、対象となるリソー スグループに含まれるゾーンに対して、ノード間で同じ名前を使用することができます。
プライベート IP アドレス - クラスタで使用できるよりも多くのプライベート IP アドレスを使用しようとしないでください。
マウント - グローバルマウントをゾーンに含めないでください。ループバックマウントだけを含めてください。
フェイルオーバーサービス - 複数ノードのクラスタでは、Sun Cluster ソフトウェアはフェイルオーバーリソースグループのノードリストに、同じノードの異なるゾーンを指定できますが、これが便利なのはテスト中だけです。単一ノードでノードリスト内のすべてのゾーンをホストする場合、ノードはそのリソースグループの単一障害点になります。可用性を最大にするために、フェイルオーバーリソースグループのノードリストのゾーンは、別のノードに置く必要があります。
単一ノードのクラスタでは、フェイルオーバーリソースグループのノードリストで複数のゾーンを指定しても機能的なリスクはありません。
スケーラブルサービス - 同じノードの同じスケーラブルサービスで使用する非大域ゾーンを作成しないでください。スケーラブルサービスの各インスタンスは、別々のクラスタノードで実行する必要があります。
LOFS - Solaris ゾーンでは、ループバックファイルシステム (LOFS) を有効にする必要があります。ただし、Sun Cluster HA for NFS データサービスでは、スイッチオーバーの問題やその他の障害を避けるために、LOFS を無効にする必要があります。クラスタで非大域ゾーンと Sun Cluster HA for NFS の両方を構成する場合、データサービスの問題の発生を防ぐために次のいずれかの手順を実行してください。
automountd デーモンを無効にします。
Sun Cluster HA for NFS からエクスポートされた高可用ローカルファイルシステムに含まれるすべてのファイルをオートマウンタマップから除外します。