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Sun ONE Directory Server 5.2 配備ガイド



第 8 章   ディレクトリの監視

Directory Server の配備を成功させるには、効果的な監視とイベント管理の戦略が必要です。この戦略は、監視対象となるイベント、使用するツール、そのイベントが発生した場合に実行するアクションを定義します。発生しがちなイベントについて対策を用意しておくことで、サービスの停止やレベル低下を防ぎ、可用性とサービスの品質を向上することができます。

監視とイベント管理の戦略には、レプリケーション設定などの具体的なアーキテクチャコンポーネントを含める必要があり、また、システムとネットワークの監視も含める必要があります。この章では、効果的な監視戦略に何を含めるかについて説明し、Sun ONE Directory Server の監視機能について解説します。



システムとネットワークの監視は Sun ONE Directory Server に固有の話題ではないので、この章では詳しく触れません。



この章は、次の節から構成されています。

監視およびイベント管理戦略の定義

ここでは、監視とイベント管理の戦略を定義するための手順の概要について説明します。効果的な監視の定義手順は、次の段階に分けることができます。

  1. 適切な管理ツールを選択します。オペレーティングシステムのツール、Sun ONE Directory Server の監視ツール、サードパーティ製の監視ツールを使用できます。
  2. 監視対象となるパフォーマンス指標をディレクトリアーキテクチャから選択します (多くの場合、これはサイズ設定属性と調整属性です)。
  3. 監視ツールを使用してパフォーマンス指標を監視する場合に、イベントまたはアラーム状態を始動する条件を定義します。つまり、パフォーマンスの受容可能レベル、または各パフォーマンス指標に対する処理を定義します。
  4. アラーム状態が発生したときに実行するアクションを決定します。

Directory Server の監視ツール

ここでは、Directory Server で使用できる監視ツールと、Directory Server のアクティビティの監視に利用できるその他のツールについて、概要を説明します。次節で説明する主要パフォーマンス指標は、これらのツールを使用して、またはツールを組み合わせて、すべて監視できます。

  • コマンド行ツール
  • コマンド行監視ツールには、ディスク使用量などのパフォーマンスを監視するオペレーティングシステムに固有のツール、ディレクトリに格納されているサーバー統計を収集する ldapsearch などの LDAP ツール、サードパーティ製ツール、カスタムシェル、Perl スクリプトが含まれます。

  • Directory Server ログ
  • Sun ONE Directory Server で使用できるアクセスログ、監査ログ、エラーログには、監視に利用できる情報が豊富に含まれます。これらのログを手動で監視したり、カスタムスクリプトを使用して解析することで、配備に関連する監視情報を抽出できます。ログ情報へのアクセスに使用する Sun ONE スクリプトについては、『Sun ONE DSRK Tools Reference』を参照してください。ログファイルの表示と設定については、『Sun ONE Directory Server 管理ガイド』の「Managing Log Files」を参照してください。

  • Directory Server コンソール
  • Sun ONE Directory Server コンソールでは、ディレクトリの動作をリアルタイムにグラフィカルユーザーインタフェースで確認できます。このコンソールは、リソースサマリー、現在のリソース使用状況、接続状態、グローバルデータベースキャッシュ情報など、一般的なサーバー情報を提供します。また、データベースのタイプと状態、エントリキャッシュ統計、キャッシュ情報、データベース内の各インデックスに関連する情報など、一般的なデータベース情報も提供します。さらに、コンソールには接続と各連鎖サフィックスで実行される操作に関する情報も表示されます。

  • レプリケーション監視ツール
  • Sun ONE Directory Server のレプリケーション監視ツールを使用することで、次の操作を実行できます。

    • マスターレプリカと 1 つまたは複数のコンシューマレプリカの間の同期状態を監視する
    • 複数の異なるレプリカの間で同じエントリを比較することで、レプリケーションの状態を確認する
    • 完全なレプリケーショントポロジを描写する (これは複雑なディレクトリ配備で特に有用です)

  • SNMP (Simple Network Management Proocol)
  • Directory Server は、SNMP (Simple Network Management Proocol) による監視をサポートしています。SNMP は、グローバルネットワーク制御と監視のための標準メカニズムで、ネットワーク管理者はネットワーク管理作業を一元的に行えます。

    SNMP と Directory Server がサポートする SNMP 管理対象オブジェクトについては、「SNMP による監視」を参照してください。SNMP の設定方法については、『Sun ONE Directory Server 管理ガイド』の「Monitoring Directory Server Using SNMP」の章を参照してください。

Directory Server の監視

監視とイベント管理の戦略を定義する上で最も重要な手順は、ディレクトリアーキテクチャ上の 1 つまたは複数のコンポーネントで監視する、主要パフォーマンス指標を決定することです。何を監視対象とし、それをどの程度監視するかは、配備によって大きく異なります。

ここでは、監視対象となるパフォーマンス指標について説明します。説明する内容は次のとおりです。



  • ディレクトリの cn=monitor 分岐内の監視情報に対して ldapsearch コマンドを実行するときは、ユーザーは認証を受け、情報にアクセスするための適切な権限を持っている必要があります。監視戦略を定義するには、このようなアクセス権限の取得が前提条件となります。
  • システムが効率的に稼動し、Directory Serverに悪影響を生じていないことを確認する上で、Sun ONE Directory Server が稼動するオペレーティングシステム環境を監視することは重要ですが、これは Sun ONE Directory Server に固有の話題ではないので、この章では詳しく触れません。詳細は、オペレーティングシステムのマニュアルを参照してください。


Directory Server アクティビティの監視

Directory Server では、さまざまな方法でサーバーの状態を監視できます。たとえば、次のような方法があります。

  • Sun ONE コンソールの「サーバーおよびアプリケーション」タブには、インストール日、バージョン、サーバーの状態 (起動されているかどうか)、ポート番号など、サーバーに関する一般的な情報が表示されます。
  • Directory Server コンソールでは、これ以外の情報も確認することができます。このコンソールの「状態」タブには、次の情報が表示されます。
    • 起動時刻とサーバーの現在の時刻
    • 接続、開始および終了された捜査、クライアントに送信されたエントリとバイト数の詳細を示すリソースサマリー
    • アクティブスレッド、開いている接続と利用できる接続、クライアントからの読み取りを待つスレッドの数、使用中のデータベースの数など、現在のリソース使用状況に関する情報
    • 接続が開かれた日時、開始および終了された接続の数、クライアントがサーバーへのバインドに使用する識別名、接続の状態 (ブロック、または非ブロック)、接続の種類 (LDAP または DSML) など、開いているすべての接続に関する情報

    Directory Server コンソールで利用できるパフォーマンスカウンタについては、『Sun ONE Directory Server 管理ガイド』の「Monitoring Your Server From the Directory Server コンソール」を参照してください。

  • cn=monitor,cn=config エントリに対して ldapsearch コマンドを実行すると、Directory Server コンソールの「状態」タブに表示される情報と同じ情報を取得できます。一部の情報は、ldapsearch コマンドを実行するユーザーがディレクトリ管理者としてバインドしている場合にだけ表示されます。このアクセス制限を解除するには、この情報に関連付けられているアクセス制御を設定し直す必要があります。cn=monitor,cn=config の下に格納されているパフォーマンスカウンタについては、『Sun ONE Directory Server 管理ガイド』の「Monitoring Your Server From the Command Line」を参照してください。
  • UNIX システムでは、ps コマンドを実行すると、現在稼動しているプロセスが表示されます。これにより、Directory Server slapd デーモンの稼動状態を確認することができます。詳細については、ps(1) マンページ、またはオペレーティングシステムに付属するコマンド行ツールのマニュアルを参照してください。
  • ldapsearch コマンド行ユーティリティを使用して、Directory Server が要求に応答しているかどうかを確認することができます。時間のかかる、インデックス付けされていない検索を避け、ベースレベルの検索を行います。複数のデータベースがあるときは、各データベースサフィックスへの LDAP クエリーを作成し、データベースがオンライン状態にあり、応答しているかどうかを確認することができます。
  • サーバーの動作を監視に Directory Server のアクセスログを使用して、Directory Server が稼動しているかどうかを確認することができます。アクセスログの内容と接続コードについては、『Sun ONE Directory Server Reference Manual』の「Access Logs and Connection Codes」を参照してください。
  • Directory Server のエラーログには、サーバーの起動と停止の状態が記録されます。この情報に基づいて、サーバーが稼動しているかどうかを確認することができます。ログファイルの表示と設定については、『Sun ONE Directory Server 管理ガイド』の「Managing Log Files」を参照してください。

データベースアクティビティの監視

データベースのアクティビティを監視することは、データベースがオンラインの状態にあり、必要になったときに確実にアクセスできることを確認する上で有効です。データベースの監視情報にアクセスするには、cn=config 分岐の特定の領域に対して ldapsearch コマンドを実行します。表 8-1 は、提供される監視情報の種類と、cn=config 分岐の対応領域を示しています。

表 8-1    cn=config 内のデータベース監視情報ソース

情報の領域

対応する cn=config の分岐

データベースの一般情報

cn=database,cn=monitor,cn=ldbm database,
 cn=plugins,cn=config

データベースのキャッシュ情報

cn=monitor,cn=ldbm database,cn=plugins,cn=config

特定のデータベースインスタンスの情報

cn=monitor,cn=suffixName,cn=ldbm database,
 cn=plugins,cn=config

連鎖サフィックスの情報

cn=monitor,cn=suffixName,cn=chaining database,
 cn=plugins,cn=config

次に、データベース監視情報の領域について、さらに詳しく説明します。

  • cn=database,cn=monitor,cn=ldbm database,dn=plugins,cn=config 分岐は、キャッシュへのアクセス、トランザクション、ロック、ログの情報を提供します。Directory Server の設定属性の完全なリストについては、『Sun ONE Directory Server Reference Manual』の「Core Server Configuration」の章および「Plug-in Implemented Server Functionality」の章を参照してください。
  • 監視する一般データベース情報は、配備するディレクトリに固有の要件によって異なります。たとえば、Directory Server が複数のトランザクションを同時に処理することが多い場合は、一度に並行して処理できるトランザクションの最大数の監視が必要になるかもしれません。この値 (nsslapd-db-max-txns 属性によって定義されます) が、許容されている最大トランザクション数 (nsslapd-db-configured-txns 属性によって定義されます) に達した場合に操作の失敗を防ぐには、許容される最大トランザクション数を増やす必要があります。

  • データベースのキャッシュとインデックス付けのパフォーマンスを監視するときは、Directory Server コンソールの「状態」タブを使用するか、次の分岐で ldapsearch コマンドを実行します。
  • cn=monitor,cn=ldbm  database,cn=plugins,cn=config および cn=monitor,cn=suffixName,cn=ldbm database,cn=plugins,cn=config

    関連する設定属性の完全なリストについては、『Sun ONE Directory Server Reference Manual』の「Core Server Configuration Attributes」の章および「Plug-in Implemented Server Functionality」の章を参照してください。

  • cn=monitor,cn=suffixName,cn=chaining database,cn=plugins,cn=config 分岐は、接続、LDAP、および実行中のバインド操作、バインド解除操作に関する情報を提供します。この情報は、Directory Server コンソールの「状態」タブにも表示されます。

ディスクの状態の監視

ディスク容量を効果的に監視することで、ディスクリソースの不足に関連する問題を防止できます。cn=disk,cn=monitor エントリにより、次の監視情報が提供されます。

  • データベースインスタンスへのパス。同一ディスクに複数のデータベースインスタンスが存在する場合、またはインスタンスが同一ディスク上の複数のディレクトリを参照する場合は、短いパス名が表示される
  • サーバーが利用できるディスク容量 (M バイト単位)
  • ディスクの状態。正常 (normal)、残量低下 (low)、残量なし (full) で表される。この状態は、利用可能容量、および「low」、「full」の警告を始動するためのしきい値によって決定される

cn=disk,cn=monitor 属性、およびディスク容量の 2 つのしきい値については、『Sun ONE Directory Server Reference Manual』の「Core Server Configuration Attributes」および「Plug-in Implemented Server Functionality」を参照してください。

レプリケーションアクティビティの監視

レプリケーション状態の監視は、グローバルな監視戦略では重要な要素です。レプリケーションの問題の可能性を早く認識できるほど、問題を迅速に解決し、正しいレプリケーション動作を再開できます。

Sun ONE Directory Server 5.2 には、レプリケーション機能のさまざまな側面を監視する 3 つの監視ツールが用意されています。レプリケーション監視ツールは LDAP クライアントとして機能し、標準接続またはセキュリティ保護された接続 (LDAPS) を介して使用できます。次の 3 種類のレプリケーション監視ツールは次のとおりです。

insync

insync ツールは、マスターレプリカと 1 つまたは複数のコンシューマレプリカの間の同期状態を示します。競合の可能性を管理する場合は、同期のレベルに注意する必要があります。

entrycmp

entrycmp ツールを使用することで、複数の異なるサーバー上の同一エントリを比較することができます。マスターレプリカからエントリが取得され、エントリの nsuniqueid を使用して指定コンシューマから同じエントリを取得します。エントリの属性と値が比較され、どちらも同じであれば、これらのエントリは同一であると見なされます。



insync ツールと entrycmp ツールを実行するマシンは、指定されたすべてのホストにアクセスできる必要があります。ファイアウォール、VPN、またはネットワーク設定上のその他の理由からホストにアクセスできない場合、これらのツールを使用することは困難になります。同じ理由で、レプリケーション監視ツールを実行する前に、すべてのサーバーが起動され、稼動していることを確認してください。



repldisc

repldisc ツールを使用することで、レプリケーショントポロジを推測することができます。トポロジの推測は、1 つのサーバーから始まり、トポロジ内のすべての既知のサーバーをグラフ化することで行われます。次に、repldisc ツールはトポロジを示す隣接マトリクスを出力します。このレプリケーショントポロジ推測ツールは、配備したグローバルトポロジを思い出すことが難しい、大規模で複雑な配備で便利です。



  • レプリケーション監視ツールを使用するときは、ホストをすべてを記号名で指定するか、またはすべてを IP アドレスで指定します。2 つを組み合わせた場合、問題が生じる可能性が高くなります。
  • SSL が有効な状態でレプリケーション監視ツールを実行するときは、ツールの実行対象サーバーには、トポロジ内の他のサーバーが使用するすべての証明書のコピーが保持されている必要があります。
  • これらのツールは LDAP クライアントベースであるため、サーバーへの認証と、cn=config に対する読み取りアクセス権を持つバインド DN が必要となります。これらのツールの詳細な設定方法と、SSL が有効な状態での使用については、『Sun ONE Directory Server 管理ガイド』の「Monitoring Replication Status」を参照してください。


レプリケーション監視ツールについては、『Sun ONE Directory Server Reference Manual』の「Replication Monitoring Tools」を参照してください。

インデックス付けの効率の監視

インデックス付けは、書き込み (インデックス作成時) と読み取り (ディレクトリ検索時) のパフォーマンスに影響します。このため、書き込みと読み取りのパフォーマンスのバランスを適切に保つには、インデックス付けの効率を監視することが重要です。効果的なインデックス付け戦略により、不要なインデックスをなくし、クライアントアプリケーションで必要なインデックスだけを維持することができます。

インデックス付けの効率は、次の方法で監視できます。

  • アクセスログを調べ、インデックスのない検索が完了するまでの時間を監視することで、不釣合いな時間を消費した、インデックスのない検索を識別することができます。アクセスログには、検索とそのフィルタに関する情報も記録されています。これに基づいて、インデックスを作成することでパフォーマンスを向上できるかどうかを判断できます。
  • Directory Server コンソールの「状態」タブでは、サフィックスまたは連鎖サフィックスごとに最も頻繁に使用されたインデックスを監視できます。これは、インデックスの使用が何回試みられ、何回成功したかを示します。cn=monitor,cn=suffixName,cn=ldbm database,cn=plugins,cn=config 分岐に対して ldapsearch コマンドを実行しても同じ監視情報が得られます。
  • 設定されているインデックスのリストは、Directory Server コンソールの「設定」タブに表示されます (「Data」 > 「suffixName」ノードの下)。前述の頻繁に使用されるインデックスと、設定されているインデックスのリストを比較することで、リソースを不必要に消費しているインデックスを特定し、それを削除するかどうかを決定できます。エントリにインデックス付けされた属性が含まれ、インデックスが使用されていない場合、そのインデックスを削除するとパフォーマンスが向上します。

アクセスログの内容と接続コードについては、『Sun ONE Directory Server Reference Manual』の「Access Logs and Connection Codes」を参照してください。Directory Server の設定属性の完全なリストについては、『Sun ONE Directory Server Reference Manual』の「Core Server Configuration」の章および「Plug-in Implemented Server Functionality」の章を参照してください。

セキュリティの監視

配備のセキュリティの監視は、安全にアクセスできるディレクトリにとって不可欠です。受容可能なセキュリティレベルを維持する上で、Directory Server を次のように監視することをお勧めします。

  • バインド試行の失敗数の監視は、ディレクトリへの侵入試行に関する警告となります。SNMP エージェントが稼動している場合は、cn=snmp,cn=config の下にあるSNMP 管理対象オブジェクトカウンタ dsBindSecurityErrors に対して ldapsearch を実行することで、バインド試行の失敗を監視できます。
  • アクティビティが行われていない、開いている接続の数の監視は、サービス拒否攻撃の可能性に関する警告となります。現在の接続数と完了した操作の数は、Directory Server コンソールの「状態」タブ、または cn=monitor の下にある属性を検索することで確認できます。
  • 新しい実効権限機能を使用することで、クライアントはディレクトリのエントリと属性に対して持つアクセス制御権を照会できます。ユーザーがアクセス権を照会できるようになったことで、ユーザーの管理、アクセス制御ポリシーの検証、設定内容の決定が容易になりました。
  • 実効権限機能は、日々の操作としてではなく、定期的に使用されることが多いと考えられます。実効権限については、「実効権限に関する情報の取得」を参照してください。

SNMP による監視

SNMP はグローバルなネットワーク制御と監視のための標準メカニズムです。SNMP を使用することで、ネットワーク管理者はネットワーク管理作業を一元的に行い、さまざまなデバイスをリアルタイムで監視することができます。ここでは、SNMP を使用して Directory Server の操作を監視する方法について説明します。説明する内容は次のとおりです。

SNMP について

SNMP は、ネットワークアクティビティに関するデータを交換するために使用されるプロトコルです。SNMP を使用すると、管理対象デバイスと、ユーザーがネットワークをリモート管理する NMS (ネットワーク管理ステーション) の間で、データが移動します。管理対象デバイスは、ホスト、ルータ、Directory Server など、SNMP が稼動するすべてのデバイスです。NMS とは通常、1 つ以上のネットワーク管理アプリケーションが稼動する強力なワークステーションを指します。ネットワーク管理アプリケーションは、管理対象デバイスに関する情報 (どのデバイスが有効または無効か、どのエラーメッセージをいくつ受け取ったか、など) を、多くの場合はグラフィカルに表示します。

情報は、サブエージェントとマスターエージェントの 2 種類のエージェントを使用して、NMS と管理対象デバイスの間で転送されます。サブエージェントは、管理対象デバイスに関する情報を収集し、その情報をマスターエージェントに渡します。Sun ONE Directory Server にはサブエージェントがあります。マスターエージェントは、各種サブエージェントと NMS の間で情報を交換します。マスターエージェントは、通信先のサブエージェントと同じホストマシン上で動作します。

ホストマシンには、複数のサブエージェントをインストールできます。たとえば、Directory Server、Enterprise Server、および Messaging Server をすべて同じホスト上にインストールした場合、これらの各サーバーのサブエージェントは、同一のマスターエージェントと通信します。Windows 環境では、マスターエージェントは Windows オペレーティングシステムによって提供される SNMP サービスです。UNIX 環境では、マスターエージェントは Sun ONE 管理サーバーと一緒にインストールされます。

照会可能な SNMP 属性の値は、管理対象デバイス上に保持され、必要に応じて NMS に報告されます。各属性は管理対象オブジェクトと呼ばれ、エージェントはこのオブジェクトにアクセスし、これを NMS に送ることができます。管理対象オブジェクトはすべて、ツリーのような階層を持つデータベースである MIB (管理情報ベース) に定義されています。この階層の最上位には、ネットワークに関する一般的な情報が含まれています。下位の各階層には、個々のネットワーク領域に関するより詳細な情報が含まれています。

SNMP は、PDU (プロトコルデータ単位) の形式でネットワーク情報を交換します。PDU には、管理対象デバイス上に格納された変数に関する情報が含まれています。これらの変数は管理対象オブジェクトとも呼ばれ、必要に応じて NMS に報告される値と名前を保持しています。NMS と管理対象デバイスとの間の通信は、次の 2 つのどちらかの方法で行われます。

次に、Sun ONE Directory Server がサポートしている NMS 主導の通信について説明します。

NMS 主導の通信

これは、NMS と管理対象デバイス間の通信で、最も一般的なタイプの通信です。このタイプの通信では、NMS は管理対象デバイスから情報を要求するか、または管理対象デバイス上に格納された変数の値を変更します。

NMS によって開始される SNMP セッションは、次のように実行されます。

  1. NMS が、どの管理対象デバイスおよびオブジェクトに監視が必要であるかを判断します。
  2. NMS が、マスターエージェントを介して、PDU を管理対象デバイスのサブエージェントに送ります。この PDU は、管理対象デバイスから情報を要求するか、または管理対象デバイス上に格納された変数の値を変更するようサブエージェントに指示します。
  3. 管理対象デバイスのサブエージェントが、マスターエージェントから PDU を受け取ります。
  4. NMS から送られた PDU が変数に関する情報を要求するものである場合、サブエージェントはマスターエージェントにその情報を送り、マスターエージェントは別の PDU として NMS に情報を送り返します。次に、NMS が、この情報を文字またはグラフィック形式で表示します。
  5. NMS から送られた PDU が、変数に値を設定するようサブエージェントに要求するものである場合、サブエージェントは変数値を要求のとおりに設定します。

Sun ONE Directory Server での SNMP 監視

Directory Server は、次の 2 つの方法による SNMP 監視をサポートしています。

  • SNMP エージェント経由の監視。SNMP 属性は統計ファイルにマッピングされ、SNMP エージェントが照会されるたびにこのファイルが読み取られる。Directory Server が稼動していない場合は、この統計ファイルは存在しない
  • ldapsearch コマンド行ユーティリティによる監視。SNMP 属性は cn=snmp,cn=monitor エントリの下に格納される。次の ldapsearch コマンドを実行すると、Directory Server のすべての SNMP 属性がリスト表示される
  • ldapsearch -h host -p port -s base -b "cn=snmp,cn=monitor"  "objectclass=*"

図 8-1 は、Directory Server から SNMP 監視情報を取得する 2 つの方法を示しています。

図 8-1    Directory Server での SNMP 監視
ldapsearch コマンドと SNMP エージェントを使用して、Directory Server から SNMP 監視情報を取得する方法

MIB の定義場所および SNMP の使用方法については、『Sun ONE Directory Server 管理ガイド』の「Monitoring Directory Server Using SNMP」の章を参照してください。

Sun ONE Directory Server がサポートする SNMP 管理対象オブジェクトは、Directory Server Monitoring MIB RFC 2605 の初期草案に基づいています。SNMP エージェントから返される SNMP 操作管理オブジェクトは、ldapsearch コマンドによって返される SNMP 監視属性と同じです。これらの属性については、『Sun ONE Directory Server Reference Manual』の「Monitoring Attributes」を参照してください。SNMP エージェントから返される属性の名前には、ds という接頭辞が付けられます。

操作管理オブジェクトに加え、Sun ONE Directory Server は監視対象の Directory Server とピア Directory Server の間の対話に関連する管理対象オブジェクトもサポートしています。表 8-2 は、これらのオブジェクトを示しています。

表 8-2    サポートされている対話関連の SNMP 管理対象オブジェクト

管理対象オブジェクト

説明

dsTimeOfCreation

Directory Server とピア Directory Server の間の (試行された) 対話の詳細を含むエントリが作成された時点の、システム起動からの経過時間の値。エントリが、管理ネットワークサブシステムの初期化以前に作成された場合、このオブジェクトの値はゼロとなる

dsTimeOfLastAttempt

この Directory Server へのアクセスが最後に試みられた時点の、システム起動からの経過時間の値。最後の試行が、管理ネットワークサブシステムの初期化以前に行われていた場合、このオブジェクトの値はゼロとなる

dsTimeOfLastSuccess

この Directory Server へのアクセスが最後に成功した時点の、システム起動からの経過時間の値。すべての試行が成功しなかった場合、このオブジェクトの値はゼロとなる。最後に成功した試行が、管理ネットワークサブシステムの初期化以前に行われていた場合、このオブジェクトの値はゼロとなる

dsFailuresSinceLastSuccess

この Directory Server への最後に成功した接続試行以後の失敗回数。成功した試行がない場合は、このオブジェクトの値は、このエントリの作成以後の失敗回数となる

dsFailures

このエントリの作成以後に行われたピア Directory Server へのアクセス失敗の累積回数

dsSuccesses

このエントリの作成以後に行われたアクセス成功の累積回数

dsURL

ピア Directory Server の URL

Sun ONE Directory Server は、Directory Server の現在のインストールに関する情報を含む、エンティティ関連の管理対象オブジェクトもサポートしています。表 8-3 は、これらの管理対象オブジェクトを示しています。

表 8-3    サポートされているエンティティ関連の SNMP 管理対象オブジェクト

管理対象オブジェクト

説明

dsEntityDescr

インストールされている Directory Server の一般的な説明テキスト

dsEntityVers

Directory Server のバージョン

dsEntityOrg

Directory Server のこのインストールの責任組織

dsEntityLocation

この Directory Server の物理的な場所。ホスト名、ビル名、番号、研究所番号など

dsEntityContact

インストールされている Directory Server の責任者と連絡先情報

dsEntityName

インストールサイトによって Directory Server のインストールに割り当てられた名前


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