Directory Server Enterprise Edition では、バイナリバックアップと、LDIF ファイルへのバックアップという 2 つの方法でデータをバックアップできます。どちらの方法にも利点と制限があるため、効果的なバックアップ戦略を計画するには、それぞれの方法について理解することが役立ちます。
バイナリバックアップは、データベースファイルのコピーを生成するものであり、ファイルシステムレベルで実行されます。バイナリバックアップの出力は、すべてのエントリ、インデックス、更新履歴ログ、トランザクションログを含むバイナリファイルのセットです。バイナリバックアップには、設定データは含まれません。
バイナリバックアップは、次のいずれかのコマンドを使用して実行されます。
dsadm backup はオフラインで、つまり Directory Server インスタンスが停止されているときに実行してください。このコマンドは、Directory Server インスタンスを含むローカルサーバーで実行してください。
dsconf backup は、オンラインで実行でき、さらに Directory Server インスタンスのリモートからも実行できます。
バイナリバックアップには、次のような利点があります。
すべてのサフィックスを一度にバックアップできる。
LDIF へのバックアップと比較して、バイナリバックアップは格段に高速である。
レプリケーション更新履歴ログがバックアップされる。
バイナリバックアップには、1 つの制限があります。バイナリバックアップからの復元は、「同一の」設定のサーバーだけでしか実行できません。
この制限は次を意味します。
両方のマシンが同じハードウェア、同じオペレーティングシステム (サービスパックやパッチも含まれる) を使用している必要がある。
両方のマシンに同じバージョンの Directory Server (32 ビットまたは 64 ビットのバイナリ形式、サービスパック、パッチレベルも含まれる) がインストールされている必要がある。
両方のサーバーは、同じサフィックスに分岐する同じディレクトリツリーを持つ必要がある。すべてのサフィックスのデータベースファイルをまとめてコピーする必要があり、サフィックスを個別にコピーすることはできない。
両方のサーバーの各サフィックスには同じインデックス (仮想リスト表示 (VLV) インデックスも含まれる) が設定されている必要がある。サフィックスのデータベースファイルの名前は同じである必要がある。
各サーバーでは、レプリカとして同じサフィックスが設定されている必要がある。部分レプリケーションが設定されている場合、部分レプリケーションはすべてのマスターサーバーで同じように設定されている必要がある。
どちらのサーバーでも、属性の暗号化を使用していてはならない。
少なくとも、整合性のあるマシンの各セットに対して定期的なバイナリバックアップを実行してください。整合性のあるマシンとは、前述のように同一の設定を持つマシンのことです。
ローカルバックアップからの復元の方が簡単なため、各サーバーでバイナリバックアップを実行してください。
この章の残りの図では、次の略語を使用します。
M = マスターレプリカ |
RA = レプリケーションアグリーメント |
次の図は、M1 と M2 が同一の設定を持ち、M3 と M4 が同一の設定を持つことを前提としています。この例では、M1 と M3 でバイナリバックアップが行われます。障害が発生した場合は、M1 または M2 を M1 (db1) のバイナリバックアップから復元できます。M3 または M4 を M3 (db2) のバイナリバックアップから復元できます。M1 と M2 を M3 のバイナリバックアップから復元することはできません。M3 と M4 を M1 のバイナリバックアップから復元することはできません。
バイナリバックアップのコマンドの使用方法の詳細については、『Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.1 管理ガイド』の「バイナリバックアップ」を参照してください。
LDIF へのバックアップはサフィックスレベルで行われます。LDIF へのバックアップの出力は、サフィックスに含まれているデータのコピーである、フォーマットされた LDIF ファイルです。このため、このプロセスはバイナリバックアップと比較して時間がかかります。
LDIF へのバックアップは、次のいずれかのコマンドを使用して実行されます。
dsadm export はオフラインで、つまり Directory Server インスタンスが停止されているときに実行してください。このコマンドは、Directory Server インスタンスを含むローカルサーバーで実行してください。
dsconf export は、オンラインで実行でき、さらに Directory Server インスタンスのリモートからも実行できます。
これらのコマンドの実行時に -Q オプションを指定しないかぎり、レプリケーション情報はバックアップされます。
LDIF へのバックアップでは、dse.ldif 設定ファイルはバックアップされません。以前の設定を復元できるようにするには、このファイルを手動でバックアップしてください。
LDIF へのバックアップには、次のような利点があります。
LDIF へのバックアップは、設定に関係なくどのサーバーからも実行できる。
LDIF バックアップからの復元は、設定に関係なくどのサーバーからも実行できる。
LDIF へのバックアップには、1 つの制限があります。迅速なバックアップと復元が必要な状況では、LDIF へのバックアップでは時間がかかり過ぎる可能性があります。
トポロジの単一マスターで、レプリケートされた各サフィックスを LDIF に定期的にバックアップする必要があります。
次の図では、1 つのマスター (M1) でのみ、レプリケートされた各サフィックスに対して dsadm export が実行されています。
LDIF へのバックアップのコマンドの使用方法については、『Sun Java System Directory Server Enterprise Edition 6.1 管理ガイド』の「LDIF へのバックアップ」を参照してください。