Solaris PC NetLink 管理マニュアル

5.2 名前解決サービス

TCP/IP を持つ SunLink Server の WINS には、ネットワーク上のコンピュータごとに独自の IP アドレスとコンピュータ名が必要です。プログラムが IP アドレスを使ってコンピュータに接続する場合でも、管理者は「親しみやすい」名前を使って接続します。そのため、TCP/IP インターネットワークにはコンピュータ名を IP アドレスに、IP アドレスをコンピュータ名に変換する名前解決サービスが必要になります。

IP アドレスは、インターネットワーク上にあるその他すべての TCP/IP デバイスがコンピュータを認識する際に使用する独自のアドレスです。TCP/IP とインターネットでは、コンピュータ名は幅広く知られているシステム名にドメインネームシステム (DNS) を加えたものです。(ローカルネットワークでは、コンピュータ名は SunLink Server または Windows NT のセットアップ中に提供される名前です。) 名前と IP アドレスの両方が重複しないようにするため、コンピュータは NetBIOS over TCP/IP を使ってシステムの起動中にネットワークにその名前と IP アドレスを登録します。

5.2.1 NetBIOS と DNS コンピュータ名

SunLink Server ネットワークコンポーネントは NetBIOS として知られる命名規約に基づいています。一般的に、NetBIOS コンピュータ名は 1 つの部分で構成されます。

一方、TCP/IP コンポーネントは DNS 命名規約に基づいています。DNS コンピュータ名はホスト名ドメイン名の 2 つの部分で構成され、それらは結合されて完全修飾されたドメイン名 (FQDN) になります。

NetBIOS コンピュータ名は DNS ホスト名と互換性があり、それによって 2 種類のコンポーネント間の相互運用が可能になります。SunLink Server ソフトウェアによって NetBOIS コンピュータ名と DNS ドメイン名が組み合わされ、FQDN が形成されます。


注 -

SunLink Server システムでは、NetBIOS コンピュータ名はデフォルトでは DNS ホスト名と同一の名前になっています。独自の名前が必要な場合はデフォルトを変更することができます。


コンピュータは、TCP/IP インターネットワークで正確な名前解決を行うために以下のうちの 1 つまたはいくつかの方法を使用することができます。

5.2.2 NetBIOS over TCP/IP (NetBT) 名前解決

NetBIOS over TCP/IP (NetBT) は、名前解決を行うための名前の IP アドレスマッピングを実行するセッション層のネットワークサービスです。SunLink Server プログラムでは、NetBT は WINS およびブロードキャスト名前解決を通じて実装されています。命名処理に関連する 2 つのもっとも重要な点は、登録と解決です。

ネットワーク資源の特定およびアクセス方法を指定するモードは NetBT 内で定義されます。SunLink Server ソフトウェアがサポートする NetBT モードは以下のとおりです。

Windows クライアントコンピュータ用の 2 つの最も一般的なノードタイプは b ノードと h ノードです。

DHCP ユーザーは、(クライアントの構成によって) ノードタイプが DHCP サーバーによって割り当てられる場合があります。WINS サーバーがネットワーク上で使用可能な場合、NetBT は WINS サーバーと通信してクライアントコンピュータ上で名前を解決します。WINS サーバーが使用可能な状態でない場合、NetBT は b ノードのブロードキャストメッセージを使って名前を解決します。NetBT は、指定のコンピュータ上での TCP/IP の構成方法によって、LMHOSTS ファイルを使って名前解決を行うこともできます。

SunLink Server ソフトウェアは b ノードと h ノードの NetBT モードに対応することができます。

5.2.2.1 B ノード (ブロードキャストノード)

b ノードモードは名前の登録および解決にブロードキャストを使用します。たとえば、CLIENT_PC1CLIENT_PC2 と通信したい場合、CLIENT_PC2 を探しているということをすべてのマシンに伝送し、指定された時間 CLIENT_PC2 からの応答を待ちます。

b ノードモードには以下の 2 つの主な問題があります。

5.2.2.2 H ノード (ハイブリッドノード)

h ノードモードはブロードキャストメッセージやルーティングされた環境での操作に関するもっとも重要な問題を解決します。このノードは、b ノードと最後の手段としてブロードキャストメッセージを使用する別のノードタイプの組み合わせです。WINS サーバーが停止し、それによってブロードキャストメッセージが不可欠な場合、コンピュータは WINS サーバーが応答するまでポーリングし続けます。h ノードは、ブロードキャスト名前解決が失敗した場合にLMHOSTS ファイルを使用するように構成することもできます。

WINS サーバーが動作している場合はブロードキャストメッセージは生成されないため、コンピュータをルーターの逆側に配置することができます。WINS サーバーが停止した場合は、b ノードが使用されるため、ルーターの同じ側にあるコンピュータは通常どおり操作することができます。


注 -

TCP/IP を手動で構成する Microsoft TCP/IP ユーザーについては、TCP/IP を構成するときに WINS サーバー用のアドレスを指定している限り、デフォルトでは h ノードが使用されます。


5.2.2.3 その他の組み合わせ

SunLink Server ネットワークでは修正 b ノードとして知られるその他の組み合わせも使用されており、メッセージがルーターに伝わるようにすることができます。修正 b ノードは WINS サーバーを使用しません。このモードでは、b ノードは LMHOSTS ファイルに保存されているコンピュータおよびアドレスのリストを使用します。b ノードの試みが失敗した場合は、システムが LMHOSTS から名前を検索し、ルーターを越えるアドレスを使用します。ただし、各コンピュータがこのリストを保持している必要があるため、配布などの管理負担が発生します。

Windows for Workgroups 3.11 は修正 b ノードシステムを使用します。Windows NT は WINS サーバーがネットワーク上で使用されない場合にこの方法を使用します。Windows NT では、管理を簡単にするための拡張が追加されていますが、修正 b ノードは理想的な解決方法ではありません。

5.2.3 WINS とブロードキャスト名前解決

WINS はルーティングされたネットワーク環境でコンピュータ名の動的な IP アドレスマッピングを登録および照会する分散データベースを提供します。WINS は複雑なインターネットワークで発生する名前解決の問題を解決します。

WINS は名前解決に関するローカルブロードキャストの使用を削減し、ユーザーがリモートネットワーク上で簡単にシステムを検出することができるようにします。さらに、DHCP を通じた動的なアドレス指定により、サブネット間を移動するコンピュータに新規の IP アドレスが割り当てられた場合は WINS データベース内で自動的に更新されます。ユーザーもネットワーク管理者も手動で変更を行う必要はありません。

以下の節で、WINS と名前照会ブロードキャストメッセージによって名前解決が行われる方法について説明します。

5.2.3.1 ルーティングされた環境での WINS

WINS は以下の 2 つのコンポーネントで構成されます。

Windows ネットワーククライアント (WINS 対応の Windows NT、Windows 98、Windows 95、または Windows for Workgroups 3.11 コンピュータ) は直接 WINS を使用することができます。b ノード対応のインターネットワーク上にある非 WINS コンピュータ (RFC 1001 および 1002 に示されている) はプロキシ (名前照会ブロードキャストに反応してローカルサブネット上にない名前に関して応答する WINS 対応のコンピュータ) を通じて WINS にアクセスできます。

WINS なしでブラウズできるようにするには、ユーザーのプライマリドメインに、ルーターの両側にマスターブラウザとして機能する SunLink Server、Windows NT Server、または Windows NT Workstation コンピュータがあることをネットワーク管理者が確認する必要があります。これらのコンピュータには、サブネット用のドメインコントローラのエントリを持つ、正しく構成された LMHOSTS ファイルが必要です。

WINS ではこのような対策は必要ありません。WINS サーバーやプロキシは、ドメインがルーターをまたぐような場合でも、ルーターを越えてブラウズする際に必要なサポートを透過的に提供するからです。


注 -

Windows NT を実行しているクライアントコンピュータで DHCP にも対応している場合、管理者が WINS サーバー情報を DHCP オプションの一部として指定していれば、コンピュータは自動的に WINS サーバーの情報を利用するように構成されます。


WINS およびブロードキャスト名前解決環境では、WINS 対応のクライアントコンピュータと WINS 非対応のクライアントコンピュータとでは動作の仕方が異なります。以下の節で説明するように、これらのクライアントが解決、登録、解放、および更新などを取り扱う方法に、このような相異が現れます。

名前解決

インターネットワークで使用可能な状態にある WINS では、NetBIOS コンピュータ名は WINS 解決がクライアントコンピュータ上で使用できるようになっているかどうかによって、2 つの基本的な方法で解決されます。どちらの方法が使用されるかにかかわらず、システムが構成された後のプロセスはユーザーには見えません。

WINS サーバーはユーザーデータグラムプロトコル (UDP) の名前照会と受信や応答を行います。WINS サーバーを使って登録された名前の IP アドレスマッピングはすべて、名前照会の際に信頼性をもって提供されます。ただし、データベースでのマッピングは必ずしも関連デバイスが現在も稼動しているということを示すものではなく、コンピュータが特定の IP アドレスを要求し、それが現在有効なマッピングであることを示しているだけです。

名前登録

名前登録は、NetBIOS コンピュータ名および IP アドレスが各デバイス独自のものであることを確認するものです。

非 WINS コンピュータが名前の要求を出した後、重複した名前登録の試みにはチャレンジし、登録された名前に対して発行された名前照会には通常の応答を返す必要があります。2 つのシステムがセッションを確立できるように、通常の名前照会応答にはコンピュータの IP アドレスを含めます。

名前解放

コンピュータが特定の名前の使用を止めた場合、その名前に関する他のコンピュータからの登録要求にはチャレンジしません。これを名前の解放といいます。

名前の更新

クライアントコンピュータは WINS サーバーを使ってその NetBIOS 名の登録を定期的に更新する必要があります。クライアントコンピュータが最初に WINS サーバーへの登録を行う際、WINS サーバーは以下のようにクライアントが登録を更新しなければならない時期を示すメッセージを返します。

エントリがローカル WINS サーバーに所有されている場合、その名前はクライアントが更新しない限り指定された時間で解放されます。エントリが別の WINS サーバーに所有されている場合、そのエントリは指定された時間で再度有効になります。エントリがそれを所有する WINS サーバーのデータベースに存在しない場合、ローカル WINS データベースから削除されます。名前の更新要求は新規の名前登録と同じように取り扱われます。


注意 - 注意 -

更新期間の不適切な調整は、逆にシステムおよびネットワークの性能に影響を与えることがあります。


5.2.3.2 WINS プロキシ

WINS プロキシは、ルーティングされた TCP/IP イントラネット上で WINS 非対応のコンピュータが名前照会を解決する際に役立つ WINS 対応のコンピュータです。デフォルトでは、WINS に対応していないコンピュータは b ノードとして構成され、名前照会には IP ブロードキャストを使用します。WINS プロキシコンピュータは IP ブロードキャストの名前照会にローカルサブネット上で対応します。

WINS に対応していないコンピュータが IP 名前照会ブロードキャストを送るとき、WINS プロキシはブロードキャストを受信して、キャッシュから対応する NetBIOS コンピュータ名の IP アドレスマッピングを探します。WINS プロキシのキャッシュの中に正しいマッピングがあった場合、WINS プロキシはその情報を非 WINS コンピュータに送ります。その名前と IP アドレスのマッピングがキャッシュの中にない場合、WINS プロキシはそれを WINS サーバーに照会します。

WINS サーバーがローカルサブネット上で使用できない場合、WINS プロキシはルーターを通じて WINS サーバーへの照会を行うことができます。WINS プロキシは WINS サーバーから受信したコンピュータ名の IP アドレスマッピングをキャッシュ (メモリーに保存) します。これらのマッピングは、それ以降のローカルサブネット上での b ノードコンピュータからの IP ブロードキャスト名前照会への応答に使用されます。

WINS プロキシが WINS サーバーから受信した名前の IP アドレスマッピングは一定の時間 (インストール時のデフォルトでは、この値は 6 分になっています。最小値は 1 分です) WINS プロキシのキャッシュに保存されます。

WINS プロキシが WINS サーバーからの応答を受信したとき、WINS プロキシはそのマッピングをキャッシュに保存して、WINS サーバーから受信したそのマッピングを基にそれ以降の名前照会ブロードキャストに応答します。

WINS プロキシの役割は、DHCP クライアントの要求をルーターを通じて転送する DHCP/BOOTP リレーエージェントの役割に似ています。WINS サーバーはブロードキャストには応答しないため、WINS プロキシとして構成されるコンピュータは名前解決にブロードキャストを使用するコンピュータを含むサブネット上にインストールする必要があります。


注 -

Windows NT Version 4.0 コンピュータを WINS プロキシとして構成するには、そのコンピュータのレジストリを手動で編集する必要があります。EnableProxy キーワードを 1 (REG_DWORD) に設定してください。このキーワードは HKEY_LOCAL_MACHINE¥SYSTEM¥CurrentControlSet¥Services¥NetBT¥Parametersのキーにあります。


5.2.4 WINS とダイアルアップ TCP/IP ネットワーキングクライアント

ダイアルアップ TCP/IP ネットワーキングクライアントは、在宅勤務をしているユーザー、仕事で移動が多いユーザー、および複数の支社にあるサーバーの監視や管理を行うシステム管理者などにリモートネットワーク接続機能を提供します。Windows 98、Windows 95、または Windows NT コンピュータでダイアルアップ TCP/IP ネットワーキングを使用しているユーザーは、ダイアルアップ接続を使ってネットワークにリモートアクセスを行い、ファイルやプリンタの共有、電子メール、スケジュール作成、およびデータベースへのアクセスなどのサービスを利用することができます。

Windows 98、Windows 95、および Windows NT は、以下を含むさまざまな種類のダイアルアップ TCP/IP ネットワーク接続サーバーを通じてダイアルアップ TCP/IP 接続を使用し、 TCP/IP トラフィックのルーティングを行うことができます。

TCP/IP をルーティングするように構成されている Windows 98、Windows 95、および Windows NT のダイアルアップコンピュータは WINS サーバーを使用するように構成することができます。(詳細については、Microsoft のマニュアルを参照してください。)

TCP/IP をルーティングして WINS を使用するように構成されている Windows 98、Windows 95、および Windows NT のダイヤルアップコンピュータは、SunLink Server や Windows NT ファイルやプリンタの共有、電子メール、スケジュール作成、およびデータベースへのアクセスを含むサービスを利用するためにネットワークにリモートアクセスすることができます。