サポートされる SAP バージョンに関する最新の情報については、ご購入先にお問い合わせください。次に、各種 SAP クラスタ構成について詳しく説明します。
最も簡単な SAP クラスタ構成は、図 10-1 に示すような、論理ホストを 1 つ持つ、2 ノードの構成です。この非対称構成では、SAP の中央インスタンスとデータベースインスタンス (2 つをまとめて「中央システム」という) はともに、1 つのノード上に配置します。NFS もまた、同じノード上に配置します。この構成のクラスタは、構成と管理が比較的容易です。欠点は、バックアップノードが十分に利用されないことです。フェイルオーバーが発生した場合、中央インスタンスとデータベースインスタンス、NFS サービスは、バックアップノードに切り替えられます。
この構成では、中央システム (中央インスタンスとデータベースインスタンス) を 1 つのノードに配置し、開発/テストシステムをバックアップノードに配置します。開発/テストシステムは、論理ホストのフェイルオーバーによって中央システムがバックアップノードに移動しない限り、動作したままになります。図 10-2 が、この構成例です。この構成では、Sun Cluster HA for SAP の hasap_stop_all_instances スクリプトをカスタマイズして、SAP の中央インスタンスがスイッチオーバーされ、起動する前に、開発/テストシステムが停止するようにします。詳細は、hasap_stop_all_instances(1M) のマニュアルページおよび 「アプリケーションサーバーとテスト/開発システムに対する構成オプション」を参照してください。
物理ホストの一方または両方に、SAP アプリケーションサーバーを配置することもできます。この構成では、クラスタの外部のホストから NFS サービスを提供する必要があります。図 10-3 に示すように、外部の NFS クラスタからファイルシステムを NFS マウントするようにアプリケーションサーバーを設定してください。フェイルオーバーが発生した場合、中央システム (中央インスタンスとデータベースインスタンス) を含む論理ホストは、バックアップノードに切り替わります。アプリケーションサーバーが論理ホストとともに移動することはありませんが、論理ホストがマスターされているかどうかによって、起動または停止されます。これにより、アプリケーションサーバーが中央インスタンスやデータベースを求めて競合することがなくなります。
図 10-4 に示すような、論理ホストを 2 つ持ち、SAP の中央インスタンスを論理ホストの一方、SAP データベースインタンスをもう一方の論理ホストに配置した、2 ノードのクラスタを構成することができます。この構成では、両方のノードが利用されて、負荷均衡が図られます。フェイルオーバーが発生した場合、中央インスタンスあるいはデータベースインスタンスは兄弟ノードに切り替えられます。
論理ホストを 2 つ持ち、SAP アプリケーションを物理ホストの一方または両方に配置した、2 ノードのクラスタを構成することができます。この構成では、クラスタの外部のホストから NFS サービスを提供する必要があります。図 10-5 で説明しているように、外部の NFS クラスタからファイルシステムを NFS マウントするようにアプリケーションサーバーを設定してください。この構成では、両方のノードが利用されて、負荷均衡が図られます。
フェイルオーバーが発生した場合、論理ホストが兄弟ノードにスイッチオーバーします。アプリケーションサーバーはフェイルオーバーしません。
中央インスタンスの論理ホストがフェイルオーバーした場合は、hasap_stop_all_instances スクリプトを使用して、アプリケーションサーバーを停止できます。
データベースの論理ホストがフェイルオーバーした場合に、アプリケーションサーバーを起動および停止するためのスクリプトには、カスタマイズできるものはありません。データベースの論理ホストがフェイルオーバーした場合、アプリケーションサーバーを停止して、データベースの論理ホスト用のリソースを解放することはできません。このため構成を調整して、中央インスタンスとデータベースインスタンス、アプリケーションサーバーがすべて同時に同一ノード上で動作する場合を考慮する必要があります。
この構成は、Sun Cluster HA for NFS によって保護されます。詳細は、「Sun Cluster HA for NFS に関する注意事項」を参照してください。