この章では、Sun Cluster HA for DNS データサービスを構成し、管理する方法について説明します。
この章で説明する手順は次のとおりです。
Sun Cluster HA for DNS は、Sun Cluster の制御下で動作する DNS です。この節では、DNS が Sun Cluster HA for DNS データサービスとして動作できるよう、DNS をインストール時に実行すべき手順について説明します。
DNS の構成方法については、DNS のマニュアルを参照してください。Sun Cluster 構成との相違点は、以下のとおりです。
データベースは、プライベートディスクではなく、多重ホストディスク上に置かれます。
DNS サーバーは、物理ホストではなく論理ホストです。
DNS サービスを提供させる論理ホストを決定します。
論理ホストから DNS データベース用のインストール場所を選択します。
named.boot ファイルとデータベースを構成する残りのすべてのファイルを選択した場所に置いてください。たとえば、/logicalhost/dns です。
Sun Cluster HA for DNS を実行する全 Sun Cluster サーバーの /etc/resolv.conf ファイル内に、DNS サービスを提供する論理ホストの IP アドレスを指定します。
/etc/nsswitch.conf ファイル内の files の後に文字列 dns を追加します。
すべてのクラスタノードの /etc/inet/hosts ファイルに HA-DNS サーバー用の論理ホスト名が存在するようにしてください。
Sun Cluster 環境の外部で DNS を検査します。
例:
# cd /logicalhost/dns /usr/sbin/in.named -b /logicalhost/dns/named.conf # nslookup physicalhost |
DNS をインストールして設定したら、「Sun Cluster HA for DNS のインストールと構成」の説明に従って、Sun Cluster HA for DNS を構成、登録、起動してください。
この節では、Sun Cluster HA for DNS をインストールして、構成、登録、起動する手順を説明します。この手順を行う前に、DNS と Sun Cluster をインストールして、構成、登録、起動しておく必要があります。
Sun Cluster HA for DNS の構成には、hadsconfig(1M) コマンドを使用します。詳細は、hadsconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。
Sun Cluster および DNS をインストールしたら、ここで説明する手順に従って、Sun Cluster HA for DNS をインストールし、構成、登録、起動してください。
各 Sun Cluster サーバーのデフォルトの場所に SUNWscdns パッケージをインストールします。
まだインストールしていない場合は、pkgadd コマンドを使用して、Sun Cluster サーバーに SUNWscdns パッケージをインストールします。
hareg(1M) コマンドを実行して、Sun Cluster HA for DNS データサービスを登録します。
クラスタ内の全ホストではなく、論理ホストの全潜在的マスターに Sun Cluster HA for DNS をインストールした場合は、-h オプションを使用して、論理ホスト名を指定してください。hareg(1M) コマンドは、1 つのノード上でのみ実行してください。
phys-hahost1# hareg -s -r dns [-h logicalhost] |
hadsconfig(1M) コマンドを実行して、Sun Cluster HA for DNS を構成します。
Sun Cluster HA for DNS データサービスのインスタンスの作成、編集、削除には、hadsconfig(1M) コマンドを使用します。詳細は、hadsconfig(1M) のマニュアルページを参照してください。hadsconfig(1M) コマンドで指定する情報については、「構成パラメータ」を参照してください。
phys-hahost1# hadsconfig |
hareg(1M) コマンドを使用して、Sun Cluster HA for DNS データサービスを有効にし、クラスタの再構成を行います。
hareg(1M) コマンドは、1 つのノード上でだけ実行してください。
phys-hahost1# hareg -y dns |
これで、構成は完了です。
この節では、Sun Cluster HA for DNS データサービス用の構成ファイルを作成するときに hadsconfig(1M) コマンドで指定する情報について説明します。hadsconfig(1M) コマンドはテンプレートを使用して、構成ファイルを作成します。このテンプレートには、デフォルト値を持つパラメータや値が明示的に指定されたパラメータ、値が指定されていないパラメータが含まれています。値が指定されていないパラメータに対しては、必ず値を指定する必要があります。
障害検証パラメータは特に、Sun Cluster HA for DNS の性能に影響することがあります。検証間隔値を小さくしすぎると (障害検証の回数の増加により)、システム性能が低下することがあり、その結果として、システムが単に遅くなっただけでも、誤ったテイクオーバーが発生したり、再起動が試みられたりすることがあります。
Sun Cluster HA for DNS データサービスには、テイクオーバーフラグを設定する必要があります。テイクオーバーフラグは、Sun Cluster による部分的フェイルオーバーの処理方法を指定します。このフラグに設定できる値は次の 2 つです。
y (yes) - Sun Cluster は、他のマスターへの論理ホストのスイッチオーバーを試みますが、スイッチオーバーに失敗した場合、論理ホストは元のマスターに留まります。
n (no) - Sun Cluster は、データサービスに問題を検出したときでも、別のマスターに論理ホストを移動しません。また、論理ホスト上のデータサーバーあるいはデータベースに障害が発生した場合でも、何の処置も行いません。
DNS の動作は Solaris 2.6 と Solaris 8 で異なります。これは、デフォルトの bind のバージョンがこの 2 つのオペレーティング環境で異なるためです。この変更によって、いくつかの DNS 構成ファイルを更新する必要があります。詳細と更新する方法については、DNS マニュアルを参照してください。
表 12-1 で説明しているオプションを指定することによって、hadsconfig(1M) 入力書式に列挙されている Sun Cluster HA for DNS 用のパラメータを設定してください。
表 12-1 Sun Cluster HA for DNS に対する構成パラメータ
パラメータ |
説明 |
---|---|
インスタンス名 |
インスタンスの識別子として使用される名前タグ。Sun Cluster が生成するログメッセージでは、この名前タグが参照される。hadsconfig(1M) コマンドは、ここで指定された値の前にパッケージ名を付ける。たとえば nsdns_119 を指定すると、SUNWscdns_nsdns_119 が生成される。 |
論理ホスト |
Sun Cluster HA for DNS サービスを提供する論理ホスト名 |
構成ディレクトリ |
DNS 構成ファイルとデータベースが存在する、多重ホストディスク上のディレクトリを示すルート付きのパス名 |
テイクオーバーフラグ |
このデータサービスインスタンスで障害が発生した場合に、関連付けられている論理ホストのテイクオーバーまたはフェイルオーバーのどちらを行うかを指定する。指定できる値は、y (yes) または n (no) のいずれかである。 |
検証間隔 |
障害検証を行う時間間隔 (秒単位)。デフォルトの間隔は 60 秒。 |
検証タイムアウト |
障害検証をタイムアウトにする時間 (秒単位)。デフォルトのタイムアウト値は 60 秒。 |