Sun Cluster の論理ホストは、1 つの単位として Sun Cluster サーバー間を移動可能な資源の集まりです。Sun Cluster では、資源は、ネットワークホスト名とそのホストに関連付けられた IP アドレスのコレクションに 1 つ以上のディスクグループを加えたものです。OPS 構成などの HA 以外のクラスタ環境では、IP アドレスは特定のホストシステムに固定的に対応付けられます。クライアントアプリケーションは、サーバーアプリケーションを実行するホストの IP アドレスを指定することによって、サーバー上のデータにアクセスします。
Sun Cluster では、IP アドレスは論理ホストに割り当てられ、どのようなホストシステムでも、アプリケーションサーバーが現在動作しているホストシステムに一時的に関連付けられます。こうした IP アドレスは再配置可能なため、ノード間を移動できます。Sun Cluster 環境では、クライアントは、物理ホストシステムの IP アドレスではなく、論理ホストの再配置可能 IP アドレスを指定して、アプリケーションに接続します。
次の図 1-18 の論理ホスト hahost1 は、ネットワークホスト名 hahost1、再配置可能 IP アドレス 192.9.200.1、ディスクグループ diskgroup1 と定義されます。論理ホスト名とディスクグループ名が同じである必要はないことに注意してください。
論理ホストは、パブリックネットワークごとに 1 つの論理ホスト名と 1 つの再配置可能 IP アドレスを持ちます。主論理ホスト名は、主パブリックネットワーク上で論理ホストが認識される名前です。二次論理ホスト名は、二次パブリックネットワーク上で論理ホストが認識される名前です。図 1-19 は、hahost1 と hahost2 という主論理ホスト名を持つ 2 つの論理ホストのホスト名と再配置可能 IP アドレスを表しています。この図の二次論理ホスト名の接尾辞には、ネットワーク番号の最後の要素 (201) が使用されています。たとえば、hahost1-201 は、論理ホスト hahost1 の二次論理ホスト名です。
論理ホストは、物理ホストによってマスターされます。論理ホストを現在マスターしている物理ホストだけが、その論理ホストのディスクグループにアクセスできます。物理ホストは複数の論理ホストをマスターできますが、各論理ホストは、一度に 1 つの物理ホストだけしかマスターできません。特定の論理ホストをマスターする能力をもつ物理ホストを、その論理ホストの潜在的マスターといいます。
データサービスは、物理ホストに関連付けられている既知の論理ホスト名を知らせることによって、ネットワーク上のクライアントがそのサービスを利用できるようにします。論理ホスト名はサイトの IP 名前空間の一部ですが、特定の物理ホスト名が割り当てられているわけではありません。クライアントは論理ホスト名を使用して、データサービスが提供するサービスを利用します。
図 1-20 は、複数のデータサービスが 1 つの論理ホストのディスクグループに置かれている構成を表しています。この例では、論理ホスト hahost2 が現在 phys-hahost2 によってマスターされていると仮定します。この構成で phys-hahost2 に問題が発生すると、両方の Sun Cluster HA for Netscape データサービス (dg2-http と dg2-news) が phys-hahost1 にフェイルオーバーされます。
論理ホスト上にデータサービスを構成する方法を決定するにあたっての考慮事項については、第 2 章「構成の計画」を参照してください。